トヨタグループ唯一の素材メーカー、愛知製鋼株式会社様。グループをはじめ自動車産業にさまざまな素材を提供し、長年クルマの進化に貢献してきました。経理部経理室では、インボイス制度への対応を機に長年運用していた自社開発のシステムを見直し、社外サービスのパッケージを利用した業務の標準化へ動きはじめました。経理DXの手始めに、電子請求書の導入は充分な成果をあげています。
ココがPOINT !
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1
請求書発行にかかっていた年間720時間を実質ゼロに
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2
9割の請求書をデジタルで発行し、取引先へ即日届く
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支払通知書の発行もデジタル化し業務効率化を実現
法令対応を機に、非効率だった請求書発行業務を見直し
事業概要を教えてください。

経理部 経理室 財務チーム長(以下、 財務チーム長)
愛知製鋼株式会社はトヨタグループ唯一の素材メーカーです。特殊鋼をはじめとする高品質な素材や、「鍛造品(たんぞうひん)」と呼ばれる自動車部品等の製造・販売をグローバルに展開しています。1934年に株式会社豊田自動織機製作所(現 株式会社豊田自動織機)内に設置された製鋼部門が、1940年に豊田製鋼株式会社として分離独立し、のちに社名を愛知製鋼に改称しました。
2017年より製品を軸にした社内カンパニー制を導入しました。「鋼(はがね:特殊鋼条鋼)」「ステンレス(ステンレス鋼)」「鍛(きたえる:鍛造品)」「スマート(電子機能材料・部品および磁石応用製品)」という4つのカンパニーで、自動車産業はもとより、産業機械・IT・エレクトロニクス・医療・農業に至るまで、暮らしの中で利用される多くの製品に向けた様々な素材を世界に供給しています。
所属されている経理部経理室の業務について教えてください。
財務チーム長:
経理部経理室は、主計、固定資産、財務の3チームに分かれています。私経理部 経理室 財務チーム長の所属している財務チームは、資金調達や債券・債務の管理、IRなどが業務の中心です。請求書に関していえば、売掛金の担当もいますが、請求書そのものは各営業部署が直接発行しています。

経理部 経理室 主計チーム 担当者(以下、主計チーム担当)
主計チームは経費精算をはじめ会計に関する経理業務を主に担っています。私は税務申告や確定申告等の担当がメインで、これまで請求書業務に直接関わってはいませんでした。ただ、インボイス制度をはじめとする税制改正に関連して、従来の請求書フォーマットは法令要件を満たした形に見直す必要が出てきました。また、請求書の発行業務自体、非効率な状態だとも聞いており、法令対応を機に電子請求書の導入を検討するようになりました。
従来の請求書発行業務には、どのような課題があったのでしょうか。
主計チーム担当:
請求書は、さまざまなお客様に対して毎月約400通を発行しています。毎月第3営業日に売上が確定すると、社内の専用プリンタで請求書を印刷するプログラムが組まれていました。印刷後は、請求書を管理する営業企画部に、段ボール数箱分のボリュームでまとめて届きます。印刷された請求書は束になってつながっていて、それを担当支店ごとにミシン目で切り離し、各支店に送ります。各支店ではさらに営業担当者がお客様ごとに請求書を切り離して封入し、郵送する流れでした。本社から支店に届くまで時間がかかり、お客様の手元に届くのはさらに遅くなってしまうこともあったと思います。
コロナ禍を機に、営業側から「在宅勤務で出社できないため請求書を紙ではなくPDFで送りたい」という声も出ていました。受け取るお客様側がテレワークをしているケースもあります。従来の請求書をそのままPDF化する案はありましたが、請求書のフォーマットがA4やB5などの規格サイズではない独自の形状で、スキャンしづらいという意見も多かったです。
いつから電子請求書の導入を検討しはじめましたか?
主計チーム担当:
2021年の秋からです。最初から電子化を考えていたわけでなく、当初は紙の請求書のフォーマットをインボイスの要件にあわせ、登録番号や税区分、税率の記載方法や計算方法をどう対応させるか検討していました。ただ、請求書を作成する社内システムがかなり古く、プログラムの改修を見積もると、1,000万円単位のコストがかかるとの試算でした。法改正やアップデートのたびに改修は必要となり、現実的ではありません。そこでシステム改修以外でインボイスに対応する選択肢はないか、と電子化を考えはじめました。
PDFをメールで添付する形式の電子化は、改正電子帳簿保存法(電帳法)への対応がネックになりました。添付書類の何を原本とするのか、どこにどう保存するのか、そもそも添付漏れや添付先を間違えるといったリスクもあります。次第に、データそのものをやりとりするデータtoデータ形式を検討するようになりました。
財務チーム長:
愛知製鋼では全社的にDXを推し進めています。中でも経理部門は、独自に「経理DX」と銘打って業務デジタル化を進めているところです。弊社は自社で構築、改修やカスタムを重ねてきた独自システムが多く、経理関係のシステムは、内製では維持管理できないレベルに老朽化していました。製造などの事業の根幹に関わる特殊なシステムは別として、パッケージを利用した標準化が可能な請求書業務などは、これを機に社外サービスに目を向けようという流れになっています。
『BtoBプラットフォーム 請求書』を選んだ理由を教えてください。
主計チーム担当:
電子請求書サービスを提供している数社をピックアップして比較しました。『BtoBプラットフォーム 請求書』は導入企業も多く、受取側の保存に関する機能が充実している点、コスト面などに優位性を感じました。電子請求書サービスによっては、発行側は電帳法に対応していても、受取側は別途、請求書をダウンロードして保存処理が必要な場合があります。発行と受取、どちらの請求書もデジタル化できる『BtoBプラットフォーム 請求書』は、受取側のお客様もそのまま保存が可能で、インボイス制度や電帳法にも対応しており、機能が整っている印象がありました。
実際に導入を決定し、お客様に対して『BtoBプラットフォーム 請求書』に切り替えるための説明会を実施しましたが、すでに他の会社から招待を受けて利用しているというお客様が何社もありました。多くの企業で導入されているんだなと、改めて感じました。
導入にあたって苦労したことや工夫した点はありますか?
主計チーム担当:
『BtoBプラットフォーム 請求書』をすでにお使いのお客様がいる一方で、紙の請求書を長年使い慣れているお客様もいらっしゃいます。操作方法などで不明点があれば弊社の営業担当に質問が届きますが、営業担当はシステムを熟知できているわけではなく、問い合わせがまわってくることがありました。そのような時は、私たちも運用前でわからない部分も多く、戸惑う場面がありました。
ただ選択肢として、事前の説明会を実施せず招待するのと、入念な説明会や事前案内を行ってから招待するのとでは、やはり後者のほうが導入はスムーズでした。最初の登録の段階で混乱はあったにせよ、そこがクリアできれば、あとはお客様の方では届く請求書を確認するだけになります。営業部門と経理部門が協力しながら導入を進めたことで、当初から高いデジタル化率を実現できたと思います。招待を送るメールアドレスも、営業担当からどなた様宛が良いか確認してもらいました。あらかじめ確認をとったメールアドレスを『BtoBプラットフォーム 請求書』に登録してご案内メールをお送りできたので、受取担当ではない方に送って見過ごされてしまうといった確率を減らすことができました。
取引先の9割にデジタルで発行。支払通知書への展開も
現在の活用状況を教えてください。
主計チーム担当:
現在は、9割超のお客様に『BtoBプラットフォーム 請求書』で請求書を電子発行しています。オプションの郵送代行サービスも利用していますが、諸事情でどうしても紙の請求書が必要といったケースで、月に数件程度です。
毎月第3営業日の朝にデータを生成し、FTPSで『BtoBプラットフォーム 請求書』に連携するプログラムを組んでいます。データを取り込んだら自動発行されるため、これまでのような請求書の切り離し、封入、郵送といった、営業企画部や各営業担当が発送にかけていた時間は実質ゼロになりました。月あたり60時間、年間720時間もの作業時間を削減でき、コストも月あたり10万円ほど、年間で約120万円を削減できた計算になります。
また、お客様も請求書が即日届くため、余裕をもって請求書処理業務にあたっていただけるようになっているのではと思います。
『BtoBプラットフォーム 請求書』受取側の、「通知書機能」もご利用ですね。

