税務調査で調査官に指摘されやすいポイントA
―人件費・外注費―

2017年6月9日 渡邉 朝生

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前回のコラムでは、税務調査の際に最も指摘されやすい項目である、「売上」「売上原価」について解説しました。今回は、同様に指摘されることが多い「人件費」「外注費」についてです。

「人件費」のポイント

売上や売上原価と同様に、人件費も金額が大きくなる項目です。

調査官が調べる資料は、源泉徴収簿、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与明細、タイムカードなどです。給与所得者の扶養控除等(異動)申告書が全員分あるか、という点は特に注意しましょう。

複数の会社で働いている人で、他の会社に給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出している人の分はなくても構いません。提出のない人については、源泉所得税を「乙」欄で徴収する必要があります。

・役員報酬役員報酬については色々な制限があり、金額を変更する時期や回数が決められています。

期首から3か月以内に1度変更したら原則として期末まで変更できない上に、毎月同額でなければなりません。調査官はこれらが守られているかどうかを調べるのです。

上半期が終わったところで、「今期は利益が出そうだから役員報酬を増額しよう」とか、「今期は赤字になりそうだから役員報酬を減額しよう」といったことは原則としてできません。また、役員に対する賞与は原則として経費にならないので注意しましょう。

報酬金額の変更は株主総会で決議する必要がありますので、株主総会の議事録をしっかり用意しなければなりません。

また、社長の配偶者に対する給与は、たとえ社長の配偶者が役員に登記されていない場合でも税務上の「みなし役員」とされる場合があり、この点も問題になりやすいので気をつけましょう。

・架空人件費はダメ普通は架空人件費なんてないと思われるでしょう。

ところが、「扶養の範囲内で働きたい」「年収をいくら以下にしなければいけない」といった理由で従業員に頼まれ、実際はそれ以上の勤務をしているにもかかわらず、会社側がオーバー分を勤務実態のない人に給与を払ったことにして調整してあげていることがあるのです。

その方の代わりに働く従業員がいれば問題ないですが、小規模企業では簡単に人は見つかりませんので、その従業員の頼みを聞かざるを得ないのです。

しかし、これは脱税です。頼まれたからといって簡単に引き受けず、別の方法がないかを検討しましょう。

・専従者給与のポイント個人事業主の場合は、生計を一にする親族に支払う給与、特に配偶者に対する給与が問題になります。生計を一にする親族に給与を支払う場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」に専従者の名前や給与、賞与の額を書いて税務署に提出します。

専従者というくらいですから、原則として年間6か月以上(2分の1以上の期間)、個人事業主の営む事業で働いていなければならず、配偶者が普段は他社で働いているという場合は原則として給与は認められません。

また、給与の金額にも注意が必要で、届出書に記載した金額の範囲内であれば大丈夫というわけではなく、あくまで働いている内容に見合った金額であることが重要です。所得税率が高くなるから配偶者と所得を分散したほうがいい、と簡単に考えるのは禁物です。

「外注費」のポイント

外注費は、内容によっては架空ではないかと疑われやすいため、その内容はもちろん、対応する売上をきちんと説明できるようにしましょう。売上が翌期になる場合、当期の処理は未成工事支出金や仕掛品などの資産に計上され、翌期以降の費用になります。

前回のコラムで解説した「売上」「仕入」と同様に、調査官はここでも「期ずれ」を重点的に調べます。つまり、税務調査においては、売上、仕入、外注費などを計上する「時期」が重要なポイントと言えるでしょう。

・個人に対する外注費は特に注意会社側は外注費として処理していたのに、その実態は人件費であるとみなされることがあります。個人に対する外注費は特に注意が必要で、建設業などの業種に多く、最近では、美容室やリラクゼーション業などでも個人外注費を計上することが多くなっています。

会社側としては、個人外注費として取り扱いたい理由があるのです。その要因は、「個人外注費」と「人件費」では、消費税・源泉所得税の取扱いが全く異なるからです。

「個人外注費」は、消費税の課税仕入取引になる上に、所得税を源泉徴収する必要はありません。一方、「人件費」の場合は、消費税の不課税取引になり、所得税を源泉徴収しなければなりません。

この違いだけで、税額にかなりの差が生じます。もし、実態は人件費にもかかわらず個人外注費として処理したことが判明すれば、追徴額は大変なことになりますので注意しましょう。また、税務調査とは直接関係ありませんが、社会保険の取扱いも違ってきますので気を付けてください。

「外注費」とするか「人件費」とするかは会社が勝手に判断できるものではありません。あくまでも契約や実態を総合的に見て判断しなければならないのです。

取引相手とも意思の疎通が必要です。こちらが外注費だと思っていても先方は給与だと思っていた、ということもありますので気をつけましょう。

まとめ

今回のコラムでは、税務調査で指摘されやすいポイントとして、人件費と外注費について見てきました。

前回のコラムで解説した「売上」「売上原価」に続いて、この「人件費」「外注費」も必ずと言っていいほど調査官が調べる項目ですので、しっかりポイントを押さえておきましょう。

本コラムで2回にわたり税務調査について解説しましたが、基本的には税務調査が来るとわかってからできることは限られています。普段から、いつ税務調査が来ても大丈夫というような処理を心がけ、心配なことがあればまずは税理士に相談してみることをお勧めします。

著者プロフィール

渡邉 朝生

1972年生まれ。明治大学経営学部経営学科卒業。
税理士、渡邉ともお税理士事務所 所長。

渡邉ともお税理士事務所ホームページ
http://watanabe-zeimu.com/hp/

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