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消費税の特定課税仕入れとは?仕入税額控除の際の注意点

一般的に消費税を納税するのは、商品やサービスの販売側です。しかし「特定課税仕入れ」の場合、仕入れ側つまり購入者が納税義務を負います。これを「リバースチャージ方式」と呼びます。あまり聞きなれない言葉ではありますが、仕入額控除を行う際には知っておかなければなりません。 ここでは消費税にかかわる特定課税仕入れとリバースチャージ方式について、解説します。

消費税の特定課税仕入れとは?仕入税額控除の際の注意点

最終更新日:2022年01月26日

目次

特定課税仕入れとは?

消費税法により「特定課税仕入れ」を行った事業者には、納税義務が発生すると定められています。初めに「特定課税仕入れ」の取引について解説しましょう。

特定課税仕入れの取引

特定課税仕入れの取引とは、“国外事業者から国内にて受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「特定役務の提供」”のことです。

・事業者向け電気通信利用役務の提供による課税仕入れ

電子書籍・音楽・広告の配信などの電気通信回線(インターネットといったもの)を介して、事業者対象に行われる役務の提供です。たとえばGoogle広告といった「電気通信回線利用の役務の提供」を受けた事業者は、課税仕入れの対象となります。

・特定役務の提供による課税仕入れ

まず特定役務について見ていきましょう。特定役務にあたるのは、 以下のとおりです。

1. 芸能人として行う映画の撮影、テレビへの出演

2. 俳優、音楽家として行う演劇、演奏

3. スポーツ競技大会といったイベントや催し物への出場など

国外のアーティストやミュージシャン、スポーツ選手を招き、報酬・賞金を支払う場合、個人事業主・免税事業者を問わず、特定役務の提供があったと見なされます。

国外取引については非課税の扱いとされていました。しかし2015年(平成27年)の税制改正にて、「特定役務の提供が国内の事業者・消費者に対して行われる」ものには消費税が課税されると決まったのです。この場合、国内と国外いずれから行われるものも国内取引として扱われます。

特定課税仕入れの対象外となるケース

特定課税仕入れは、特定役務の提供を受けた国内事業者に対して課税されます。ただし条件によっては控除の対象となるのです。

特定課税仕入れの対象外になるのは、課税期間における課税売上高が5億円以下で「課税売上割合」が95%以上の事業者で、課税仕入れの税額全額を控除できます。「課税売上割合」とは、その課税期間中に国内で行った取引額の合計額のなかで、課税売上額が占める割合です。

また課税売上高が5,000万円以下の中小事業者を対象とする、「簡易課税制度」が適用されている事業者も、特定課税仕入れの対象外となっています。

上記は当面の経過措置で、おおむねの中小事業者が対象外とされ、しばらくの間は影響がないと考えられるでしょう。しかし今後本格的に運用された場合に備えて、制度についての理解は必要といえます。

特定課税仕入れの課税方法「リバースチャージ方式」

特定課税仕入れの課税にはリバースチャージ方式が採用されています。リバースチャージ方式についてわかりやすく解説しましょう。

リバースチャージ方式とは

リバースチャージ方式とは、「電気通信利用役務の提供」を受けた事業者が特定課税仕入れに関して申告・納税を行う制度です。

適用対象は課税事業者で、課税売上割合が95%未満の事業者。対象事業者が、「事業者向け電気通信利用役務の提供」を国外の登録国外事業者以外から受けた際、適用されます。

登録国外事業者とは、国税庁に対して「登録国外事業者の登録申請手続」を行った事業者です。国境を越えた役務の提供を行う事業者で、本社機能が日本国外にある事業者が登録申請手続きを行うと、登録国外事業者として認定されます。

リバースチャージ方式が導入された背景には、インターネットによる取引のグローバル化があります。近年、インターネットを通じた通信サービスや販売が国際化したため、国外事業者でも国内営業所・拠点なしで取引ができるようになりました。

これまで国外取引については非課税とされてきたものの、「電気通信利用役務の提供」によって日本国内に対して、多くのサービスが提供されています。そこで国内で消費されるものに課税上のバランスを取るため、リバースチャージ方式が導入されました。

特定課税仕入れはほかの課税仕入れと同様、役務の提供を受けた事業者は、仕入税額控除の対象となります。よって申告の際、一般的な課税仕入れとあわせて仕入税額控除ができるのです。

リバースチャージという考え方はなじみがなく、一般的にイメージしにくい方式でしょう。「サービスを輸入した」イメージでとらえると理解しやすくなるかもしれません。

リバースチャージ方式の計算

リバースチャージ方式で、消費税納税額を出す計算方法を紹介していきましょう。

初めに課税標準額を求めます。課税標準額は、特定課税仕入れに係る支払対価の額の合計金額で、1,000円未満は切り捨てます。

次に仕入税額控除の対象となる消費税額を求めます。特定課税仕入れ以外の課税仕入れに係る支払対価の額に6.3/108を掛けた金額と、特定課税仕入れに係る支払対価の額に6.3/100を掛けた金額を合計した額です。

1. 課税標準額に対する消費税額 (課税売上高+特定課税仕入れ)×0.1

2. 仕入税額控除 (課税仕入れ+特定課税仕入れ)×0.1

上記の式をもとに1から2を引くと「消費税納税額」が割り出せます。

特定課税仕入れに関する注意点

事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者でも、特定課税仕入れにおいて免税事業者は対象となりません。国外事業者はリバースチャージ方式により、納税義務が発生する旨の表示が求められています。しかし表示がない場合でも課税対象となるため、注意が必要です。

特定課税仕入れの対象となり仕入税額控除の適用を希望する際は、以下の事項が記載された帳簿の保存のみで控除を受けられます。

1. 特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称
2. 特定課税仕入れを行った年月日
3. 特定課税仕入れの内容
4. 特定課税仕入れに係る支払対価の額
5. 特定課税仕入れに係るものである旨(帳簿に特定と付記するといった方法で記載)


2023年の「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」導入後、仕入税額控除が可能となるのは適格請求書発行事業者から発行された請求書のみです。適格請求書発行事業者に登録できるのは、課税事業者となります。

「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の導入後も、特定課税仕入れに係る仕入税額控除の要件は変更されません。

特定課税仕入れに関しては今一つ分かりにくい点も多いでしょう。消費税制の改正に伴い、これまでとは違う扱いになっている点に留意しなければなりません。もし迷った場合は、士業の専門家に相談するとよいでしょう。

※仕入れ税額控除については以下の記事を参照ください。
事業者が消費税の支払い時に知っておきたい仕入税額控除の要件、記載事項は?

特定課税仕入れ申告の対象となるかを要確認

特定課税仕入れとは、国外事業者からのサービス提供に対して仕入れ側が申告・納税の義務を負う制度です。事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者で、条件によってはリバースチャージ方式が適用されます。また、課税売上割合が95%以上の場合は、申告の義務は発生しません。

特定課税仕入れで仕入税額控除を受ける場合、帳簿の保存のみで請求書は要件外となっています。仕入税額控除の条件は、課税事業者である点です。「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の導入も含め、現在免税事業者の場合で課税仕入れ額が大きくなる可能性がある際は、課税事業者への移行を検討しましょう。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部

この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。

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