働き方改革・DX推進など、総務部門の業務環境は大きく変化しています。しかし、テレワーク中にも『ハンコのための出社』が常態化するなど、業務範囲が広い総務部門は課題が山積みです。
そこで今回は、総務部門の方に業務改革やDX化の現状について実態調査を行いました。真の総務改革とは?いま総務が取り組むべき2つのことをご紹介します。
- ■ 目次
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1.総務の業務課題に関する実態調査
2.総務の業務内容・残業について
3.総務担当者に聞いた、総務の業務課題とは?
4.総務のテレワーク実施状況
5.残業の多い総務担当者が工夫していること
6.総務が感じる、総務に必要なスキル・DX化に役立つツールとは?
7.総務の組織風土について
8.まとめ~総務がやるべき2つのことは?
1.総務の業務課題に関する実態調査
総務部門は、庶務業務から契約書管理、広報活動まで多種多様な業務を担当する部署です。仕事内容が多岐にわたるため日々の業務に追われてしまい、「非効率的だ」と感じている業務も少なくないのではないでしょうか。そうした業務はどのようなもので、現状を改善していくために、総務部門はどのような改革を進めていくべきなのでしょうか。
総務業務を担当する会社員に対し、総務の業務課題についての調査を実施。総務業務の実態や課題などについて聞きました。
調査概要
・調査対象:事前のスクリーニング調査で総務業務を担当していると回答した会社員343名
・調査期間:2021年5月7日~2021年5月14日
・調査手法:インターネット調査
総務業務を担当している対象者の属性



総務実態調査の結果
今回の調査から、約半数の総務部が5名未満の少人数で業務を担当していることが分かりました。さらに人数の割に業務範囲が広く、結果として総務担当の5人に1人が月20時間以上も残業しています。
総務部の課題としては、約3割の総務担当が「紙やExcelで管理する業務が多く非効率」だと回答。特に契約書類のやり取りでは、約4割がテレワーク時に押印するための「ハンコ出社」を経験していました。クラウド型ITツールを導入すればこうした課題を解決する一助になるものの、電子契約の導入率は約1割にも満たないのが現状でした。
総務の業務効率化が進められていないのはなぜなのでしょうか?総務の業務改革が進まない背景には、何か課題があるのでしょうか?このレポートでは、総務担当の現状と業務効率化ができていない要因、今後総務部が取り組むべきことについて詳しく取り上げていきます。
総務担当者の人数、もっとも多いのは?

約半数の総務部が5名未満で業務を遂行
事前の調査で、総務業務を担当していると回答した343名に対し、自社の総務担当者の人数について聞いたところ、「2人~5人未満」が最も多く39.1%でした。中には、「1人」という企業も11.4%存在しており、総務部の約半数が5人未満の少人数チームで業務を回していることが分かりました。
従業員規模が少ない企業ほど担当者は少ない傾向にあり、50人未満の企業では86.5%が「5名未満」だったのに対し、1,000人以上に企業では「5名未満」の割合は22.6%にとどまった一方で、「20人以上」の割合は53.6%に上ります。
一般的に担当者の数が少ない場合、一人あたりの業務負担は大きくなりがちです。それでは、実際に総務部門で働く担当者は、月にどのぐらい残業をしているのでしょうか?この後の設問で、総務担当の業務状況について見ていきます。
自社の総務担当者の人数※企業規模別

2.総務の業務内容・残業について
総務が担当している業務内容

備品管理から契約書管理まで、総務の業務範囲は広い
総務部が担当している業務は、「備品管理など庶務業務」が47.2%で最多となりました。続いて、「勤怠管理業務」が37.6%、「給与計算や交通費の処理など経理業務」が32.4%、「契約書管理業務」が30.6%、「社会保険・雇用保険の手続き」が27.4%となっています。※複数回答可能。
この他にも、「ITシステムなどのインフラ管理」や「BCP対策などリスクマネジメント業務」などがあり、少人数での業務体制にもかかわらず、総務の業務内容は多岐にわたります。
少人数かつ広範囲の業務となると、残業の状況が気になるところです。次に、総務担当の残業状況について見てみましょう。
総務担当者の平均残業時間はどれくらい?

