電子帳簿保存法の基礎知識(後編)
電子化のメリットと税務署への申請手続き

2017年4月24日 辻・本郷 税理士法人/Hongo Connect & Consulting株式会社
市川 琢也

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前編では電子帳簿保存法とは、どのような法律かについてご説明しました。今回は、国税関係書類である「帳簿」や「書類」を電子化する際に必要となる、所轄の税務署への申請と承認について見てみるとともに、実際に法律に則って電子化する場合のより具体的な運用方法や実務上のメリットについて述べたいと思います。

申請が必要な保存形態と申請内容

前回お伝えしたとおり、国税関係書類の電子保存において、法律で認められている保存形態には、@「電磁的記録」、A「マイクロフィルム(COMまたは撮影)」、B「スキャン文書」、C「電子取引の取引データ」による方法があります。このうち「電子取引の取引データ」と「撮影によるマイクロフィルム」(6、7年目の書類のみ保存可能)を行う場合、申請は必要ありませんが、それ以外の保存形態は所轄の税務署への申請が必要となります。

「電磁的記録」や「マイクロフィルム(COM)」で保存する際の申請手続きでは、申請書類に会計データの作成に使用するパソコンや会計ソフト、プリンタ−のメーカー名や機種名などを明記します。また、申請する帳簿や書類についても、「仕訳帳」「総勘定元帳」「発注書」「納品書」「請求書」というように、電子化するものをすべて記入します。さらに必要に応じて、会計処理の全体像がどのようになっているかを示すフロー図も説明資料として求められます。

スキャンによる保存についても申請に必要な要件は電磁的記録やマイクロフィルム(COM)と概ね変わりませんが、スキャンデータの保存形式やタイムスタンプの種類については詳しく記載しなければいけません。

また、データを保存するサーバーは基本的には納税地にないといけませんが、最近はサーバーが海外というケースもあるので、サーバー自体は納税地になくてもよいとされています。その代わり、電子保存された取引データをパソコンのディスプレイの画面および書面にすぐに出力できることが条件となります。

申請が通ったら…

電子保存の承認を受けた後は、承認をもらった時点から遡って3年以上経過している国税関係書類も電子保存することができます。過去の帳簿書類を電子化できたら、保存していた紙は捨ててしまってもかまいません。ただし、同時に現在の「期」についても電子化していかなければなりませんので、過去分を電子化する担当と、通常の会計処理を行う担当を置かないと業務が停滞してしまいます。導入時には多少のマンパワーが必要になるかと思います。

紙とデータの混在について

国税関係書類の電子化にあたって、実務上、企業からよく受ける質問の1つに“紙とデータの混在”があります。実際、電子化の申請手続きをしたからといって、すべての取引において電子化ができるとは限りません。国税庁では紙とデータでの保存が混在してはいけないと言っています。ただし、国税庁もあくまで建前上、電子データは一貫して電子データとして保存し続けてくださいとアナウンスするしかないのです。実際に税務調査を行うときに、紙とデータが混在していたからといって、「保存したデータのすべてが認められない」「電子データで経費計上した売上げもすべて認めない」などということにはなりません。

“基本的に紙とデータが混在してはいけない”とありますので、事業者や支店、相手先ごとに、明確に単一的な保存方法が決まっているのであれば、紙と電子取引の両方を並列で使ってもいいということになっています。例えば取引先のなかで、ある商店さんから「個人でやっているので、電子データなんて発行できない」と言われれば、その商店さんとは紙でやり取りする、とあらかじめ取り決めをしておけばよいでしょう。

電子化のメリット

さて、ここからは電子化を導入する事で得られる具体的なメリットについて見てみたいと思います。まず考えられるのが、コストの削減です。紙で保存する場合は、倉庫を借りたり社内に保管場所を確保して、維持費がかかっている企業も多くいらっしゃいます。また、7年を過ぎた帳簿書類を処分する際に廃棄料がかかることもあると思います。電子化すれば、大量の紙を削減することができ、維持費はせいぜいサーバー費ぐらいになるのではないでしょうか。

小売店や飲食店を例に挙げますと、お店で発行するレシートの類いも「書類」にあたりますので、電子保存を進めることができます。かつてはレジロールを段ボールなどに入れて保存するのが当たり前でしたが、いまはレシート(売上げデータ)も納品書や請求書と同じように一貫して電子データが作成されていることが増えました。電子保存の要件を備えていれば、レジロールそのものを保存しておく必要はありません。

もうひとつの大きなメリットは、業務のスピード化です。たとえば、いままで紙を印刷して郵送に充てていた時間などが大幅に削減されるでしょう。

また、これは特別な例ではありますが、大規模災害が発生した際にも、電子化は非常に大きな効果を発揮します。私ども辻・本郷 税理士法人の顧客先に、東日本大震災で事業所ごと流されてしまった企業がたくさんいらっしゃいました。しかし、弊社にその会社の過去数年分の電子データがバックアップされていたので、会計処理を元に戻す事ができたという会社もありました。

今後も拡大する帳簿書類の電子化

これらを見る限り、電子保存はこれからの時代にもっと必要とされてくるでしょう。
ただし、税理士業界ではまだ“紙神話”とでも言うような慣習が残っているのも事実です。税理士の平均年齢は60歳を越えており、最新のIT技術に懐疑的な方も多くいます。ですから、まずは一度、社内の会計業務を見直し、業務効率化の1つとして電子化できるかどうかを検討するところから始められてはいかがでしょうか。そして、税理士に相談する際は、電子化に積極的な税理士にご相談いただければ、何らかのアドバイスができるのではないかと思います。

※インフォマートがご提供するサービスは、「電子取引の取引データ」に該当するため、税務署への申請は不要です。

著者プロフィール

市川 琢也

辻・本郷 税理士法人にて税理士業務、経理アウトソーシング、業務改善コンサルなどを担当し、延べ1,000社以上に関与。現在はHongo Connect & Consulting株式会社の社長として、様々な事業を“つなげる”ビジネスに取り組む。

Hongo Connect & Consulting 株式会社
辻・本郷税理士法人グループが誇る、顧問先企業数10,000社を超える豊富な経験とネットワークを活かし、様々な角度から経理・総務業務の改善・コンサルティングを行う。
http://h-cc.co.jp/

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