株式会社もっけだのフードサービス掲載日 2021年6月29日

仕入れ・売上管理のIT化で本部の経理業務を半分に。
競争の激しいラーメン業界を、組織の力で生き抜きます。

利用サービス 受発注(発注) | エリア 東北 | 事業内容 飲食店の経営、小売用商品のプロデュースなど | 取材日 
株式会社もっけだのフードサービス

山形県庄内地方でラーメン店を展開している「もっけだのフードサービス」。2015年に「ラーメン風林火山鶴岡本店」をオープンし、現在は直営、FC含め8店と着実に店舗を伸ばしています。
代表取締役の齋藤晴紀氏は、安定した店舗展開には、従業員への理念浸透と共通目標の設定、さらに日次決算を確認しながらスピード感のある経営判断が欠かせないと語ります。

ココがPOINT!

広告畑の経験を生かした、強烈なファーストインパクト

― なぜラーメン業態を始められたのでしょうか。

代表取締役 齋藤晴紀氏(以下、齋藤代表):もともと東京の小さなアパレルの設立に携わり、主に広告代理業を手がけていました。大手広告会社のアパレル部門ができない地道なPR活動をしながら、それなりのブランドを展開していました。

そんな中、27歳のときに祖父が亡くなって地元に戻ることになりました。そのときに改めて何のビジネスをしようか考えたんです。最初は競争相手の少ないアパレルも考えました。ただ、地方都市だけに顧客対象が絶対的に少ないから厳しいだろうと。

株式会社もっけだのフードサービス 代表取締役 齋藤晴紀氏株式会社もっけだのフードサービス
代表取締役 齋藤晴紀氏

競争が激しくても潰れずに続けていける業種、つまりレッドオーシャンに絞ろうと決めました。リサーチの結果、山形ではラーメン業界の競争が激しいことが分かり、私自身もラーメンを年400食くらい食べ歩きするほど好きでしたので、これだ、と。そこから3年掛けてアパレルの運営をしながらラーメンの修行に打ち込みました。

― オープン初日から行列でした。レッドオーシャンに挑むため、どんな手を打ったのでしょうか。

齋藤代表:アパレルで培ったPRの手法を駆使しました。まずは味とビジュアルです。それを、「聞いたことがない」と思わるような形でPRしていきました。もともと山形県酒田のご当地ラーメンといえば、縮れ系の自家製麺と透き通った醤油味のスープが特徴で、いわゆる「二郎インスパイア系」はまったく存在していませんでした。だから二郎系ラーメンを選んだのです。

そこに「ラーメン二郎とは」というストーリーをテレビや広告で大きく打ち出しました。地元では初めての味だけに「よく分からない食べ物」「ふつうのラーメンとは違うのか」と、オープン前から話題になるよう仕掛けた結果、オープン初日から行列を生むヒットへとつながりました。

― PRで突破口は開けましたが、その後の店舗展開をするためにどんな施策を講じましたか。

齋藤代表:他店との徹底的な差別化を図りました。もともと地元民の間でラーメンといえば、ファミリーで出かけるお店、という印象が根強いんです。店の面積も大きくて駐車場も広くて、食堂のようなお店が当たり前でした。ラーメン以外のメニューも幅広く揃えています。

その市場にあとから参入するとなったら、他と同じコンセプトでは到底太刀打ちできません。そこでまず、ファミリーは狙わないことを決め、女性や60代以上もターゲットから外しました。大型店が多いなか、最初に出店した『風林火山鶴岡本店』は、わずかカウンター7席のみ。回転率を重視した店という1点に絞ったのです。

― いつも混んでいる店、という印象につながりますね。

齋藤代表:そういう効果はあったと思います。ありがたいことに、二郎系のこってりだけではなく一般的なラーメンも食べてみたいという声をいただいて、翌年2店舗目の酒田店は、35席の二郎系がメインではありながら中華そばもある、といった店舗を展開しました。

さらに3店舗目、4店舗目は、二郎系とは対極にある、あっさり系の『中華そば雲ノ糸』を出しました。これは地元で主流のあっさり系への需要が根強かったためです。何より開店当初に排除してきたファミリーや高齢者、女性にも食べていただきたかったので、毎日食べても飽きが来ない食事を提供したいと思っていました。いまはそれぞれのお客様が互いに行き来してくれるようになり、相乗効果が生まれています。

順調な店舗展開の陰に落とし穴。徹底したIT化のきっかけとは

― 順調な出店のようですが、課題はありましたか?

