自治体DXに役に立つ補助金・交付金! 必要な費用と申請ステップを解説

2024/08/28

自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するためには、例えば、行政手続きのオンライン化、AI・RPAの導入による業務効率化、テレワーク環境の整備、データ利活用基盤の構築、デジタル人材の育成・確保など、多岐にわたる分野での改革が求められます。

DXの推進により、自治体の人材がより能力を発揮でき、また、人件費の削減、業務処理時間の減少、住民の時間やコストの消費の削減等が可能となりますが、一方で、DX推進には新たな費用がかかるため、自治体の財政状況によっては、十分な予算確保が難しいケースもあるでしょう。そこで、国や都道府県の補助金や交付金を有効活用することで、自治体DXを進めやすくなります。また、地域の住民や企業の皆様に活用していただける多くの補助金などもあります。こうした支援措置も、地域の皆様に使っていただきたいものです。

本記事では、自治体がDX推進に活用できる主な補助金・交付金の概要を紹介するとともに、申請の5ステップや注意点、活用のメリットを詳しく解説します。自治体の関係者の方はもちろん、自治体のDX化に関心のある方にも役立つ情報が満載ですので、ぜひ参考にしてください。

自治体DXに必要な費用項目

自治体がDXを推進するためには、以下のような費用が必要になります。

システム開発・導入費用

行政手続きのオンライン化や業務効率化を実現するためには、新たなシステムの開発・導入が不可欠です。例えば、申請書や届出書のオンライン提出を可能にするためのシステム構築、AI・RPAを活用した業務自動化ツールの導入、テレワーク環境を整備するためのシステム導入など、さまざまな場面でシステム関連の費用が発生します。

人材育成・確保費用

DXを推進するためには、デジタル技術に精通した人材の育成・確保が重要です。専門性の高いIT人材を外部から確保する場合は、人件費がかかります。また、既存の職員のデジタルスキルを向上させるための研修費用も必要になるでしょう。中長期的な視点で、デジタル人材への投資を行うことが求められます。

外部委託費用

自治体内だけでは、DX推進に必要な知見やノウハウが不足している場合があります。そこで、コンサルティング会社やIT企業など、外部の専門家に業務を委託することも有効な手段です。ただし、委託費用は決して安くはないため、費用対効果を見極めつつ、クラウドや既存のサービスの活用、独自のシステムの開発など、外部リソースを活用することが重要です。

自治体DXに使える補助金・交付金

自治体のDX推進に活用できる主な補助金・交付金には、以下のようなものがあります。
※2024年7月時点の情報です。

デジタル基盤改革支援補助金

総務省が自治体のデジタル基盤改革を支援するために設けた補助金です。自治体の情報システムの標準化・共通化、行政手続きのオンライン化、マイナンバーカードの普及促進、自治体のAI・RPA活用などを対象とした事業に活用できます。

補助金の交付額は、各市区町村の人口を基準に設定された上限額と、自治体が申請した金額のうち補助対象として認められる経費を比較して決定されます。具体的には、これら二つの金額のうち、より少ない方を基準額とし、この基準額の1/2が実際の補助金交付額となります。

自治体DXに関連する内容で2024年7月時点において申請可能なのは「自治体情報システムの標準化・共通化」です。(令和7年度まで)

ガバメントクラウドファンディング

自治体が抱える課題解決に向けたプロジェクトに対して、クラウドファンディングを通じて広く支援を募る仕組みです。

そのため、クラウドファンディングは市民や企業から直接資金を募る新たな資金調達として活用されています。

行政と民間の共創による新たな資金調達の形として注目されています。

デジタル田園都市国家構想交付金

地方創生の一環として、地方の社会課題をデジタル技術で解決するための交付金です。

スマートシティの推進、地域におけるデジタルインフラ整備、テレワーク環境の整備、農林水産業や観光分野でのデジタル化などに幅広く活用できます。事業内容に応じて、最大3/4の補助率が適用されます。
※令和6年度当初予算分の募集は終了となっています。

デジタル田園都市国家構想の概要や、構想の背景となった社会課題は以下の記事で詳しく解説しています。

自治体が補助金・交付金を申請する5ステップ

自治体がDX推進のための補助金・交付金を活用するためには、適切な申請手続きが必要です。ここでは、申請の流れと注意点を見ていきましょう。

自治体が補助金・交付金を申請する5ステップ

1.補助金・交付金の公募情報の確認

まずは、各省庁や都道府県から発表される補助金・交付金の公募情報を確認することが重要です。そのためには、各省庁や都道府県からの通知、関係機関のWebサイトやメールマガジンなどをチェックし、最新の情報を入手するようにしましょう。

