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決算整理仕訳の方法とは?手順や注意点をわかりやすく解説

決算整理仕訳は、決算時に行う仕訳処理のことです。決算整理仕訳を行わないと、決算を完了できません。決算整理仕訳は年に1度しか行いませんが、重要な経理業務のひとつですから、何をしなければいけないのかを把握しておきましょう。必要な処理を一つひとつ着実にこなしていくことが大切です。 そこで今回は、決算整理仕訳の手順や注意点について解説していきます。決算整理仕訳の方法がわからなくなったときは、ぜひご参照ください。

決算整理仕訳の方法とは?手順や注意点をわかりやすく解説

最終更新日:2023年8月1日

目次

決算整理仕訳とは決算時に経理的な処理を行うこと

決算整理仕訳とは、決算のタイミングで経理的な処理を行うことを指します。
例えば、在庫を正確に把握して商品原価を算出するためには、会計年度がスタートした時点での商品棚卸高と、決算日時点での商品棚卸高が必要です。期末商品棚卸高は決算のタイミングまで確定できないため、決算日が経過した後に処理を行います。

このように、期中の通常の経理処理では対応できない経理処理を行うのが、決算整理仕訳です。また、日々の取引の中で記帳するわけではない減価償却費や貸倒引当金なども、決算整理仕訳で処理します。決算整理仕訳を行うことで、決算時点での正確な数字を確定できます。

なお、決算整理仕訳を行うには、勘定科目の数字の一覧である決算整理前残高試算表の作成が必要です。また、決算整理仕訳後には、精算表を作ります。これらは、会計処理に問題がなかったかどうかを確認するために作られる書類です。決算整理仕訳を正確に進めるために活用しましょう。

決算整理仕訳に必要な経理処理の手順

決算整理仕訳に必要な経理処理の手順

決算整理仕訳は、一つひとつ順を追って処理していくことが大切です。実際に必要な処理の内容はそれぞれの企業の状況によって異なるため、自社で何を行わなければならないのかを理解しておきましょう。ここでは、決算整理仕訳として行われる経理処理全般の処理手順を紹介します。

1 決算整理前残高試算表を作成する

まずは、決算整理仕訳に必要な決算整理前残高試算表を作成します。
そのためには、期中の取引に関する仕訳をすべて完了しておかなければいけません。仕訳帳への記帳と総勘定元帳への転記が終わったら、勘定科目ごとの数字を一覧で示す決算整理前残高試算表を作成しましょう。

決算整理前残高試算表は、それぞれの勘定科目を合計し、転記した一覧表であるため、手計算で作成することもできます。しかし、手動での計算や表計算ソフトなどを使った処理は、間違いのもとになります。そのため、自動で必要な計算を行える会計ソフトを活用して自動作成するのが一般的です。会計ソフトを使用していれば、日々の取引の記帳を行っていくだけで、必要なタイミングで決算整理前残高試算表を出力できます。

2 借方と貸方の合計が一致するかどうか確認する

決算整理前残高試算表を作成したら、借方と貸方の合計が一致するかどうかを確認しましょう。
一致していれば、仕訳と総勘定元帳への転記が正確であるということになります。万が一ずれがあった場合は、原因を探して修正を行ってください。

3 決算整理仕訳を行う

借方と貸方の合計が一致していることを確認したら、次は決算整理仕訳をします。
決算整理仕訳の手順は下記のとおりです。

<決算整理仕訳の手順>
1. 実際の現金残高および預金残高を確認する
2. 現金残高と預金残高が帳簿と合致しているかどうか確認する
3. 決算日時点での売掛金と買掛金の金額を確認し、必要に応じて修正する
4. 次の会計期以降の収入になる前受金を受け取っている場合は、繰延する
5. 次の会計期以降の支払いになる前払金を支払っている場合は、繰延する
6. 決算日時点での棚卸資産を確認して計上する
7. 棚卸資産を元に売上原価を計算する
8. 固定資産を減価償却し、減価償却費の計上を行う
9. 決算日時点での時価を元に有価証券の評価額を調整する
10. 貸倒引当金を計上する
11. 追加仕訳を仕訳帳に反映させる
12. 追加仕訳を総勘定元帳に転記する

上記の手順がすべてできたら、損益計算書と貸借対照表を作成します。最後に精算表を作って処理に問題がないかどうかを確認できたら、決算整理仕訳はすべて完了です。

決算整理仕訳の具体例

決算整理仕訳の処理の中から、売上原価を計算するとき、貸倒引当金を計算するとき、減価償却費を計算するときの3つのパターンについて、具体的な仕訳方法を解説します。多くの事業者に関係する決算整理仕訳なので、どのように計算を行えば良いのか知っておきましょう。

売上原価を計算するとき

原価計算とは、販売した商品の売上に対する売上原価を求めるための計算です。決算を行う際は、当該の年の仕入金額を単純に計上するわけではありません。当該の年に売り上げた商品の原価のみを計上します。具体的な計算方法は下記のとおりです。

<売上原価の計算式>

売上原価=期首商品棚卸高+仕入高-期末商品棚卸高

例えば、期首商品棚卸高が5万円、当期の仕入高が80万円、期末商品棚卸高が10万円だった場合の仕訳は以下のとおりです。

■売上原価の仕訳例

借方 金額 貸方 金額
仕入高 50,000 繰越商品 50,000
繰越商品 100,000 仕入高 100,000

よって、売上原価は5万円+80万円-10万円=75万円です。期中の仕入高は通常の取引時に記帳済みなので、決算整理仕訳で改めて仕訳をする必要はありません。

貸倒引当金を計算するとき

貸倒引当金とは、取引先の倒産といったトラブルによって売掛金が回収できなくなった場合の損失をあらかじめ計上しておくことです。なお、倒産などのやむをえない事情がなく、単純に先方が支払いを拒否しているだけの場合は貸倒れには該当しません。

