「旅館とはこういうもの」を覆す、新時代の旅館経営を目指して
【Q】指宿白水館の特徴を教えてください。
取締役 社長室長 金丸芳久様:指宿は薩摩半島南部に位置し、鹿児島を代表する温泉観光地です。白水館は鹿児島市内で1947(昭和22)年に創業し、指宿に移っての営業も60年を超えました。風光明媚な錦江湾を望み、東京ドーム約4個分の広大な敷地に、本館と4棟205室の客室、プールや庭園、美術館などを備えています。
一年を通じて日本全国、また海外からも多くのお客様がお越しになります。江戸時代の銭湯の歴史を再現した1000坪の大浴場や、名物の砂むし温泉などさまざまな浴場と、地元の旬の食材をふんだんに用いた料理の数々でお楽しみいただいています。
近年では、将棋の竜王戦で対局の舞台ともなりました。指宿を代表する旅館のひとつとして、郷土色豊かなおもてなしを心がけ、地域全体を盛り上げていきたいと考えています。

【Q】心づくしのおもてなしのためには、多くの従業員の力が必要ですね。

株式会社指宿白水館
取締役 社長室長 金丸芳久様
我々に限らず、宿泊業は24時間365日の営業が基本です。もちろん交替制ですが、不規則な長時間労働、世間がお休みの時はかき入れ時で逆に休めない、といったイメージもあります。
人手不足と高い離職率は、業界全体の深刻な課題です。「旅館とはこういうもの」という既成概念を覆していかないと、どんな老舗も遠からず廃業に追い込まれかねないとすら感じています。
従業員、特にこれからを担う若い人たちに、楽しく長く働いてもらうために、業務改善は必須です。問題意識と危機感を持った取り組みは経営陣の使命であると考えています。
たとえば、今年2020年から実験的に休館日を設ける予定です。閑散期を選び休館することで、従業員にリフレッシュしてもらうだけでなく、騒音の出る大がかりな設備改修などが行えます。
お客様の安全を守り、快適にお過ごしいただくためにも耐震工事やリニューアルは不可欠で、休業して売上が落ちても、それ以上の効果があるでしょう。
【Q】「働き方改革」も追い風になっていますか?
休館に関しては、お客様や旅行会社からも理解を得られやすいのではと感じます。結局、従業員が楽しく幸せに働けないと、お客様に心からのサービスも提供できません。
他にも、2019年から内閣府所管の企業主導型保育事業として「いずみ保育園」を社内で運営し、従業員の家族だけでなく地域のお子様も受け入れています。また、料理場や経理の作業効率をアップさせるために、食材などの仕入れは『BtoBプラットフォーム 受発注』を使ってシステム化しています。