東京都東久留米市掲載日 2025年7月18日

地域事業者と共に進める会計事務DX。
DtoDによる「お手間をとらせない」取引を推進します。

利用サービス 請求書(受取)契約書 | エリア 関東 | 業種 自治体 | 取材日 
東京都東久留米市

東京都の多摩地域、武蔵野台地のほぼ中央に位置する東久留米市様。市民や事業者に「お手間を取らせない市役所」を目指しDXを推進しています。『BtoBプラットフォーム 請求書』、『BtoBプラットフォーム 契約書』の導入で、会計事務や契約業務を効率化、取引事業者側の負荷軽減も実現。事業者の満足度も高く、アンケート調査の回答では約80%が「システム導入に満足している」と答えています。

サービス導入の背景と効果

課題

  • 紙中心のアナログ処理は、職員も事業者も負担が大きい
  • ミスを防ぐため二重三重のチェックを行い、手間がかかる
  • 文書保管スペースの逼迫、必要な書類を探すのも大変

決め手

  • 既存の財務会計システムとデータ連携できるサービス
  • 総合行政ネットワーク(LGWAN)への接続が可能
  • 国内シェアが高く、利用している取引事業者も多い

効果

  • 請求データの自動連携でミスを低減、審査事務も効率化
  • 事業者側も業務効率の向上を実感、電子契約で収入印紙も不要に
  • 電子決裁との併用により、保管する紙伝票は86%削減、検索性も向上

「紙で処理するもの」だと思っていた会計事務のデジタル化は、大きな転換に

― 多摩地域の中でも都心部に近く、湧水など豊かな自然にも恵まれていますね。

会計課長:東久留米市は令和2年に市制施行50周年を迎えた、人口約11万6千人の自治体です。東京・池袋からは西武池袋線に乗って18分と交通アクセスも良く、武蔵野の田園風景が広がる自然に恵まれた、豊かな住環境が大きな魅力です。市内の各所に湧水があり、「落合川と南沢湧水群」は都内で唯一、環境省による「平成の名水百選」、並びに「東京名湧水57選」にも選定されています。

会計課長会計課長

令和3年2月策定の第5次長期総合計画において、東久留米市はまちの将来像を「みんないきいき 活力あふれる 湧水のまち 東久留米」と定めました。また、DX推進方針としましては、「お手間を取らせない市役所」を目指し、市民の利便性の向上、業務の効率化による行政サービスの質の向上に向けて、さまざまな取り組みを実施しています。『BtoBプラットフォーム 請求書』、『BtoBプラットフォーム 契約書』の導入もその一環です。

六角形の花壇の中央にブラック・ジャックとピノコの銅像が立っている「ブラック・ジャック &ピノコ」
銅像が駅前に設置されています
©Tezuka Production

― みなさまの所属されている部署と業務内容を教えてください。

会計課長:会計課は市民のみなさまと直接やりとりがある部署ではありません。窓口で市民のみなさまと触れ合う職員を陰ながら支える役割を負っています。

会計事務には、支出負担行為の確認や支出命令の審査といった業務などがあります。市に届く各事業者からの請求書は、担当するそれぞれの課が受け取ります。担当課は受け取った請求書をもとに伝票を作成し、会計課へ持ち込みます。会計課は、伝票が法律に基づいた適正な内容であるか審査し、適正であれば支払処理を行います。

管財課契約係長(以下、契約係長):管財課契約係は、主に市と事業者との適切な契約事務を担っております。昨年度は全体で約750社の取引事業者と約2,100件の契約を締結しております。

企画経営室 行政経営課 情報システム担当 主任(以下、情報システム主任):行政経営課で情報システムを担当しています。主な業務は、情報システムの管理運営です。近年は新システム導入に際し、各部署、各事業者との橋渡しをしつつ、円滑なシステム構築に向けたサポートやフォローを主に実施していますが、一番の役割は、システムやパソコンに不慣れな職員に、丁寧にわかりやすく説明するところと考えています。

企画経営室 行政経営課 主査(以下、行政経営課主査):行政経営課で行財政改革を担当しています。行革担当は、広義でいえば文字通りの行政改革、業務改革まで含まれます。その中でも特に今、DX(デジタルトランスフォーメーション)を行政改革のひとつととらえ、システムを活用し、さまざまな業務を見直しているところです。