貸倒れが発生する可能性がある場合は、あらかじめ売掛金の一部を貸倒引当金として損金に算入できます。とはいえ、貸倒れが発生するかどうか事前に把握するのは困難な場合が多いでしょう。そこで、原則として過去3年間の実績繰入率に応じた貸倒引当金の算入が認められています。また、中小法人などについては、事業内容に応じた法定繰入率による貸倒引当金の算入が可能です。

<業種別の法定繰入率(中小法人の場合)>
・卸売業および小売業:1.0%
・製造業:0.8%
・金融保険業:0.3%
・割賦販売小売業など:1.3%
・その他:0.6%

例えば、その他の事業を営む中法人法が、期末時点で債権1,000万円を保有していた場合、1,000万円 x 0.6%=6万円を貸倒引当金として計上することができます。この場合の仕訳は下記のとおりです。

■貸倒引当金の仕訳例

借方 金額 貸方 金額
貸倒引当金繰入 60,000 貸倒引当金 60,000

また、個人事業主は下記の貸倒引当金計上が可能です。

<業種別の法定繰入率(個人事業主の場合)>
・金融業:3.3%
・その他:5.5%

なお、貸倒引当金が実際には貸倒れなかった場合、翌年に収入として計上します。そのため、節税につながるのは初年度のみです。

減価償却費を計算するとき

減価償却費は、減価償却資産を取得した際に必要な会計処理です。減価償却資産とは、利用している間に価値が減少していく固定資産のことで、車や設備機器類などが該当します。

減価償却が必要な資産を取得した場合は、法定耐用年数に応じて毎年分割して購入価額を費用計上しなければなりません。減価償却費の計算方法には、毎年同じ金額を計上する定額法と、割合に応じた金額を計上する定率法の2種類があります。原則的には、個人事業主は定額法、法人は定率法で減価償却の計算を行いますが、建物など一部の資産については法人も定額法を利用します。

減価償却費の計算式は、定額法と定率法で、それぞれ下記のとおりです。

<減価償却費の計算式(定額法)>
減価償却費=取得価額 x 定額法の償却率(法定耐用年数により決まる)

<減価償却費の計算式(定率法)>
減価償却費=未償却残高 x 定率法の償却率(法定耐用年数により決まる)ただし、償却保証額を下回った後は、減価償却費=改定取得価額 x 改訂償却率となります。

また、定額法や定率法で計算した減価償却費は、直接法または間接法で仕訳を行います。どちらでも任意で選択できます。
例えば、減価償却費5万円を計上する場合の仕訳について、直接法と間接法でそれぞれ見ていきましょう。

まず、直接法の場合は、固定資産から減価償却費を直接引きます。償却が進むにつれて、固定資産の価値が減少していきます。

■直接法を用いた減価償却費の仕訳例

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 50,000 機械設備 50,000

一方、間接法は、減価償却累計額を計上することで、これまでの償却額を記載します。貸借対照表上に減価償却累計額が明記される仕訳方法です。

■間接法を用いた減価償却費の仕訳例

借方 金額 貸方 金額
減価償却費 50,000 減価償却累計額 50,000

決算整理仕訳で注意すべきポイント

決算整理仕訳で注意すべきポイント

決算整理仕訳を行うときは、ミスがないように十分な注意が必要です。ミスを防ぎ、正しい処理をするために注意すべき3つのポイントを紹介します。

決算整理仕訳で注意すべきポイント

ダブルチェックをする

決算整理仕訳を行う際は、必ずダブルチェックを行い、問題がないかどうか確認してください。
決算整理仕訳に誤りがあると、総勘定元帳の勘定残高も誤った数字になってしまいます。こうなると、損益計算書や貸借対照表も正しく作れず、不正確な申告につながってしまうでしょう。

そのため、決算整理前残高試算表や精算表を元にダブルチェックを行い、ミスがそのままになってしまわないようにしてください。

期中仕訳を念入りに確認する

決算整理仕訳を正しく行うためには、期中仕訳を念入りに確認することが大切です。

決算整理仕訳は期中に行ってきた仕訳をベースに行うものであるため、期中仕訳に間違いや抜けがあると、決算整理仕訳を正確に行うことができません。決算整理仕訳の結果に問題がある場合、期中仕訳が原因になっている可能性もあります。改めて見直してみましょう。

前期の決算整理仕訳と比較する

決算整理仕訳が終わったら、前期の決算整理仕訳の結果と比較しましょう。
多くの勘定科目の処理を行う決算整理仕訳では、ミスや漏れが出る可能性もあります。前期と比べて処理できていない項目がないか、数字に違和感のある項目がないか、などについて確認してください。
また、決算整理仕訳の結果に疑問点がある場合も、前期の処理方法と比較してみるのがおすすめです。

会計ソフトを導入して、決算整理仕訳を効率化しよう

決算整理仕訳は、事業者が必ず行わなければならない経理処理です。年に1度のことなので、手順に戸惑うこともあるかもしれませんが、一つひとつ順を追って抜けがないように行いましょう。

決算整理仕訳をできるだけスムーズに行うためには、経理業務のデジタル化が効果的です。仕訳の自動化ができる会計ソフトや、請求データを電子管理できるソフトを活用して手計算や手入力を減らせば、それだけスピーディーで正確性の高い会計処理が可能になります。

株式会社インフォマートが提供する「BtoBプラットフォーム 請求書」では、発行した請求書はもちろん、受け取った請求書や支払いデータも一元管理することができます。日々の請求業務や、決算整理仕訳の効率化に役立てたいとお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

監修者プロフィール

宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。

【保有資格】CFP®、税理士

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