経理部 経理室 財務チーム 担当者(以下、財務チーム担当):
はい、主に仕入れ関連の約600社を対象に、従来はハガキで支払通知書を発行していました。仕入れ先とは発注の段階から仕入システムでつながっており、納品、検収を経て請求書の発行・受取もそのシステム上で行っています。それとは別に、支払額の確定後、決済方法や金種の内容や支払期日などをお知らせするために送っていたのが支払通知書で、複合機にハガキを手差しして印刷していました。印刷後は、情報保護シールを1枚ずつ貼っていく作業があり、明細を希望される仕入れ先様には、明細とハガキを封筒に入れてお送りしていました。支払通知書の作成から郵送まで、2時間近くかかるこの業務が、月2回発生していました。

財務チーム長:
手間がかかるので、数年前にシステム化できないか開発を検討しましたが、費用対効果が合わないと実現には至りませんでした。経理DXの中で、効率化できないか考えていたところ、『BtoBプラットフォーム 請求書』に通知書機能があると聞きました。それならもう導入コストはかからないし、比較的スムーズに導入できそうです。ちょうど郵便料金が値上げすると発表されたのも後押しになり、2024年5月から運用しています。
財務チーム担当:
現在、取引がある会社を優先に登録を進めており、取引全体の約7割ほどが登録済です。登録した仕入れ先に関してはすべて『BtoBプラットフォーム 請求書』で支払通知書をお送りしています。これまで2時間かかっていた作業時間は30分程度に短縮しました。約50万円かかっていた年間コストも18万円程度と、約32万円の削減効果です。業務時間も、単純計算で年間72時間から12時間になり削減率でいえば80%超と、作業的にも楽になりました。
旧システムの見直しで進む経理DX、若手人材のキャリアアップにもつなげたい
今後の展望をお聞かせください。
財務チーム長:
会社としてもシステムは長年スクラッチ開発が主流で、パッケージ化に動き出したのは最近です。自社でシステムを構築すると、バージョンアップのたびに莫大な費用と工数がかかるため、今後は可能な部分についてはパッケージ化すべきと他部門とも方針が並んできました。経理業務などは業務にツールを合わせるのでなく、ツールに合わせ業務フローを変える必要があります。
古いシステムの運用をエクセルなどの人海戦術でしのぐやり方は、やはり仕事として問題があります。特に有望な若い人材のキャリアアップにつながりません。この環境を変えるべく、経理部門全体のシステムを見直す動きが進んでいます。『BtoBプラットフォーム 請求書』導入の手ごたえを感じながら、今後も管理会計や予算管理、債権・債務といった全てについて経理DXを進めていく計画です。
※掲載内容は取材当時のものです。