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税務調査はどこまで調べる?請求書は必要?調査の流れについて

税務調査は、いつ来るかわかりませんし、必ず来るとも限りません。「何でこの会社に来ないんだろう?」とか、「何でこの会社に来るの!?」ということもよくあります。普段からしっかりと処理ができていれば、それほど恐れる必要はありませんので、いつ来ても大丈夫なように適切な準備をしておきましょう。 そこで、本コラムでは、税務調査の際に調査官から指摘されやすい代表的な項目について解説します。

税務調査はどこまで調べる?請求書は必要?調査の流れについて

最終更新日:2017年5月31日

目次

税務調査で調査官が最初に調べるのは「売上」

売上は金額が大きい上に、計上がもれていればほとんどの場合はその時点で追徴が発生しますので、調査官は真っ先に売上を調べます。

請求書だけではなく、見積書や注文書も調べる

調査官が調べる資料は、総勘定元帳、請求書、領収書(こちらが発行したもの)、注文書、見積書、売上が入金される通帳などです。税理士と契約している場合、請求書と総勘定元帳は税理士がチェックをしていることが多いと思います。調査官もそこはわかっていて、ある程度合っているという前提で見ています。

しかし、より取引の元となる資料を調べるために、調査官は請求書だけでなく注文書や見積書も調べます。税理士も、請求書はチェックしていても、注文書や見積書まではチェックしていない場合がありますので注意が必要です。

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注文書や見積書があるのに、請求書がないものがあれば、さらにくわしく調べます。もちろん、見積書を作成したものの受注につながらないこともあるでしょう。事実がそうであれば問題ありませんので、受注につながらなかった場合は、面倒でもその旨をわかるようにしておくといいでしょう。

見積書と請求書の金額が違う場合もきちんと説明しましょう。請求書を抜いて、現金でもらうか、別の通帳に入金してもらえばわからないだろう、などと考えるのは絶対にやめましょう。

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決算月と翌期の最初の月の売上は特に注意

調査官は、決算月と翌期の最初の月の売上を重点的に調べます。これは、当期の売上が翌期に計上されていないかを見るためです。

例えば、3月決算の会社で、3月に商品を引き渡した売上があるにもかかわらず、翌期の4月に売上が計上されていたとします。この場合は、3月の売上として修正が必要になります。これを、「期ずれ」と言って、特に注意が必要です。「当期の売上でも、翌期の売上でも、売上に計上されていれば問題ない」と思うかもしれませんが、そうはいきません。

税務調査では、3期分が調査対象となることが多いです。ここで、2期前の3月の売上が前期に計上されていた場合は、大きな問題にならないこともあります。2期前の利益が増えて、その分、前期の利益が減るので実際は相殺されているからです。

しかし、前期の3月の売上が計上されていなかった場合は、ほぼ修正が発生してしまいます。「今期に計上するからいいでしょう」とはならないのです。

売上をすべて計上するのはもちろん、計上する時期も大事だということを覚えておきましょう。特に、決算月の売上の計上もれには注意が必要です。

「仕入」も売上と同じように税務調査では注意が必要

仕入も売上と同じく金額が大きいので、調査官は重点的に調べます。仕入についてのポイントは、売上についてのポイントとほとんど変わりません。例えば、3月決算の会社で翌期の4月に納品された商品の仕入を、当期の3月に計上していれば修正が発生します。売上と同じく、「期ずれ」に注意です。

売上と仕入の対応に注意

当期に仕入れた商品がすべて当期の経費になるわけではありません。3月決算の会社で、3月に大量に仕入れをして「経費がいっぱい増えて良かった」とはならないのです。その商品を4月以降に販売するのであれば、棚卸資産として計上しなければなりませんので、当期の経費からは外れてしまうのです。

したがって、調査官は、3月、4月の請求書の明細まで確認します。3月の仕入の請求書の明細を見て、この商品に対応する売上の請求書を確認するのです。

3月に売上が計上されていれば問題ありませんが、4月の売上に計上されていれば修正が発生します。3月中に仕入れたもので、3月中に売り上げていれば当期の経費、4月に売り上げたのなら棚卸資産として計上して翌期以降の経費になります。

棚卸資産も重要

仕入と関係がありますが、棚卸資産も重要です。棚卸資産に計上された金額は、当期の経費からは除外されます。ということは、棚卸資産が過少になっていると、経費の過大計上になってしまいます。だから、調査官は棚卸資産の計上もれがないかを調べるのです。

注意点としては、3月に仕入れが計上されているものの商品がまだ自社に届いていない、あるいは取引先の倉庫に保管している場合などです。自社に商品がないと、棚卸資産の計上もれが起こりやすくなりますので注意しましょう。

売上の計上もれは、税務調査の一番基本的な部分になります。当たり前のことですが、売上がすべて計上されていることが大事です。翌期に計上されているというのは言い訳になりません。

次は、売上と仕入の対応です。特に決算月の売上と仕入の対応はよく確認しましょう。そして、在庫の計上もれにも注意しましょう。

税務調査によっては、ほとんど売上と売上原価しか調べないというようなときもあります。そのくらい、売上と売上原価には注意が必要なのです。

▶関連記事:「売上総利益を正しく把握するため、期末棚卸の仕入額と売上原価を見直そう

税務調査で注意すべき「人件費」のポイント

売上や売上原価と同様に、人件費も金額が大きくなる項目です。

調査官が調べる資料は、源泉徴収簿、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与明細、タイムカードなどです。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が全員分あるか、という点は特に注意しましょう。

