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インボイス制度が消費税業務に与える影響や企業対応を紹介

インボイス制度の適格請求書等とは、取引や売買で発生する消費税について今までの区分記載請求書よりも厳格に記載された請求書です。売手側は消費税額をより細かく記載しなくてはなりません。また、買手側の仕入税額控除にも関わってくる制度で、単に税額の計算方法を見直すだけでなく、受け取った請求書を保存することも仕入税額控除を受けるために必要な要件となります。消費税の経理業務にどのような影響が生じるのでしょうか。さらに、仕入税額控除の計算方法や、免税事業者から仕入れを行った場合の経過措置などについて紹介します。

インボイス制度が消費税業務に与える影響や企業対応を紹介

最終更新日:2023年01月17日

目次

インボイス制度が消費税に与える影響

インボイス制度と消費税の関係性は深いです。というのも、インボイス制度とは正式には「適格請求書等保存方式」といって、消費税の複数税率についてより厳格に記載した請求書(適格請求書等保存方式)だからです。適格請求書を発行、保存していくインボイス制度によって、売手は買手に対して正確な適用税率や消費税額等を伝えられるといえます。

買手側と売手側の影響は次のとおりです。

・買手側の消費税に関する影響

今後はインボイス制度が仕入れ税額控除を受ける要件となります。そのためインボイス制度に対応した適格請求書等を受領することで、仕入側は消費税の仕入税額控除を受けられます。

ただし、適格請求書発行事業者になるかどうかは売手側次第です。取引の相手がすべて適格請求書発行事業者とは限らず、請求書がインボイス制度に対応した請求書と請求していない請求書が混在する可能性があります。その場合、事務作業が煩雑化することが見込まれます。

・売手側の消費税に関する影響

インボイス制度に対応するには適格請求書発行事業者になる必要があります。しかし、免税事業者の場合はインボイス制度に対応できないので、インボイス制度に対応するために課税事業者とならなければなりません。その場合、新たに消費税の納税義務が生じることになります。

適格請求書等の発行においては、それまでの区分記載請求書よりも消費税を細かく記載しなければならない点にも注意が必要です。これらの手間は増えますが、取引における透明性が高くなるのは事実です。また、取引相手が仕入税額控除を受けられるため、取引先からも喜ばれる可能性が高いです。

売手側の消費税に関わる経理業務

売手側、つまり適格請求書等を発行する側は、インボイス制度に対応することで消費税にかかる経理業務がどのように変化するのでしょう。

適格請求書等の発行義務が生じる

大きな変化は適格請求書等の発行義務が生じることです。ただし、取引の相手方が免税事業者の場合や取引が免税取引、非課税取引である場合、発行義務はありません。

また、以下の5つの取引は発行義務が免除されます。

1. 公共交通機関(船舶、バスまたは鉄道)による旅客の運送(ただし3万円未満)

2. 出荷者などが卸売市場において行う生鮮食料品などの販売

3. 生産者(農協などの組合員)が農協などに委託して行う農業、林業、水産業の産物販売

4. 3万円未満の自動販売機(および自動サービス機)により行われる商品の販売など

5. 郵便切手などのみを提供とする郵便・貨物サービス

適格請求書等と区分記載請求書との違い

従来の区分記載請求書からの変更点は次の3項目です。

1. 適格請求書発行事業者の登録番号

2. 課税資産の譲渡などの税抜価額または税込価額を税率ごとに区分して合計した金額、および適用税率

3. 税率ごとに区分した消費税額等

上記以外の点は、従来の区分記載請求書と同様です。

記載事項は複数の書類にまたがってもよい

請求書のみで必要な記載事項を満たす必要はありません。例えば、消費税の詳細(税率ごとに区分した消費税額等)は納品書に記載し、請求書に納品書番号を記載することで消費税の詳細を的確に把握できるようにしておく方法も可能です。

