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  農ぶらんど サクセスストーリー 2002年5月号 第2回  
生産者の顔が見える農ぶらんどでリブレ京成のファン作り目指す
西田淳一さん
(熊本県・玉東町)
西田淳一さんの温州みかんデコポン紅八朔
(有)ゼンショウさん
(宮崎県・宮崎市)
ゼンショウさんのサラダトマト
近藤典夫さん
(福島県・塙町)
藤典夫さんの原木シイタケ
山口宏二さん
東京都・葛飾区
(株)京成ストア
  産地の表示に始まって、いま量販店では販売する農産物に生産者の素顔を明示した農産物を並べはじめているが、京成ストア(リブレ京成)でも上質化政策を打ち出し、売場商品のクオリティアップを目指して種々の取り組みを開始した。青果売場で生産者の顔が見える「農ぶらんど」による売場作りを始めているのである。

 
京成リブレの売り場風景
京成リブレの売り場風景

上質化政策で農ぶらんど導入に取り組む

  「これまで生産者は市場のために市場規格に合わせて作物を作ってきました。少し前ですが、こういうことがありました。たまたま千葉の生産者の方で相場が落ち込んでダイコン1本10円という時でしたが、うちに駆け込んできて農産物を売ってくれませんか、と言ってきたんです。その時にその方の顔写真を表示して売ったんですが、その時は消費者からの反応もいろいろ出て面白かったんですね」。

 
  「京成ストアのお客が対象ですから、これはうまいとか不味いとかいろいろ意見を言ってきます。言われた農家でも努力せざるを得ない。お客さまと道で顔を合わせたりすると、顔が知られていますから声を掛けられますからね。それで農家でも徐々に消費者のために作るんだということが分かるというようなことがありました」。

 こう語るのはリブレ京成の山口宏二さん。青果一筋の人物で過去10年間にわたり店で青果部を担当し、その後は本社の青果部バイヤーとして3年間を過ごしてきた。いまの仕事は午前中は太田市場へ足を運ぶバイヤーで、昼を過ぎれば各店を回りながら売場指導をするスーパーバイザーとして、京成ストアの売場活性化を促進する大切な役割をになっている。船を出しての海釣りが好きだが、この間忙しすぎてなかなか思うように出かけられないと言う。



農ぶらんどのコンセプト・パネル
農ぶらんどのコンセプト・パネル

 「今は10数種類に絞りました。野菜の方は単価が安いこともあってお客さまの受け入れがいいんですが、果物は取っ付きにくい感じがある様です。野菜は試し買いしやすいですから。とくに果物は仕入れロットが小さくて難しいですよ。沢山入れたら出ないときにはロスになりますし、売れれば売れたですぐ品切れが起こります。先日もお客様が見えられて、にしだ果樹園のデコポンまだありますか、売場には無いのですが、と言ってきましてね。品切れしていてその時はお許し願いましたが」。このお客はただデコポンが欲しいのではない。にしだ果樹園のデコポンが欲しいのである。これは青果商品のブランド化が進行していることを物語っている。

 
 ちなみに、ブランドがブランド力としての価値を持つためには、いくつかの条件がある。農産物と言えどもこの条件を免れない。つまり、その商品の価値が購入する客側に十分熟知されており、他の同様商品と比較して明確により高い価値を認められているということが基本条件になる。では、ブランド品はどういうお客が買っていくのか。ブランド志向のお客は価格ではなく、商品の質にこだわりを持つお客である。つまり農産物に関して言うなら作物の由来や栽培経歴などに少なからぬこだわりを持つお客といえる。



農ぶらんどの商品が並ぶ
農ぶらんどの商品が並ぶ

誰のために農産物を作るのか

  「量販店や専門店は商品づくりにこだわりますが、生産者はもっと包材やデザイン、表記などに気を遣って欲しいですね」と山口さん。よく『こだわりの・・・』という農産物の表記を目にすることがある。ところが何にこだわったのかがまったく分からないものが多い。こういうことにもまだ改善の余地がある。うちの生産物はこういう風に売って欲しいという生産者からのこだわりこそが欲しいのである。ジャガイモなら、見ればジャガイモと書かなくてもジャガイモと分かる。どういう品種でどう使ったら良いか、どういう料理に向いているかという情報が大切なのだ。

 
  リブレ京成でも農ぶらんど商品の荷姿を改良してもらったと言う。バラ詰めだったジャガイモを生産者に頼んで定量袋詰めしてもらい、それにバーコードをつけるように改善してもらった。商品にどういう表情を持たせるか、これは誰に売るかを意識しなければ出てこない発想だ。生産者は誰に向けて農産物を作るのか、これが農業経営の原則なのだ。山口さんの語ってくれたエピソードにはそれが良く表現されている。
「このあいだ千葉の苺の生産農家に行ったんですが、いまだに女峰を作っているんですよ。我々の中でも女峰なんて化石みたいな品種ですし、それに値段も低いので売れませんから。それをまだ作っていたんですよ。それで、お客さまはもう女峰なんて望んていませんよ、と言ったら『じゃあしょうがねえか』っていう具合ですから。まったくマーケティングなどありませんからね、正直驚きますよ」。
 生産地がどんなに近くても、その個々の農家の経営に対する考え方が大きくかけ離れている場合が多い。そのために流通センターを構想する上でも支障が出てくる。農ぶらんどは、生産者が農業経営者として自立し成功していく為に不可欠なマーケティング発想を促進させるという意味でも、大きな役割を担っているのである。

文・写真 西田 眞二
 
 
この記事は月刊「農業経営者」編集部が提供しています。
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