いま、企業だけでなく、各自治体でのDX推進が求められています。DX推進にはどのような必要性があるのでしょうか。自治体がDXを推進することで、地域住民や地域企業にとってはどのような効果があるのでしょうか。それを理解したうえで、自治体がどのようにDXを推進していくのか、総務省が公開している「自治体DX推進計画」に沿って、推進の手順をみていきましょう。
■ 目次
自治体DXはなぜ実現が求められるのか
自治体DXの目的
自治体の役割は、その地域に生活する人々をより幸福にすること(の幸福を創造すること)、またその地域で活動する企業や組織団体が競争力を高め、継続的に活動をできるように支援することです。自治体がDXを達成することで、そこで生活する人々にとっては、教育や子育て、介護・福祉など、より充実した多くのサービスを受けられるようになります。そうなれば、住民はその地域に住みたい、住み続けたいと感じるようになるでしょう。
また、そうした魅力的な地域には人が集まる可能性が高まります。地域に人が集まるようになれば、経済が回り、企業活動も活性化する可能性が高まります。さらに人が集まる地域では、多様な労働力の確保も可能になり、企業活動が継続しやすくなり、より地域の住民や企業が活性化するという好循環が生まれると考えられます。
このように地域のDXが実現されることで、住民の利便性が向上するのみならず、地域で活動する企業も活性化されます。
自治体のDXはこうした地域の魅力を高め、経済活動を活性化させて、暮らしやすい地域を維持・発展させていくための取組です。
自治体DXの進め方や課題と対策については、次の記事が参考になります。
自治体DXの推進計画とは:2020年からの動き
総務省は2020年12月に、自治体が重点的に取り組むべき事項をまとめました。それが「自治体DX推進計画」です。そこには、自治体におけるDX推進の意義、自治体におけるDX推進体制の構築、7つの重要取組事項などが示されました。
その後、2021年にデジタル改革関連法案が成立、同年にデジタル社会の実現に向けた重点計画が閣議決定されました。デジタル社会の実現に向けた重点計画は2022年に改定されています。
さらに、2022年6月には「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」を閣議決定し、「自治体DX推進計画」を改訂して、デジタル人材の確保・ネットワーク強化・AI・RPA等のデジタル技術や自治体マイナポイントの活用など、国の取組と歩調を合わせた地方自治体におけるデジタル化の取組を推進する」としました。
さまざまな取組や方針を打ち出しながら、自治体DX推進計画は第2.3版へと改定され、さらに2024年には第3.0版が公開されています。
まずは2024年に改定された第3.0版自治体DX推進計画の内容をみておきましょう。
意義
政府において「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、めざすべきデジタル社会のビジョンとして「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜」が示されました。このビジョン実現のために、自治体、とりわけ市区町村の役割は重要であり、自治体のDXを推進する意義は大きいとしています。そうしたうえで、自治体DX推進は、すべての国民が安心して自分らしい生き方が選択できる社会をめざすものだとした当初の姿勢はそのままに、自治体においてはまずは、「行政サービスについて、デジタル技術やデータを活用して、住民の利便性を向上させ」「デジタル技術やAI等の活用により業務効率化を図り、人的資源を更なる行政サービス向上につなげる」ことの重要性に着目しています。
計画の対象期間
自治体DX推進計画は2021年1月から2026年3月までを対象期間としています。また、国の動向も反映させながら見直しを行うこととしています。
DX推進体制の構築
DX推進のために自治体が取り組むべき事項を着実に実施するためには、次の取り組みを実施して、推進体制を構築することが望ましいとしています。
<組織体制の整備>
組織の壁を超えて、全体最適化の見地から自治体の情報システムの標準化・共通化等のDXを推進するためには、効果的な推進体制の構築が不可欠です。また、極めて多くの業務に関係する取組を短期間で行うために、「首長」「CIO」「CIO補佐官」「情報政策担当部門」「行政改革・法令・財政担当部門」「人材育成・人事担当部門」「業務担当部門(特に窓口担当部門)」「最高情報セキュリティ対策責任者」等の設置を進め、それぞれの役割を担う人材が連携をして全庁的・横断的な推進体制を構築し、取り組む必要があるとしています。
<デジタル人材の確保・育成>