ただし、複数の書類にまたがる場合は、取引先の内容確認・書類保存の手間も増します。場合によっては取引先が「必要事項が網羅されていない」と勘違いすることも考えられるので、どこにどのような情報が掲載されるのか丁寧に伝え、トラブルを防止します。

消費税の端数処理

適格請求書に記載する消費税額等については、「税抜価額」または「税込価額」を税率ごとに区分して合計すします。その合計金額に対して、10%または 8%(税込の場合は 「10/110」 「 8/108」)を乗じた金額に対して端数処理を行い、「消費税額等」を算出します。

インボイス制度において、適格請求書の記載事項である「税率ごとに区分した消費税額等」に関して端数(1円未満の端数)が生じる場合、ひとつの適格請求書につき税率ごとに1回の端数処理を行うこととなりました。個々の商品ごとに端数処理をして、合計することは認められませんので、注意します。

買手側の消費税に関わる経理業務

買手側の消費税に関わる経理業は、次のような影響をうけます。

適格請求書の保存

必要事項が記載された適格請求書を保存していきます。前述のように納品書など、他の書類とあわせて記載事項の要件を満たす場合は、それらの書類も保存義務が生じます。適格請求書のほかに、記載項目がやや簡略化された適格簡易請求書もあります。適格簡易請求書が認められているのは、飲食店やタクシーなどのいわゆるレシートです。

適格請求書の記載事項を把握

自社社員が適格請求書の内容を把握して、不備があれば正しい適格請求書の発行依頼をしなければなりません。例え軽微な間違いであっても、買手側が誤りを修正はできません。

簡易課税事業者の場合

簡易課税制度を選択している場合は、課税期間における課税標準額に対する消費税額に、みなし仕入率を掛けて「控除対象仕入税額」を算出します。みなし仕入率は事業区分ごとに定められています。そのため、適格請求書等の受領・保存は仕入税額控除の要件とはなりません。

インボイス制度における消費税計算

インボイス制度に対応した適格請求書を受取ることで、売上税額から仕入れ税額を控除する仕入税額控除を行うことができます。ただし、売上税額計算と仕入税額計算では原則的な計算方法が異なります。また、経過措置となるみなし控除についても紹介します。

インボイス制度における消費税の計算方法

・売上税額

原則は、割戻し計算です。ただし、適格請求書を保存している場合は特例として積上げ計算を選択できるようになりました。しかし、積上げ計算により売上税額を計算する場合は、仕入税額も積上げ計算により計算しなくてはなりません。

・仕入税額

原則は、積上げ計算です。ただし、売上税額で割戻し計算を選択している場合は、特例として割戻し計算も選択可能です。

消費税計算のみなし控除とは

免税事業者からの仕入れに関する経過措置で、一定の要件を満たせばインボイス制度に対応していなくとも、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額としてみなし控除が可能です。

所定の区分記載請求書があれば2023年9月30日までは、課税仕入れの全額が控除可能。2026年9月30日までは80%、2029年9月30日までは50%がそれぞれ控除可能です。それ以降は控除なしとなります。

ただし、従来の区分記載請求書の記載事項は満たしていなければなりません。また、個々の取引ごとに「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」のように経過措置の適用を受ける課税仕入れであることが分かるようになっていることが必要です。

インボイス制度が消費税業務に与える影響は大きい

インボイス制度によって、請求書の発行や授受の業務が変化を迫られることはもとより、消費税業務も影響をうけます。仕入税額控除とみなし控除の区別はもちろんですが、売上税額と仕入税額の計算方法についても今一度確認するといいでしょう。自社の経理業務の変化が大きい場合は、経理担当者の負担が軽減できる請求書ツールの導入を検討することも有効です。適格請求書の発行や授受、もしくは消費税計算など、複数の角度からインボイス制度の影響を検討し、スムーズに対応してきましょう。 

監修者プロフィール

宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。

【保有資格】CFP®、税理士

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