35条書面(重要事項説明書)とは?
不動産取引における35条書面(重要事項説明書)は、取引の透明性と当事者の権利保護を支える重要な書類です。近年、デジタル化が進む不動産業界では、2022年の宅建業法改正により35条書面の電子化が可能となり、業務効率化の期待が高まっています。しかし、その作成や交付には細心の注意が必要であり、不適切な対応は法的制裁のリスクを伴います。本記事では、35条書面の基本から実務に役立つ情報まで詳しく解説します。
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資料ダウンロード(無料)35条書面の基本

35条書面は宅地建物取引業法に基づく重要書類です。その基本的な概念について理解を深めましょう。
宅地建物取引業法35条の概要
宅地建物取引業法35条は、宅建業者に対して重要事項説明の義務を課しています。この条文は、取引当事者、特に買主や借主の利益を守るために設けられました。具体的には、物件の権利関係、法令上の制限、取引条件など、契約の判断に影響を与える重要な情報を、契約締結前に書面で説明することを義務付けています。この説明義務は、取引の公正さを担保し、後のトラブルを未然に防ぐ役割を果たしています。
35条書面と37条書面の違い
混同されがちな35条書面と37条書面ですが、その役割には明確な違いがあります。35条書面は契約前の重要事項説明に用いられ、取引の判断材料を提供することを目的としています。一方、37条書面は契約締結時に交付される契約書そのものを指し、具体的な契約内容を明記するものです。このように、両者は不動産取引の異なる段階で重要な役割を果たしており、それぞれの特性を理解することが重要です。
35条書面 (重要事項説明書) |
37条書面 (契約書) |
|
---|---|---|
交付 時期 | 契約が成立する前に説明する | 契約締結時に取り交わす |
交付する相手 | 買主・借主 | 売主・買主または貸主・借主 |
作成者 (交付・説明) |
作成・交付:宅地建物取引業者 説明:宅地建物取引士 |
作成・交付:宅地建物取引業者 (従業員が行うことも可能) |
記名押印 | 宅地建物取引士 | 宅地建物取引士 |
備考 | 「宅地建物取引士」を提示する義務がある | 相手方から請求された場合、「宅地建物取引士」を提示する (義務ではない) |
2022年宅建業法改正
2022年の宅建業法改正は、35条書面の取り扱いに大きな変化をもたらしました。最も注目すべき点は、電磁的方法による交付が可能になったことです。これにより、従来は紙の交付のみ認められていた35条書面を、電子メールやウェブサイトを通じて提供できるようになりました。ただし、電子的に提供する際には、あらかじめ相手方の承諾を得ることが必要です(宅地建物取引業法35条8項、同法施行令3条の3第1項、同法施行規則16条の4の10及び16条の4の11)。承諾は、書面または電磁的方法で取得する必要があります。
また、IT重説(オンラインでの重要事項説明)の導入も認められ、不動産取引のデジタル化が大きく前進しました。この改正は、不動産取引のデジタル化が大きく進展しました。これにより、業務効率化とペーパーレス化の促進が期待されています。
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資料ダウンロード(無料)35条書面の実務上のポイント

35条書面の作成と交付は、宅建業者の重要な業務の一つです。その具体的な手順と注意点について解説します。
重要事項説明の実施者と方法
重要事項説明は、宅地建物取引士が行わなければなりません。説明の際は、宅建取引士証を提示し、35条書面に記名することが義務付けられています。 説明は対面で行うのが原則ですが、2022年の法改正以降、IT重説も正式に認められるようになりました。対面またはIT重説のいずれの方法でも、取引当事者が内容を十分に理解できるよう、分かりやすい言葉で丁寧に説明することが重要です。
交付のタイミングと相手方
重要事項説明書(35条書面)は、契約締結前に交付する必要があります。交付先は、売買取引の場合は買主、賃貸借取引の場合は借主です。相手方が内容を十分に検討できるよう、余裕を持って交付することが望ましいです。
重要事項の説明は宅地建物取引士が行う必要があり、対面またはIT重説のいずれの方法でも宅建取引士証の提示が義務付けられます。説明は相手方が内容を十分理解できるよう、わかりやすく丁寧に行うことが大切です。実務上は、賃貸借では内見後、売買では価格交渉が整った後など、具体的な商談段階で行われるのが一般的です。
なお、相手方が宅建業者の場合は、2022年の法改正により、35条書面の交付は必要ですが、重要事項の説明自体は省略できるようになりました。
35条書面の記載内容と注意点
35条書面には、物件の所在地や面積、法令上の制限、取引条件などの重要事項を漏れなく記載する必要があります。特に、物件の瑕疵や特殊な権利関係などは、買主や借主の判断に大きく影響するため、正確で詳細に記載する必要があります。また、専門用語を使用する際は、分かりやすい説明を付け加えるなど、相手方の理解を促す工夫が必要です。
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資料ダウンロード(無料)35条書面に関するトラブル事例と対策