デジタル人材確保については、自治体DX推進のための外部人材スキル標準を策定して、外部からの任用も検討するとした先の推進体制に示したとおり、庁内において適任者が見つけられない市区町村においては外部人材の任用等も進められています。CIO補佐官等として外部からデジタル人材を任用等している市区町村は2022年(令和4年)9月時点で198団体となりました。こうした状況をふまえ、総務省において、市区町村の人材確保のための支援に取り組む都道府県等に対する伴走支援を実施するとともに、都道府県や複数市町村間で確保した外部人材を共有する仕組みについて、課題や手順、外部人材の働き方等のノウハウを整理することとしています。
デジタル人材の育成については、各自治体において、一般行政職員のデジタルリテラシー向上だけでなく、DX推進リーダーの育成にも積極的に取り組むことが求められる、としています。また、人材育成への取組においては、中長期的な観点で、一般職員も含めた人材育成の重要性や意義、所属や職位に応じて身につけるべきデジタル技術等の知識・能力・経験、研修体系等を設定した体系的な人材育成方針を持つことが望ましいとしています。
デジタル人材の確保・育成については、次の記事が参考になります。
<計画的な取組>
情報システムの標準化・共通化についての目標時期が2025年度(令和7年度)とされており、自治体の行政手続のオンライン化についても継続的な推進が求められているため、まずは、現行のシステムの調査や、スケジュール策定をはじめとして計画的な導入に向けた検討を行うことが重要であるとしています。
また、情報システムの標準化・共通化や行政手続のオンライン化などによる手続の簡素化、迅速化、行政の効率化などの成果を得るためには、単なるシステム更改にとどまらず、標準準拠システムを前提としたオンライン手続を実行するための前提となる業務プロセスを見直したり、関連業務も含めたシステム最適化などに取り組んだりする必要があります。こうした全体を含めた取組をスムーズに実行するためには、「自治体の主な取組スケジュール」を参考にしながら、早期から計画的に取り組むことが必要であると示しています。
<都道府県と市区町村の連携による推進体制の構築>
住民と行政の接点(フロントヤード)の多様化・充実化や情報システムの標準化・共通化等の自治体におけるDXの取組を効果的に実行していくためには、国が主導的な役割を果たしながら、市区町村を含め、自治体全体として、足並みを揃えて取り組むことが重要です。なかでも、都道府県と市区町村が連携してDXを推進する体制を構築することで地域格差のない利便性向上が実現できます。都道府県が市区町村の計画的な取組を支援すし、都道府県が一定の役割を果たすことが期待されています。
また、限られたデジタル人材を市区町村が活用するには、都道府県による市区町村の人材ニーズの把握・調整等を行うほか、複数の市区町村での兼務等の手法も考える必要があります。さらに、デジタル技術の導入に当たっては、データの集積による機能の向上や導入費用の負担軽減、共通する地域課題の解決のノウハウを効果的に市区町村間で情報共有する等の観点から、共同導入・共同利用の推進が有効です。その点においても、都道府県が主導的に行動をし、市区町村との連携による推進体制が求められると示しています。
取組事項
自治体が取り組むべき事項・内容を分類し、具体的に示しています。
自治体DXの重点取組事項
<自治体フロントヤード改革の推進>
自治体フロンドヤードの改革の焦点となるのは、住民が利用する行政サービスをデジタル化して、その接点となる窓口業務へのスムーズなアクセスを実現させることです。たとえば、窓口での対応のみならず、オンラインやモバイルアプリ、自動応答システムといった「行かなくても、書かなくても、いつでもどこからでも行政サービスが利用できる」環境構築を推進することを目指すための取組も含まれています。
<自治体の情報システムの標準化・共通化>
自治体の情報システムの標準化・共通化は、他の自治体との間での情報システムに互換性を高めることで、互いにデータやサービスの連携を容易にすることを重要だとしています。なかでも、災害時においては迅速で的確な情報共有や公共サービスの連携強化が重要です。標準化・共通化されたシステムを使用することで、互いに自治体間のデータ共有がスムーズに行えるような環境構築がめざされています。
自治体の情報システム標準化・共通化については、次の記事が参考になります。
<公金収納におけるeLTXの活用>
公金収納においてeLTAXを活用することで、地方自治体の税金や利用料金といった公金収納プロセスをデジタル化でき、業務の煩雑化を解消することが可能になります。さらに、電子データ管理をすることで、納税記録の整理や検索が容易となるほか、データの正確性も高まると考えられます。
また住民にとってもインターネットを活用することで24時間365日納税手続きがどこからでも可能となることから、申告や納税がしやすくなることも大きな利点です。
<マイナンバーカードの普及促進・利用の推進>
