
最終更新日:2025年10月28日
企業間取引の決済手段として長年利用されている手形・小切手ですが、2026年度末までに全面廃止が予定されています。
すでに2024年11月より短期支払いが原則化されており、決済環境は大きな変貌を迎えつつあります。企業の資金繰りや取引形態にも大きな影響を与える、手形廃止にまつわる背景やスケジュール、そして代替手段となる「電子記録債権(でんさい)」や企業がとるべき対応をわかりやすくまとめました。
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目次
- 手形・小切手はなぜ廃止?背景と現状
- 約束手形・小切手とは?基礎知識を整理
- 約束手形と小切手の仕組み
- 約束手形の歴史と今日的課題
- 約束手形の廃止に至る主な理由
- 資金繰りへの影響と不渡りリスク
- 紙ベースの非効率な業務プロセス
- 国際基準やデジタル化の流れとのギャップ
- いつから廃止される?手形廃止のスケジュール
- 2024年11月からの短期支払い原則化
- 2026年度末までに利用完全終了へ
- 紙の手形・小切手が廃止されるメリット
- 廃止による懸念やデメリット
- 代替手段として注目される「でんさい(電子記録債権)」
- 受取企業にとってのメリット
- 支払企業にとってのメリット
- 「でんさい」以外の決済方法と特徴
- 銀行振込やオンライン決済サービス
- ファクタリングやクレジットカード決済
- 業界ごとの対応事例(建設業や製造業など)
- 手形廃止に向けた企業がやるべきこと
- 計画的に手形・小切手の廃止に対応しよう
- よくある質問
手形・小切手はなぜ廃止?背景と現状
手形・小切手の廃止は、日本政府が2021年に取りまとめた「成長戦略実行計画」に盛り込まれた方針です。日本特有の商習慣として高度経済成長期に企業間商取引を支えた約束手形や小切手は、近年のデジタル化の進展とともに少しずつ利用が減っています。国際基準との整合性を図るため、アナログな紙ベースの決済手段を見直す動きが活発化していることも背景のひとつです。キャッシュレス化と効率化を促進するために、約束手形・小切手の利用終了、全面的な電子化に向けた段階的なスケジュールが策定されるに至りました。
近年は企業間商取引でも支払いサイトの短期化やリアルタイム取引への移行が進み、紙の約束手形を扱う機会は減少しています。特に、中小企業では資金繰り面の負荷が大きく、手形離れを後押しする要因となっていました。これは従来、約束手形や小切手のひとつの側面に、支払い期日を延ばす手段としての活用があったためです。手形の受取側にとっては商品やサービスの提供が完了したにも関わらず現金がすぐに受け取れないため、キャッシュフローが滞るリスクを負うデメリットがありました。
また、紙の手形は手形用紙そのものや管理のコストも企業に重い負担をかけます。近年は多くの金融機関で振込手数料の引き下げが進み、国内の取引全体をみても銀行振込や電子決済などの普及が加速しています。こうした状況を踏まえ、全国銀行協会も2026年度末までに手形交換所での手形・小切手交換完全停止を目指す自主行動計画を策定しました。
約束手形・小切手とは?基礎知識を整理
約束手形や小切手は、いずれも商取引において現金決済の代わりに支払いを証明する役割を担う有価証券です。支払い期日を取り決めやすい手段として利用されてきた一方、紙の現物を発行し管理する手間が生じるため、デジタル決済が広がる現代のビジネス環境では、非効率と指摘されるケースが増えました。
約束手形と小切手の仕組み
約束手形とは、発行者が指定の期日に記載された金額の支払いを約束する証券です。支払う側の発行者を「振出人」、受取側を「受取人」と呼びます。銀行口座を通じた決済とは異なり、手形そのものが支払いの約束を証明し、受取人は期日になったら金融機関に持ち込んで現金化できます。期日前に現金化したい場合は、金融機関などに手形を買い取ってもらう「手形割引」という手段がありますが、割引料(手数料)が差し引かれ、満額を受け取ることはできません。小切手は、振出人(発行側)が銀行へ支払いを委託する形で、受取人が提示すればすぐに現金化できますが、支払期日を指定できない点が約束手形とは異なります。
約束手形の歴史と今日的課題
