工事請負契約書には収入印紙が必要。3つの節税方法とは

この記事では、建設業で工事請負契約書に必要な収入印紙代を削減する方法などを詳しく解説します。

建設業では、工事の受発注時に「工事請負契約書」を結ぶ必要があります。工事請負契約書は印紙税法で定められた「課税文書」に該当し、印紙税を納めるために収入印紙を貼付しなければなりません。本記事では、建設業の工事請負契約書や収入印紙の概要、節税する方法を解説します。加えて、電子契約の導入によって収入印紙代を大幅に削減する方法もお伝えしているので、ぜひ最後までご覧ください。

建設業における工事請負契約書とは

建設業における工事請負契約書とは、工事の発注者(施主)と受注者(建築業者)との間で取り交わす書類のことです。ビルや店舗、マンション、住宅といった建物の新築や修繕などが行われる際には、工事請負契約書の締結が必要で、建設業法第19条では、工事請負契約書に関して次のように定められています。

“建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。”

引用:建設業法|e-GOV

建設業法第19条に記載の「次に掲げる事項」には、16項目があります。具体的には、以下の項目などが含まれます。

  • 工事内容
  • 請負代金の額
  • 工事着手・完成の時期
  • 代金の支払方法

なお、「請負契約」は受注者が作成する成果物に対して、発注者が報酬の支払いを約束する契約です。労働の対価として賃金の支払いを約束する「雇用契約」とは異なり、請負契約の目的は仕事を完成させることで、そのプロセスは問われません。建設業の工事請負契約書を取り交わす場合には、工事が完了しない限り、原則として報酬は支払われないことを覚えておく必要があります。

工事請負契約書に貼付する収入印紙とは


建設業の工事請負契約書は、印紙税法によって定められた「課税文書」に該当するため、印紙税を支払う必要があります。印紙税は、収入印紙を工事請負契約書に貼付して納めることになります。なお、収入印紙は通常、上図のように契約書の冒頭や署名欄に貼付します。

収入印紙の金額・軽減措置

工事請負契約書にかかる収入印紙は、契約金額によって異なります。租税特別措置法によって、工事請負契約書に記載の金額が100万円を超え、なおかつ、2014年4月1日から2027年3月31日までの間に作成されるものに関して、軽減措置が取られています。軽減措置後の印紙税の税率とあわせて、収入印紙の金額を見てみましょう。

契約金額 本則税率 軽減税率
100万円を超え200万円以下のもの
400円 200円
200万円を超え300万円以下のもの
1千円 500円
300万円を超え500万円以下のもの
2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの
1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの
2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下のもの
6万円 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 38万円
参考:建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置

収入印紙を貼付しない場合のリスク

印紙税が課される工事請負契約書に収入印紙を貼付せず、税務調査において発覚した場合には印紙税法違反となり、納付しなかった印紙税の3倍の過怠税が徴収されることとなります。ただし、収入印紙を貼っていないと自主的に申し出た場合には、過怠税は1.1倍となります。

収入印紙が必要な文書であるにもかかわらず貼付を怠っていると、本来の税額より高く徴収されることとなり、会社にとって税負担が大きくなります。加えて、過怠税は法人税の損益や所得税の必要経費として計上することが認められていないため、法人としての利益が減ってしまう事態を招きます。

工事請負契約書に必要な
印紙税を節税する方法

前章の表で示したとおり、工事請負契約書に記載する金額が大きくなるにつれ、納付する印紙税も高額になります。年間を通していくつもの大規模工事を受注する場合、高額な印紙税に悩む建設会社も少なくないでしょう。そこで、印紙税を節税する方法を紹介します。

消費税額を区分して記載する

通常、工事請負契約書に記載されている金額は「消費税額」を含んだ金額とされています。 しかし、工事請負契約書など「請負」に関する契約書では、記載金額に消費税額を含めずに記載できるため、印紙税の節税につながるケースもあります。

たとえば、消費税込みの請負金額が「1,100万円」の場合、印紙税は1万円です。しかし、「請負金額が1,000万円、消費税が100万円」である旨を明記することで、印紙税は5,000円となり、節税につながります。

