株式会社SUU・SUU・CHAIYOO取材日 2019年6月11日

適切な提供時間や食材発注量を店舗ごとに管理。
料理と接客の品質を上げ、リピーター獲得に集中します。

利用サービス 受発注(発注) | エリア 関東 | 
事業内容 レストラン経営・プロデュース、雑貨輸入販売
株式会社SUU・SUU・CHAIYOO

タイ料理専門店「クルン・サイアム」など、国内15店舗、海外1店舗展開(2019年6月現在)する株式会社SUU・SUU・CHAIYOO様。多店舗展開を進める上で抱えていた課題は、現場の様子をサポートオフィス(本部)が直接把握できなかったこと。従業員の7割が文化も言語も異なる外国人という環境の中で、どのように課題を乗り越え成長を続けているのか。代表取締役 川口洋氏に伺いました。

ココがPOINT!

お客様に喜ばれながら楽しく働きたい気持ちに、国境はない

― タイ料理に特化した業態で展開されていますね。

代表取締役 川口洋氏(以下、川口社長):国内にタイ料理やタイ文化の魅力を広めることを、会社の理念として掲げています。主力業態の『クルン・サイアム』と、オフィス街向けの『オールドタイランド』は、どちらもタイ・バンコクに残る、20世紀初頭の洋館のイメージです。

現地タイの高級ホテルや有名レストランで腕を磨いたタイ人シェフによる本格的な味を、カジュアルに楽しんでいただけます。また、『タイ料理研究所』はもともとレシピ開発用のテストキッチンから生まれました。出店先の立地や坪数などで使い分けています。

代表取締役 川口洋氏代表取締役 川口洋氏

― 従業員の7割が外国の方だとうかがいました。

川口社長:当社のシェフは全員タイ人です。店長も含めて従業員の国籍は不問ですが、自然とタイ人の割合が多くなりますね。外国人アルバイトの中には進学のために来日して半月足らずというスタッフもいます。日本語の勉強をはじめたばかりで、飲食店で働いた経験や、お酒を飲んだこともありません。そんな状況でも一生懸命に働いてくれます。

― 接客などで、多国籍ならではの難しさはありますか?

川口社長:言葉の問題はもちろんありますが、育った環境や文化の違いにも理解が必要です。たとえば日本ではお客様が席についたらまず水をお出ししますが、タイにはないサービスです。接客経験すらないスタッフに、まずそこから教える必要があるため、社員がサポートをしているものの、お客様にご不便をおかけすることもあります。

時には「日本語がぜんぜんできない人を、なぜ雇っているの」というお声もいただきます。そこで、“当店のスタッフは日本語を一生懸命勉強しているところです。ゆっくりお話しいただくか、もしくはタイ語でご注文ください”と口頭でお伝えしたり、店舗によっては貼り紙をしています。

それは、お客様に満足していただき、かつ、従業員がニコニコ働いているのがお店として目指すべき、あるべき姿と考えているからです。たとえばお客様のご来店時に水をお出しするオペレーションは決まりですが、目的ではありません。なぜお出しするのか、それが“おもてなし”だからだと理解できれば、自然に接客として身についていくでしょう。

そのため、日々の行動を振り返るチェックシートを用意して、「楽しく働けたか」「人に親切にできたか」などを書き込むようにしています。

― 従業員の自主性を重視されているのですね。

川口社長:我々は、従業員を第一に、お客様、お取引先様、地域の方など関係する人々に幸せを感じてもらうことを目指しています。それが経営理念である『タイ料理を広めていく』につながると考えるからです。たとえば、同じ労働時間でも、給料目的で働く人と、自分と周りの幸せのために働く人、大いに成功するのはどちらでしょうか。同じ事象に対してもポジティブに幸せと捉える人は成功しますし、それは意識すればできると思います。そのためのチェックシートです

もちろん、客観的な評価も必要です。サービスレベルは個人の力量に左右されがちですので、従業員研修には力を入れています。教育費の予算は年商の2%として、その他にも年商の1%を社内遠足などのレクリエーション費や、社内の情報共有のためのITツール導入費といった人間関係の向上のために使います。社員は社内SNSのアカウントを持ち、日々の売上や月次の収支などの数字を投稿して、誰でも知ることができるようにしています。

― 従業員には、数字を意識して店舗経営をしてほしいという方針でしょうか?

川口社長:まず、透明性は確保すべきです。決算書も公開していますし、理解するための数字教育にも取り組んでいます。ただ、それは自分がやっている仕事の結果を把握できた方が楽しいだろうとの考えです。

現場には売上や利益の数字を目的として追わないように強く伝えています。数字を意識すると、お客様へのおもてなしより店舗の都合を優先し、食材の質を下げて原価を抑えたり、いい加減な接客になりがちです。追い求めるべきはお客様満足による客数増です。QSCのスタンダードの実現、ホスピタリティやタイの雰囲気作り、オペレーション力を向上すれば、おのずと客数があがります。結果として売上につながり、時間帯当たりの客数が増えれば生産性も向上して利益もあがります。

何より、自分がお客様の立場になって考えれば、売上を優先する店には行きたくないですよね。楽しい時間や美味しい料理、丁寧な接客といった、何かを与えてくれる店だからこそ、行きたいと思えるのではないでしょうか。案外この感覚は、言葉の壁はあってもシェフのほうが分かっていますね。やはり、自分の料理でお客様を喜ばせたいという気持ちは、国を超えて料理人に共通する思いなのでしょう。

現場で何が起きているか、いち早く気付けるシステム活用

― オペレーション力の向上とは、どういったことですか?