日本の約束手形の制度は明治時代以降、信用取引の中核を担い、高度経済成長期には企業間決済として大きく普及しました。主に買掛金の支払いを先送りし、資金繰りを一定期間確保できるメリットが評価されていましたが、一方で景気の変動による不渡りリスク、主に下請けとなる中小企業の資金繰り悪化といった課題も顕在化しています。さらに紙の発行や受取の際に発生する印紙税などのコスト面の課題、現代のデジタル決済の普及やキャッシュフロー重視の経営環境とのギャップも大きく、今回の廃止決定へとつながりました。
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約束手形の廃止に至る主な理由
これまで述べてきたように、約束手形・小切手の時代のニーズに合わなくなった点が、廃止に至る大きな理由です。従来、円滑な商取引のために活用されてきた決済手段でしたが、デジタル技術やオンラインによる決済の普及により使い勝手が低下、さらに迅速なキャッシュフローを求める現在の取引慣行とも相反するものとなっています。
資金繰りへの影響と不渡りリスク
帳簿上の売上があっても現金がないという約束手形の性質は、企業の資金繰りを圧迫する要因となっていました。特に中小企業では、手形の期日を迎えるまで資金を調達しにくいという状況に陥りやすく、経営上のリスクも高まっていました。また、約束手形が不渡りとなった場合、金額によっては取引先からの信用を失うだけでなく、金融機関との関係にも大きく影響します。
紙ベースの非効率な業務プロセス
紙の手形や小切手は、発行から受取り、裏書きや保管といった複雑な手順が必要です。持参あるいは郵送など、受け渡しは紙を物理的に移動させる必要があります。紙ゆえに紛失・盗難・破損といったリスクを回避するための管理も必要です。署名漏れ、押印ミス、訂正印不備といった形式的なミスや、偽造・改ざんといった紙ならではのリスクも担当部門の負担を増やす一因になっていました。決済手段が多様化した今、こうした手間やコストを削減するためにもデジタル決済への移行が求められているのが現状です。
国際基準やデジタル化の流れとのギャップ
決済が電子化され、オンライン送金が主流となっている海外のビジネスシーンでは、紙の手形はほぼ利用されていません。国際取引が増える日本企業にとっても、紙の手形や小切手を利用した古い決済手段の維持は、競争力の面で不利になりかねません。ビジネス環境のデジタル化の流れと整合性をとるためにも、手形の廃止は避けて通れない道となっています。
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いつから廃止される?手形廃止のスケジュール
多くの金融機関で、手形用紙の新規発行申込は、2025年9月30日で受付を終了すると発表しています。段階的に進行する紙の手形・小切手の発行終了と全面電子化に向けた、具体的な予定やガイドラインを押さえましょう。
紙の手形・小切手廃止は、政府主導で進められるキャッシュレス化と事業効率化の一環です。明示されているスケジュールを踏まえ、企業はどのタイミングでどのような代替手段に切り替えるか、早急に検討する必要があります。
2024年11月からの短期支払い原則化
従来は支払期日が半年や1年後に設定されることも珍しくありませんでしたが、資金繰りを安定化させるためにも早期決済が基本方針となりました。2024年11月以降は下請法の運用ルールが変更され、手形交付から支払期日までの期間を60日以内とする新ガイドライン、いわゆる「60日ルール」が示されています。手形サイトが60日を超える約束手形、電子記録債権、一括決済方式は、行政指導の対象となるため、注意が必要です。
中小企業庁と公正取引委員会はルールの遵守徹底を求めており、下請法対象外の取引についても、サイトを「60日以内」に短縮、可能な限り支払決済を現金で行う要請をしていく方針を示しています。
参考:手形取引のルールが変わる。交付から満期まで「60日以内」(中小企業庁「ミラサポplus」)2026年度末までに利用完全終了へ
全国銀行協会は、2026年度末までに全国の手形交換所での手形・小切手交換を完全停止する自主行動計画を策定しています。これにより、紙の手形を用いた取引は実質的に不可能となり、事実上すべての企業がデジタル決済等を活用する形へ移行していくでしょう。未使用の手形・小切手をどう扱うかも議論されており、一定条件の下で買い戻しが可能になる予定です。紙の手形・小切手が廃止されるメリット