複数の会社で働いている人で、他の会社に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人の分はなくても構いません。提出のない人については、源泉所得税を「乙」欄で徴収する必要があります。

役員報酬

役員報酬については色々な制限があり、金額を変更する時期や回数が決められています。

期首から3か月以内に1度変更したら原則として期末まで変更できない上に、毎月同額でなければなりません。調査官はこれらが守られているかどうかを調べるのです。

上半期が終わったところで、「今期は利益が出そうだから役員報酬を増額しよう」とか、「今期は赤字になりそうだから役員報酬を減額しよう」といったことは原則としてできません。また、役員に対する賞与は原則として経費にならないので注意しましょう。

報酬金額の変更は株主総会で決議する必要がありますので、株主総会の議事録をしっかり用意しなければなりません。

また、社長の配偶者に対する給与は、たとえ社長の配偶者が役員に登記されていない場合でも税務上の「みなし役員」とされる場合があり、この点も問題になりやすいので気をつけましょう。

▶関連記事:「役員報酬-決め方や損金算入・不算入等の法人税から見る注意点」

架空人件費はダメ

普通は架空人件費なんてないと思われるでしょう。

ところが、「扶養の範囲内で働きたい」「年収をいくら以下にしなければいけない」といった理由で従業員に頼まれ、実際はそれ以上の勤務をしているにもかかわらず、会社側がオーバー分を勤務実態のない人に給与を払ったことにして調整してあげていることがあるのです。

その方の代わりに働く従業員がいれば問題ないですが、小規模企業では簡単に人は見つかりませんので、その従業員の頼みを聞かざるを得ないのです。

しかし、これは脱税です。頼まれたからといって簡単に引き受けず、別の方法がないかを検討しましょう。

専従者給与のポイント

個人事業主の場合は、生計を一にする親族に支払う給与、特に配偶者に対する給与が問題になります。生計を一にする親族に給与を支払う場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」に専従者の名前や給与、賞与の額を書いて税務署に提出します。

専従者というくらいですから、原則として年間6か月以上(2分の1以上の期間)、個人事業主の営む事業で働いていなければならず、配偶者が普段は他社で働いているという場合は原則として給与は認められません。

また、給与の金額にも注意が必要で、届出書に記載した金額の範囲内であれば大丈夫というわけではなく、あくまで働いている内容に見合った金額であることが重要です。所得税率が高くなるから配偶者と所得を分散したほうがいい、と簡単に考えるのは禁物です。

税務調査で注意すべき「外注費」のポイント

外注費は、内容によっては架空ではないかと疑われやすいため、その内容はもちろん、対応する売上をきちんと説明できるようにしましょう。売上が翌期になる場合、当期の処理は未成工事支出金や仕掛品などの資産に計上され、翌期以降の費用になります。

「売上」「仕入」と同様に、調査官はここでも「期ずれ」を重点的に調べます。つまり、税務調査においては、売上、仕入、外注費などを計上する「時期」が重要なポイントと言えるでしょう。

個人に対する外注費は特に注意

会社側は外注費として処理していたのに、その実態は人件費であるとみなされることがあります。個人に対する外注費は特に注意が必要で、建設業などの業種に多く、最近では、美容室やリラクゼーション業などでも個人外注費を計上することが多くなっています。

会社側としては、個人外注費として取り扱いたい理由があるのです。その要因は、「個人外注費」と「人件費」では、消費税・源泉所得税の取扱いが全く異なるからです。

「個人外注費」は、消費税の課税仕入取引になる上に、所得税を源泉徴収する必要はありません。一方、「人件費」の場合は、消費税の不課税取引になり、所得税を源泉徴収しなければなりません。

この違いだけで、税額にかなりの差が生じます。もし、実態は人件費にもかかわらず個人外注費として処理したことが判明すれば、追徴額は大変なことになりますので注意しましょう。また、税務調査とは直接関係ありませんが、社会保険の取扱いも違ってきますので気を付けてください。

「外注費」とするか「人件費」とするかは会社が勝手に判断できるものではありません。あくまでも契約や実態を総合的に見て判断しなければならないのです。

取引相手とも意思の疎通が必要です。こちらが外注費だと思っていても先方は給与だと思っていた、ということもありますので気をつけましょう。

税務調査で指摘されやすいポイント・税務調査の注意点のまとめ

「売上」「売上原価」「人件費」「外注費」の4つは必ずと言っていいほど調査官が調べる項目ですので、しっかりポイントを押さえておきましょう。

税務調査について解説しましたが、基本的には税務調査が来るとわかってからできることは限られています。普段から、いつ税務調査が来ても大丈夫というような処理を心がけ、心配なことがあればまずは税理士に相談してみることをお勧めします。

▶関連記事:「見直し迫られる内部統制(後編)~内部統制のすべては“見える化”からはじまる」

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります。

著者プロフィール

渡邉 朝生

1972年生まれ。明治大学経営学部経営学科卒業。
税理士、渡邉ともお税理士事務所 所長。

渡邉ともお税理士事務所ホームページ
http://watanabe-zeimu.com/hp/

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