消費税額等を区分した記載方法の例は、次のとおりです。

例1:請負金額:1,100万円(税抜価格:1,000万円、消費税額等:100万円)
例2:請負金額:1,100万円(うち消費税額等:100万円)
例3:請負金額:1,000万円、消費税額等:100万円、合計:1,100万円

複数の課税文書をまとめて作成する

2通以上の工事請負契約書を取り交わす場合には、それぞれに印紙税がかかってしまいます。しかし、複数通を1通にまとめることで、節税できる可能性があります。記載する請負金額にもよるものの、まとめることで節税につながるケースです。

2つの契約内容を1通にまとめる例として、国税庁のホームページでは、「工事請負の契約と、その工事の手付金の受取事実をまとめて記載した契約書」が紹介されています。

契約書を作成する前に、1通にまとめられるかどうかをチェックしてみるとよいでしょう。

参考:第3節 文書の所属の決定等|国税庁

電子契約を導入する

紙の書面すべてを電子契約に置き換えて契約を締結することで、印紙税は0円になります。ほかの方法と比べて、電子契約は、もっとも節税に貢献します。

電子契約とは、電子データを契約の相手方とインターネット上でやりとりし、互いに「電子印鑑」や「電子署名」を付して契約を結ぶ手法です。たとえば、建設業における工事請負契約書は電子化が可能な契約書の一例です。

電子契約は書面ではないため、課税文書に該当せず、印紙税が発生しないと解釈されています。さらに、契約書の印刷代や郵送代などのコスト削減にもつながります。

電子契約について、次章で詳しく紹介します。

工事請負契約書の電子化によって
収入印紙代が0円に

ここでは、工事請負契約書の電子化によって収入印紙代が0円になる法的解釈と、契約の電子化によるコスト削減効果について紹介します。

電子契約で収入印紙代が不要になる理由

「電子契約は非課税」と印紙税法に明記されているわけではありませんが、印紙税法の第2条と第3条、および印紙税法基本通達第44条によって、電子契約では収入印紙代が不要になると解釈されるのが一般的です。

第二条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
(納税義務者)
第三条 別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。

引用:印紙税法|e-GOV

上記の印紙税法第2条によると、課税対象は「課税物件の欄に掲げる文書」とあり、続く第3条では「作成した課税文書に印紙税を納める義務がある」と記載されています。

また、「課税文書の作成」について、印紙税法基本通達第44条では以下のように記載されています。

“第44条 法に規定する課税文書の「作成」とは、単なる課税文書の調製行為をいうのでなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。”

引用:第7節 作成者等|国税庁

印紙税法基本通達第44条では「課税文書となるべき用紙等に」とあるように、紙の書面に書いて交付することが「文書の作成」に該当します。

しかし、電子データは紙ではありません。

国税庁は、「課税文書の作成」には、紙の書面に書いて交付する行為が必要で、現物交付がない電子契約は、印紙税の課税対象外になると、見解を示しています。

このように、電子契約の締結は「課税文書の作成」に当てはまらず、印紙税は課税されないと解釈することが可能です。

また、電子契約は建設業法に適しており、法的効力があります。詳細は以下の記事もご覧ください。

関連リンク
【弁護士監修】建設業法で電子契約は適法。メリットや事例を解説

電子化によるコスト削減効果

電子契約は課税文書に該当しないと解釈できるため、紙の契約書すべてを電子化した場合、収入印紙代は0円になります。
さらに、電子化によるコスト削減効果は、収入印紙代のみにとどまらず、以下のコスト削減にもつながります。

  • 契約業務にかかる人件費
  • 郵送コスト
  • 印字コスト
  • 保管コスト

当社の試算では、現在すべての契約業務を紙の書面で行っている企業が、そのうちの7割を電子契約に切り替えた場合、収入印紙代も含めて約67%のコスト削減効果を期待できると推計しています。

工事請負契約書を電子化するメリット

工事請負契約書を電子化するメリットは、コスト削減効果だけではありません。ここでは、紙の契約書に代わり、ITツールを導入して契約を締結する「電子契約」のそのほかのメリットを紹介します。

