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  農ぶらんど サクセスストーリー 2002年9月号  
顧客の生活に潤いを提案する地域密着型スーパー
増川正志さん
(山形県・河北町)
増川正志さんのサクランボ
丸山和秀さん
(新潟県・新潟市)
まるやまさんちのちゃまめ
川村則雄さん
(岩手県・滝沢村)
川徳牧場の山羊ミルク
西村好史さん
(高知県・大野見村)
西村好史さんの四万十生姜
原 達也さん
神奈川県・秦野市
(株)まるだい
 
  (株)まるだいは、1973年に秦野市郊外に1500世帯規模の下大槻団地が誕生した際に、現社長である原さんが農地を造成して創業した、同団地に完全に密着した単一スーパーである。当初は30坪から始め、徐々に延べ床面積を増床。今春(2002年4月)には、全面改築して274坪の規模になった。それを機に、既存のルート以外からの商材の仕入れを検討。そうした状況の中で、知人の情報により農ぶらんどの存在を知るところとなる。取引の第一弾は、5月に仕入れたサクランボ。これが顧客に好評を得る。以後、同社では、高齢化した団地住民を顧客とするマーケットに対する、購買の掘り起こしチャネルとして農ぶらんどとの取引に期待をかける。
 
店舗写真
まるだいは、高齢化の進む郊外型団地の
中に立っている

仕入れも販売も手探りで切り拓く

  まるだいの創業者原洋社長は、地元で300年続く味噌麹を商いつつ、農業を営んできた素封家に生まれる。スーパーの開業は、高度成長期に開発された団地に隣接して、土地を保有していたことに端を発する。当初、その土地活用として考えたのは、建物を建てて、そこに生鮮3品を軸としたテナントを入居させるスペース業だった。しかし、その後、テナントが退店した後を自社で運営するようになり、スーパーとしての体裁を整えてきた。

 
  そのため、仕入れや販売に関してなど、スーパーの運営のすべてを試行錯誤しながら切り拓いてきたという。
 原達也さんは原社長の後継者であり、常務取締役として店舗全体の運営を取り仕切る。大学を卒業後、秦野市役所の会計課に2年間籍をおく。26歳の時に、まるだいに入社。現在、常務取締役として、社員6名、パート・アルバイト40名の指揮をとりつつ、新たな商材探しに力を入れている。

30年前に開発された下大槻団地は秦野市の郊外にあり、現在、スーパーは「まるだい」が1軒あるのみ。かつては地元交通会社系列のスーパーが近くにあり、競合状態にあったが3年前に撤退。そのため、団地の住民が最寄買いをするのは、同店のみという状況にある。ただし、団地に住む住民が皆高齢化が進み、「まるだい」ではそうした高齢者に購買意欲を喚起させられる、新たな商品づくりが当面の課題だ。量から質への転換。単にモノだけの販売から情報やサービスなどの付加価値を含めたきめ細かい対応が求められている。

川徳牧場のやぎミルクと買い物客
川徳牧場のやぎミルクと買い物客

既存の仕入れルートでは得られない新鮮な
  感覚をアピールできる食材


原さんは、周辺に競合店がなくなってしまったことに対して、不満と不安を併せ持つと言う。競合状態にあったほうが、食材の仕入れにしても値付けにしても比較できたために、決めることが容易だった。顧客サイドでも、個々に好みの食材を買いまわることもできた。そうした状況がなくなってしまった現在、原さんは独自の力で食材のアピールをしなければならない。

 
しかし、既存の仕入れルートでは、もう顧客の関心を呼ぶ新鮮な感覚で惹きつけられる食材は、なかなか入手できない。日常使う野菜は地元でもたくさん生産しているため、それらを仕入れることにより鮮度のよさをアピールできる。しかし、それだけでは顧客の購買を喚起するには至らない。
 原さんが、従来からある食材とはちょっと異なる性格をもつ、付加価値の高い食材探しに力を入れている理由は、そこにある。

農ぶらんどとの取引は、今年の2月に開始。企画の検討から始めて、第一弾は5月に山形の増川正志さんのサクランボに決まった。初めての取引だったこともあり、原さんは「正直な話、ちょっと不安だった」と打ち明ける。しかし、現物もサンプルと遜色なく、お客さまにもこうしたキャンペーンは新鮮に映り、商品そのものも好評を博し、上々だった。原さん自身も、この取引で農ぶらんどを仕入れチャネルの一つに加えることにした。

まるだいの店内風景
まるだいの店内風景

8月現在、「まるだい」では、農ぶらんどを通じて、新潟の丸山和秀さんの茶豆、岩手から川徳牧場の山羊ミルクとヨーグルト、高知県からは西村好史さんの「四万十川生姜」の3品を入れている。
 茶豆は、普通の枝豆と比較すると価格が高いものの嗜好性があり、量を必要としない高齢者にとってはちょうどよい分量であり、商品の流れは良好だ。

 
  山羊ミルクとヨーグルトも、昔懐かしい味であることと牛乳のように腹の調子が悪くなることがないため、コンスタントな売れ行きをみせている。ただし、賞味期間が限られるため、夏場の暑い時期はロスが出てしまうなど、販売に課題を残している。

「四万十川生姜」は、サンプルを取った時点でその質のよさに着目した。高級な食材は需要がないが、日常の品よりも質がよければ、価格が少し高くても関心は得られる。この四万十川生姜は、ほかの国内産よりも高いものの、スーパーの野菜のプライスゾーンである200円以下をキープ可能なため、問題なしと判断した。すぐに売り場の担当者にも試食させた上で、取引を開始。現在古根は、中国産・高知産・四万十の3アイティムを含め、3品の生姜を並べているが、売れ行きはとてもよい。


新しくなった売り場で新たな産直食材を販売へ

原さんは、今春売り場を新しくしたのを機に食材の新たなルート探しに力を入れているが、農ぶらんどの野菜の質のよさについては、高い評価をつけている。

しかし、取引を開始してまだ日が浅いため、生産者の生産ならびに出荷態勢や対応力などに関してわからないことも多いという。今後は、食材そのものだけでなく、生産者の出荷情報なども農ぶらんどを通じて密にコンタクトをはかり、よりタイムリーな販売を恒常的に実施していきたい、と原さんは語った。
文・写真 藤生 久夫
 
 
この記事は月刊「農業経営者」編集部が提供しています。
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