|
山形県河北町。全国の町村の中では、サクランボの生産量日本一を誇る。 増川正志さん(54)は、サクランボ70a、桃30a、コメは自作の2町のほかに、作業受託の分も合わせると15町を栽培する専業農家だ。地域では「低コスト米研究会」の会長を努め、直播の研究にも力を入れている。酒米研究会で、品評会をやろうと提案したのも増川さんだ。
|
| |
 |
|
食味には、地元でも 折り紙つきのサクランボ |
|
■人に頼らず売ることの始まり
「コメは、もうダメだという話ばかり。それを少しでも力づけたい。それには目標をもてる核がないと、みんな良くならない」 幸い河北町には、サクランボという比較的競争の少ない特産物がある。風土にも恵まれ、品質の評判も良く、地元の農協は古くから、神奈川などの生協と取引があった。 サクランボを中心に、生産者たちの販路も農協を基点にしている。増川さんも、これまで農協一筋。親戚から口コミで広がったわずかな消費者に、宅配をしている程度だった。地域の結びつきが強い農村では、「農協の良いところもたくさんある」と増川さんは言う。 しかし近年、農産物の価格は低迷しつづけ、コメの減反も一向に緩和されない。増川さんたちは毎年、「減反でどんな作物を作るか」、頭を悩ませていた。農協が毎年奨励作物を決めるが、その場限りの提案なので、高く売れる保証はない。
|
| |
3年前、地元の野菜加工場が、キャベツの生産者を探していると、人づてに聞いて、増川さんは仲間数人と売り込みに行った。いまは減反作物としてキャベツを作っている。むろん奨励金はないが、年間契約なので価格が安定しているのが強みだ。 こうした経験も、増川さんを一歩前に押し出す原動力になったに違いない。 農協に頼るばかりではなく、「自分たちが何かしなければ、状況は良くならない」。
|
 |
|
| 正志さんと奥さんの啓子さん |
|
「配送時間の遅れ以外に、収穫後期の後半だったので、熟度が進んでいたかも知れない。自分が業者に送ってから、何日後に消費者に届くのかも知って、もっと早めの収穫が必要だった」と増川さんは反省する。 増川さんにとって初めての産直取引。いきなりのクレームは苦い経験だったが、「こうした経験の積み重ねこそが、将来に役立つ」と前向きに捉えている。 物流やそのときの気候、環境を考慮しながら、生産者として責任を持って、エンドユーザーに食べごろのものを届けるにはどうしたらいいか、増川さんの今後の課題だ。 「だから、インフォマートはこれからも続けたい。『継続は力なり』ですよ」
|
| |
個人宅配は、ここからも口コミで広がっていて、将来はいま作っている農産物を、できるだけ直接販売に切り替えていくのが増川さんの目標だ。 また、自分だけが良くなるのではなく、地元の仲間とともに帳合いを広げていきたいというが増川さんの願いだ。 多くの仲間に囲まれて、地域の中で生きていくことの大切さを肌身で感じている。ネットが窓口であっても、取引が人とのかかわりというアナログの世界であることは変わらない。 「取引先とも、お互いが良くなれる関係を築きたい」と増川さんは言う。 インフォマートへ参加は、増川さんにとって、自立に向けた貴重な1歩になったに違いない。
■いい出会いに、写真の準備も
増川さんと取引のあった(株)ディナーサービス・コーポレーションに、買い手側の感想を伺った。 「増川さんの件では、急きょ扱いが決まったので、あせって配送の着日の確認などを正確にできなかった。また常温かチルドかはっきりしない部分もあったことが反省点」と、商品担当の松永さんは言う。 同社にとっても、インフォマートでの青果の扱いは初めて。ネット取引について、「長所は、通常知り合うことができない農家や、いろいろな商品を紹介してもらえて、選択肢がひろがること」だが、「短所は、まだ双方でパソコンを使いこなせていないので、FAXや電話の方が簡単だと思ってしまう。発注も、フォーマットが違うと、単位がケースか個数か間違えやすい」と指摘する。 また、増川さんの時も、その後の生産者との取引でも、必ず困ったことが1点あるという。それは、広告に使う商品の写真がないことだ。 「今回も現物の写真がないので、違う農場のハウスの写真を借りて、チラシに掲載した。文書だけではなかなかPRしにくく、写真がないと、取引をしたくてもできない。ぜひ昨年の写真は撮っておいてほしい」 ぜひみなさんも、自慢の農産物の「いい顔」を写して、出会いの場に備えてほしい。
|
|
文・写真 加藤 さちこ
|
|