飲食店の経営データ管理はエクセル?システム導入?売上日報などでメリットを検証

2020/11/27 飲食店の経営データ管理はエクセル?システム導入?売上日報などでメリットを検証
飲食店の経営に欠かせない、日々の売上や経費、在庫などのデータ管理。新型コロナウイルスの影響で市場環境が変わりやすい今は、特にデータに基づいたスピーディーな経営判断が必要だ。エクセル表にまとめたり売上管理システムを導入したりと、店舗によってデータの管理方法は様々だろう。

一方で、データの分析ではなく収集や入力に多大な時間や労力、費用をかけていては本末転倒になりかねない。今回は、飲食店が売上日報や経営データを管理する際の、適切なツールの選び方を解説する。

飲食店の売上日報や経営データの管理方法

飲食店経営には日々の売上以外にも様々な数値の集計・管理が求められる。単純な出納記録でも、食材原価、人件費、家賃、光熱費や雑費といった経費の集計には意外に手間がかかる。食材や備品の在庫管理なども含め、数値化すべき項目は想像以上に多い。

さらに会計処理・損益をもとにした数値分析も必要だ。たとえば食材やメニューの販売数、客席の回転率から顧客ニーズを把握し、適切な在庫管理をすれば、食材ロスなどを抑えることが可能になる。経営戦略の指針となる情報分析のために、確実なデータ収集と管理が求められる。

店舗の規模や業態によって提供するメニューやサービス、運営方法は異なる。適したデータ管理も店舗それぞれだろう。自店舗に最適な方法はどういったものか、エクセル、システムそれぞれを使った場合の具体的なデータ管理の方法を見ていこう。

エクセルでデータ管理

エクセルは一般的に広く普及しているソフトウェアだ。多少の知識をもっている人や利用した経験のある人もそれなりに多い。そのため、どんな店舗でも比較的導入しやすく、実際、多くの店舗で取り入れられているデータ管理ツールだろう。

関数やマクロ、ピボットテーブルなどの機能を上手く活用すれば、データの収集や分析の自動化もある程度可能だ。

テンプレートが手に入りやすく、個人店舗に向いている

表のレイアウトや計算式の作成には、ある程度エクセルの知識やノウハウが必要だが、店舗のデータ管理用のテンプレートはWeb上に数多く出回っている。たとえば、従業員のタイムシフト管理や月別売上管理、在庫管理といったテンプレートは無料で配布されており、簡単に入手できる。

個人経営などの小規模店舗なら、そうしたテンプレートを活用することで十分にデータ管理を行うことが可能だ。エクセル自体、パソコンにインストールされているか、ない場合も互換性のあるフリーの表計算ソフトなどで、コストをかけずに導入できる。

複数店舗を経営する場合は、ファイル管理が複雑になることも

ただ、エクセルは複数店舗のデータ管理にはあまり向かない。店舗の数だけファイルが増え、膨大な量になると、入力作業でファイルを探すのが面倒になるばかりか、過去のデータを参照するのもかなりの手間だ。

ファイル間の連携も難しく、店舗ごとの比較データなどを作ろうとすると人的リソースが大幅に割かれてしまう。

従業員が表を作成する場合は、運用に注意

エクセルに詳しい従業員がいると、事業者の要望に沿った表を作成しやすい。しかしその作成者が会社を退職してしまうと、トラブルが起きた際に誰も修復できない状態に陥るリスクがある。

別のテンプレートやシステムへの移行で余計な手間がかかったり、エクセルの数式が壊れ、データの一部が失われたりする可能性も高い。自店舗で表を作成する場合には、属人化しない仕組みを考えておくことが重要だ。

POSでデータ管理

商品の注文や会計といった情報を蓄積できるPOSシステム。オーダーをとる際のハンディターミナルや会計を行うPOSレジなどに利用している飲食店も多い。

POSはスムーズな注文や会計に役立つだけでなく、時間帯ごとの客数や組数、メニューの販売数といった情報を、リアルタイムに蓄積できる。たとえば、ランチ・ディナーによる注文の差や顧客1人あたりの消費額など、1日の細かいデータを収集できるのがPOSの強みだ。

中には、食材の原価やスタッフの勤怠データを管理できるものもある。ただし、データ分析においては、POSシステムだけでは限界となる部分も多い。

細かいデータ分析などはエクセルに落とし込む必要がある

POSは、システム内の機能を活用して簡単にデータ分析できるケースがある。例えば商品分析機能があれば、どのメニューがどれくらいの割合で売れているかをABC分析などで把握可能だ。ただあくまで標準搭載された機能によるものなので、分析できるデータや範囲が絞られる。データ管理という点では少し心許ない。