どの自治体もそうだと思いますが、従来、紙ありきの仕事がずっと続いてきました。データで受け取っても全部印刷して、紙の状態で決裁にまわしていた状況が今、変わりつつあると思っています。先ほど、「お手間を取らせない市役所」がDX推進方針という話がありました。市民のみなさまに直接関わる窓口業務の利便性を高めるのは当然ながら、私たちと関わりのある事業者のみなさまも市民ですので、事業者のみなさまのお手間も取らせない心がけが重要です。

企画経営室 行政経営課 情報システム担当 主任企画経営室 行政経営課 情報システム担当 主任

企画経営室 行政経営課 主査企画経営室 行政経営課 主査

― どのような経緯で、『BtoBプラットフォーム 請求書』『BtoBプラットフォーム 契約書』を導入しましたか?

情報システム主任:支払関連業務がアナログの状態では、東久留米市と取引事業者、双方において生産性の低減、時間やコストの負荷増大といった大きなデメリットがありました。また、事業者単体では電子帳簿保存法への対応も困難です。

市が率先して支払関連事務のプラットフォームを構築し、会計事務のデジタル化を図り、事業者の業務デジタル化も促し利便性を高める取り組みとして、電子請求書システム『BtoBプラットフォーム 請求書』、電子契約システム『BtoBプラットフォーム 契約書』を導入したという経緯です。

行政経営課主査:市民でもある事業者のみなさまへのメリットはもちろんですが、職員の業務負荷も軽減できなければWin-Winになりません。一方に負担を強いるのではなく、双方にメリットがある仕組みが実現できる点は、導入を決めた1つのポイントです。

― システム導入前はどのような課題があったのでしょうか。

会計課長:会計課が処理する支出伝票は年間で約3万5,000件です。1枚の伝票に複数の請求書を集約する場合もあるため、実際に受け取る請求書の件数はさらに多くなります。だいたい毎日150枚近く支出伝票に押印していました。

会計事務は、紙で処理するのが当たり前だと思っていて、あまり疑問に思っていませんでした。業務改善といっても根本を変える、トランスフォーメーションを起こすという意識は当初はなかったと思います。しかし、改めて業務を見直すと、すべての書類を印刷して決裁にまわし、照合作業を行うといったアナログによる処理は、添付書類もふくめると膨大な紙が発生しています。会計課で保管している伝票のファイルは年間96冊必要でした。保管スペースもひっ迫しますし、そのファイルの中から必要な書類を探しだすのも大変な作業です。

行政経営課主査:書類の内容に不備があると差し戻しの手間が発生します。請求書が1文字でも間違えているともう一度発行し直してもらうため、支払いもそれだけ後ろ倒しになり事業者側の負担になってしまいます。
事務処理は、ミスが1つ発生すると、そのミスを防ぐためにチェック体制が厳しくなる傾向があります。二重三重のチェック体制は、事業者側もチェックする職員側も、お互いどんどん苦しくなってしまいます。これはそもそも書類が紙であり、人間が作業しているからチェックが必要なのです。データ連携ができれば、ヒューマンエラーは発生しません。伝票を起票する側も審査する会計課側も、作業面と心理面の両方の負担が減ります。システムを適切に利用すれば、会計事故が発生する可能性のある伝票自体を減らすことができるのです。

契約係長:管財課では契約書をすべて紙で処理していました。財務会計システムで契約決定処理を行い、契約書類2部を作成、印刷して事業者に渡し、事業者は社判の押印や印紙の貼付の上で市に提出します。管財課は契約書類に間違いがないか確認の上で締結日の記入、公印を押印し、所管の部署へ引き渡し、各部署から事業者へ1部を渡しています。紙の契約書なのでやりとりは手渡しまたは郵送のどちらかになります。取引事業者様に郵送費や交通費がかかりますし、さらに契約の内容によっては都度収入印紙代が必要でした。

― どのような点が導入の決め手となりましたか?