総務担当の5人に1人が月に「20時間以上」残業している
総務担当者に、ひと月あたりの平均残業時間を聞くと、「1~10時間未満」が37.0%、「10時間~20時間未満」が17.8%、20時間以上(「20時間~30時間未満」「30時間~40時間未満」「40時間以上」の合計)が17.8%となり、総務担当者の2割弱が毎月20時間以上残業していることが分かりました。
「残業はない」という企業も27.4%存在しているものの、やはり多くの企業で残業せざるをえない業務状況となっていました。
では総務業務の中で、残業の要因となっている業務はなんでしょうか。次の設問で詳しく調べてみました。
総務担当者の具体的な残業要因とは

月20時間以上残業の要因、1位は「勤怠管理」2位は「契約書管理」
残業の要因となる総務業務について、全体では「給与計算や交通費の処理など経理業務」がトップとなりました。しかし、月に20時間以上残業している人については、「勤怠管理業務」が最も多く26.2%、次いで「契約書管理業務」が24.6%、「備品管理など庶務業務」が23.0%となっています。※複数回答可能。
特に、他部門とのやり取りが頻繁に生じる「契約書管理業務」は、相手の対応を待つ時間が発生したり、突発的な業務対応を求められたりと、スケジュールの遅れにつながる事態がたびたび起こります。その結果、仕事が処理しきれず残業につながってしまうようです。
このような総務部の実態について、担当者はどのような課題を感じているのでしょうか?
総務担当者の具体的な残業要因※残業時間数別

3.総務担当者に聞いた、総務の業務課題とは?

「業務範囲の広さ」「紙、Excelによる業務効率の悪化」が課題
総務担当者に、総務部の業務課題を聞いたところ、「業務範囲が広すぎる」が35.6%、「紙やExcelで管理する業務が多く非効率」が32.9%、「従業員からの問合せで業務が中断する」が28.6%となりました。※複数回答可能。
人数の割に業務範囲が広く、他部署とかかわることも多いため、通常業務に加えてその都度依頼された仕事をこなさなければならず、思ったように業務を進められないと感じている担当者が多いようです。また手間が掛かりがちな紙やExcelでの業務が、さらに業務効率を悪化させている実態が見受けられました。
次の設問では、総務部のテレワーク実施率について見てみましょう。
4.総務のテレワーク実施状況

7割弱の総務担当者が「テレワークはしていない」
新型コロナウイルス感染症対策として、政府はICTを活用したテレワークを推進しています。しかし、総務担当者にテレワークを実施しているか聞いたところ、 「テレワークはしていない」と回答した人は66.5%にも上りました。
ただし、エリア別で見ると、「関東地方」のテレワーク実施率は52.3%、「近畿地方」は33.3%と、他地域に比べてテレワークをしている人が多い傾向です。これは2021年4月に発令された緊急事態宣言の影響を受けていると考えられます。
一方で、テレワークでありながらも、特定の業務を行うために出社することがあるようです。次の設問では、テレワーク中の出社理由について見てみます。
総務のテレワーク実施状況 ※エリア別

総務のテレワーク中の出社理由、よくある2つの理由

4割強の総務担当が契約書押印のための「ハンコ出社」を経験
テレワークを実施している総務担当者に、テレワーク時の出社理由を聞くと、「契約書等の押印のための『ハンコ出社』」が41.9%、次いで「書類の郵送のための『郵送出社』」が40.7%となり、いずれも4割を超える結果となりました。
総務部の課題として「紙、Excelによる業務効率の悪化」が挙げられていたように、紙ベースでの運用が前提となっているため、押印や郵送のために出社しなければならず、業務効率が悪化している現状が見て取れます。特に「郵送出社」には、契約書類のやり取りが多く含まれていると考えられます。
こうした現状において、総務担当が業務効率化のために工夫していることは何でしょうか。
5.残業の多い総務担当者が工夫していること

月20時間以上残業の総務は1位「業務標準化」2位「タスク管理」3位「IT活用」で業務効率化
月に20時間以上残業する総務の取り組みとしては、「業務マニュアルの作成や業務標準化」が45.9%で最も多く、次いで「スケジュール管理、タスク管理」が41.0%、「ITツールやサービスの活用」が36.1%でした。「残業がない」という人は「タスク管理」が24.5%で1位、次いで「従業員とのコミュニケーション、社内の人脈作り」が19.1%で2位でした。関わり合う人が多い総務部は、社内の人脈作りも重要といえます。
ITツールの中でもクラウドサービスであれば、テレワークにも対応でき、より効率的な業務が可能になるでしょう。
それでは、次に総務担当に必要なスキルについて見ていきます。
残業の多い総務担当者が工夫していること※残業時間数別

6.総務が感じる、総務に必要なスキル・DX化に役立つツールとは?

