トラックドライバーの時間外労働規制が本格適用された「物流の2024年問題」から1年。表面的な混乱は避けられたものの、食品流通の現場では、いまなお人手不足や積載率の低さといった課題が山積している。特に中小の食品卸や仲卸にとっては、これまでのやり方が通用しづらくなる中、日々の業務をどう維持し、改善していくかが問われている。
飲食料品などの流通合理化を推進する公益財団法人 食品等流通合理化促進機構(以下、食流機構)の佐南谷(さなたに)専務理事に、今できる実務的な対策や制度の動きを伺い、食品流通の持続可能性を探った。
目次
- 1. 「混乱はなかった」では済まされない、2024年問題
- 2. 大手メーカー・小売ではすでに始まっている 共同配送という現実解
- 3. 小規模店への「ラストワンマイル物流」でもできる対策を積み上げる
- 4. 競争と協業をどう両立させるか
「混乱はなかった」では済まされない、2024年問題
トラックドライバーの時間外労働規制が本格適用された2024年問題。大きな混乱は見られなかったが、今年以降は問題が本格化すると見られている。
「確かに去年は持ちこたえた。しかし今年から本格実施の中で課題が表面化してくる可能性があります」と佐南谷氏は語る。特に象徴的なのが「積載率」の低さだ。日本のトラックの平均積載率は約4割とされ、多くが空荷に近い状態で走っている。背景には、多品種・少量・高頻度の納品や、突発的な注文によってリードタイムが確保できない現状がある。
「業界全体として積載効率を上げるには、受け手側の協力が不可欠です。リードタイムを少しでも確保していただければ、配送の組み立てに余裕が生まれます」
大手メーカー・小売ではすでに始まっている 共同配送という現実解
物流の効率化という点で、現場にとって最も改善の変化が見られるのは加工食品の領域だ。日持ちがしやすく、温度管理の難易度も比較的低いことから、複数の大手メーカーや小売による共同配送が実際に広がりつつある。同業他社と共通の納品先を持つ場合、トラックを別々に出すのではなく、配送だけを委託して1台にまとめるといった方法だ。仕入れや販売までは競合していても、物流面では連携可能な場面が少なくない。
「たとえば大手の飲料メーカーや冷凍食品メーカー同士が共同で輸送網を組み、配送の頻度を抑えつつ積載率を上げるといった取り組みが進んでいます。四社共同でビールを運ぶようなケースも、すでに典型的な事例として挙げられます」と佐南谷氏は話す。
加工食品は生鮮食品に比べて商品仕様やパッケージが統一しやすいことも、物流面での連携を後押ししている。製品のロットや賞味期限、温度帯が似通っていれば、共同配送の設計は格段に容易になる。
さらに、国も物流改革に本腰を入れはじめた。特に注目されるのが、トラックの待機時間や荷下ろしの効率化を促す制度や、設備導入を支援する補助事業だ。
「たとえば、当機構で国の補助を受けて導入を支援している荷下ろし用のパレットやカゴ台車、フォークリフト、クランプフォークなどを活用すれば、荷待ち時間が3~4時間から30分に短縮された例もあります」と佐南谷氏。中長距離輸送が主な対象ではあるものの、こうした取り組みは中小の卸売現場にも少しずつ波及しつつある。
こうした共同配送の背景には、2024年問題に対応するだけでなく、物流コストの高騰やドライバー不足といった構造的な課題がある。個社単位で配送を担うことの限界が、徐々に共有され始めているのだ。
「すべての加工食品に適用できるわけではありませんが、親近性のある商品群で手を組む動きは、今後さらに加速すると思います。競争相手であっても、物流面では協力する時代です」
小規模店への「ラストワンマイル物流」でもできる対策を積み上げる
一方、大手ではない小規模な小売店、飲食店へのいわゆる「ラストワンマイル物流」では、共同配送が難しいのが実情だ。点在する小規模店への納品は「少量多頻度」が基本であり、加えて温度帯やにおい移り、店舗ごとに異なる納品時間といった制約が多く、他社との混載がそもそも成立しにくい。
「たとえば玉ねぎやじゃがいもといった比較的日持ちする品目を産地から消費地に共同配送することは可能なケースもあります。しかし、多くの小規模な小売店、飲食店舗へのラストワンマイル物流では、依然として現場単位の個別配送が必要になります」
そのうえで、卸や小規模な店舗が「いまできること」に注目して、業務の効率化を進めていくことが重要だという。注文から納品までの時間、つまりリードタイムを適切に確保することで、配送ルートや積載計画に余裕が生まれる。
「『明日持ってきて』という電話1本で現場が動く商習慣は、見直す必要があります。お互いにゆとりある運用ができるよう、少しずつ変えていく努力が欠かせません」
電話やFAXでの注文は、ミスも起きやすくリードタイムの担保も困難で、受け手の負担が大きい。この解決には受発注業務のデジタル化システムや、商品コードの自動変換システムの導入も注目されている。
「標準商品コードの導入や、取引先ごとの商品コードを自動変換できるようになれば、作業の正確性とスピードが大きく改善されます」
目の前の課題を一気に解決する特効薬はない。それでも、現場が積み重ねてきた細かな改善が、物流全体の底上げにつながっていく。
「デジタル化は苦手だという声もありますが、誰もが取り組みやすい共通の仕組みを整えることが、私たちの役割でもあると思っています」と佐南谷氏は語る。
競争と協業をどう両立させるか
物流の2024年問題が突きつけたのは、「これまで通り」では持続できないという現実だった。とりわけ、物流を自社の競争力と捉える事業者にとっては、「どこまでを共有できるか」「どこは独自性として守るか」という見極めが、今後ますます問われていく。
「物流は企業秘密とされてきました。しかし今は、すべてをオープンにする必要はないけれど、協力できる部分は積極的に協力するという視点が求められています」と佐南谷氏は話す。
「価格転嫁の話でも、まず『どこにどれだけのコストがかかっているか』という情報を共有できる関係がなければ、議論も始まりません。情報を出す側、受け取る側双方の協業力が、これからのカギになるでしょう」
制度や設備の整備と並行して、現場の信頼関係や交渉力も問われる時代になっている。自社の負担をどう減らすかに加えて、全体最適の視点で動けるかどうかが、これからの物流や業界の未来を左右していくことだろう。
公益財団法人 食品等流通合理化促進機構
所在地:東京都千代田区岩本町3-4-5 第1東ビル6階
公式ホームページ:https://www.ofsi.or.jp/
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