
多可町は兵庫県の東播磨地域の内陸部に位置する、人口2万人規模の自治体です。第五回GtoB会計事務等DX研究会では、多可町の会計事務DXの取り組みについて、財政課 主査 上田慎吾様にご講演いただきました。
■ 目次
紙文書の決裁による会計事務の課題
- ①財政課が決裁する支出伝票は1日約80件、全庁の支出伝票は年間約2万件あり支出伝票の処理業務が負担になっていた。
- ②紙文書の決裁により、印刷や糊付け作業などの業務負担、紛失や情報漏洩・文書改ざんのリスク、記入漏れなどによる差し戻し行為にかかるタイムロス、決裁の現状が確認できないなど多くの課題があり、常に支払遅延のリスクがあった。
- ③小中学校や観光施設など出先機関からの書類提出には片道20~30分かかることもあり、差し戻しの度に1~2日のタイムロスが発生していた。
会計事務DXの実施計画
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STEP1
令和4年上期
- 庁内決裁の押印廃止
- 電子決裁システムを導入
- ※調書や請求書をPDF化し、庁内の電子決裁を開始
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STEP2
令和4年下期
- 事業者の押印廃止
- 会計規則の改定
- 財務会計システムをクラウドへ移行
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STEP3
令和5年11月
- 電子請求書の取引開始
- 請求データを財務会計システムへ連携開始
- 支出命令書の電子決裁開始
令和4年当時、会計事務DXの必要性が浸透していなかったため、2年半~3年をかけて段階的なデジタル化を計画し、電子請求書の導入ありきで逆算して早めに取り掛かった。
- 令和4年上期に電子決裁を導入し、自社サーバーで電子保管。下期には財務会計システムをクラウド版へバージョンアップ。その後、令和5年11月より電子請求書の取引を開始。
- 令和5年初めに財務会計システム(電子決裁も導入)を入れ替えるタイミングで、電子請求書の導入を検討し、財務会計システムと連携実績のあるBtoBプラットフォーム 請求書を採用。
電子請求システムを導入した背景と費用対効果
効果1
請求管理
管理職、担当職員を含め、職員全員が請求書を確認でき、請求書管理がしやすくなった。
効果2
作業時間削減
伝票作成にかかる時間、請求書に不備があったときの差し戻しのやりとりにかかる時間等の削減。
効果3
郵送コスト削減で費用対効果を創出
事業者に請求書処理状況を随時共有し、電子取引分の支払通知書の発送を廃止した。
効果4
支払遅延防止
職員全員が請求書を確認できるので、支払い忘れや遅延がなくなった。
庁内職員と事業者の賛同を得て、電子請求書を導入するための対策
庁内職員 | 事業者 | |
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変化を嫌う傾向が課題。電子決裁を未導入のまま電子請求書を導入すると、押印やPDF化などの変更点が多く、支払スキームの多様化も伴い、職員の抵抗が大きくなると予想。 |
導入前 |
拒否反応を危惧していたが、事業者の費用負担がなく導入できることと、請求業務にかかる作業時間とコストの削減などのメリットから、多くの登録を得た。インフォマートのサポートもあり、運用までの苦労はさほどなかった。 |
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導入への対策 |
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ゴールから逆算したDX計画が成功の鍵
多可町様の会計事務DXは、財政課が主管課になったことと、電子請求書の導入まで見据え、先に財務会計システムをクラウドへ移行したことが特徴的です。多可町様が電子請求システムにBtoBプラットフォーム 請求書を採用された最大の理由は財務会計システムとの自動連携が可能という点でした。このように最初に目指すゴールを決め、そこから逆算して立案するDX計画が、会計事務DXには極めて有効だと考えます。
DXには様々な取り組みがあり、電子請求書の導入は住民向けではないかもしれません。しかし、多可町様は自治体におけるDXの非常に有効な手段の一つであると考え導入を決め、DXの恩恵を最大限に受けるべく、着実に段階を踏まれています。