最終更新日:2022年12月08日
目次
- インボイス制度、適格請求書発行事業者の概要
- インボイス制度とは?
- 適格請求書発行事業者とは?
- 適格請求書発行事業者になるための申請の流れ
- 申請書の提出時期
- 申請書の作成方法
- 取引先への通知
- インボイス制度にスムーズに対応するためのポイント
- 少しでも早く登録通知を受けたい場合の手続き
- 適格請求書発行事業者の登録日は自由に希望できる
- インボイス制度対応の準備も同時に始める
- 適格請求書発行事業者の登録申請は早い段階での準備が必須
インボイス制度、適格請求書発行事業者の概要
インボイス制度開始に備え適格請求書発行事業者になるための申請方法をお伝えする前に、まずはインボイス制度と適格請求書発行事業者の概要について解説します。
インボイス制度とは?
インボイス制度とは、「適格請求書等保存方式」の通称で、2023年10月1日より導入される消費税の仕入税額控除を受けるための請求書形式などについて定めた制度です。請求書発行者(売手)が受取主(買手)に対し、正確な適用税率、消費税額を伝えることを目的に導入されます。
※インボイス制度について詳しくは、「インボイス制度とは?適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響と対応方法」をご覧ください。
適格請求書発行事業者とは?
適格請求書発行事業者とは、インボイス制度導入後に採用される適格請求書を発行できる事業者です。具体的には税務署長から適格請求書発行事業者として登録を受けた事業者が対象です。
従来、課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務を免れる免税事業者でした。しかし、インボイス制度に対応するためには、課税売上高が1,000万円以下の事業者であっても課税事業者となり適格請求書を発行しなくてはなりません。
適格請求書発行事業者になるかどうかの選択は任意です。しかし、2023年10月以降も課税事業者にならず免税事業者のままでいると、取引先の課税事業者が仕入税額控除をできなくなります。そのため、課税事業との取引が終了することや、価格の値下げを求められるリスクがあるでしょう。
※適格請求書発行事業者にならなかった場合について詳しくは、「インボイス制度で生じる仕入税額控除の変化。もし免税事業者のまま適格請求書発行事業者に登録しないとどうなる?」をご覧ください。
適格請求書発行事業者になるための申請の流れ
適格請求書発行事業者になるために必要な申請の流れについて解説します。
申請書の提出時期
適格請求書発行事業者になるための申請は、すでに2021年10月1日から開始されています。また、インボイス制度が開始される2023年10月1日に間に合わせるには原則として、申請書を2023年3月31日までに提出しなければなりません。
ただし、2023年3月31日までに提出しなかったとしても2023年10月1日に間に合わないだけで、適格請求書発行事業者になることは可能です。
申請書の作成方法
適格請求書発行事業者になるための申請書は、国税庁のWebサイトから登録申請書をダウンロードし、必要事項を記載します。なお、e-Taxによる登録申請も可能ですが、その場合は、マイナンバーカードなどの電子証明書と利用者識別番号を準備しなくてはなりません。
記載方法は、個人事業者と法人とで多少異なります。最大の違いは、申請者が個人事業者の場合は個人名、法人の場合は登記している情報(会社名・屋号)である点です。個人事業者が屋号や通称、旧姓、主たる事務所の所在地などを公表する場合は、別途、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の提出が必要になります。
取引先への通知
申請書を作成したら、「インボイス登録センター」へ送付します。インボイス登録センターは全国に12カ所あり、そのなかから、納税地を管轄するインボイス登録センターへ送付し、後は返事を待つだけです。
申請書提出から登録通知までのおよその期間は、e-Taxで提出した場合は約3週間。書面で郵送した場合は約1カ月半程度が目安です。ただし、記載内容に誤りがある場合は確認作業が必要となり想定以上に時間を取られることになるので、時間に余裕を持って送付することをおすすめします。
インボイス登録センターより通知を受けたら、インボイス制度導入後も継続して取引を行う相手に対し、登録番号や交付・受領方法の連絡を行います。
インボイス制度にスムーズに対応するためのポイント
インボイス制度にスムーズに対応するためのポイントをお伝えします。
少しでも早く登録通知を受けたい場合の手続き
取引先との関係やインボイス制度対応準備などの都合で、申請書提出から登録通知を受ける期間を少しでも短くしたいケースは少なくありません。この場合、申請を郵送ではなくe-Taxにすることに加え、電子データでの登録通知を希望すると税務署での処理後、速やかに電子通知が行われます。そのため、書面で郵送されるのを待つよりも早く通知を受け取れる可能性が高まるでしょう。
適格請求書発行事業者の登録日は自由に希望できる
適格請求書発行事業者になるために申請書を提出する際、登録希望日を記載しなければ、2023年10月1日のインボイス制度導入日が適格請求書発行事業者の登録日です。しかし、申請の際に希望すれば、2029年9月30日までの間で自由に登録日を決められます。
たとえば、「3月決算なのでそれに合わせ、4月1日から」「12月決算なので1月1日から」のように指定して適格請求書発行事業者になるといったことも可能です。ただし、この制度を利用するには、登録希望日の属する課税期間の基準期間が終了し、登録希望日において免税事業者であることが条件になります。
仮に3月決算のため、2024年4月1日を登録希望日とする場合、2021年度の決算(2022年3月)で課税売上高が1,000万円以内の免税事業者でなければなりません。
インボイス制度対応の準備も同時に始める
課税事業者になるための申請を行う場合、インボイス制度に対応するための準備も同時に始めましょう。具体的には、ITツールの新規購入や経理担当者への教育などが必要です。なお、会計システムや請求書発行・受領システムが適格請求書に対応していない場合、すべて手作業で対応作業を行わなければならず、大幅な負担増大につながります。
インボイス制度に対応するためのITツール導入に関しては、IT導入補助金を利用するのがおすすめです。会計システムや請求書発行・受領システムはもちろん、EC運営者向けのEC管理システム、店舗運営者向けのPOSレジ・POSシステムなどインボイス対応のさまざまなシステム購入に際し、補助金を受給できます。
また、導入に際してはIT導入支援事業者のサポートも得られるため、初めてでも安心して利用することが可能です。
※IT導入補助金について詳しくは、「インボイス制度導入にかかわる補助金、その種類や申請方法を解説」をご覧ください。
適格請求書発行事業者の登録申請は早い段階での準備が必須
インボイス制度に対応するには、適格請求書発行事業者への登録申請が必須です。そして、適格請求書発行事業者になるための登録申請は、2021年10月から開始されています。さらにインボイス制度が導入される2023年10月1日に間に合わせるには、2023年3月31日までに申請書を提出しなければなりません。そのため、少しでも早く動き出さなければ、インボイス制度導入日には間に合わなくなってしまうでしょう。
もちろん、業務内容や取引先によっては、インボイス制度導入後も免税事業者を継続することを選択する事業者もあるかもしれません。しかし、適格請求書発行事業者になるのであれば、できるだけ早く申請書を提出し、ITツールの導入や社員教育などの対応もあわせて準備していくことが重要です。
電子請求書サービスの『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書などのインボイスの交付・保存が可能です。制度対応だけではなく、経理業務の効率化を行うことができます。ぜひ一度ご検討ください。
参考:
・ 申請手続|国税庁
・ 登録申請書の処理期間について|国税庁(PDF)
監修者プロフィール
宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。
【保有資格】CFP®、税理士