情報システム主任:BtoBプラットフォーム』は、事業者と市、双方の負担とミスの軽減を目的にすると、財務会計システムとデータ連携可能であることが重要なポイントのひとつでした。導入事業者数が国内トップクラスである点も、円滑な利用につながると評価しましたが、それだけではありません。『BtoBプラットフォーム』は事業者のみなさまと市がWin-Winになれるシステムだったことが大きな理由です。自治体との実証実験を精力的に実施されており、私たちの考える地域DXの取り組みと方向性が一致していました。

行政経営課主査:実際、既存の財務会計システムにうまく組み込むことができたので、職員は『BtoBプラットフォーム 請求書』という新しいシステムを使っているという苦手意識なく、入力の手間を減らせていますね。
他社サービスとも比較しましたが、既存の財務会計システムと自動連携することでデータのやりとりを完結できるDtoD(Data to Data)を実現したいという声があがっていました。

契約係長:BtoBプラットフォーム』は、ひとつのIDで電子請求書と電子契約、複数のサービスを利用できる汎用性も大きなポイントでした。『BtoBプラットフォーム 契約書』を同時に導入すれば、契約から請求までを一元管理でき、事業者側の利便性向上や内部事務の効率化につながります。

情報システム主任:それに、私たちが主に事務処理に利用しているパソコンと同じLGWAN(Local Government Wide Area Network:地方公共団体向け総合行政専用ネットワーク)環境に対応している点でも優位性がありました。LGWAN環境に対応していないと、せっかくシステム化、データ化してもインターネットにつなぐために別の手間が発生してしまうのです。このため、『BtoBプラットフォーム』がLGWAN-ASPに対応していることも導入の決め手になりました。

事業者のシステム満足度は80%。市と事業者双方に大きな導入効果

― 導入から実際の運用までどのように取り組みましたか?

会計課長:「電子決裁」「電子請求書」と言葉だけ見れば、会計事務だけに関係があるようなイメージを抱きがちだと思います。全庁には、会計課が楽をするための施策ではなく、DX推進という枠組みの取り組みのひとつであると、他部署の理解を得る必要がありました。そのため、行政経営課の主導で導入を進め、まず策定したのが「契約・会計事務のデジタル化方針」です。どのような意図で、なにを目的とした取り組みであるか伝え、不安や抵抗感の払しょくにつとめました。

デジタル化率原則100%の指標を明示するとともに、会計課、管財課ではシステム導入を機に、従来の業務を見直すBPRに取り組んでいます。不要な書類や手続きを省き、押印省略や代理決裁に対応できるよう規則の改正も行いました。その上で、全庁向けには説明会で使いなれている財務会計システムとの連携で操作も問題なく行え、支払業務が完結できることも案内したので、円滑な導入ができたと思います。

取引事業者様向けの説明会も実施しましたが、おおむね抵抗なく受け入れていただきました。

情報システム主任:初期の登録段階で、カスタマーサポートを用意していましたが、意外にも利用登録でお困りのお問い合わせが少なかったのは嬉しかったです。問い合わせフォームにも数件程度の相談が寄せられた程度でした。

― 導入の効果はいかがですか?

情報システム主任:電子請求書から財務会計システムに、請求データをAPI連携で自動取込でき、会計課が執行処理を行うと取引事業者へ支払完了通知がメールで届きます。会計事務のミスが低減し、審査事務も効率化・省力化されました。電子決裁との併用で、これまで書類を本庁に持参していた出先機関の職員も、移動にかかる負担が軽減しています。

電子審査にかかる時間は、数字では表しづらいものの体感でかなり減っています。電子決裁システムの併用もあって、年間3万5000件、1日150件を超える審査も、大量の伝票を毎回整理して並べるなど、紙ならではの問題は多かったと実感しています。デジタルなら検索もスムーズですし、支払日が近いものから並べて審査できるなど、デジタルになったからできるようになったことがかなり多いのが印象的です。

年間96冊発生していた分厚いファイルも、14冊にまで減っています。単純計算でも約86%の削減効果です。他部署でも同様に伝票が減っているので全庁でみればさらにペーパーレス化が進んでいると思います。

Before 電子審査1日150件 年間3万5000件 大量のバインダーを毎回整理 電子審査に膨大な時間が…年間96冊もの分厚いファイル
After スムーズな検索 支払いが近いものから審査 デジタル化により効率アップ!ペーパーレス化も推進 年間14冊に減少 約86%削減

会計課長:請求書が届いているなどの、状況の把握が容易になりました。支払い漏れなどの会計事故が起きた際、「今後は課内でしっかり管理する」「進捗状況を管理する」といった再発防止の対策を示しますが、実際のところどうすればいいのかが課題でした。デジタルデータならまさに、全員で状況を確認、管理できます。紙だと他の書類にまぎれて見落としてしまうリスクも、画面上で可視化によって誰かが未処理に気づくなど、支払漏れの防止が可能です。デジタルの良さのひとつだと思います。