2.申請書類の作成・提出

公募要領を確認したら、事業計画の策定と申請書類の準備を進めます。事業の目的や内容、スケジュール、予算などを具体的に練り上げ、要件に合った申請書を作成します。事前に関係部署と十分に調整を行い、庁内の合意形成を図っておくことも大切です。申請書の記載内容については、特に、事業の必要性や効果、実現可能性などを、的確に、わかりやすく、補助金や交付金の趣旨に合致する説明を心がけましょう。また、必要な添付書類も、添付する意味と相手にとってのわかりやすさに留意しましょう。漏れなく準備し、期限までに余裕を持って提出することが重要です。

申請書の提出方法は、郵送や持参、オンライン申請など、補助金・交付金によって異なりますので、確認しておきましょう。

3.審査を経て交付決定

申請書類を提出すると、審査の過程に入ります。審査基準は事業の公益性や実現可能性、費用対効果などで、さまざまな観点から総合的に評価されます。場合によっては、ヒアリングや現地調査が行われることもあるので、的確な説明と対応が求められます。

審査の結果、採択された場合は交付決定通知が発行されます。通知に記載された交付条件を確認し、交付申請を経て、事業をスタートさせます。

インフォマートでは、デジタル田園都市国家構想交付金などを利用したデジタルサービスの導入サポートが可能です。交付金申請にあたって、準備〜申請までのポイントや注意点などをお伝えします。

4.事業を進行

補助金・交付金を活用して事業を実施する際は、適正な執行管理が重要です。予算の使途や進捗状況を常にモニタリングし、PDCAサイクルを回しながら、より効果的な成果をあげるよう事業を進めていきます。

事業を始めたら、実績報告書の作成に取りかかりましょう。

5.報告書に基づき支給額が確定

実績報告書の作成が完了したら、審査に提出します。審査によって、正しく事業が実施されたかを確認されると、認定された金額分の補助金または交付金が振り込まれます。

交付後も事業報告を求められるケースもあるため、補助金の申請に関連する領収書や書類は、補助事業が終了しても、補助金等の交付要綱に従い適切に保管しておくようにしましょう。

自治体DXが補助金・交付金を利用するメリット

自治体DXの推進に補助金・交付金を活用することには、以下のようなメリットがあります。

自治体の財政負担を軽減できる

補助金・交付金を活用することで、自治体の持ち出し額を抑えつつ、必要な事業を実施できます。

DX推進をスピードアップできる

補助金・交付金の活用により、自治体内での予算確保や合意形成がスムーズに進む場合もあると思います。DXの推進スピードを加速させ、住民サービスの向上や業務効率化の実現を早期に図ることも可能でしょう。

最先端の取り組みにもチャレンジできる

最先端のデジタル技術を活用した事業には、通常よりも高額の費用がかかるケースがあります。補助金・交付金があれば、先進的な取り組みにもチャレンジしやすくなり、自治体のDXを大きく前進させるチャンスになります。

まとめ:補助金・交付金をうまく活用して自治体DXを迅速化

本記事でご紹介したように、デジタル基盤改革支援補助金やデジタル田園都市国家構想交付金など、自治体DXに使える補助金・交付金は多岐にわたります。こうした制度を有効に活用することで、自治体の財政負担を軽減しつつ、デジタル化の取り組みを加速させられるでしょう。住民の皆様のために、使えるものは存分に使って、地域のDXを進めましょう。

補助金・交付金の申請にあたっては、公募情報の確認、申請書類の作成、適切な事業実施と報告など、一連の手続きを適切に行うことが求められます。

自治体DXはもはや避けて通れない課題であり、補助金・交付金の活用は、その推進に向けた大きな武器となります。ぜひ本記事を参考に、自治体DXの取り組みを前に進めていただければ幸いです。

インフォマートでは、デジタル田園都市国家構想交付金などを利用したデジタルサービスの導入サポートが可能です。交付金申請にあたって、準備〜申請までのポイントや注意点などをお伝えします。

「最大限に費用を抑えてデジタルサービスを導入する方法を知りたい」「交付金の申請方法がよくわからない」といったお悩みをお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。

※本記事は更新日時点の情報に基づいています。

監修者プロフィール

松藤 保孝 氏

一般社団法人 未来創造ネットワーク 代表理事
松藤 保孝

自治省(現総務省)入省後、三重県知事公室企画室長、神奈川県国民健康保険課長、環境計画課長、市町村課長、経済産業省中小企業庁企画官、総務省大臣官房企画官、堺市財政局長、関西学院大学大学院 法学研究科・経営戦略研究科教授、内閣府地方創生推進室内閣参事官等を歴任し、さまざまな政策の企画立案、スリムで強靭な組織の構築、行政の業務方法や制度のイノベーションを推進。一昨年退官後、地域の個性や強みを生かすイノベーションを推進する活動を行う。

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