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2026.09.18
共通プラットフォームが支える地域DXへ

長野県南部に位置する飯田市と高森町は、事業者側の負担軽減と、庁内事務作業の効率化、書類保管スペースの削減を目指して『BtoBプラットフォーム TRADE』『BtoBプラットフォーム 請求書』を導入しました。天竜川沿いで経済圏を共有する両自治体による共通システムの足並みをそろえた運用が、事業者の利便性向上に寄与し、地域全体のDX推進につながると期待しています。
飯田市 会計課 審査係 係長(以下、飯田市ご担当):飯田市は長野県南部に位置する、南信州の中心都市です。東西を中央アルプスと南アルプスに囲まれ、天竜川が形成した段丘に市街地が広がり、世界中の劇団が集い日本最大級の人形劇フェスタが行われる「人形劇のまち」、人口1万人あたりの店舗数が全国一の「焼肉の街」としても知られています。リニア中央新幹線の駅開業も予定されており、首都圏とのアクセス向上による南信州の新たな玄関口として、さらなる発展が期待されています。
高森町 総務課 財務係 主査(以下、高森町ご担当):飯田市に隣接する高森町は、約1万2千人が暮らす、温暖で雪が少ない穏やかな気候と、中京圏への良好なアクセスを誇る利便性が魅力のまちです。地域には、最高級の干し柿である「市田柿」の発祥の地としての誇りや、松岡城跡をはじめとする歴史的資産、そして100余年の歴史を紡ぐ「市田灯ろう流し大煙火大会」などがあり、豊かな自然と歴史、そして食の文化が調和しています。
とりわけフルーツ栽培が盛んであり、梨やシャインマスカットをはじめとする季節の恵みが実るたびに、多くの人々で賑わいます。また、桜の名所としても知られ、中でも「日本一の学校桜」と言われる高森南小学校の桜は、開花の時期になると多くの人が訪れ、心和む風景として親しまれています。
飯田市ご担当:当市では、令和4(2022)年3月に「飯田市行政事務DX推進方針」を策定しました。根底にあるのは世の中のデジタル化に対し、役所は依然として「紙」や「窓口」中心というギャップへの危機感です。行政手続きのオンライン化と庁内事務のデジタル完結に向け、ペーパーレスを前提とした文書管理や財務会計システムの更新に取り組みました。
内部事務のデジタル化に関しては、高森町さんが先に取り組まれていましたよね。
高森町ご担当:はい。高森町では、電子決裁や伝票の電子化を令和5(2023)年頃までに導入し、すでに庁内で100%浸透しています。また、電子契約サービスの先行導入をきっかけに、長野県内自治体の共同調達の枠組みへつながったという経緯もあります。
DX推進計画については今年度中に見直し、来年度以降に総合計画と連動させながら、よりスピード感を持ったデジタル化を進める予定です。
飯田市ご担当:従来の紙運用では、請求書が担当者の手元で滞留するリスク、物理的な書類回覧の差戻しによる支払処理の遅延がありました。飯田市では、内部の振替処理なども含めると支出伝票の数だけでも年間5万~6万件の伝票を日々処理しており、手作業によるシステムへの転記ではミスは避けられません。
会計課の審査業務による指摘で最も多いのが日付や金額、振込先口座などの誤入力によるものでした。「転記作業が正確に行われたかというチェック」とミスが見つかった場合の担当課との差戻し対応に多くの労力や時間が割かれており、とても不毛だと思っていました。審査業務の本来の目的は、「法令に照らして適切な支出が行われているかの確認」です。
複数人でチェックしても手入力である以上ミスはゼロになりませんし、数%のミスを削るためのチェックコストは全く見合わないのです。ヒューマンエラーが避けられない以上、最初からデータとして請求書を受け取り、財務会計システムへ直接連携させなければ、この構造的な穴は絶対に塞がらないと強く感じていました。
高森町ご担当:高森町の課題も同様です。当町では年間に約2万件以上の伝票を処理しています。先ほど申しましたように、内部の電子化は浸透していましたが、逆にいえば、外部から届く請求書などの書類だけが紙という状態が続いていました。紙の請求書をスキャンする手間に加え、金額や日付を手作業で転記する作業は引き続き発生していました。
