創業100周年を迎えた老舗企業、株式会社ヤマタネ様。廻米問屋をルーツに、米の卸売販売や倉庫業を中心とした総合物流サービスで業界を牽引しています。部門ごとに異なるシステムで発行していた年間9万通の請求書をインボイス制度に対応させるため、請求書のデジタル化に取り組みました。請求書の発行も受取も効率化が進み、DXの芽はグループ会社へも根を広げています。
ココがPOINT!
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支店からの拠点をまたぐ承認フローもリードタイム短縮
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AI-OCRとの併用で、押印や支払依頼書も不要に
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グループ会社でのフォーマット統一も視野に
年間9万通発行する請求書のインボイス対応で改革が急務に
2024年7月に創業100周年を迎えられたと伺いました。

デジタル戦略企画室長
デジタル推進本部 デジタル戦略企画室長(以下、戦略企画室長):
株式会社ヤマタネの歴史は、大正時代の1924年7月、江東区佐賀町で創業者山﨑種二がはじめた廻米問屋に遡ります。米の卸売を起点に事業を展開し、現在はヤマタネグループとして、倉庫業を中心とする総合物流サービスを提供する物流事業、日本の食を支える食品事業、多彩なITソリューションによる技術支援及びソフトウェアの開発・構築・運用・保守サービスを行う情報事業、主にオフィスビル賃貸などを行う不動産事業という4事業を展開しています。
物流本部は関東支店、関西支店の2支店があり、約20カ所の倉庫などの営業拠点があります。また、食品本部では千葉県印西市に精米センターがあり、規模としては国内最大級です。全国の米の産地から仕入れた米を精米して、スーパーマーケットなどに卸しています。
私の所属しているデジタル推進本部は、2023年4月に新設された部署です。デジタル戦略企画室ではヤマタネグループ全体のIT、DXの推進と、ガバナンスや情報セキュリティ全般の管理・運用を担っています。
『BtoBプラットフォーム 請求書』および『BP Storage for 請求書』の導入による請求書業務のデジタル化は、デジタル推進本部の前身にあたる部署から取り組んできました。本格的な運用にあたり、実際のシステム連携の改修などはデジタル推進部が担っています。

デジタル推進本部 デジタル推進部 BPR 推進2課 担当者(以下、BPR 推進担当):
私はデジタル推進部のBPR推進2課に所属しています。ヤマタネでは現在、物流システムの刷新に動いており、BPR推進2課はそのプロジェクトをメインにしながら、『BtoBプラットフォーム 請求書』などその他システムの運用、保守を行っている部署です。
大きく4事業展開をされていると、請求書業務も大変そうですね。