マイナンバーカードは日本国内で一人ひとりに割り当てられた個人番号です。この番号を活用することで、さまざまな行政手続きやサービスが利用しやすくなったり、年金、保険に関わる情報が管理しやすくなったります。このマイナンバーの申請窓口となるのが地方自治体です。地方自治体においては、高齢者やデジタルスキルが低い住民でもスムーズにマイナンバー申請ができるように対応することが重要な取組のひとつだとされています。
<セキュリティ対策の徹底>
自治体における業務のデジタル化が進むなかで、情報セキュリティの重要性が高まっています。セキュリティ対策の徹底は、住民の個人情報や行政データを保護し、安全に守るために不可欠です。
この対策には情報セキュリティーポリシーの策定・職員へのセキュリティ教育・セキュリティ侵害が発生した場合の対応計画の策定が含まれています。
<自治体のAI・RPAの利用促進>
自治体業務、とくに公共料金の請求処理や申請書類のデータ入力などにおいてAIとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の利用することで、効率化とサービスの質向上を図ることがめざされています。
これらの技術活用によって、繰り返し作業を自動化し、人的リソースを戦略的な業務に集中できるようにするための施策です。
<テレワークの推進>
テレワークの推進は、柔軟な働き方を支援し、職員のワークライフバランスを整えることを目的としています。テレワークを導入することで、通勤にかかる時間を減少させ、より多くの時間を本来の業務に充てられるようにするほか、職場外からでも業務が行える体制を整備します。
この取組は、災害時や緊急時においても行政サービスの提供を維持するという側面を持ち、緊急事態発生時の業務継続計画(BCP)の一環としても重要です。
テレワークの推進については、次の記事が参考になります。
あわせて取り組むべき事項
上記に示した自治体が重点的に取り組むべき事項とあわせて取り組むべき3つの事柄をみていきましょう。
<デジタル田園都市国家構想の実現に向けたデジタル実装の取組の推進・地域社会のデジタル化>
住民や地域事業者の利便性を高めるためには、その地域の特性に合わせたデジタル化が図られる必要があります。高速通信網の展開や情報通信基盤の整備も欠かせません。こうしたデジタル実装を実現するためには、通信事業者との連携も図り、デジタル化を推進する必要があります。
デジタル田園都市国家構想については、次の記事が参考になります。
<デジタルデバイド対策>
デジタルデバイドというのは、デジタル化の恩恵を受けられ人と受けられない人の格差を指します。地理的な制約、年齢、性別、障害や疾病の有無、国籍、経済的状況といった要因によって格差を生じさせてはいけません。デジタルに不慣れた人をサポートするための取組を推奨する必要があります。デジタルでバイト対策というのは、すべての住民がデジタルサービスを利用できるようにするためのものです。
<デジタル原則を踏まえた条件等の規制の点検・見直し>
デジタル原則に基づいて、法令等を対象にアナログ規制を見直してデジタル原則への適合の実現をめざします。そのための規制を点検し、見直すことでデジタル技術の活用を妨げる要因を排除することをめざしています。
各団体において必要に応じて実施を検討する取組
各自治体における重点取組事項以外の事項についても、DXを進めるために必要な全体的な取組が進められています。
重点取組事項以外の取組内容については、「BPRの取組」「オープンデータ」「ペーパーレス化」「キャッシュレス化」の推進などが提示されています。
自治体DX推進計画の手順を示す各手順書

つぎに、自治体における手順を確認しておきましょう。
自治体DX推進手順書は「自治体DX全体手順書」「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」「自治体の行政手順のオンライン化に係る手順書」「参考事例集」の4つから構成されています。
それぞれの概要を最新版から確認しておきましょう。
自治体DX全体手順書:第3.0版(2024年4月)
全体手順書は、DXを推進するさいに想定される一連の手順を示したものです。全体手順書にはステップ0からステップ3までの手順が示されています。
ステップ0:DXの認識共有・機運醸成
この段階は、DX推進の前提となるものです。自治体におけるDX推進の意義や目的を共通認識として全職員が理解し、全体として取り組むための意識を醸成することが重要であるとしています。
ステップ1:全体方針の決定
全体方針はDX推進のビジョンや工程表から構成されるものです。ここで示されるビジョンは国が示している「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を示しています。
このビジョン達成のために、DX推進計画に基づいて、自治体の具体的な取組を工程表(取組内容と目標時期等)によって示します。