35条書面に関するトラブルは、不動産取引における重大な問題につながる可能性があります。ここでは、典型的な違反事例とその対策について解説します。
よくある違反事例
35条書面に関する違反事例は多岐にわたります。最も多いのは、記載内容の不備や誤りです。例えば、物件の権利関係や法令上の制限について正確に記載していない、取引条件を曖昧に記載しているなどの事例が見られます。
また、35条書面の交付時期に関する違反も少なくありません。契約締結直前に交付するなど、相手方が内容を十分に検討する時間的余裕を与えていないケースがあります。
さらに、宅地建物取引士以外が重要事項説明を行う違反もあります。これらの違反は、取引当事者の利益を害するだけでなく、不動産取引全体の信頼性を損なう結果を招きかねません。
違反時の罰則と処分
35条書面に関する違反行為には、宅地建物取引業法に基づいて厳しい罰則や行政処分が科されます。違反の程度に応じて処分内容は段階的に厳しくなっていきます。軽微な場合は業務改善の指示や勧告にとどまることが多いでしょう。一方、重大な違反では業務停止命令が出される可能性が高くなります。業務停止期間は違反の深刻さによって決定されますが、最長で1年に及ぶケースも見られます。
さらに悪質な場合や反復的な違反の場合は、宅建業者の免許取消処分が下されることもあります。これらの処分は、宅建業者の信用を大きく損ない、事業継続に重大な影響を与えます。また、違反行為によって取引当事者に損害を与えた場合、民事上の賠償責任を負う可能性もあります。
トラブル防止のためのチェックポイント
35条書面に関するトラブルを防止するためには、以下のようなチェックポイントに注意を払う必要があります。
- ・ 最新の法令や通達の確認
- 35条書面の作成時には、最新の法令や通達を確認し、記載すべき事項を漏れなく正確に記入することが重要です。
- ・ 物件情報の徹底調査
- 物件の権利関係や法令上の制限については、登記簿や役所での調査を徹底的に行い、最新の情報を反映させましょう。
- ・ 適切な交付時期の設定
- 35条書面は、契約締結の少なくとも数日前には交付し、相手方が内容を十分に検討できる時間を確保することが望ましいです。
- ・ 宅地建物取引士による説明の徹底
- 重要事項説明は必ず宅地建物取引士が行い、説明時には宅建取引士証を提示することを徹底しましょう。
- ・ 社内の複数人チェック体制の導入
- 35条書面の内容や交付手続きに誤りがないか、複数の目で確認する体制を整えることが有効です。
- ・ 定期的な社内研修の実施
- 35条書面に関する最新の法改正情報や注意点を共有するため、定期的な社内研修を実施しましょう。
これらのチェックポイントを意識し、慎重かつ丁寧な対応を心がけることで、35条書面に関するトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
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資料ダウンロード(無料)35条書面の電子化による実務の変革

35条書面の電子化は、不動産取引の効率化と利便性向上に大きく寄与しています。その具体的な方法や業務効率化の影響を解説します。
IT重説と電子交付の導入
IT重説の導入により、遠隔地にいる相手にも重要事項説明を行えるようになりました。実施にあたっては、映像と音声が双方向でやり取りできる環境を整え、説明内容が相手方に確実に伝わるよう配慮する必要があります。また、35条書面の電磁的方法による交付も可能になり、事前に電子的に送付し、相手方が内容を十分に確認できる環境を整えることが重要です。これらの方法は利便性が高い一方で、通信環境のトラブルなどのリスクもあるため、十分な準備と対策が求められます。
書類作成と管理プロセスの変革
35条書面の電子化により、書類作成と管理のプロセスが大きく変わりました。従来の紙ベースの作業から、デジタルツールを使用した効率的な作業へと移行しています。具体的には、テンプレートの活用による作成時間の短縮、デジタル署名による承認プロセスの迅速化、クラウドストレージを利用した保管の効率化などが実現しました。
また、電子データの特性を活かし、過去の書類の検索や更新が容易になり、情報の再利用性が向上しました。これにより、宅建業者の業務効率が大幅に改善され、人為的ミスのリスクも軽減されています。
一方で、データセキュリティの確保や、システム障害時の対応など、新たな課題にも直面しています。そのため、適切なバックアップ体制の構築やセキュリティ教育の実施など、デジタル時代に適した業務体制の整備が求められています。
電子契約システムの活用と業務変革
電子契約システムの活用により、35条書面の作成から交付、署名まで一連のプロセスを電子的に管理できるようになり、業務効率の大幅な向上が期待できます。ただし、システムの選択にあたっては、セキュリティ機能や法令遵守の観点から十分な検討が必要です。
また、社内での運用ルールの整備や、従業員への教育も重要です。電子契約システムの導入は、業務のデジタル化を超えて、不動産取引全体のプロセス改善にもつながります。
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資料ダウンロード(無料)まとめ

35条書面(重要事項説明書)は、不動産取引における重要事項説明の要となる文書です。2022年の法改正により電子化が可能になり、より効率的な取引が可能になりました。しかし、その作成と交付には細心の注意が必要です。適切に対応することで、取引の円滑化と顧客との信頼関係の構築が可能になります。宅建業者は、常に最新の法改正情報をキャッチアップし、適切な対応を心がけることが重要です。35条書面を通じて、透明性の高い、安心できる不動産取引の実現を目指しましょう。
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宮内 宏 弁護士
宮内・水町 IT法律事務所
1985年に東京大学工学系大学院電子工学専門課程(修士課程)卒業。同年、日本電気株式会社に入社し、中央研究所にて、情報セキュリティ、AI等の研究に従事。その後、東京大学法科大学院を経て、2008年に弁護士登録。
現在は電子契約を始めとする電子取引や電子署名に関する法律業務に従事。政府や地方公共団体の委員を多く務めており、上場会社の社外役員、大学の非常勤講師にも就任。
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