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インボイス制度で生じる仕入税額控除の変化。もし免税事業者のまま適格請求書発行事業者に登録しないとどうなる?

2023年10月から始まるインボイス制度。従来、「自身が課税事業者で取引先が免税事業者」「自身が免税事業者で取引先が課税事業者」でも変わらなかった仕入税額控除に変化が生じます。ここではインボイス制度に大きくかかわる適格請求書発行事業者について、さまざまな点から見ていきましょう。

インボイス制度で生じる仕入税額控除の変化。もし免税事業者のまま適格請求書発行事業者に登録しないとどうなる?

最終更新日:2022年6月29日

目次

適格請求書発行事業者とは?

適格請求書と呼ばれる請求書を発行できる事業者のこと。2023年10月から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)に大きくかかわる事業者です。

詳細は「適格請求書発行事業者になるには? 登録方法や手続きの必要性について解説」を参照ください。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは?

仕入税額控除を受けるためには適格請求書が必要となる制度のこと。この適格請求書を発行できるのが適格請求書発行事業者です。

2019年10月から軽減税率が導入され、8%と10%、2つの消費税が混在するようになりました。それにより現在、暫定として「区分記載請求書等保存方式」が実施されています。しかし2023年から、区分記載請求書等保存方式に変わってインボイス制度が開始されます。

詳細は「インボイス制度とは?適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響と対応方法」を参照ください。

インボイスとは何のこと?

インボイスとは、適用税率や消費税額が記載された適格請求書のこと。このインボイスを売り手が買い手に発行して初めて、買い手は仕入税額控除を受けられるのです。またインボイスによって、売り手は買い手に正しい適用税率や消費税額を伝えられます。なおレシートや納品書、領収書や請求書といった名称は問いません。

請求書とは?

サービスや商品の代価を相手に請求する書類のこと。請求書を保管する際のパターンは、「自社から送る請求書」「自社が受け取る請求書(支払い前)」「自社が受け取る請求書(支払い後)」の3つです。

請求書は証憑のひとつ

請求書とは取引が成立した証拠になる書類のこと。請求書発行にかかわるのは、社内・社外関係なくあらゆる取引を含みます。数や本数、価格などが正確に記載されているため、「物品のやり取りをした」「取引の完了後にその対価を求めた」という証拠になるのです。

インボイス制度と仕入税額控除

インボイス制度に関連する仕入税額控除とは一体何でしょうか。まず原則とされる方式で消費税を見ていきます。

まず消費税を預かり、そこから経費や仕入れで支払った消費税を差し引くのです。そしてその差額を国に納付します。この「経費や仕入れで支払った消費税」が仕入税額控除となるのです。

もしこの仕入税額控除がなかったらどうなるでしょう。預かった消費税からは何も控除されません。そしてそれをそのまま国に納付しなければならないのです。そうなると大きな損害が発生するのは何となくイメージできるでしょう。

仕入税額控除の対象

では仕入税額控除の対象となるのは、何でしょうか。国税庁が挙げる仕入税額控除の対象は、下記のとおりです。

・商品などの棚卸資産の購入

・原材料等の購入

・機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借

・広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払

・事務用品、消耗品、新聞図書などの購入

・修繕費

・外注費

仕入税額控除の対象外

反対に、仕入税額控除の対象とならないのは何でしょうか。それは、非課税となる支払や給与です。国税庁が挙げている非課税取引は、下記のとおりです。

・土地の譲渡および貸付け:ただし施設の利用に伴う土地の使用や土地を貸し付けるものの1カ月未満である場合、非課税取引に該当しない

・有価証券等の譲渡:たとえば株券や国債といった有価証券の譲渡。ただし出資や株式によるゴルフ会員権の譲渡は非課税取引に該当しない

・支払手段の譲渡:小切手や硬貨の譲渡。ただし収集品といった形での譲渡ならびに暗号資産の譲渡は、非課税取引に該当しない

・預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供等

・日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡および地方公共団体などが行う証紙の譲渡

・商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡

・国等が行う一定の事務に係る役務の提供。たとえば許可や検査、公文書の交付など

・外国為替業務に係る役務の提供

・社会保険医療の給付等:健康保険法や労災保険の対象になる医療といったもの。ただし差額ベッドの料金や美容整形は非課税取引に該当しない

・介護保険サービスの提供等:ただしサービスを利用する人が特別な部屋を選んだためにそれを提供したといった場合、非課税取引に該当しない

・社会福祉事業等によるサービスの提供等

・助産

・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供

・一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け等

・学校教育

・教科用図書の譲渡

・住宅の貸付け:ただし土地を貸し付けるものの1カ月未満である場合、非課税取引に該当しない

インボイス制度導入後、免税事業者の仕入税額控除はどうなる?

