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日本有数のエシャレットの産地、茨城県北浦町。エシャレットとは若どりのらっきょうで、辛みの効いたネギに似た作物。みそをつけて食べる方法がよく知られている。 他産地の多くが砂地で栽培しているのに対し、北浦町は栄養分が豊富な黒ボク土壌。40名近い農家がエシャレットを栽培し、都内の市場などに出荷している。
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エシャレット畑。8月から定植が始まり、 2月〜5月末までが収穫 |
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■新しい野菜を認知してもらうための農家と店の努力
恵まれた栽培条件のなかで、男庭さんはさらにこだわった作り方をしている。「生のままで味わってほしいから」と農薬や化学肥料をギリギリまで減らし、その分有機物を堆肥として入れ、その堆肥の発酵を促すために年一回は緑肥を入れる。予冷施設も備え、周年出荷を可能にしている。「とことんまでやってみるのが私のやり方なんです」と男庭さんはいう。 インフォマートに参加したのは「食べる人の声を聞きたかったから」。また、手塩にかけて育てたものを自分で売っていくことも必要だと考えた。「どんなにいい土やいい作物を作っても自己満足じゃ進歩がない。お客さんの声が聞こえてこそ、もっといいものを作ろうという励ましにもヒントになる」
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男庭さんのエシャレットを入れているのが同じ茨城県にあるマルマンストア「ラピオ玉戸店」。東京に本社を持ち8店舗を運営。なかでも玉戸店は規模が最も大きく、3千uの売場面積を持つ。「仕入れの基準は美味しさ、健康、安心・安全」(同社ホームページより)という。玉戸店の丸山章一チーフによると「これまでも多くの野菜を産直で仕入れてきました。野菜は鮮度が命なので、畑から店先に並ぶまで距離と時間ができるだけ短いほうがベスト。近場で何かいい葉物野菜がないかと思っていました」
丸山チーフが男庭さんのエシャレットに決めたのは、減農薬にこだわるなど安全性を打ち出していた点が大きかったという。また、同店では新しい野菜を積極的に扱っていくという方針で、エシャレットもすでに市場から仕入れていた。「一日に一ケース(10束入)は確実に売れていたので、これならいけると思いました」
珍しい野菜、新しい野菜はうまく消費者に伝わればヒット商品につながるが、認知してもらうまでにはそれなりのピーアールが必要だ。「普通の野菜と同じような陳列ではなく、平台を引っぱり出して、お客さんに目立ちやすいように並べました」と丸山チーフ。
一方、男庭さんもエシャレットの栄養、さまざまな料理方法などを書いた説明文を作って、商品の横においてもらうようにするなどピーアールにつとめた。 「そうしたピーアール、そして市場経由よりも鮮度がいいこともあって、男庭さんのもののほうから売れていきましたね」丸山チーフも手応えを感じたという。
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チャーシューとの和え物、塩昆布との和え物、 かき揚げなど食べ方は実にいろいろ |
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■「作り手の人となりがわかった」という手紙
当初、エシャレットの出荷方法に関し、マルマンストアから「朝採りのものを送ってほしい」という提案がされたという。しかし、収穫して半日ぐらい予冷をかけたほうがかえって鮮度も保持できる。そのことは丸山チーフにも了解してもらい、翌日到着ということで届けられることになった。現在取引は、マルマンストアが仕入れ先の見直しをしている関係で一時中断しているが、調整がとれればすぐにでも再開するという。
男庭さんとの取引に関し、丸山チーフが印象的だったのは、最初に商品が届いた時に商品とともに添えられてあった手紙だったという。そこには、亡き父の後を継いで脱サラをして農業を始めるまでの男庭さんの思い、栽培上の苦労、エシャレットへの思い入れなどが書かれていたそうだ。
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「実際に顔合わせをしてなくても、作り手の人となりが伝わってくる。こういうことをしてもらえると売る方もありがたい」と丸山チーフは話してくれた。
これに対し男庭さんは「自分がしてもらったらうれしいことをしたまで。知らない人に知らないものを伝えていくのだから‘とっかかり’をつくらないとね」とケロッという。 「でも」男庭さんはこう続けた。「とっかかりができれば、それはそれで評価してもらえると思う。でも取引が続くかどうかは食べる人が評価してくれるかどうか」
売る人のことを考えつつも、あくまでも食べてくれる人の方を向いて作物を作っていくしかないと男庭さんは考えている。マルマンストアに来るお客さんが少しでも鮮度のいい状態で買ってもらうために、丸山チーフに「売れた分だけ少しずつ棚に並べてほしい」とお願いしているという。
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外見をよくするために、 調整作業には手間がかかる |
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■発想の転換で売り先を広げていく
ところで、男庭さんの話を聞いて驚いたことがある。エシャレットには必ず緑の葉が一緒についておりヒモで縛ってある。てっきりエシャレットの葉っぱと思っていたが「実はこれ、麦の葉なんです。季節によって使う葉も違います」と男庭さんはいう。
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一方、生産者も「いままでもこうだったから」と出荷方法を変えていない。「この作業さえなければ出し値も抑えられるし、作付け面積も増やせる」と男庭さんはいう。外食などで使うのなら、なおさら調製作業は要らない。 一方、収穫の始まる2月ごろはこのエシャレットの葉っぱがかえっておいしく食べられるのだそうだ。消費者にしても外食業者にしてもこういう情報はありがたい。
市場での評価を最優先してきた農産物流通。この陰で必要以上に調製作業に手間をかける割に、消費者には正しい情報が伝わっていないという結果を生んだ。こういうことはエシャレットに限らず他の農産物でもあるのではないか。インフォマートにはスーパー、外食、加工業者と買い手の業態もさまざま。「いままでこうだったから」という発想を変えてみることで、売り先はもっと広がっていくのではないだろうか。
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文・写真 青山 浩子
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