『Less is More. for 物流業』ゲスト講演レポート:
弁護士がトラブル例も紹介!
2024年問題の労務・法務管理のリスクとその対策

2024年4月11日「物流の2024年問題」をテーマにセミナーが開催されました。弁護士法人 長瀬総合法律事務所の長瀬佑志代表弁護士がゲスト登壇し、「運送会社のための労務・法務管理の勘所 ~ 2024年問題の本質と対策 ~」と題して、運送事業者からよく寄せられる労務管理・法務上のトラブルをご紹介しながら、2024年問題の本質とその対策を解説しました。

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2024年問題における法務管理の勘所

2024年問題法務管理の勘所のポイントは2つです。1つ目は運送事業者に求められる労務管理の厳格化。2つ目は、労務管理の不備に伴う法的リスクの増加が挙げられます。

運送事業者に求められる労務管理の厳格化

  • 労働時間の適正把握義務
  • 自動車運転者の時間外労働の上限規制
  • 拘束時間の短縮・休息時間の増加

労務管理の不備に伴う法的リスクの増加

  • 未払賃金の消滅時効期間の延長
  • 割増賃金率の増加
  • 上限規制に違反した場合の罰則

一つ目の厳格化に対応していかないと自ずと法的リスクが高まってしまいます。
たとえば今後は、上限規制に違反した場合、労基法違反となり刑事罰の対象となります。

2024年問題における労務管理の勘所

運送事業は典型的な労働集約産業といわれ、実際に長時間労働・低賃金の常態化や、人手不足・労働者の高齢化が加速する傾向が広く課題として指摘されています。

特に残業代請求のリスクは増大

2024年問題の主な影響は7つ。

  1. 運送事業者の売上・利益の減少
  2. ドライバーの収入の減少
  3. 残業代請求のリスクの増加
  4. 労働災害リスクの増加
  5. 行政リスクの増加
  6. 信用リスクの増加
  7. 人手不足の増加

特に、ドライバーの収入減による離職リスクを発端に、③~⑦の動きが連動し負のスパイラルに陥る可能性が危惧されているところです。

また、ここ数年、③残業代請求のリスクは顕著に増大しています。ドライバーがより給与の高い会社に転職するにあたって、元々在籍していた会社に残業代を請求するという動きは非常によくみられています。

2024年問題のために今から講じる対策

経営サイドの勇気が試される

2024年問題に向かい合っていくために、まず法的なリスク、また予想される労務管理上のリスクは何か、ということから把握していただきたいです。
具体的な対策は以下の5つです。

  1. 2024年問題のリスクを認識する(1.民事責任リスク、2.刑事責任リスク、3.行政責任リスク、4.信用リスク)
  2. 従業員の働き方を把握する
  3. 雇用契約書等の整備状況を把握する
  4. 給与体系の見直しを図る
  5. 従業員に魅力ある職場環境を整備する

特に、②の「従業員の働き方を把握する」ことは経営サイドの勇気が必要になります。この問題に向き合うためには、従業員の残業状況を把握し、適正な残業代が支払われているかという事実を直視することは不可避なためです。ですが、ここが抜本的改善への出発点になります。
こうしたところから長時間労働を前提としたビジネスモデルを改善することで、荷主だけでなく従業員からも選ばれる会社を目指すということが課題になっていきます。

裁判で争うケースに備えて雇用契約書等を整備しておく必要がある

裁判になった場合、裁判所は、雇用契約書、就業規則、給与明細の3つの書類が整合しているかを確認します。こうした会社での仕組みが整っていないと、思わぬリスクに繋がるケースがあります。たとえば、裁判例のひとつに、勤務外手当が固定残業代として有効か問われた裁判があります。会社側の固定残業代として設定しているとの主張が認められず、未払い残業代などドライバー一人ずつに対して3500万円前後支払いを命じられたケースもありました。

リスク回避のカギは従業員にとって魅力ある職場環境を整備すること

従業員にとって魅力ある職場環境を整備することは喫緊の課題です。実現していくためには生産性の向上と経費の削減を徹底して行っていくことが求められます。そのために例えばデジタルツールなどを活用していき、いかに無駄を削減し生産性を上げていくのか、経費をどう節約していくのかを検討していく必要があります。今後さらにこうしたことがシビアに問われていくでしょう。この2024年問題はまさにスタート地点に立ったといえます。

まとめ

物流の2024年問題の影響として、上限規制に違反した場合に刑事罰を受けるリスクや、雇用契約書等の不整備による訴訟リスクなど、リスクが拡大していることがわかりました。
一方、今から講じる対策として強調されたのが「従業員にとって魅力ある職場環境を整備すること」でした。リスクを回避し、魅力的な職場を実現するためにも、無駄を見直し、DXに着手するといった抜本的な改革が求められています。

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