総務担当に求められるスキル、最多は「柔軟な対応力」
総務担当に必要なスキルについて聞いたところ、「柔軟な対応力」が58.9%、次いで「パソコン、ITスキル」が46.4%、「コミュニケーションスキル」が45.8%となりました。※複数回答可能。
総務担当の業務は、企業のステージや状況によって刻一刻と変わります。また社内はもちろん、社外とのやり取りも多く、突発的な業務が発生することも少なくありません。そのため、何事にも柔軟に対応する力が必要とされるのでしょう。
こうしたスキルが求められる総務担当は、どのようにしてスキルアップを図っているのでしょうか?
総務担当者はスキルアップのためにどのような情報収集をしているか

スキルアップのため、インターネットだけでなく社内からも情報収集
スキルアップやキャリアアップのために、どのようにして情報を収集しているのか聞いたところ、「インターネット検索」が40.5%と最も高い割合となりました。次いで、「社内メンバーとの情報交換」が31.8%、「総務・人事や経理に関する情報サイトやブログ」が24.2%と続いています。
社内メンバーとの情報交換を通して、総務担当が現場の実態を把握していれば、具体的な改善施策を立てやすくなるなど、よりスムーズに仕事を進められるでしょう。多岐にわたる業務を担当する総務だからこそ、現場の状況を知ることがより重要になるのかもしれません。
次の設問では、総務部でのクラウドツールの利用状況について見ていきます。
総務部で導入しているクラウドツール

クラウドツール「電子契約」の導入率は1割に届かず
総務部で導入しているクラウドツールについては、「勤怠管理」が39.1%、「労務管理」が25.4%、「経費精算」が20.7%となりました。一方で、「電子契約」は9.9%と1割にも満たない結果となっています。
郵送での契約書のやりとりは、書類管理や送付に時間も手間もかかります。その点、クラウドツールで契約業務をオンライン化すれば、業務効率化やコストダウンが可能です。現時点で総務部の導入率は高くありませんが、今後電子契約を導入すれば、さらに業務が効率化できると期待できます。
次の設問では、総務部の組織風土について見ていきましょう。
7.総務部の組織風土について

約7割の総務部が「新しいことよりもこれまでの慣習を重視」
総務部の組織風土について聞いたところ、「どちらかというと新しいことや改善を積極的に取り入れる組織風土である」は30.9%と約3割にとどまりました。一方、「どちらかというと過去のやり方や慣習を重視する組織風土である」は69.1%と約7割にも上ります。
会社全体の運営に携わる総務部は、働き方改革などを率先して推し進める役割を担います。しかしながら、依然として古い慣習のまま、業務体制や業務の仕組みが見直されていない実態が見受けられます。
総務担当者は現在の組織風土について、どのように感じているのでしょうか?
総務担当は総務部の組織風土を変えていきたいか?

3人に2人の総務担当が「今の組織風土を変えたい」と回答
前問の回答で、「どちらかというと過去のやり方や慣習を重視する組織風土である」と回答した総務担当に、今の組織風土を変えたいかと聞くと、61.6%が「はい」と回答しました。
総務部の仕事は、庶務業務から経理業務、契約書管理業務まで幅広く、どれも円滑な組織運営に欠かせない業務です。しかしながら、多くの総務部では、そうした幅広い重要な業務を少ない人数でカバーしています。
今後、業務を効率化し新しい取り組みを推進するためには、古い慣習を重視する組織風土から見直す必要があるのかもしれません。
それでは最後に、今回の調査結果についてまとめていきます。
8.まとめ~総務がやるべき2つのことは?
調査結果からは、総務担当の5人に1人は月に20時間以上残業しているという総務部の厳しい現状が明らかになりました。また残業発生の要因として「勤怠管理業務」や「契約書業務」が挙げられました。実際に4割の担当者が、テレワーク時に、契約書押印や郵送のために出社するなどの非効率な業務を経験しています。「クラウド型電子契約サービス」を導入すれば、契約書のやり取りをオンライン化し効率的な業務が可能になります。しかし、実際に導入している総務部は1割にも達していません。その背景には、「組織風土」や「セクショナリズム」が関係していると考えられます。
以上を踏まえると、総務部がこれから取り組むべきことは、「テリトリーを超えた業務改革」と「総務部が主体となる取引先の契約電子化および他部署への展開」の2つです。関連部署が多い総務部が主導して取り組むことで、企業全体の変革にもつながるでしょう。


総務部の業務改革を、企業全体の変革へ。

総務業務を改革し、残業の元凶となっている「非効率な契約書管理」や「テレワーク中のハンコ出社」から総務担当を解放するためには「クラウド型電子契約サービス」の導入が有効です。ただ今回の調査結果からも分かるとおり、新しい取り組みを進められる組織風土でない、といった導入する前段階の課題もあります。一方で、6割以上の総務部がそうした組織風土を「変えたい」とも考えています。
そこでポイントとなるのが、新規導入における「サポート」です。
これまで「BtoBプラットフォーム 契約書」は、新しく電子契約を導入したいと考えている担当者向けに、セミナーや導入支援を通して、多数のサポートを実施してきました。中には、総務部門が中心となって導入を成功させた事例も多数あります。
また、「Webツールでのオンライン商談」「電話・メールによる遠隔サポート」も実施しているため、テレワーク時でも簡単に導入が可能です。電子契約サービスを導入・検討する際には、コストや機能比較ももちろん重要ですが、「導入のしやすさ」「導入時のサポート」についてもしっかりと確認しておくことをお勧めします。