契約締結までのリードタイムを短縮できる

工事請負契約書の電子化によって、契約締結までのリードタイム短縮につながります。その理由は、これまで印刷・郵送にかかっていた時間を削減できるためです。通常、1週間以上かかっていた契約書の返送・確認が、データのやり取りによって約10分に短縮できるケースもあります。

また、電子契約システムの管理画面にアクセスすることで、契約の進捗状況も一目で可視化できるようになります。

締結までに時間がかかると、工期に影響して納期遅れにつながる可能性もありますが、電子化を図ることでスピーディーな契約締結が実現し、工期を確保しやすくなるでしょう。

省スペース化が実現する

工事請負契約書を電子化すると、事務所の省スペース化が実現します。

紙の工事請負契約書は、原則5年間、新築住宅の建設工事の場合は10年間保管する必要があります。毎年保管する契約書が増えると、事務所内に保管スペースを確保するのが難しくなってしまいます。また、数が増えると、確認したい書類を探し出すのにも時間がかかるでしょう。

そこで、ITツールによって契約書を電子化すると、物理的な保管スペースを確保し続ける必要がなくなり、システム内の検索機能を活用して見たい書類をすぐに確認できるようになります。

なお、電子ファイルの保存に関しては、電子帳簿保存法10条(電子取引)に求められる保存要件を満たす必要があります。そのため、電子法簿保存法に対応したITツールの導入が重要なポイントです。

押印のための帰社や出社が必要なくなる

電子契約の活用で、工事請負契約書の確認・押印のために、現場からわざわざ帰社してデスクに向かう必要はなくなります。インターネット接続さえあればどこからでも確認でき、リモートワークなど柔軟な働き方を導入しやすくなるでしょう。

現場と事務所間を往復する時間や、現場作業後のデスクワークの時間を削減でき、残業時間の低減も期待できます。

工事請負契約書の電子化に最適なツール
「BtoBプラットフォーム 契約書」

工事請負契約書の電子化には、「BtoBプラットフォーム 契約書」の活用がおすすめです。

「BtoBプラットフォーム 契約書」は、発行側も受領側もWeb上だけで契約が完了する電子契約システムです。紙の契約書を電子化でき、収入印紙代はかからなくなります。

また、電子帳簿保存法にも対応しており、過去に紙でやり取りしていた文書もクラウドで管理できるようになります。

下図で示すとおり、まず発行側が契約書をPDFでシステムにアップロードし、社内承認後、電子署名を付与します。次に、受領側も社内承認後に電子署名とタイムスタンプを付与することで契約締結となります。契約の進捗状況は、システム上で細かく追跡できます。

また、契約書だけでなく、建設業でやり取りが必要なほかの紙の書類を電子化したい場合には、「BtoBプラットフォーム TRADE」がおすすめです。「BtoBプラットフォーム TRADE」を利用することで、見積・発注・受注・納品・検収・請求業務をWeb上で一元管理できるようになります。建設業の商習慣に対応しているプラットフォームで、大幅な業務効率化が実現します。

【導入事例】収入印紙代が0円に|株式会社トライアル開発

全国にディスカウントストア「トライアル」を展開するトライアルグループの「株式会社トライアル開発」は、「BtoBプラットフォーム TRADE」を導入しています。

以前は、店舗の改装・修繕工事で施工業者とやりとりする膨大な紙の書類が課題となっていました。
しかし、「BtoBプラットフォーム TRADE」導入後は、取り扱う紙の量が半減、取引先の経理業務の負担も低減され、さらには、収入印紙代も0円になった事例です。

>>株式会社トライアル開発様の事例はこちらから

まとめ

本記事では、建設業の契約書における収入印紙の取り扱いについて詳しく説明しました。

印紙代の負担は、電子契約の導入で0円になります。

いま建設業界全体で、資材高騰、人件費上昇などさまざまな課題が発生しているなか、経費削減のインパクトが大きい施策は、早急に実行することが推奨されます。

電子契約を今すぐ導入したいとお考えの建設関連企業様は、ぜひ当社にご相談ください。建設業の商習慣に適合した、導入実績の豊富なシステムをご提供しています。詳しいサービス内容は、以下リンクの無料ダウンロード資料でもご紹介しています。ぜひ気軽にご利用ください。

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