紙ベースの決済手段だった約束手形や小切手が廃止されるメリットとしてもっとも大きいのが、キャッシュフローの安定化です。現金化を支払期日まで待つ必要がなくなるため、企業は売掛金を早期に回収でき、円滑な資金繰りにつながります。また、紙の発行・受取や裏書といった事務作業コストも削減、担当者の作業負担も大幅に軽減されるでしょう。さらに、国際スタンダードに則した決済手段を選択できるようになるため、海外取引においても取引相手との信頼関係構築の寄与が期待できます。
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廃止による懸念やデメリット
一方で、廃止によって生じるリスクや問題点はどのようなものが考えられるでしょうか。
最大の懸念は、これまで支払期日を長期に設定していた企業が、急に短期決済へ移行するために資金繰りが難しくなる点です。特に手形を資金繰りの調整弁として活用していた中小企業が短期での支払いを求められると、経営に大きく影響する可能性があります。また、デジタル決済導入時にはシステム構築や社内ルールの整備にコストがかかる場合も。取引先との連携をどのように行うかなど、新たな課題が生まれる点にも留意が必要です。
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代替手段として注目される「でんさい(電子記録債権)」
紙の約束手形・小切手の廃止にともなう新しい決済手段として期待されているのが、電子化された債権、「でんさい(電子記録債権)」です。
でんさいは、紙の有価証券ではなくデジタル形式で債権を記録・管理する仕組みです。従来の約束手形の機能を維持しつつ、紙の発行や印紙税などの負担を大幅に軽減できるため、多くの企業が注目し始めています。リアルタイムで債権内容が更新されるため、取引の透明性や信用リスクの把握も容易になるというメリットがあります。
受取企業にとってのメリット
- ・債権を電子的に管理できる
- ・紛失や盗難のリスクなし
- ・紙の手形より早期に資金化しやすく、キャッシュフロー改善につながる
- ・信用情報が記録されているため、取引先の支払い能力を事前に評価しやすい
- ・領収書を発行する必要がなく、印紙税も不要
支払企業にとってのメリット
- ・手形用紙の発行・管理が不要、印紙税などのコストを削減できる
- ・記録管理の簡潔化で事務作業にかかる負担を削減
- ・決済までのプロセスがスムーズになる
- ・オンライン上で取引履歴が可視化され、社内決裁や監査等で効率的な運用が可能
「でんさい」以外の決済方法と特徴
電子支払い手段の多様化により、決済方法は銀行振込やオンライン決済など、「でんさい」以外にもさまざまな選択肢があります。
銀行振込にしても、銀行窓口やATMに足を運ぶのでなく、インターネットバンキングを利用すれば手数料を抑えつつリアルタイムで入出金を確認可能です。また、オンライン決済サービスやクレジットカード決済を導入する企業も増え、業界によってはファクタリングなどのサービスが資金調達のスピードアップに一役買っています。自社の取引規模や取引相手の状況に合わせて、最適な方法を検討することが大切です。
銀行振込やオンライン決済サービス
銀行振込は、すでに多くの企業が採用している決済手段です。最近ではオンラインバンキングの普及により、早い時間帯なら振込手数料を抑えて送金できるサービスも登場しており、中小企業にとっても使いやすい仕組みが整っています。オンライン決済サービスも、取引の都度にクレジットやデビットなどさまざまな方法で支払いができるため、取引先との関係強化につながる場合が少なくありません。
ファクタリングやクレジットカード決済
ファクタリングは売掛金を早期に現金化できる手段として、資金繰りの改善に役立ちます。特に長期の手形決済を利用してきた企業にとっては、手形に代わる迅速な資金調達手段として有効な選択肢です。近年はオンライン完結型のサービスも増えており、インフォマートでもファクタリングサービス「電子請求書早払い」を提供しています。クレジットカード決済は小口決済に強みがあり、取引額が比較的少額なケースで利便性を発揮するでしょう。