飯田市ご担当:財務関係書類の保存年限は10年ですので、毎年10年前の古い書類が入った段ボール約80箱を保管庫から引っ張り出し、廃棄処分する作業が発生します。書類は綴じ具でしっかり簿冊に綴じられており、ペンチを使って綴じ具を開けてバラす重労働を毎年繰り返していました。
高森町ご担当:保管・廃棄の手間はもちろん、書類を探すのも大変じゃないですか?監査や検査のたびに、過去の書類を確認する作業が発生しますので。直接言われていなくても「おそらく今回の検査ではこのあたりの書類の確認を求められるだろう」と事前に予測して、準備しておきますよね。
飯田市ご担当:ええ、まさに。定期的な監査のたびに、膨大な段ボールが眠る保管庫へ足を運び、該当する箱を開けて必要な書類を必死に探し出さなければなりません。こうした物理的な検索性の悪さと、それを探す職員の手間や労力は、紙での保管における本当に大きな課題でした。
飯田市ご担当:きっかけの一つは、民間企業側のデジタル化が役所の想定を超えて一気に加速したことです。特にコロナ禍やインボイス制度の導入を経て紙の請求書の発行を完全に廃止する事業者も現れ、紙運用を続けてきた役所としてもメール添付やWebからのダウンロードといった電子データを「個別の特例」として認めざるを得なくなりました。
市でも従来求めてきた請求書への押印の省略や電子請求システムを通じた提出を認めるなど、段階的に緩和してきましたが、自社でシステムを持たない事業者様でも共通で使える「プラットフォーム」を環境として提供しようという決断に至りました。
請求書だけが電子化されても、会計伝票が紙のままであれば結局印刷して添付することになります。前述のとおりペーパーレスを前提とした内部事務電子化の検討が本格化したことで、電子化によるメリットを実感できる施策のひとつとして導入を決めました。
選定にあたっては、財務会計システムのベンダーが先に決まっていたため、そのシステムとのデータ連携がマストの条件でした。さらに、導入企業数もトップクラスのシェアを取っているサービスでもあります。ちょうど高森町さんが導入を検討していると聞き、同じ地域なら事業者様の利便性を高めるためにも、共通システムを使えた方が良いと考えたのも理由です。
高森町ご担当:高森町におきましても、やはり隣接する飯田市さんの導入は決め手になりました。近年は郵送物が届く日数も遅くなってきています。このタイムラグが支払期日を圧迫し、職員の大きなプレッシャーになっていました。庁内からも、請求書の処理の遅れで事業者様に不都合のないよう、請求書だけでも電子化すべきではとの声があがり、導入の検討をはじめたのです。
当町では2026年12月に、20年ぶりとなる財務会計システムの大規模なリプレイスを控えています。選定段階から必須前提としていたのは、データを手作業でいじらず、そのまま財務会計システムへ自動連携できる仕組みです。当初は他社の電子化サービスや電子請求書システムも複数検討しましたが、LGWAN環境に未対応であったり、データ連携に弱さがあったりと、一長一短でした。その点『BtoBプラットフォーム TRADE』および『BtoBプラットフォーム 請求書』は、データで受け取り、そのままシステムへ連携できるDtoD(Data to Data)で、自動的に処理できるデータ連携の強みに大きな優位性を感じていました。
ただ、高森町が先行して飯田市さんとは違うシステムを導入してしまうと、どちらとも取引がある事業者様の負担になってしまう……と、踏み切れずにいました。事業者さんにとっては、近隣の自治体で共通システムを利用できれば一番のメリットになりますので、地域連携をはかることができて良かったです。
飯田市ご担当:そうですね。庁内における事務効率化はもちろん重要ですが、それと同じくらい、関わってくださる地元の事業者様に、どのような良い影響をもたらすことができるかという視点も非常に大事だと思っています。デジタル環境を整える資金力やリソースが不足している中小規模の事業者様に対しても、自治体側からデジタル化の「受け皿」を整備し、地域全体のDXを引き上げる役割を果たせたら非常に良いと考えました。
飯田市ご担当:財務会計システム刷新にあわせ、令和8(2026)年4月より電子請求のデータ連携を開始しました。令和8年度末の目標である600IDに対し、現時点で500弱の事業者様にご登録いただいており、スタートとしては順調です。架電施策等により登録のサポートを頂いた成果だと感じています。