ステップ2:推進体制の整備
DX推進するための組織としては、全庁的・横断的な推進体制を構築する必要があります。
- DX推進担当部門の設置
- 部門間の連携
- デジタル人材確保・育成
の取組を継続しながら、推進体制を充実させていくことが重要です。
ステップ3:DXの取組の実行
関連ガイドラン等を踏まえながら個別のDXの取組を計画的に実行します。実施にあたっては、PDCAサイクルを活用して進捗管理をし、定期的に効果の確認や見直しを行いながら継続することが重要としています。
自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書:第3.0版(2023年9月)
情報システムの標準化・共通化を図るための手順を示したものです。本資料には、全自治体が円滑かつ安全にシステムの標準化・共通化を進めるため、標準化・共通化に向けた作業項目やフェーズ毎に想定される作業手順等が掲載されています。
作業手順として、標準準拠システムへの移行は「計画立案」「システム選定」「移行」の3つのフェーズにとって作業項目が示されています。
計画立案フェーズ
まず首長のリーダーシップによる推進体制の立ち上げと現行システムの基礎情報を調査します。その後、標準仕様書と現行システムの仕様・現行業務フローとの差異の分析や移行計画作成を実施します。
システム選定フェーズ
計画立案フェーズで作成した移行計画を踏まえて、ベンダへの情報提供依頼、移行計画の詳細化、予算要求などを行います。また各ベンダから提供された提案書等を参考に、標準準拠システム提供ベンダを選定します。
移行フェーズ
移行フェースでは、標準準拠システムへの移行に伴って、実際の画面・帳票確認や事務運用の変更内容の確認、ネットワーク接続などを実施します。
自治体の行政手順のオンライン化に係る手順書:第3.0版(2024年4月)
行政手続きをオンライン化するにあたり、想定される手続きを示したものです。
本資料には、自治体が行政手続のオンライン化を図る必要性やメリットを示し、取組方針についても解説しています。また具体的な作業手順として①推進体制の構築、②オンライン化に取り組む手続の検討、③仕様検討・調達、④サービスの導入、運用、⑤全体スケジュールのイメージとして示しています。
①推進体制の構築
オンライン化に取り組むにあたっては、早期に全庁的・横断的な推進体制を立ち上げることが重要です。また、オンライン化の目的・意義、検討スケジュールなどを丁寧に説明し、全庁的に共通認識をもち、協働できる環境整備が必要です。
②オンライン化に取り組む手続の検討
自治体を4類型に分類したうえで、取り組む手続の検討手順をしめしています。
- 今後、行政手続のオンライン化に取り組む自治体
- 現在、ぴったりサービスを導入し、オンライン化を実施している自治体
- 現在、汎用的電子申請システムを導入し、オンライン化を実施している自治体
- 手続により、ぴったりサービスと汎用的電子申請システムをそれぞれ導入し、オンライン化を行っている自治体
③仕様検討・調達
DX推進担当部門や情報政策担当部門、行政改革担当部門を中心として、プロジェクトを立ち上げ、オンライン化に取り組む手続が決定された後に、関係規定等の検討・整備、予算要求、調達仕様の作成、システム導入に向けた具体的な作業を開始します。
④サービスの導入、運用
ベンダからシステムを調達した後は、関係部門は事業者と契約を結び、本番システム環境の機能を確認したり、実運用の流れを確認したりします。また、必要に応じて、事務運用マニュアル等を整備をします。運用開始後も引き続き、広報誌やホームページを活用して、住民が必要な手続をインターネットで検索したさいに、わかりやすく開示ができるように広報につとめます。
さらに、住民の反応や率直な意見を聞きながらサービス改善をすることが重要です。
⑤全体スケジュールのイメージ
各取組やフェースごとに目標期日をわかりやすく示したスケジュール表を作成し、共有します。
参考事例集:第2.0版(2024年4月)
参考事例集は先行的な自治体が実施している取組を紹介したものです。一部の事例については、他の自治体の参考になることから全体手順書に掲載されています。
自治体DX推進で確認しておきたい参考資料一覧
DXを推進するさいに、参考にしたい資料は以下のものです。2020年から必要に応じて改定されています。最新版の情報を確認すると同時に、改定の意義や取組の動向を理解するためにも、旧版の内容も把握しておきましょう。ここでは最新版を紹介しています。
自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画 第3.0版(2024年4月)
「デジタル・ガバメント実行計画」に掲げられた各施策のなかで、自治体が重点的に取り組むべき事項や国による支援策が記載されています。自治体DX推進に取り組むさいに基本的な内容確認に役立つ資料です。