管理本部 経理部 主任(以下、経理主任):
経理部では主に管理部門が受け取った請求書を処理しています。各事業部の経理業務は、それぞれ部門に属している総務が担当しています。
たとえば食品部門なら、お米の仕入れ先であるJA(農業協働組合)や生産者の方々、さらに、産地から工場に取り寄せるための運送会社さん、そこに関わる資材やフォークリフトの利用料、システム利用料などの多岐にわたる請求書を受け取っています。物流事業だと運送会社が多いですよね。
物流本部 関東支店総務課 担当者(以下、総務担当):
はい。物流本部関東支店総務課では、東日本に15カ所程ある倉庫などの各営業拠点から届く請求書の処理を行っています。その量は月に段ボール4箱ほどのボリュームです。毎日社内便が朝から各拠点を回って、回収された書類は夕方総務課に届きます。月末締めのお取引先様が多いので、各営業拠点からは、まとめて月初の第3営業日ぐらいまでに届き、そこから処理を行います。
遠隔地の営業拠点もあり、拠点をまたぐ承認などは非常に時間がかかってしまいます。そのため通常は承認を経て会計システムへ計上処理を行うところ、先に計上した上で押印リレーを行っていました。承認を経て戻ってくるまで長いと1カ月ほどかかり、その間の紛失リスクも懸念していました。
経理主任:
グループ全体では毎月約2,400社から請求書を受け取っています。同じお取引先様でも営業拠点ごとに請求書が届くため、通数は膨れ上がっていました。また、受け取った請求書は、部門ごとに業務システムへの入力、会計システムへの入力、業務システムから会計システムへ連携するためのエクセルシートへの入力等、同じデータの多重入力が発生していました。
私の場合、管理本部の他に、グループ会社と不動産関係の部署など4部門に分かれた会計を処理しており、1枚受け取ると費用配賦する業務で4回の仕訳計上が必要です。
『BtoBプラットフォーム 請求書』の導入は、それら課題解消のためですか?
戦略企画室長:
大きな理由ではありますが、潜在的には、もうかなり以前から部門を超えた横断的な業務改革が必要だと思っていました。といいますのも、請求書の発行に関しても、各部署で利用しているシステムが違うため、方法がバラバラだったのです。
事業部門ごとに複数の業務システムがあり、システムによって請求書の発行までできるものもあれば、発行する機能はなくエクセルやアクセスで作成するものも。承認フローも部門ごとに異なっており、統一が難しい状況の中、2023年10月から始まったインボイス制度を機に、請求書フォーマットの統一と承認フローのデジタル化に取り組みました。事前に、従来発行している請求書がインボイス要件に適合するか否か確認するため洗い出しを行いましたが、大変な作業でした。
経理主任:
請求書のフォーマットがまったく統一されていないため、明細があったりなかったり、バラバラで多種多様でした。中には見たことない書式の請求書や手書きの請求書もありました。
戦略企画室長:
ヒアリングしてみると全体で月間約7,500通、年間90,000通の請求書を各業務システムや部署によってバラバラの形式で発行している状況でした。インボイス制度への対応は、電子請求書サービスを導入し、業務改革する大きなきっかけになりました。
電子請求書サービスで、『BtoBプラットフォーム 請求書』を選ばれた決め手はありますか?
戦略企画室長:
法制度への対応が大きな目的でしたので、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を標準機能で満たしているのが大前提でした。発行だけでなく、受け取る請求書についてもインボイス要件を満たしているか、なるべく少ない工数でチェックできるものを、5社ほど比較して選定を行いました。
『BtoBプラットフォーム 請求書』は、契約母体に縛られず請求書の発行元を変更できるなど自由度が高く、価格面にも優位性がありました。また、既に請求書の受取に『BtoBプラットフォーム 請求書』を利用しているお取引先様が多く、社内で導入前からある程度認知されていたのも理由のひとつです。導入までの検討自体は2、3カ月で完了しました。
BPR 推進担当:
サポート体制も安心感がありました。受取側については、会計システムへ連携するプログラムを作っていただいて、それが確実に連携できるか検証まで支援していただいたので、割とスムーズに導入できた印象です。
発行も受取も、スムーズな承認フローに。コスト削減効果は年間約540万円
現在の活用状況を教えてください。導入による効果はありましたか?
戦略企画室長:
『BtoBプラットフォーム 請求書』で発行している請求書は月に約1,000通、全体の16%ほどです。請求書の30%あまりは外貨を扱う国際部門の発行が占めているためで、割合でいえば少なく見えるかもしれません。ただ、月1,000通あまりの請求書については、発行に必要な承認をワークフローで回せるようになりました。
先ほどの話にもありましたように遠隔地に多数の営業所があり、営業所内で完結しない部署をまたぐような承認は本社に送られてきます。物理的な距離で押印にリードタイムが発生していましたが、それをシステム内で完結できるためかなり時間短縮になっています。紛失のリスクもなく、郵送コストも減らすことができました。あくまで理論値で実測値ではございませんが、年間約540万円のコスト削減効果を見込めています。
請求書の受取についての効果はいかがでしょうか。
総務担当:
受取側の承認もワークフローで回せるようになってとても楽になりました。現在、物流部門の請求書のおよそ半分が『BtoBプラットフォーム 請求書』での受取です。以前わりとあった、押印漏れを社内便で送り返して再度送ってもらう、といった手間も減りましたし、社内便で届くのを待たなくてよいのは助かっています。
経理主任:
経理部で処理する請求書についてはすべて、受け取った部署の担当者に、取引内容や支払期限などを記載した支払依頼書を作成してもらっていました。今は『BtoBプラットフォーム 請求書』で受け取っている請求書に関しては押印も支払依頼書も不要になっています。
戦略企画室長:
請求書の電子化について緊急性が高いのは発行側でしたが、効率化でいえば受取側の方が導入効果を上げています。コストでいえば請求書受取業務に関して22%の削減、業務時間も27%の削減が見込めています。今後、デジタル化が進めば時間もコストもさらに減っていくでしょう。
AI-OCRで紙の請求書を読み込む『BP Storage for 請求書』も導入されました。

経理主任:
稼働をはじめたばかりですが、社内向けに1回説明すれば積極的に取り組んでもらえてシステムでの承認が増えてきました。アップロードした担当者本人のアカウントに紐づいてワークフローが回ります。「今まで必要だったハンコは、これなら不要です」と案内すると、やはり押印が手間だと感じていた人ほど『BP Storage for 請求書』で早く回してくれるようになりました。
グループ会社への広がりも期待。物流業界の課題解決の一助に
今後の展望をお聞かせください。
戦略企画室長:
『BtoBプラットフォーム 請求書』と『BP Storage for 請求書』で、受取請求書の承認は今後、外貨を扱う国際部門を除いた8割~9割はワークフローに集約できると考えています。電子請求書への移行は段階を踏んで行っており、現在はフェーズ2です。手入力が不要になるよう、各部門のシステム連携を進めていきます。
現在ほとんどのグループ会社で『BtoBプラットフォーム 請求書』を導入しており、グループ各社ごとのフォーマットの統一やグループ間での業務効率化を目指しています。たとえば、運送を担う株式会社ヤマタネロジスティクスも導入を進めているグループ会社のひとつです。特に運送業については業界特性上、請求書の電子化が進みづらい業界ですが、粘り強く電子化を推進することで、2024年問題ではあまり焦点に当たらない、運送業者のバックオフィスに係る業務時間の削減についても貢献していきます。
※掲載内容は取材当時のものです。