また、審査業務自体も、テレワークが可能になりました。他自治体が視察にきて驚かれます。これは同時に、事業者のみなさまも請求書をテレワークで発行できるということでもあります。電子決裁や電子請求書といった会計事務のDXで、働き方への向き合い方が変わる原動力、きっかけがひとつ得られたのではないかと感じています。

Before 支払い漏れなど会計事故の再発防止対策 実際どう対策したらいいの? 進捗状況を管理する 課内でしっかり管理する
After 事前に未処理に気付ける体制に! デジタル化で解決! 進捗状況を可視化 全員が状況を確認・管理

行政経営課主査:取引事業者様の請求書発行から、請求書の受領までにかかる時間も短縮されていますね。事業者様が持参される場合は来庁に時間をいただくことになります。郵送の場合も、まず総務課がすべて受け取り、各課に振り分け、担当課でも開封して「この請求書の担当は誰だろう」といくつもの段階を踏みます。『BtoBプラットフォーム 請求書』は発行から即日データで届くので、その時間削減もとても効果があったと感じています。

Before 請求書発行から受領までに時間がかかる
After 時間削減、さらにはテレワークも可能に!『BtoBプラットフォーム 請求書』は発行から即日データで届く

― 取引事業者様の反応はいかがですか?

行政経営課主査:令和6年3月の運用開始から半年を過ぎた10月から12月にかけて、システム利用事業者約80社に対しアンケート調査を行いました。約半数の事業者様から回答を得られています。『BtoBプラットフォーム』の使い勝手を伺ったところ、回答者の約70%が「使いやすい」と回答していました。また回答者の約60%が「システム導入によって業務が効率化した」と回答しており、システムに満足しているとの回答は約80%にのぼりました。

情報システム主任:BtoBプラットフォーム』では支払通知機能も利用を開始しました。取引に際し、市からは「まずは支払通知をデータで受け取ってみませんか」とご案内してIDを作成いただき、そこから、「同じシステムだから電子請求書を発行してみよう」、「電子契約を使ってみよう」と利用が広がっていってくれればと考えています。同一IDで利用できるシステムならではのアプローチだと感じています。

― 電子契約の利用状況はいかがでしょうか?

契約係長:現時点で電子契約は利用する職員の負担を考慮し、管財課が担当する契約に限定しており、その大半は入札による案件です。電子契約か従来の書面による契約か、選択できるようにしており、取引事業者は落札決定通知時にどちらを希望するかフォームで申請し、管財課で処理しています。電子契約の場合、事業者様のアドレスの確認や契約書PDFファイルの作成、契約書発行前の契約書案の確認等といった事務手順が増加しているものの、取引事業者からは電子契約の希望が多く上がっております。
BtoBプラットフォーム 契約書』を初めて使用する事業者様は戸惑われる場合もありますが、慣れてしまえばやりとりも円滑で、電子契約のメリットを感じられているようです。契約書の授受にかかる負担の軽減、印紙が不要といった点は大きいと思います。電子契約の導入から、おおむね1年が経過しましたが、電子契約を導入する、検討している事業者は増えてきている感触があります。

会計課長:BtoBプラットフォーム 契約書』を利用されている事業者様も多く、電子契約にメリットを感じている様子がうかがえます。収入印紙の貼付不要である点は、システムを利用するきっかけとして後押しになっているようです。

デジタルの特性を活かして会計事故を抑制、正確・迅速な会計事務へ

― 今後の展望をおきかせください。

行政経営課主査:東久留米市では、『BtoBプラットフォーム』利用事業者の増加を念頭に置きつつ、ペーパーレス化に取り組んでいます。SDGsやGXの方針も策定しており、ペーパーレス化や郵送等で排出されるCO2の削減など、環境面の負荷軽減にも一定の効果が得られているのではと考えています。

BtoBプラットフォーム』の利用を広げ、市側、事業者側それぞれの仕組みを効果的に活かしつつ、正確性の向上と様々な負担軽減のために地域のDXを推進していきたいです。デジタルの特性を可能な限り活用して、正確・迅速な会計事務を行い、会計事故発生の抑制を目指します。

東京都東久留米市

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発足日1970年10月1日
本庁所在地東京都東久留米市本町3-3-1
職員数501~1000名
Webサイトhttps://www.city.higashikurume.lg.jp/
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