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消費税仕入税額控除の計算方法2つと、個別対応方式と一括比例配分方式、変更のタイミングを解説

取引では都度、消費税が発生します。事業者は売上げでは消費税を受け取り、仕入では消費税を支払います。国税制度には、課税売上げにかかる消費税額から課税仕入にかかる消費税額を控除する「消費税仕入税額控除」の仕組みがあります。それは生産や流通などの各取引段階で、二重・三重に税がかかるのを避けるためです。 ここでは消費税仕入税額控除の基本知識と2つの計算方法、どの計算方法が有利になるかの条件について解説しましょう。

消費税仕入税額控除の計算方法2つと、個別対応方式と一括比例配分方式、変更のタイミングを解説

最終更新日:2022年01月19日

目次

消費税仕入税額控除とは

初めに消費税仕入税額控除の概要と役割、その仕組みを解説します。

消費税仕入税額控除の概要

消費税仕入税額控除とは、生産、流通などの各取引段階で二重、三重に課税されるのを防ぐための制度です。消費税課税事業者が国に対して消費税を納付する際、課税売上げに対する消費税額から課税仕入にかかる消費税額(仕入税額)を控除して計算し、税金の払い過ぎを回避します。

課税仕入といったものにかかる消費税額を控除(仕入税額控除)するためには、帳簿や請求書などの保存が義務付けられています。

消費税仕入税額控除の仕組み

消費税仕入税額控除の仕組みについて、以下の例からわかりやすく説明しましょう。ここでは商品が製造事業者Aから消費者Dの手にわたるまでの流れを示しています。

A:製造 Bに1,000円で販売→商品総額1,100円:100円の消費税を受け取り100円の納税

B:加工 Cに1,200円で販売→商品総額1,320円:120円の消費税受け取り20円の消費税を納税(120−100)

C:販売 Dに1,500円で販売→商品総額1,650円:150円の消費税受け取り30円の消費税を納税(150−120)

D:消費者→Cから1,650円で商品を購入、150円の消費税支払い

消費者Dが商品を手にするまでの間、消費税はAとB間ならびにBとC間でも発生しているとわかります。このとき中間層でそれぞれが受け取った額の消費税をそのまま納付すると納税額が超過するのです。そこで仕入の際に支払った消費税を差し引いて納税額として調整します。

またこの流れを見ると、消費者Dが最終的に支払う消費税を各段階で納付しているとわかるでしょう。

しかし2023年10月導入の「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」では、免税事業者からの仕入税額控除が段階的に廃止されます。よって今後、免税業者(適格請求書が発行できない事業者)から仕入れた分の消費税については還付されなくなるのです。

※仕入れ税額控除については以下の記事を参照ください。
事業者が消費税の支払い時に知っておきたい仕入税額控除の要件、記載事項は?

消費税仕入税額控除計算方法2つと、個別対応方式・一括比例配分方式

消費税仕入税額控除を計算する方法は2つです。課税売上高と課税売上割合によって、仕入控除税額が異なります。消費税の納税額の基本と、2つの計算方法について解説しましょう。

消費税の納税額を計算するには

消費税の納税額は以下の式で計算されます。

・消費税納税額=売上(預り)消費税−仕入(支払)消費税

納税額に対する控除では、ケースによって異なります。

I. 課税期間中の課税売上高が5億円以下かつ、課税売上割合が95%以上の場合

課税期間中の課税売上にかかる消費税額、つまり受け取った消費税から、その課税期間中の課税仕入などで支払った消費税額の全額が控除の対象となります。

II. 課税期間中の課税売上高が5億円超または課税売上割合が95%未満の場合

課税仕入にて支払った消費税額の全額を控除するのではなく、課税売上に対応する部分のみが控除の対象となります。「仕入税額控除」は、個別対応方式・一括比例配分方式のいずれかを使用して計算するのです。

個別対応方式とは?

個別対応方式で「仕入税額控除」を計算する場合、課税仕入の消費税を3つに区分します。

I. 課税売上対応:課税売上のみに対応する課税仕入

たとえば直接売上に対応する仕入といったものは、全額控除の対象となります。

II. 非課税売上対応:非課税売上のみに対応する課税仕入

たとえば土地や住宅の譲渡・貸付などで、全額控除対象とはなりません。

III. 共通対応:課税売上と非課税売上の両方に共通するもの

光熱費や家賃などの経費で、課税売上割合分のみ控除対象とします。なお「課税売上割合を乗じた金額のみが控除の対象となる点」が、共通対応のポイントです。

・仕入控除額税額 =Ⅰ+ (Ⅲ× 課税売上割合)

控除対象にできるⅠとⅢを使い、上記の式で控除税額を求めます。

個別対応方式で「非課税売上の対象となるもの」は、全額控除の対象になりません。しかし課税売上にかかる消費税を確実に控除してもらえるため、税負担を軽くできます。一方、3つに分類しなければならないため、経理業務に負担がかかってしまうでしょう。

一括比例配分方式とは?

一括比例配分方式では、課税仕入を3区分せず以下のように計算します。

・課税売上割合=課税期間中の課税売上高(税抜き)÷課税期間中の総売上高(税抜き)

・仕入税額控除= 課税仕入等にかかる消費税額 × 課税売上割合

個別対応方式のように特性によって分類してから計算するのと異なり、すべてまとめて計算する点がポイントです。

個別対応方式・一括比例配分方式どちらを選ぶのか

仕入控除税額を求めるにあたり、どちらの方式を選ぶのかは個々のケースから判断します。個別対応方式は、課税売上への貢献度が高い課税仕入があるほど仕入税額に計上できる金額も大きくなる仕組みです。一般的に「一括比例配分方式が有利になるケースは限定的」と考えられています。

一括比例配分方式の方が有利になる場合とはどのようなものか

通常、一括比例配分方式が個別対応方式より有利になるのは、非課税売上に対応する課税仕入が多い場合です。不動産系の事業者を除いては有利にはなりにくいものの以下の式を使えば、ケースとして当てはまるかどうか、確認できます。

・非課税売上対応課税仕入などにかかる税額÷非課税売上高>課税売上対応課税仕入などにかかる税額÷税抜課税売上高

「課税売上対応の課税仕入」が多い場合、個別対応方式を使うと控除額が増えるため、一括比例配分方式では不利になってしまうのです。

計算方式は任意で選べる

個別対応方式と一括比例配分方式の計算方法については、事業者の任意で選択できます。どちらを使うのかについて、届出は特に必要ありません。

ただし一括比例配分方式を選択した場合には、同じ方式を2年間継続する必要があります。1年試してみて、やはり不利だと感じても、すぐには戻せない点に注意しなければなりません。

まず金額の多寡にかかわらず、課税売上と非課税売上の比率を見比べてみましょう。そこで非課税売上が大きくなりそうな場合、先に示したとおり一括比例配分方式の有利判定を行います。その点から、決断してみるとよいでしょう。

消費税の仕組みと消費税仕入税額控除を理解しよう

消費税仕入税額控除は、各段階の事業者によって消費税を調整する制度です。消費税仕入税額控除の金額を求める方法、個別対応方式と一括比例配分方式の2つ。いずれを選ぶのかのポイントとなるのは、課税売上に対する課税仕入の割合です。

2つの計算方式は事業者が任意で選べます。しかし1度一括比例配分方式を選ぶと、2年間戻せないので注意してください。「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の導入後、消費税仕入税額控除は課税事業者のみの適用とされ、それ以外の事業者への対応は段階的に廃止されますので、注意しましょう。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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