川口社長:生産性を上げるキモは、客数予測を正確にして、それに応じた人員や食材を投入することです。メニューが品切れになればお客様の満足度は下がります。逆に余って次の日に使いまわしたら鮮度が落ち、やはり満足度は下がります。客数も減るでしょう。ロスになって利益を圧迫するかもしれません。このため、我々は1時間あたりの客数予測に力を入れています。過去データや季節変動、直近の傾向などをサポートオフィスが準備し、そのデータも参考にしつつ、店長が客数を予測します。そこから、予測客数に対してお客様にご迷惑をおかけしない標準人員に基づいてスタッフを準備し、どのメニューがどれほど出るか、たとえば100人ならガパオ30人分、パッタイ20人分といった出数率から食材の準備をしています。

その際、各店舗が客数予測に見合った適切な発注をしているか確認するため、発注のシステム『BtoBプラットフォーム 受発注』を使っています。

また、POSレジと発注システムの仕入データを連動させて、ウィークリーで売上全体の原価率と、食材ごとの原価率を自動集計するようにしています。BtoBプラットフォームは多くの飲食店で使われていて、一般的なPOSレジであれば連動できるので助かります。

エビ、タイの食材、タイ以外の食材などの使用数量を見て、発注の異常値を探っています。特に使用量の多いエビや、価格変動が大きい野菜などの正確な原価管理には、システムの活用が欠かせません。新鮮な食材で適正なレシピの料理を出し、お客様満足度を高めるためには必要な管理です。

さらに、お客様の満足度を保つオペレーションがスムーズか、注文を受けてから料理を提供するまでの時間も計測しています。ランチなら8分以内、ディナータイムのドリンクは3分以内にお出しするのが目安です。これが90%以上出来ていれば良しとし、1時間ごとの最大遅延時間もチェックしています。

― 料理の提供時間はどのように測定しているのですか?

川口社長:POSレジをカスタマイズして、オーダー端末から注文を受けたらバーコードを出力するようにしています。料理が提供できたら担当者がバーコードを読み取って、POSで提供時間を計っているのです。店舗数が増えるにつれて、本部ではどうしても現場で何が起きているか細かく把握できなくなります。電話で聞いてみても、実際の状況はわかりません。

お客様に喜んでいただく、タイ料理を普及するといった理念は、目には見えません。実現できているかどうかの判断材料のひとつとしてシステム化して数字を読むことが必要だと思っています。

新しい時代にグローバルに活躍する外食ベンチャーとして

― 社会的にインバウンド需要の増加が注目されていますが、変化は感じますか?

川口社長:在住外国人のお客様は多いですが、現時点で外国人観光客が目立って増えている実感はありません。もちろん観光地に近い店舗では増えつつありますし、在住外国人のお客様対応に加えインバウンド対応は今後、力をいれていきたいところです。

我々の場合、やはり同胞のクチコミもあってタイのお客様は多いです。従業員にとっても自国のお客様に喜んでもらえるのは誇らしいことでしょう。むやみに宣伝に力を入れるより、魅力を高めることで、自然にお客様から選ばれる店でありたいです。

ですから、QSCレベルの向上、特に食材の質をあげ、料理の品質向上に力を入れていきたいですね。たとえば、エビを完全無添加でよりプリプリした品種に変え、肉や麺もより美味しく品質のよいものに少しづつレベルアップしています。薄利多売にはしません。良いものをお客様が許してくださる最大の価格でしっかり売っていく、それが結果としてお客様の満足に結びつくと思っています。

― 今後の展望をおきかせください。

川口社長:2017年にタイに初出店し、海外進出を果たしました。次はアメリカへの進出を計画しており、2021年オープンを目指して少しずつ準備を進めているところです。

タイ料理は辛いだけでなく様々な味があり、食材も比較的身近なので、どの国の人にも馴染みやすいと思っています。一説によるとアメリカはすでに7000店近いタイ料理店があるともされますが、チェーン展開しているタイ料理店はあまりないようです。

アメリカではフルサービスではなく、ファストカジュアルな業態でタイの食文化を伝えることができれば、と考えています。時間をかけてじっくりと、それこそ3世代くらいかかってもいいので確実に、食を通じてタイの文化の魅力を根付かせていきたいです。日本人なんですけどね(笑)。

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設立2004年9月
事業内容レストラン経営・プロデュース、雑貨輸入販売
代表者代表取締役 川口洋
本社所在地東京都目黒区駒場3-5-18 シャローム駒場203
企業サイトhttp://www.sscy.co.jp/
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