自治体DX推進手順書
「自治体デジタルトランスフォーメーション(DX)推進計画」を確実に進めるための手順を確認できます。次の4点から構成されています。各手引書、参考事例集については上記に解説をしています。
- 自治体DX全体手順書【第3.0版】
- 自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第3.0版】
- 自治体の行政手続きのオンライン化に係る手順書【第3.0版】
- 自治体DX推進手順書参考事例集【第2.0版】
地域社会のデジタル化に係る参考事例集 第3.0版(2024年5月)
これから地域社会のデジタル化に係る事業を検討・実施するさいに、確認しておきたい資料です。
AI等の先進技術の活用事例や低コストでの運用事例等、デジタル実装の進展に資する事例を紹介し、事業効果についてもわかりやすく掲載した資料です。
掲載している事業分野は、地域活性化、住民生活、消防・防災、医療・福祉・健康、子育て、公衆衛生、環境、労働、農林水産業、商業・工業、観光、交通、土木・インフラ、文化・スポーツ、教育、デジタルデバイド対策、地域におけるデジタル人材の育成、孤独・孤立対策、キャッシュレス、ローカル5Gの20分野です。それぞれの分野で参考となる取組事例を紹介しています。
自治体DX推進の事例
大阪府高槻市:住民の利便性向上と業務負担軽減を実現した電子申請サービスの導入
高槻市では、行政サービスの事前予約や来訪時に住民の負担が大きかったこと、また、子育て関連部署における窓口対応業務が煩雑化して労働時間が長時間になる傾向があったことなどが課題でした。そこで2010年よりe-TUMOの利用を開始。イベントの参加申し込みや水道の開閉栓申し込み、住民アンケートなどのほか、子ども関連部署の利用として妊娠届の窓口予約や、オンラインによる子育て相談、保育施設に関する説明会参加予約などに利用しています。職員が電話での予約受入れに対応していたときは、対応時間が長かったことや、聞き間違いや記入間違いなどが発生していました。ネット予約できる環境を構築したことで、ミスの軽減、業務の大幅な効率化が実現できました。
千葉県千葉市:電子申請によるがん検診の申し込みや予約受付を開始。受診率改善や業務負担の軽減につなげたい
千葉市は外部企業への業務委託を行い、がん検診の申し込みに電子申請ができるようにしました。従来、がん検診の申請は電話、FAX、はがきによるものでしたが、2023年度から電子申請を可能にしました。結果、住民の利便性が向上することで、がん検診への受診率改善につなげることができると期待しています。また、外部企業へ業務委託することによって職員の業務負担軽減が実現できました。
まとめ:業務の効率化を図るとともに、地域の魅力を高め、地域事業者の利便性向上や住民の暮らしやすい環境構築をめざす
自治体DXはすぐに取りかかり、確実に実行すべきものです。大きな目的は、地域の魅力を高め、住民や地域事業者の利便性を向上させ、活性化させていくことです。
また、DXを推進するなかで、庁内業務が見直され、効率化されることによって、職員の働き方改革も実現すると期待されるものです。
本記事で紹介してきたように、自治体情報システムの標準化・共通化が実現され、各自治体が互いにデータ共有ができるようになることで、住民が他地域へ転出・転入するさいの手続もよりスムーズになります。さまざまな点でメリットのあるオンライン化ですが、セキュリティ対策の徹底は前提となるものです。
さらに自治体業務においてAIやRPAの利用が推進されることで、職員の業務負担が軽減され、働き方改革にもつなげられると期待されています。テレワークが可能となる体制を構築することも、自治体業務のオンライン化やセキュリティ対策の徹底があってこそ実現可能となります。
このように、自治体DX推進計画が着実に確実に実行されることで、事業者との取引においても会計DXを実現することができます。
デジタルを活用し、自治体業務の見直し、事業者との取引、住民へのサービス充実など、多くの改善が実現できると期待されています。まずは自治体DX推進計画をはじめ、さまざまな取組手順書を把握し、現状と目標との差を解消するための対策に取り組みましょう。
※本記事は更新日時点の情報に基づいています。
監修者プロフィール

一般社団法人 未来創造ネットワーク 代表理事
松藤 保孝 氏
自治省(現総務省)入省後、三重県知事公室企画室長、神奈川県国民健康保険課長、環境計画課長、市町村課長、経済産業省中小企業庁企画官、総務省大臣官房企画官、堺市財政局長、関西学院大学大学院 法学研究科・経営戦略研究科教授、内閣府地方創生推進室内閣参事官等を歴任し、さまざまな政策の企画立案、スリムで強靭な組織の構築、行政の業務方法や制度のイノベーションを推進。一昨年退官後、地域の個性や強みを生かすイノベーションを推進する活動を行う。