業界ごとの対応事例(建設業や製造業など)
建設業では従来、下請け企業への支払い手段として約束手形が多く利用されてきましたが、各社で「でんさい」や銀行振込へ移行する動きが加速しています。製造業でもサプライチェーン全体で支払い条件を見直し、短期決済型に切り替えるケースが増えています。業界固有の習慣や慣例もあるため、廃止に合わせて新たなルールの見直しやシステム導入を進める事例が多くみられます。
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手形廃止に向けた企業がやるべきこと
実際に企業がどのようなステップを踏むべきか、具体例を交えて整理します。
- 1.洗い出し 自社がどの程度手形に依存しているかを正確に把握し、現状と課題を洗い出す
- 2.代替手段の策定 代替手段の導入方針を明確化し、社内の会計システムや取引先との契約条件を見直す
- 3.取引先との連携 支払い条件の調整やシステム切り替えスケジュールの共有など、取引先とコミュニケーションを欠かさず、早めに連携を図ることがスムーズな移行のポイント
- 4.管理体制の強化 キャッシュフロー管理やリスク管理の体制を強化し、短期決済に対応できる運転資金の確保など、実務面での備えを万全に整える
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計画的に手形・小切手の廃止に対応しよう
紙の約束手形や小切手という伝統的な決済方法が廃止されるのは、キャッシュレス化とグローバル化が急速に進む現代では不可避の流れです。「でんさい」やオンライン決済など、多様なオプションを組み合わせて自社のニーズに合う仕組みを整備し、取引先との連携を深めながらスムーズな移行を実現させましょう。
デジタル化が加速するビジネスシーンにおいて、手形廃止を単なる決済方法の切り替えにとどめず、電子請求書やオンライン決済基盤を取り入れることが、業務効率化と経営の持続的な成長を実現する鍵となります。インフォマートの「BtoBプラットフォーム 請求書」は、請求業務のデジタル化を通じて、ペーパーレス化やコスト削減、法令対応などを実現できる経理システムです。
これからのビジネス環境を見据え、手形廃止を契機にさらなる効率化と成長を目指していきましょう。
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よくある質問
Q. 手形はいつから廃止になりますか?
紙の約束手形は2027年3月末をもって実質的な廃止・交換停止、電子化へ移行するスケジュールが発表されています。それに先だち、金融機関によっては手形・小切手帳の発行申込受付を2025年9月末で終了するケースもみられます。
詳細は「いつから廃止される?手形廃止のスケジュール」をご覧ください。
Q. 手形の廃止に代わるものは何ですか?
「紙の手形」の実質的な廃止にともない、電子記録債権(でんさい)や、銀行振込、クレジットカードやデビットカード等を利用したオンライン決済サービスへの移行が求められています。また、売掛金を早期に現金化できる手段としてファクタリングも注目されています。
詳細は「代替手段として注目される「でんさい(電子記録債権)」」をご覧ください。
Q. 手形払いは禁止されるのですか?
下請法(中小受託取引適正化法)等の改正により、2026年1月1日から「下請法の対象となる取引」では、「手形払等」の支払手段が禁止されます。また、電子記録債権やファクタリングなどの代替手段についても、「支払期日までに代金相当額を満額得ることが困難なもの」は禁止対象になります。
下請法については「請求書の支払期限はどう決める?設定方法や未払いの場合の対応を解説」もご覧ください。
監修者プロフィール

監修者:宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上たちました。現在は、宮川真一税理士事務所の代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。
【保有資格】CFP®、税理士
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