仙台を拠点に食肉卸を展開する株式会社トーチク。居酒屋やホテル、ラーメン店など顧客ごとの細かな加工要望に応える一方で、受注現場はアナログな対応による過重な負担を抱えていました。
留守電に残されたあいまいな注文内容や、難読なFAX発注書からの伝票入力、加工指示書の作成が煩雑だったことから、受発注システム『TANOMU』を導入。属人化していたベテランのノウハウをデジタルへ移行し、働きやすい環境を構築したといいます。
ココがPOINT!
- 深夜の留守電対応が激減し、早朝の受注当番を2名から1名へ集約
- 加工指示書の作成が40分から15分に。入力ミスや確認の負担も解消
- 伝票入力が1時間早まり、配送トラックの早期出発と定時退勤を実現
多彩なニーズに応える加工力と属人化するアナログ受注の限界
事業内容について教えてください。
営業本部長(以下同):
当社は宮城県仙台市を拠点に、県内外へ広く食肉を卸しています。自社が保有する加工部門で、味付け牛タンやチャーシューといった加工品の自社販売に加えて、精肉の卸売りでもお取引先様ごとに異なる細かな要望へお応えしています。
売上比率は精肉が7割、加工品が3割ほどで、取引先は仙台市内の居酒屋やホテル、ラーメン店、量販店など多岐にわたります。
お取引先様ごとの細かな要望とは、どのような内容でしょうか。
お肉のカット一つとっても、スライスの厚さや手切りの指定、さらには冷凍かチルドかといった規格が取引先ごとに決まっています。取引先が約600社あり、それぞれ10種類ほどのアイテムがあるとすれば、6,000パターンの組み合わせが存在する計算です。
これまでは、その膨大な情報をベテランの受注担当が「このお取引先様からこの注文が来たら、こういう加工にする」と頭の中で変換しながら対応していました。
非常に高度なスキルですが、現場の負担も大きそうですね。
まさにそこが課題でした。以前は留守番電話やFAXでの注文が中心で、深夜に入った注文を処理するために、毎朝5時から2名体制で早出当番を行っていました。一人がひたすら留守電を聞き取って書き起こし、もう一人がそれを受けて現場への加工指示書を手書きで作成するのです。留守電は一晩で50件にも上り、聞き取り作業だけで1時間近くかかっていました。さらに、注文内容が曖昧な場合は担当営業への確認作業も発生します。ミスが許されないプレッシャーもありました。
業界特有の事情に精通したシステム選びと導入への一歩
どのように解決していったのでしょう?
受注内容が電話・FAXでなくデジタルデータで明確になれば、営業や加工担当、入力事務のすべてが効率化できると考え、2024年4月に受発注システム『TANOMU』を導入しました。他社のシステムも検討しましたが、地元で関係性のある同業の青果卸などが先に『TANOMU』を導入して活用している実績を聞いていました。食品業界の商習慣に強く、モバイルで簡単に発注できる仕組みであれば、お取引先様にも勧めやすいと感じたことが決め手でした。
準備段階で苦労された点はありましたか?
商品登録作業には時間を要しました。お取引先様ごとに呼び名が異なる商品をどう整理し、システム上に落とし込むかという点です。ですが、サポート担当の方が基幹システムからのデータ移行を丁寧にお手伝いしていただいたので、稼働することができました。登録方法を覚えたことで、自分たちで商品登録できるようになりました。
取引先へ発注方法を切り替える案内は、スムーズに進みましたか?
最初は案内の進め方に迷っていたところ、インフォマートが案内書面を取引先に郵送して利用促進するというサポートをやっていたので利用しました。そこから、『TANOMU』を使って発注いただく取引先が徐々に増え、今では自分たちで問題なく切り替え方法を案内できています。
「商品が登録されていない」といった問い合わせもありましたが、その都度迅速に追加対応を行いました。若い店主様などはスマホでの発注にすぐに慣れていただき、いつもの商品リストにないものも備考欄を活用して注文してくれるなど、使いこなしていただいています。現在では、電話やFAXで注文されていたお取引先様の7割ほどが『TANOMU』へ移行しています。
朝の風景が一変。指示書作成時間は40分から15分へ短縮
導入後、現場の業務はどう変化しましたか?
最も劇的な変化は、早朝の風景です。50件あった留守番電話は、今では10件程度に激減しました。これにより、毎日2名必要だった早出当番は1名で回せるようになったのです。
また、加工する担当者ごとに指示書を絞り込んで印刷できるのも助かっています。導入後に新機能が追加されて実現したのですが、商品ごとの加工担当者を設定することで、集計画面から担当者名を検索して該当商品分だけの集計表を出せるようになりました。この機能のおかげで、40分以上かけていた指示書作成を15分まで削減できました。6割の工数削減です。
配送業務への影響はありましたか?
受注内容が明確になったことで伝票入力の確認作業が大幅に減りました。以前は不明点を営業に確認しながら入力していたため、作業が終わるのは10時を過ぎることも珍しくありませんでした。現在は9時過ぎには入力が完了します。入力が1時間早まるということは、配送トラックの出発も1時間早まることを意味します。結果としてドライバーの帰社時間も早くなり、会社全体の残業削減につながっています。
他にも、ストレスからの解放があります。FAXの文字が読み取れなかったり、留守電の声が聞き取りにくかったりする不安がなくなりました。規格の勘違いによる加工ミスも防げるようになり、精神的な余裕が生まれました。
また、特定のベテランがいなくても正確に指示が出せるようになったことで、業務の属人化も解消されつつあります。
販促機能の活用と、紙のない現場を目指す未来像
メッセージ配信機能はどのように活用されていますか?
年末年始の営業日の配信や、賞味期限が近い商品のセール案内に活用しています。以前は営業担当の口頭伝達に頼っていましたが、これでは伝え漏れが発生します。『TANOMU』で一斉配信を行うようになってからは、案内した商品が即座に売り切れることも増えました。これがきっかけで定番商品として採用されるケースもあり、販促ツールとしての手応えを感じています。
今後の目標や、IT化を通じて実現したい展望をお聞かせください。
将来的には完全なペーパーレス化を実現したいと考えています。現在はまだ請求書や複写式伝票が紙で残っていますが、デジタルへの移行をさらに進めたい。また、現在は施設系の取引先など一部でFAX受注が残っていますが、週間発注機能などの準備が整い次第、順次『TANOMU』への集約を進めていく予定です。
属人化したノウハウに頼るのではなく、誰が担当してもミスなく効率的に動ける仕組みを作ることが、これからの食肉卸売には不可欠だと確信しています。
※掲載内容は取材当時のものです。