齋藤代表:それまでは規模の拡大を目指して、スタッフが馬力だけでしのいできました。

ところが一息ついて振り向くと、社内のルールや会社としての成長目標が明確でなかったために、スタッフの思いがいろんな方に向いてしまっていました。目標が違うから当然スタッフの働き方も違ってきます。また業務も一部の人に集中して偏っていました。

業務の指示を仰ごうにも人によって教え方もまちまちで、とにかく社内にストレスが蓄積していました。このままいくと、この会社は空中分解してしまうぞと、焦りを感じましたね。

― 社内の意識を統一させるために、どんな対策をしましたか。

齋藤代表:まだ改革途上にあるので、これが正解だとはいえませんが、きちんとした組織づくりを進めていくしかありません。まず重視したのは人材育成でした。その第一歩が、組織が目指すところを明確にすることです。

そこで飲食コンサルタントの話を聞き、理念のすりあわせを行いまいした。ここでいう理念とは、ミッションとビジョン。これを社員に共有し、共感することが重要だからです。さらには、そうした理念をもとに全社員で意見を出し合ってクレド(信条)を作成しました。これを朝礼や夕礼で声に出して確認することで、自然と社員みんなの行動指針になっていくと信じています。

FCによる展開についても理念がどうしても浸透しづらいという理由から、新規の契約を打ち切ったり独立してもらったりしました。

さらに人事・労務のプロを新たに雇い、徹底的に社内スタッフの能力や成果、向き不向きなどを分析し、人材を配置し直したのです。

― 人事面での再構築。どう進めていったのですか。

齋藤代表:コロナ禍を経て、今後は人材の確保が難しくなるという前提で考えました。人が採用できなくなれば、いまいる人員をいかに効果的に配置するかが大事になります。

最前線で稼いでくれるスタッフを厚くしなくては会社が成り立っていかないので、できるだけ人員は現場に回し、その分本部の人員を絞りました。固定費を抑えるために本部も移転して、いまはシェアオフィスを利用しています。

その過程で、本部の事務作業量が多すぎることに気づきました。また特定のスタッフにしか分からない煩雑な手続きも見つかりました。例えば経理面では、日次決算を即座に出すことができませんでした。

もっと言ってしまえば、いま会社に現金がいくらあるのか、売上があるのかが分かりません。そのためスピード感のある経営判断が下せませんでした。社員にも売上に応じてボーナスで報いたいのに、見込みの数字でしか出せないから思い切った金額にはならないのです。

労務管理でも課題がありました。勤怠をタイムカードで管理していたので、集計に時間がかかります。これも査定が遅れる原因になっていました。仕入れの面でも店舗ごとに任せていたので、請求書が届いてはじめて本部で把握するという状況だったのです。

― そこでITの導入を図っていったわけですね。

齋藤代表:経理面、特に売上に関しては、券売機を導入しました。売上がデータとして集約され、本部でも即座に確認することができるようになりました。労務管理でも勤怠管理システムをいれ、シフトも能力ごとに自動化できるアプリを導入しました。

結果、数日かかっていた給与計算が素早くできるだけでなく、数字が見えるので、予定していた人件費とのズレが日々把握できるようにもなりました。さらに仕入れには『BtoBプラットフォーム 受発注』を導入して、受発注を一元化しました。

仕入れの一元化がもたらした効果

― 仕入れ面に関して、システム導入前にはどんな課題を抱えていましたか。

齋藤代表:それまでは8店舗の各店長か副店長が、仕入れ先の一覧リストから必要な食材を電話やFAXでバラバラに発注していました。

一方、本部では遅れて届く請求書をみて、ようやく仕入れ状況が把握できる、という状況でした。それが、システム導入で一元管理でき、しかも誰でも携わることができるようになり、大きな効率化が図れました。

最も大きな効果は、経理の事務手続きにかかる時間的なロスの削減でした。紙が必要なくなったのを一番喜んでいるのは経理担当者で、「なによりレシートをまとめて現金出納帳に記入していく作業がなくなって、仕事が半分に減った」と大喜びでした。本部だけでなく、店舗ごとに手書きでまとめていた伝票類の量を考えると、合計して何時間分のロスが解消できたのかと思わされますね。

人事面の改革、各システムの再構築。結果、ロスが削減できて、この1年で、ずいぶん組織作りが進んだという実感はあります。少なくとも、暫定的ではない、きちんと査定したうえでのボーナスが支給できるようになりました。

半年ごとにボーナスを出すには、半期ごとの決算が必要で、そのためには日次のPLが必要です。紙ベースだと作業が進まず、つねに見込み額でボーナスを出すしかありませんでした。それが、現在の売上を反映する形で査定できるのが何よりうれしいですね。

東北6県、そして全国へ

― 今後の展望について聞かせてください。

直近の大きな目標としては、2025年までに東北6県すべてに出店することですね。いずれも理念が直接に伝わる直営店で展開するのが目標です。

われわれの会社名『もっけだの』というネーミングには、意味があります。「もっけだの」とは、庄内地方の方言で「ありがとう」とか「申し訳ない」というときに使う言葉です。私たちは『地域や社会に喜ばれる会社をつくる』というビジョンをもっていますが、つねに地域や社会に向かって「もっけだの」という気持ちを持っていたいのです。

その地元貢献の一環として、地元の生産者から持ち込まれた規格外の野菜などを仕入れていきたいと考えています。

さらに2035年には47都道府県で出店したい。もちろん、その過程で株式上場も考えています。目標は大きい方がおもしろいですからね。

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株式会社もっけだのフードサービス

設立2017年1月6日
事業内容飲食店の経営、小売用商品のプロデュースなど
代表者代表取締役 齋藤晴紀
本社所在地山形県酒田市日吉町2−1-22
企業サイトhttps://www.mokkedanofoods.com/
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