20年後には職員数が現在の4分の3まで減少するという危機感のもと、横須賀市ではデジタルトランスフォーメーション(DX)が進められています。
年間4万件の請求書処理を効率化すべく、NECの『GPRIME財務会計』をインフォマートの電子請求書システムである『BtoBプラットフォーム 請求書』とAPI連携させ、見積依頼から契約・請求・支払いまでの全てのプロセスを一貫してデジタル化したフローの実現に取り組んでいます。
本記事では、横須賀市が挑んだ会計事務DXの舞台裏を、横須賀市(デジタル・ガバメント推進室)・NEC・インフォマートの3者鼎談にて振返ります。
■ 目次
神奈川県の中核市・横須賀:職員減少のピンチが改革を生む
デジタル・ガバメント推進担当 部長
横須賀市 経営企画部 デジタル・ガバメント推進担当 部長 (以下、横須賀市 部長):横須賀市は約37万人の人口を抱える神奈川県の中核市ですが、市役所の職員数は20年後に4分の3に、さらにその先には2分の1になると試算しています。優秀な人材は民間に転職する傾向があり、毎年各部署で数名ずつ職員が減少するという危機的状況があります。一方で、職員が減っても、住民の暮らしを支えるための行政サービスは維持しなければならない。我々デジタル・ガバメント推進室は2020年に設立され、「役所の文化を破壊する」こと、効率的な行政運営の実現を使命としています。
デジタル・ガバメント推進室 推進担当
横須賀市 経営企画部 デジタル・ガバメント推進室 推進担当 (以下、横須賀市 推進担当):会計事務DX検討のきっかけは、財務会計システムの運用担当をしていた時に目の当たりにした各部署の非効率な請求処理でした。市の業務に不可欠な物品やサービスの購入にあたり、市役所が取引先から受け取る請求書は学校を除いて年間4万通。これを職員がシステムに手入力する作業と、それに伴うミスが発生していました。また、取引先の事業者がわざわざ来庁して請求書を配って回るような慣習も残っていました。
インフォマート 執行役員 齋藤文彦 (以下、インフォマート):民間企業では考えられない光景で驚きましたが、自治体では脈々と受け継がれた「当たり前」になっている。
しかしこれをいつまでも続けることはできないだろうとも感じました。
行政経営グループ長
NEC 社会公共インテグレーション統括部 行政経営グループ長 (以下、NEC):NECとしても、自治体職員の伝票起票や審査業務の負荷は大きな課題だという認識でした。同時に、転記ミスのリスクも含め、デジタル化が解決のカギになると考えていました。
先行者として考える:デジタル化を定着させる工夫
横須賀市 推進担当:BtoBプラットフォームの魅力は、見積から支払まで、請求書受取に伴うシステム入力を含めて一気通貫できる点でした。当初は、横須賀市と取引のある全事業者を対象に導入を進めようと考えていました。しかし現実を見ると、小規模な取引先にはパソコンを使っていないところもあり、一律導入は双方ハードルが高いのではないかと考えなおしました。
改めて市役所の財務会計システムのデータを分析したところ、取引件数上位350社で全体の8割が占められていました。まずはここから着手し、成功事例を作って他に展開していく戦略に切り替えました。
新しいシステムを導入する際は、事前にしっかりと説明することが大切です。主要取引先に対しては、横須賀市とインフォマートで導入背景やサービスの説明を行いました。またWeb説明会やアーカイブ動画配信も行い、多様な事業者が導入しやすい環境を整備しました。2024年10月に説明会を開催し、実運用の開始は12月と、スタートまでの期間は長めに取りました。
インフォマート:運用を開始した後の利用者からの問い合わせ窓口として、当社のカスタマーセンターがございます。新システム稼働後に、不慣れなユーザーから問い合わせが殺到すると、職員の業務に影響が出てしまうので、このような体制は重要だと考えています。
全国初の事例も:三者協働が成功の鍵に
横須賀市 推進担当:今回導入した電子請求システムは順調に運用できており、庁内・取引先ともに好評のため、ひとまず「プロジェクトは成功している」と言えると思います。成功の要因としては、まず市庁舎内のシステム統合の関係で、2024年12月という期限が明確にあり、その期限を厳守しなければならなかったことがあげられます。また、結局は自治体の判断が必要な場面が多々あるので、2社任せにせず横須賀市が主導してプロジェクトを推進していった点も大きいと思います。
インフォマート:BtoBプラットフォームと、NECの自治体財務会計システムのAPI連携は、今回が全国初の事例です。連携の実現や地域事業者向けの説明会など、様々な準備が必要でしたが、今回得られたノウハウが他の自治体においても生かせると考えています。
NEC:今回のプロジェクトについては、横須賀市の強いDX改革意欲と、実行に移す力が成功の要因になったと思います。API連携と、システム導入前後の運用の変化については三者で細かく確認し、疑問点を丁寧に解決していきました。この密な連携が成功につながりました。
横須賀市の未来ビジョンとDXに悩む読者へのメッセージ
横須賀市 推進担当:今後の展望としては、横須賀市と事業者がプラットフォーム上でつながり、そこに他の自治体も加わっていけば、地域発のより広い行政DXが進むと考えています。複数の自治体が導入すれば姿勢は変わるでしょう。
インフォマート:自治体の職員数減少は構造的な問題です。デジタルシステムの利用はそれに対抗する手段となります。システムベンダーとして、使いやすさを追求し、簡単に第一歩を踏み出せるサービスに成長させ、官民双方の生産性向上のお役に立ち続けて参ります。
NEC:NECとしても、自治体の庁内DXから地域DXまで広げていきたい。実際に「横須賀市モデル」を横展開した導入が徐々に増え始めています。横須賀市のような改革マインドを持つパートナーと、行政の未来を一緒にデザインしていきます。
横須賀市 部長:行政DXに必要なのは「改革マインド」です。横須賀市でデジタル利用を進めるにあたっても、様々な抵抗がありました。でも「5人でやっていた仕事を、職員が3人になったとき、あなたは業務を完遂できるのか?」と説明し続けました。コロナ禍への対応で、少ない人数でも仕事が回せるようなしくみづくりに貢献したことで、業務にデジタルシステムを活用することの重要性がようやく認められました。
「デジタルが苦手だから」「忙しいから」は言い訳であって、厳しい環境下で自治体職員として何を守るのか、どの自治体においても原点に立ち返らないといけないと思います。
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