「2025年の崖」と「2025年問題」を克服するための変革を

2025/02/28
「2025年の崖」と「2025年問題」を克服するための変革を

いよいよ現実になる「2025年の崖」と「2025年問題」

「2025年の崖」、「2025年問題」と言われる2025年を迎えました。

「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で初めて使用された言葉です。多くの経営者は、将来の成長や競争力強化のためにDXの必要性を理解しているものの、事業部門ごとに構築されている時代遅れの既存システムの存在や現場の抵抗によりDXが進まず、2025年以降、最大12兆円/年(2018年当時の約3倍)の経済損失が生じる可能性があり、2025年までに集中的にシステムを刷新する必要があると指摘された課題です。そして、過去の技術や仕組みにより構築され、今となっては時代遅れになっている旧式のITシステム=「レガシーシステム」が、DXの足かせとなっていることが大きな問題と指摘されました。

「2025年問題」は、日本に約800万人いるとされる第一次ベビーブーム(1947~1949年)に生まれた「団塊の世代」が、2025年には75歳以上になり、国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となる超高齢化社会を迎え、雇用、医療・介護、財政等の面で、日本の経済や社会に深刻な影響を及ぼすことです。

この問題の先には、労働人口の減少や人口全体の減少が顕著になる2030年問題、団塊ジュニア世代が高齢者になる2040年問題がやってきます。「2025年の崖」、「2025年問題」への対応を不要と考える方はいないと思います。行政の業務のDX、地域の住民や企業の方々のDXの促進といった2025年の本気の改革が真剣に求められています。

DXの遅れが地域の衰退を招く

一方で地域の住民や企業の皆様にとっては、大きなチャンスの時代です。DXによりその個性や強みを生かすことが可能になりました。しかし、DXが遅れればせっかくのチャンスが危機となり、さらなる衰退が危惧されます。

自治体が特に留意すべきは「レガシーシステム」よりもさらに根深い問題として、インターネットがなかった何十年も前と同じ業務処理が続いていることが挙げられます。

現在の業務のやり方を変えることの心配やさまざまな抵抗もあるとは思いますが、現代では不適切な業務のやり方により、住民や地域の企業の方々に、本来不必要なコストや時間を払わせ続けてはいけないと思います。不必要に、住民の皆様の可処分所得、可処分時間、可処分エネルギーを奪わないことが、「2025年の崖」、「2025年問題」対応の必要最低限の第一歩だと思います。

自治体業務のDXが地域の未来を左右する

特に、住民や地域の企業で働く人の所得の上昇、そのための生産性の向上等は、地域経済を崩壊させないために極めて喫緊かつ重要な課題です。そうした生産性の向上を直接促進するために、そして、自治体職員の皆様の政策立案を増やすためにも、自治体業務のDXは極めて優先度が高く避けて通れないテーマだと思います。人生で数回しか行わない行政手続きや余暇活動に関する公共施設の利用申請等と異なり、毎日・毎月日常的に、何十回、何百回と自治体と地域の企業との間で行われている請求、契約等の業務のデジタル化は、地域住民や企業の生産性向上にとって大きな問題です。これらのデジタル化が進めば、地域の企業が全国の企業との取引がより活性化される可能性も広がります。

「2025年の崖」、「2025年問題」への対応に、そろそろ本気を出しませんか。なんとかなるだろう、国が何とかしてくれるだろうという逃げや先送りの姿勢では、この問題を乗り越えることはできません。自治体職員のあなたの行動を、住民は待っています。

本コラムの著者プロフィール

松藤 保孝 氏

一般社団法人 未来創造ネットワーク 代表理事
松藤 保孝

自治省(現総務省)入省後、三重県知事公室企画室長、神奈川県国民健康保険課長、環境計画課長、市町村課長、経済産業省中小企業庁企画官、総務省大臣官房企画官、堺市財政局長、関西学院大学大学院 法学研究科・経営戦略研究科教授、内閣府地方創生推進室内閣参事官等を歴任し、さまざまな政策の企画立案、スリムで強靭な組織の構築、行政の業務方法や制度のイノベーションを推進。一昨年退官後、地域の個性や強みを生かすイノベーションを推進する活動を行う。

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