1922年の設立から現在まで、1世紀近い歴史を持つ五十嵐冷蔵様。首都圏に10の物流センターを持ち、国内外から仕入れた様々な農水産物の保管、加工、配送を手がけています。「五冷(ゴレイ)」の自社ブランド商品を多数展開する中で、食の安全対策をどのように取り組んでいるか伺いました。
ココがPOINT!
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1
規格書情報の一元化で、ファイルの新旧比較が不要に
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2
規格書の更新情報はリアルタイムに取引先へ反映
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3
法改正によるアレルゲンの追加管理も、システム改修で対応
自社ブランド800アイテムを日本全国に安定供給
沿革と現在の事業内容を教えてください

取締役 食品部長 (以下、食品部長):
1922(大正11)年、初代社長が北海道千島列島の島に港を造り、タラの粕漬けの製造販売をしたのが始まりです。時代とともに日本の食生活が西洋化していくことで輸入品が増えるのを見込み、1929(昭和4)年、現住所(東京都の芝浦)に冷蔵倉庫を作って輸入業を開始しました。現在は主に冷蔵倉庫、食品販売、運送の3つの事業を展開しています。

食品部 品質管理チーム 副主任(以下、品質管理チーム 副主任):
主な取扱商品は、冷凍のフライドポテト、ブロッコリー、インゲン、ホウレン草など農産物約300品、冷凍ホタテやアサリなど水産物約500品です。
国産もありますし、輸入品では中国や台湾、タイ、ベトナム、インドなどから商社を通さず現地メーカーと直接取引しています。こういった農水産物や冷凍食品の品質を維持し、「五冷ブランド」として取り扱っています。
国内外問わず商品を仕入れられていますが、食の安全対策はどのように取り組まれていますか?
食品部長:
弊社の顧客は、ファストフード店や食品メーカー、業務用の問屋さん、量販店さんなど業種も規模も様々ですが、食の安全への意識が高まっているのは共通です。このため、商品規格書の情報をしっかり整備しておくことで、取引先も2度、3度と質問することなく取引を進められます。
こういった商品情報の用意はもちろん、安定した配送サービス、クレームをいただいた時の迅速な対応などのアフターフォローをしっかりすることで、関係性を築くことが重要と考えます。
取引規格書管理の効率化のため品質管理チームを設置。さらなるブランド強化へ
商品規格書はどのように作成されているのでしょう?

食品部長:
現在は品質管理チームが国内外の現地メーカーから情報を集めて、すべての規格書を作成しています。4年前までは営業担当者が各自で自社フォーマ ットの規格書を作成していましたが、たいへん非効率だったので体制を変更したのです。
品質管理チーム 副主任:
以前は、お取引先から規格書の提出依頼を受けた営業担当者が、帰社後に作成してメールやファックスで提出していました。これでは商品情報の更新やファイル共有など手間がかかります。社内ネットワークでエクセルファイルを共有してはみたのですが、営業各自が類似の規格書を作成するなどして、ファイルの新旧がわからないという問題が出ていました。そこで検討の末、もともと利用していた規格書の管理システム『BtoBプラットフォーム規格書』の『自社管理機能』を使って、情報をまとめることにしたのです。
規格書情報の一元化で、高品質なサービスを提供
規格書の管理をシステム化して、実際に効率化されましたか?

食品部長:
データ更新の履歴も見られますし、情報変更できるユーザーを限定する設定もあるので、情報管理も容易になります。製造工程などで少々の変更があ った場合も、該当する商品規格書には漏れなく最新の情報を反映できるようになりました。また、法令改正で管理するアレルゲンなどが増えた際も、システムが改修されて新たなアレルゲンの管理ができるよう対応してくるので助かります。
品質管理チーム 副主任:
規格書提出の対応業務も明らかに減 ったと感じます。インターネット上に商品情報を掲載する『食品情報DB』では、情報を紐付けて掲載できるので、取引先も別途要求しなくて済むのです。また、こちらでシステム上の規格書情報を更新すればリアルタイムにお取引先の情報も自動更新されるので、更新のタイムラグがありません。
食品部長:
システムに登録している商品情報はプリントアウトも容易にできるので、営業ツールとしても活用できます。弊社では、取引先の卸企業が主催する展示会にひと月に1度ほど参加しており、会場では商品の資料が必要になります。取り扱っている水産品では種類が多くサイズも変わってきますので、必要な商品を選定してカタログにまとめられる機能は助かるのです。システムには最新の規格書情報を登録しているので、改めて正誤チェックをする必要もありません。
食の安心を考え直し、食材本来のおいしさを取り戻したい
海外から商品を輸入する際に、今後解決すべき課題はありますか?
品質管理チーム 副主任:
ひとつは、現地での従業員教育があります。弊社は新規に仕入れをする際には、必ず現地工場を視察しています。そこでは施設のチェックもしますが、やはり働く従業員の方々の意識が大切です。現地スタッフを教育していくのは時間がかかりますが、しっかり取り組んでいかなければなりません。

食品部長:
あとは、日本の食の安心意識にも不安を感じます。海外からの仕入れの現場で、日本ほど細かいことをいう国はあまりありません。例えば、異物をなくすためにホウレン草を強く洗って、味も栄養素も失った状態で売られているものを見ます。
こういった食の本質とは異なる部分で「安心」を突き詰めると、そのうち海外から何も輸入できなくなるのではと思います。日本は今までバイイングパワーがあったため、海外の産地も取引に応じてくれていました。しかし、だんだんと購入量は頭打ちになってきており、取引の見直しを考える海外企業も出ています。我々は食品業界の一員として、日本の食生活の安定を第一にしていますが、日本の「食の安心」は軌道修正してもらえればと思います。やはり、おいしいものをお届けすることが喜びになりますから。
※掲載内容は取材当時のものです。