特定の店舗や期間ごとなど、条件を絞って本格的にデータ管理や分析をするなら、POSに蓄積されたデータを互換性の高いCSVファイルとして出力し、エクセルなどのソフトへ落とし込む必要がある。結果としてひと手間かけることになるだろう。

システム導入でデータ管理

飲食店では、店舗管理システムや売上管理システムなどのツールを利用してデータ管理するのもひとつの手だ。この手のシステムは、売上だけでなく損益管理や勤怠管理など様々なデータを一括で管理できる特徴がある。特に飲食店経営に特化して開発されたシステムでは、レシピ管理などもある。

POSと連携可能なシステムなら、売上の集計や分析を自動化して効率よくデータ管理できる。さらに複数の店舗情報をシステム内でまとめられるため、エクセルのようにファイル数が膨れ上がる心配もない。

データは必要に応じてCSVファイルとして出力できるので、会議の資料に利用といった使い方も可能だ。ただし店舗管理システムは、こうした便利な機能が備わっている分、他の方法と比べて費用が高くなる点がネックとなる。

小規模店舗が導入するなら、手軽に運用できるクラウド型

店舗管理・売上管理システムの用途は、店舗の売上や在庫管理から請求書や納品書の発行、受発注管理まで幅広い。しかし個人経営などの小規模店舗では、複数店舗向けの機能を持て余してしまう。

費用感も、パッケージ版のシステム導入では初期費用が数万円〜数十万円ほど。さらにサーバーの準備や設定で手間がかかり、メンテナンスなどで継続的に費用も増える。

導入コストや維持費などを考えると、個人店舗ではコストパフォーマンスが気になることも。もしシステムを導入するのであれば、費用や手間を抑えられるクラウド型のシステムを検討するのがよいだろう。

5~20店舗くらいの規模の飲食店で、効率の良さが実感できる

システム導入のメリットは、事務作業の効率化だ。これまで人の手で行なっていた伝票からの入力作業や計算、分析などをシステムで自動化し、人員のリソースを減らすことができる。特に日々行われる勤怠や様々な食材の発注をシステム化すれば、一層の時間的なコスト削減ができるだろう。

飲食店で利益を生み出すのは、来店客の増加や原価率のコントロールだけではない。経費や人件費の削減による恩恵も大きい。システム導入による業務の効率化は、従業員の生産性を上げ、利益アップにつなげられる。

しかも店舗の数が多ければ、それだけ各店の効率化を図れる。5〜20店舗ほど展開している飲食店は、システム導入の効率の良さをより実感しやすいだろう。
比較項目 エクセル POS 店舗管理
システム
個店向き ×
チェーン店向き ×
データ収集しやすさ ×
データ分析しやすさ
作業標準化しやすさ ×
他の売上管理システムとの連携 ×

業務負担の削減・効率化には、システム管理の仕組み化は外せない

飲食店では接客や調理だけでなく、食材の受発注や原価率の計算、メニュー毎の売上計算など、バックヤードの業務も欠かせない。営業時間が終わったあと手作業に追われ、時間がいくらあっても足りないという現場は多い。

だからこそ単純な入力作業は、POSやシステムの導入で可能な限り自動化を図ることが望ましい。特に毎日蓄積し続ける日々のデータは、システムを活用したほうが素早く正確に情報を管理でき、分析に活用しやすい。

店舗ごとの比較や期間の絞り込みなど、条件を絞って分析したい場合などは、システムに搭載された機能だけでは対応できないこともある。補完できない部分については、関数などで独自の計算式を組み立てられるエクセルと合わせて運用するのがおすすめだ。

システムやPOS、エクセルを状況に応じて上手く使い分けることで、費用対効果の高いデータ管理を実現できるだろう。

日々のデータ管理を適切に行うことで、店舗の利益を早期に把握

店舗が毎日の細かいデータを蓄積するのは、その日の情報から顧客ニーズを導き出し運営の改善にいかすためだ。「午前と午後でどちらの売上が伸びたのか」「どんなメニューが人気だったか」など、時間帯別・曜日別で分析すれば、今後の方針のヒントになる。

しかし現場作業に追われる日々では、1日の売上高といった必要最低限のデータしか管理できないケースも多々見受けられる。店舗経営におけるデータ管理は、地味で面倒な作業となるため後回しとなることも多いが、その本質を理解し、作業の効率化を図ることで、確実に店舗の利益に貢献するはずだ。

日々のデータ管理のサポートが得意なのが、売上管理システムだ。そしてできれば、売上管理システムと、受発注システムや勤怠管理システムなどをデータ連携させて、仕入れや人件費といった変動費の管理も一括管理したいところだ。伝票が日々溜まる科目や本部が把握しにくい科目をシステム化することで、手作業の自動化、早期のPL把握、不正対策などの効果を得られる。

データ管理をただの事務作業と思わず、自社の改善や利益につながるものと認識し、前向きに検討してみてはどうだろうか。
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