ただ、実際の請求書の数でみるとご利用頂いているのはまだまだ一部の事業者に留まっていますので、実際に使って頂けるよう周知を図っていきたいと思います。
事務の電子化については、紙をスキャンするという作業が新たに発生します。また、やはり紙には紙の良いところもあり、かえって手間がかかっている部分もあります。たとえば、審査時、紙ならパラパラとめくって確認できますが、電子だとモニター上で1件ずつファイルを開いて画面を行き来しなければなりません。電子決裁による記録の厳格さが、訂正時の煩雑さを生んでいるなど、現場にはまだ混乱もあります。
今後、電子請求の割合が高まっていけば、紙をスキャンする手間が無くなるのはもちろん、手入力によるミスが減り、確認作業の労力や差戻しによる訂正も削減されます。シームレスなシステム連携がさらに浸透していけば、今の苦労は解消していくと考えています。
高森町ご担当:高森町では、飯田市さんより少し早い令和7(2025)年12月から導入し、半年ほどが経過しました。昨年度末の目標300IDに対して現在279件のご登録があり、達成率93%と順調に進んでいます。
数名規模の小さな会社でパソコン操作に慣れた人がおらず、「対応できない」と不安に思われる事業者様もいらっしゃいました。その場合は、「まずはID登録だけで大丈夫ですよ」「試しに1通だけ作ってみませんか」と、ハードルを下げてご案内すると、「とりあえずやってみたら意外と便利だった」と使い始めてくださるケースが非常に多かったです。最初の1通さえ作れば、次からは過去の履歴をコピーして簡単に発行できますので、丁寧に提案を続けることが大切だと感じています。
実務面では、まだ財務会計システムとの自動データ連携ができていません。令和8(2026)年12月の財務会計システム更新にあわせたAPI連携をもって、私たちが最も課題だと感じている「手作業での転記」が不要になり、劇的に使いやすくなります。
以前、電子契約システムの導入時に経験しましたが、「こんなに楽になるんだ」と職員自身で実感すれば、事業者様へ「次からはぜひデータで」と自発的に勧めてくれるようになります。システム連携の完了を起爆剤として庁内の意識が変わり、電子化率が一気に上がっていくという好循環を期待しています。
高森町ご担当:ペーパーレス化による空間的な効果はすでに実感しています。高森町では内部決裁の電子化が先に進んでいたため、残る紙は請求書だけでした。『BtoBプラットフォーム 請求書』で請求書を電子データで受け取れるようになったことで、全てクラウド上で完結するため請求書の紛失や支払い漏れといったリスクは低減しています。
飯田市ご担当:飯田市でも会計伝票を含め内部事務を電子化したことで、書類保管の負担は激減しました。当市では文書管理システム導入時にシステムに登録された文書を原本として扱い、紙媒体は破棄することを原則としました。これまで行っていた毎年80箱分をペンチで解体して箱に詰め直して運搬する作業も、あと10年で終わりです。
飯田市ご担当:事業者様への利用促進については、ご案内を継続しつつも、ご負担をかけてまで強制するものではありません。選択肢のひとつとして、あくまで事業者様で利便性やコストメリットを実感したうえで、お使いいただきたいと考えています。また、せっかく地域全体で共通のプラットフォームですので、自治体との取引だけでなく、地元企業同士のデジタル取引の活発化にもつながれば嬉しいですね。
最終的な理想を言えば、「Peppol(ペポル)」のような電子請求の標準規格が普及し、誰もが自分の好きなシステムを使いながら、共通の規格でデータが繋がり、そのまま受け取れるという環境が実現することが一番素晴らしいと思っています。
高森町ご担当:周辺の自治体への広がりという点でも期待を寄せています。現在、南信州エリア市町村のDX担当者が集まる会議で情報共有を行っており、興味を持ってくれる自治体もいます。『BtoBプラットフォーム』のような、地域を巻き込んだシステムに関しては、広域連合のような単位で情報交換をし、連携して導入を検討できるのが一番良い形だと思っています。飯田市さんと一緒に始めたこの取り組みを、近隣の自治体へも波及させていきたいですね。
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