電子帳簿保存法の基礎知識(前編)
企業会計を支える“国税関係書類の電子化”

2017年4月19日 辻・本郷 税理士法人/Hongo Connect & Consulting株式会社
市川 琢也

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近年、企業活動において、コスト削減や業務効率化が常に求められています。これらの課題に、企業の会計処理の面から取り組むことを目的とした法律が、1998年に施行されました。それが帳簿書類の電子化について定めた「電子帳簿保存法」です。メリットの多さから導入企業も増えてきていますが、まだこの法律の内容がよくわからず、導入に踏み切れていない企業が多いのも事実です。

そこで本コラムでは2回に分けて、電子帳簿保存法の内容を振り返りつつ、実際の運用方法やメリット・デメリット、さらにはエコ活動への貢献について触れていきたいと思います。

誕生の背景

まず、企業は基本的に法人税法や所得税法において、7年間は帳簿や書類などの国税関係書類を保存する義務があります。ただ、組織が大きくなれば1年間の取引量も多く、帳簿や書類も膨大となります。場合によっては保管用に倉庫を借りるなど、維持費がかかっている企業も多いのではないでしょうか。それがITの進歩に伴い、電子による国税関係書類の保存も可能になったという背景を踏まえて、電子帳簿保存法は作られました。国税側のニーズというよりは、企業側のニーズとして作られたのです。ちなみに、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

「国税関係書類」とは

では、保存義務のある“国税関係書類”とは何かを見てみましょう。大きくは、「帳簿」と「書類」に区分されます。「帳簿」とは、仕訳伝票や勘定科目の元帳、仕訳日記帳など、決算資料を作るための根拠となる資料などです。つまり、会計決算書に直接的に影響する書類のことです。端的にイメージしやすいのは、一般的な会計ソフトで入力しているデータと考えて間違いはないでしょう。

一方の「書類」は、注文書(発注書)や納品書、請求書など、仕訳を起こすための元となる書類を指します。また、棚卸表や貸借対照表、損益計算書といったいわゆる決算書なども「書類」に分類されます。これらすべての帳簿と書類には原則として7年間の保存義務があります。

保存方法と申請について

次に、電子帳簿保存法で認められている保存方法について触れましょう。大きくは@「電磁的記録」、A「マイクロフィルム(COMまたは撮影)」、B「スキャン文書」、C「電子取引の取引データ」の4種類があり、「帳簿」か「書類」かによって認められる保存方法が違ってきます(下図参照)。

※1:「電磁的記録」…情報(データ)それ自体あるいは記録に用いられる媒体のことではなく、一定の媒体上にて使用し得る(一定の順序によって読みだすことができる)情報が記録・保存された状態にあるものをいいます。具体的には、情報がフロッピーディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ等に記録・保存された状態にあるもの。
※2:保存可能な年数に指定あり。

また、「電子取引の取引データ」「マイクロフィルム(撮影)」以外は、基本的には所轄税務署へ申請し、承認を得なければいけません。ただし、帳簿と書類は同時に電子化する必要はありませんので、導入しやすい部分から電子化することができます。

「帳簿」の電子化について

実際に、電子帳簿保存法では、「帳簿」の電子化から入られるといいのではないでしょうか。帳簿を電子化する際に、“自社で一貫して統一的に電子的な会計データが作られていなければいけない”という決まりがあるのですが、多くの企業で採用されている一般的な会計ソフトはこの要件を満たしています。会計ソフトですでに帳簿の電子化が進んでいて、所轄税務署への申請に必要な要件を備えていれば、帳簿だけ電子化の承認を受けることができます。

「書類」の電子化について

「書類」の電子化については、帳簿に比べてやや複雑な部分があります。注文書(発注書)や納品書、請求書、契約書などの書類を「電磁的記録」や「スキャン文書」で保存するのは難しいのではないかと思います。というのも、電子保存では真実性や可視性が重要なため、これらの書類をワードやエクセルなどで作成して発行している場合、その書類を電子保存するには、検索ができたり、通し番号を付けたり、書類のすべてにタイムスタンプがなければ税務署へ申請することができません。こうした保存要件を満たすには、独自にそれなりのシステムを開発せねばならず、コストがかかってきます。

一方で、「電子取引の取引データ」による保存は、前述したように税務署への申請が不要のため、導入する企業が増えています。「電子取引の取引データ」とは、例えばASP事業者が提供するサービスが該当します。こうしたサービスでは、削除や変更の履歴を辿ることができ、保存された書類をすぐに検索できるようになっているためです。

コスト削減を考えた際、膨大な紙の量となる「書類」こそ電子化を進めたいジャンルです。統一的なシステムやソフトの普及で、今後さらに導入する企業は増えていくのではないでしょうか。

(電子帳簿保存法の基礎知識(後編)はこちら

※インフォマートがご提供するサービスは、「電子取引の取引データ」に該当するため、税務署への申請は不要です。

著者プロフィール

市川 琢也

辻・本郷 税理士法人にて税理士業務、経理アウトソーシング、業務改善コンサルなどを担当し、延べ1,000社以上に関与。現在はHongo Connect & Consulting株式会社の社長として、様々な事業を“つなげる”ビジネスに取り組む。

Hongo Connect & Consulting 株式会社
辻・本郷税理士法人グループが誇る、顧問先企業数10,000社を超える豊富な経験とネットワークを活かし、様々な角度から経理・総務業務の改善・コンサルティングを行う。
http://h-cc.co.jp/

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