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簡易課税制度とは?インボイス制度の影響や要件をわかりやすく解説

簡易課税制度とは、中小事業者の消費税の納税に関わる事務負担軽減を目的として設けられている制度です。一方で消費税の仕入税額控除については、2023年10月から導入されるインボイス制度によって扱いが大きく変更される点が注目されています。今回は簡易課税制度の基本的な情報を確認しながら、一般課税との違いやインボイス制度開始による影響について解説していきます。

簡易課税制度とは?インボイス制度の影響や要件をわかりやすく解説

最終更新日:2023年01月11日

目次

簡易課税制度とは

消費税の計算方法には「一般課税方式(原則課税)」と「簡易課税方式」があります。まず、簡易課税制度の概要と基本情報を確認します。

簡易課税制度の概要

簡易課税制度は、中小事業者の税に関する事務処理負担の軽減を目的とした制度です。仕入控除税額の計算を簡素化することで、煩雑な事務作業を減らし、事業者の負担を少なくしています。

一般課税の消費税納税額は次のように、課税売上げに係る消費税額から所定の金額を控除することで求められます。

・消費税の納付税額 = 課税売上げに係る消費税額 − 課税仕入れに係る消費税額

簡易課税制度であっても消費税納税についての基本的な考え方は同様です。ただし、簡易課税制度では、一般課税のように実際に行われた課税仕入れ取引を差し引くことで税額計算を行うのではありません。課税仕入れにて支払った消費税分については、売上げに係る消費税額に事業区分に応じて定められた仕入れ率(みなし仕入率)を乗じて算出します。

課税仕入れには、商品や原材料などの棚卸資産の購入、事業資産にあたる機械や建物などの購入または賃借、広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払い、事務用品・消耗品の購入、運送などのサービスの購入、修繕費、外注費など事業のための支払いが含まれます。

ただし、非課税取引(土地の購入や賃借など)、また、課税対象外の給与や賃金などは課税仕入れに含めることはできません。

消費税申告について簡易課税制度とするかどうかについては、事業者側で選択が可能です。しかし、簡易課税制度の要件として、基準期間の課税売上高が5,000万円以下でなければなりません。法人における基準期間とは、前々事業年度のことです。また「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出することも必要です。

簡易課税制度と一般課税の違い

前述のように消費税の計算方法には「一般課税方式(原則課税)」と「簡易課税方式」があります。

一般課税方式(原則課税)の基本的な計算方法は、「売上において受け取った消費税(預かり消費税)」から仕入れなどで「支払った消費税」を差し引いた分を納税することです。この控除がいわゆる仕入税額控除であり、消費税額を明確にすることで、仕入税額控除を受けられる仕組みとなっています。この場合、すべての課税仕入れについて税額計算を行う必要があるため、事業者側では多くの労力が求められます。

簡易課税制度ではこの作業負担を軽減するため、「みなし仕入率」を売上げに係る消費税にかけて控除額を算出することができるのです。

みなし仕入率とは、売上高に通常占める課税仕入高の割合を規定したもので、事業の種類によって次のように区分されています。

仕入税控除については「事業者が消費税の支払い時に知っておきたい仕入税額控除の要件、記載事項は?」こちらも参考にしてください。

簡易課税制度の事業区分の表


事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第1種事業 90% 卸売業
第2種事業 80% 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)
第3種事業 70% 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給業および水道業。第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除く。
第4種事業 60% 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業。具体的には、飲食店業など
第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業を除く)
第6種事業 40% 不動産業
 

簡易課税制度のメリットとデメリット

続いて、簡易課税制度を選択するメリットとデメリットについて解説します。

メリット

簡易課税制度を選択する最も大きなメリットは、消費税納税に関わる事務作業が楽になることです。一般課税では支払に関する領収書・レシートなどの詳細な情報が必要となり、計算に使った後も書類の整理・管理が求められます。さらに、土地の譲渡・貸付や商品券・プリペイドカード、手数料などの非課税取引を除外する必要があるため、作業が煩雑化します。

