最終更新日:2021年08月25日
目次
キャッシュフローとは?
キャッシュフローとは、キャッシュ(お金)とフロー(流れ)。つまり企業を経営していくうえでの、「お金の流れ」を示すものです。お金は現在保有している現金のほか、普通預金や当座預金も含まれます。また定期預金や譲渡性預金でも、3カ月以内に現金に換えられるものはキャッシュフローに含まれます。
一定の期間で実際に企業に入ってくるお金(キャッシュ・イン)から、支払いによって実際に出ていくお金(キャッシュ・アウト)を差し引いた収支です。
例えば、
・1カ月の間で商品を売り上げた金額が1,000万円
・商品の製造や輸送コストなどの販売経費や社員への給与、光熱費、家賃など支払った金額が800万円
だった場合、キャッシュフローは200万円のプラスになります。仮に支払った金額が1,200万円だった場合のキャッシュフローは200万円のマイナスです。キャッシュフローは基本、会計上の利益だけではわからない企業の実態を知る際に算出します。
なおこうしたキャッシュフローを含む財務戦略を進める人物がCFO(最高財務責任者)と呼ばれるのです。
※CFOの詳細は、「CFOとは?企業経営に財務の面から積極的に関与するCFOになるためのポイント」を参照してください。
キャッシュフローの重要性
キャッシュフローの重要性を知るうえで欠かせないのが、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)との違いです。
・貸借対照表とは、資産と負債、純資産の状況を見るもので、現状の自己資本(純資産)がどの程度あるのか知るために役立つ
・損益計算書は、収益と費用、純利益の状況を見るもので、現状の売上や営業外収益に対し、どの程度の売上原価や販売費、管理費などがかかっているのか知るのに役立つ
・キャッシュフローは、会社にある現金の流れを見るもので、把握していれば現在、自社の資金が足りているかどうかが明確にわかる
当月の支払いができるかどうかは、キャッシュフローでなくとも、損益計算書からわかると思う場合もあるでしょう。しかし損益計算書だけでは現在、企業が保有している現金の額はわかりません。それが企業にとって貸借対照表やキャッシュフローが重要になる理由です。
例えば、商品を販売した売上の入金が2カ月先の場合でも、損益計算書では、「売上」として計上します。しかしこの売上はあくまでも売掛金ですので、当月に現金が入るわけではありません。そのため損益計算書上では売上が出ているものの、現金自体はないという状況になります。
仮に保有している現金以上に支払いがあれば、利益があるのに支払いができない、いわゆる黒字倒産の可能性が高くなるのです。ほかにも損益計算書だけでは次の項目がわからず、企業経営に大きな問題が生まれてしまうリスクが考えられます。
借入金の返済
借入金の返済で経費となるのは支払利息のみです。毎月の返済金は経費にならないため、貸借対照表にのみ記載されます。また1年分の貸借対照表における借入金では、期末に残高が記載されるだけです。よって毎月の返済額は、銀行借入金の返済表を確認しなければなりません。
毎月の支払額がわからなければ、当月、手元にいくら現金を残しておけばよいかわからず、仕入や設備投資に遅れが生じてしまうでしょう。
設備投資にかかる費用
損益計算書だけでは、「工場で新しい機械を購入する」「オフィスのOA機器を新しいものと入れ替える」といった設備投資にかかる正確な費用がわかりません。
例えば、工場で100万円の機械を購入したとしましょう。この際、貸借対照表では支払った金額分だけ「現金および預金」が減り、購入した機械が「有形固形資産」として増えます。しかし購入した時点では損益計算書上に何も記載されず、当年度に減価償却費として記載されるだけです。仮に10年で償却する場合、毎年10万円が減価償却費として記載されます。
これだけを見ると、貸借対照表から支払い金額がわかると思うかもしれません。しかしこれは購入した月に支払った場合のみです。例えば後払いで2カ月先に支払う場合でも、当月に「現金および預金」が減り「未払金」が増えます。