では免税事業者だと仕入税額控除はどうなるのでしょう。「自身が免税事業者の場合」「取引先が免税事業者の場合」2つから見ていきます。

そもそも免税事業者とは?

免税事業者とは、消費税の納税義務が免除されるため、消費税の申告を行う必要のない事業者のこと。免税事業者とみなされるには3つの条件があります。

1. 基準期間(前々年度つまり2年前)の課税売上高が1,000万円以下
値引きや返品による対価の返還や免税取引を差し引いた税抜価格が、課税売上高となります。

2. 特定期間の課税売上高が1,000万円以下
ただし特定期間(その年より前の年の1月1日から6月30日。法人は原則、事業年度の前年度が始まる日以後から6カ月)における課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、その課税期間から納税しなくてはなりません。これは基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも該当します。

3. 設立から2年以内となる事業者
設立から2年以内の場合、基準期間がないため原則、免税事業者になります。

しかし条件としては免税事業者でも、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に届け出た場合、課税事業者となります。

インボイス制度導入後、自身が免税事業者の場合、仕入税額控除はどうなる?

取引先の属性によって、仕入税額控除が変わります。

・取引先が課税事業者の場合

相手はこちらからの取引において、仕入税額控除を受けられなくなります。

・取引先が一般消費者であるもしくは同じ免税事業者

この場合、仕入税額控除を考える必要はありません。よって免税事業者のままでも現状と変わりない状態です。

またインボイス制度には経過措置があります。

インボイス制度導入後、免税事業者のまま適格請求書発行事業者に登録しないとどうなる?

そもそも適格請求書発行事業者に登録するかどうかは任意です。しかし取引先が課税事業者の場合、こちらが免税事業者ですと取引先は仕入税額控除ができなくなります。そのためいくつかの可能性が考えられるでしょう。

・取引が停止になる
取引先は仕入税額控除が受けられなくなります。よってコストが増えるため、これまでの取引を停止される可能性も高いです。

・値下げを求められる
仕入税額控除ができない分、価格の値下げを求められる可能性があります。

免税事業者はどうしたらいい?

では免税事業者はどうしたらよいのでしょうか。考えられる方法を見ていきます。

適格請求書発行事業者になる

ひとつは、インボイス制度が始まるまでに適格請求書発行事業者に登録する届け出を出す方法です。ただしこれによって、課税事業者になります。そうなるとこれまでより減収する可能性は高いでしょう。

適格請求書発行事業者に登録するだけで止めず、「これまでよりも収入が増えるよう取り組む」「顧客の新規開拓をする」といった方法を並行する必要もありそうです。

取引先とは時間をかけて交渉する

取引先が突然取引停止を一方的に通告してきた場合、取引先が独占禁止法で禁止している優越的地位の濫用に該当する可能性もあります。

時間はかかってもお互いが自主的かつ自由な判断のもと交渉をすることで、取引条件に合意しやすくなります。それによりこれまで同様、円満な信頼関係も保っていけるでしょう。

免税事業者のままでも仕事が来るように取り組む

もうひとつは、免税事業者のままでも仕事が来るように取り組む方法です。前述のとおり、取引先が一般消費者であるもしくは同じ免税事業者の場合、仕入税額控除を考える必要はなくなります。こうした事業を始めるのもひとつの手でしょう。

また取引先が課税事業者である場合、これまでどおり仕事が来るよう替えの効かない人材を目指すという方法があります。

インボイス制度が始まるまでもう少し!

インボイス制度によってさまざまな点が変わるため、経理だけでなく企業全体で対策が必要となるでしょう。しかし「わからない」「もう少し深く知りたい」という場合もあるかと考えられます。

インフォマートでは「知らない会社だけ損をする?!施行間近のインボイス制度、取るべき対策をわかりやすく解説」にて、インボイス制度のポイントをわかりやすくまとめました。よろしければご覧ください。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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