また、簡易課税ではみなし仕入率が固定されています。支払った消費税よりも簡易課税の計算式で算出した控除額のほうが大きくなる場合は、節税となる可能性もあります。

デメリット

一方で、簡易課税制度にもデメリットがあります。

例えば、自社で複数の事業を扱っている場合には課税売上を区分するか、一律で処理する必要がありますが、一律で処理する場合ではみなし仕入率の低い方が適用されるため、損となることも考えられます。区分して処理することも可能ですが、その場合にはそれぞれの割合で算出する必要が出てくるため、事務作業の負担が増大することになるでしょう。

また簡易課税の場合、課税売上高を基に計算されるため、設備投資・支出の多寡が反映されず、逆に税負担が増える場合もあります。

手続きや要件にも留意しなければなりません。簡易課税制度の開始・終了にあたっては、都度の手続きが必要ですし、売上高が5,000万円を超えた場合には、自社の意向に関わらず一般課税での申告が求められます。

簡易課税制度とインボイス制度

簡易課税制度とインボイス制度の関連性について解説します。

インボイス制度とは

通称インボイス制度の正式名称は、「適格請求書等保存方式」で2023年10月1日から開始されます。

インボイス制度の開始後、仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者が発行する「適格請求書」が必要です。この請求書が発行できる「適格請求書発行事業者」となるためには課税事業者であることが求められるため、新たに課税業者となってインボイス制度に対応するには、課税事業者として簡易課税・一般課税のいずれかを選択しなければなりません。

簡易課税制度の対象である場合には、自社に関する仕入税額控除に必要な請求書の受け取り・保存が不要とされるため、インボイス制度に対応しながら事務処理の負担を抑えられます。

インボイス制度の詳細について詳しくは、「インボイス制度とは?適格請求書等保存方式の導入による経理業務への影響と対応方法」をご覧ください。

簡易課税事業者にはインボイス制度の影響があるか

同じ簡易課税事業者であっても、実質的にインボイス制度の影響を受ける場合とそうでない場合があります。

影響がないのは次のようなケースです。

簡易課税事業者が売手となって個人と取引をしている場合

個人との取引の場合には買手側の仕入税額控除に考慮する必要がありません。

・簡易課税事業者が買手となっている場合

売手側が課税事業者・免税事業者いずれの場合でも、買手側ではみなし仕入率による計算を行うためインボイス制度の影響を受けません。

一方で、影響があるのは次のようなケースです。

・適格請求書の発行を求める課税事業者が買手の取引をしている場合で、自社がインボイス制度に対応していない場合

売手側(自社)が適格請求書発行事業者の登録を行っていないケースでは、買手(取引先)側が仕入税額控除を実施できないため、自社が取引相手として「適当ではない」と見なされる恐れがあります。

取引上で大きな割合を占める相手が課税事業者である場合には、インボイス制度への対応を早急に進めたほうが良いといえるでしょう。

免税事業者が課税事業者になると消費税納税の義務が生じますが、簡易課税事業者になることで節税できる可能性もあります。インボイス制度の開始に合わせ、今後の対応を改めて検討する必要があります。

簡易課税制度についての選択は状況によって変わる

簡易課税制度を利用して簡易課税事業者になると、煩雑な消費税納税の手続きにかかる事務作業を簡略化できます。一方で、課税仕入額が急激に増えた場合や設備投資をした場合にはメリットが得られなくなる可能性もあります。

また、新しく導入されるインボイス制度においては、適格請求書の発行事業者になるかどうかの選択もしなければなりません。現状で課税事業者でない場合は、事業上大きな決断を迫られると言えます。ただし、自社で仕入税額控除の要件となる適格請求書が発行できない場合、取引上不利になるリスクも捨てきれません。取引先との関係性を考慮したインボイス制度への対応、メリットとデメリットを踏まえた簡易課税・一般課税課の選択など、長期的な視野で判断することが大切です。

参考:
簡易課税制度|国税庁
No.6509 簡易課税制度の事業区分|国税庁

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監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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