つまり貸借対照表上では当月に現金が減るものの実際に支払うのは2カ月後のため、保有している現金はそのままなのです。2カ月のタイムラグが生じるため、キャッシュフローを算出していないと、保有している現金の増減はわかりません。
税金
損益計算書での利益は、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つです。最終的な利益は、「当期純利益」ですが、これを理解せずほかの利益で見てしまうとその後課税があるため、実際の利益よりも多く利益があると勘違いしてしまいます。つまり当期純利益以外の利益全額を仕入や設備投資などに使えるわけではありません。この点を把握しておくと、「納税時に現金がない」状況を防げるでしょう。
在庫
帳簿での売上総利益は、売上から売上原価を差し引いた金額で求めます。売上原価は仕入から期末の在庫を差し引いたもので、売れた商品の原価だけを計上するため、在庫が残っていても資産として計上されてしまうのです。そのため実際には在庫は損失ですが、帳簿上では赤字になりません。それにより月末の支払い時、現金がないといった状況も起こりえます。
このように黒字にもかかわらず保有している現金がない状況を防ぐため、キャッシュフローの算出が必要となるのです。
キャッシュフロー計算書の読み方
健全な経営を進めるために欠かせないキャッシュフロー計算書の読み方を説明します。
キャッシュフロー計算書とは、一定の期間内にキャッシュの流れがどうなっているかを調べ、最終的に残高がいくらになっているかを知る会計書類です。具体的には次の3つに分けて現金の流れを見ていきます。
1. 営業活動によるキャッシュフロー
本業である営業活動によるお金の流れです。ここがマイナスになっている場合、「商品を販売しても利益が出ていない」もしくは「売上を回収できていない」状態であるといえます。商品価格の見直しや早急な売上回収が必要になるでしょう。
なお商品やサービスの売上高に対して、営業活動によるキャッシュフローがどの程度かを知るには、「営業活動によるキャッシュフロー」÷「売上高」で算出できます。これをキャッシュ・フローマージンと呼ぶのです。
2. 投資活動によるキャッシュフロー
ビルや建物のほかオフィスや工場の設備といった固定資産の取得・売却、株券や債券など有価証券の売買によるお金の流れです。投資活動は企業を成長させるために行うもので、キャッシュフローは一般的にマイナスとなります。そのためここでマイナスでもそれほど気にする必要はありません。
「固定資産の取得による支出」が、営業活動によるキャッシュフローの減価償却費や減損損失よりも大きい場合、成長を目的とした投資活動が積極的に行われているといえます。
3. 財務活動によるキャッシュフロー
借入金の調達や投資家からの出資、配当金の支払いなどによるお金の流れです。営業活動以外で取得したお金は基本、財務活動によるキャッシュフローとして算出します。ここがプラスの場合、借入金額が返済額を上回っている状態です。もしプラスが続くようであれば、固定資産の売却や毎月の支払い額の減額交渉などが必要になるでしょう。
上記3つ以外に、企業が自由に使えるフリーキャッシュフローがあります。いくつかの計算式があり、もっともよく使われるのは、「営業活動によるキャッシュフロー」から、「投資活動によるキャッシュフロー」を引いたものです。
自社の現状をしっかりと把握するためにもキャッシュフローの算出は必須
損益計算書や貸借対照表は、企業経営において必須といえます。しかし帳簿上の利益を知ることはできても、手元にどれだけの現金があるのかまでは把握できません。現金の把握に役立つのがキャッシュフロー計算書です。
手元にどのくらいの現金があるのかを把握できていれば、黒字倒産を防げるでしょう。また将来的な売上予測も立てやすくなり、設備投資にどれだけ割けるかも明確になります。もしキャッシュフローを把握していない場合は、早急に算出し、健全な企業経営を目指しましょう。
監修者プロフィール
『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部
この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。