見直し迫られる内部統制〜経理・財務ガバナンスの課題と対策(後編)
内部統制のすべては“見える化”からはじまる

2018年7月20日

見直し迫られる内部統制〜経理・財務ガバナンスの課題と対策(後編)

本コラムの前編では、止まらない不祥事の「要因と課題」について、後編では「対策とこれから」について解説する。

内部統制の効力を高める3つのアプローチ

経理・財務領域での不祥事を未然に防ぎ、内部統制が機能する組織にするにはどうしたらよいのか。三浦氏は、「J-SOXの“枠外”での取り組みも必要」とアドバイスする。この場合はJ-SOXの制度的な縛りがないため、各企業の実情に合わせて、製品の原価計算の間違いや品質データ改ざん、経費の使い込みなど、不正・不祥事が発生しやすい特定の業務について柔軟な対策を考えていくことが可能になる。

「部署内、企業内、グループ内で不正を防ぐ壁を何重にも作っていかなければなりません。その上で、経理業務には精度向上と業務効率化という、相反する目標を同時に達成することが求められます。そのためには、まずグループ企業も含めた全社の会計情報を“見える化”する、つまり、必要な時にいつでも“スピーディ”に“直接確認”できる体制を作ることが必要です」(三浦氏)

見える化は、決して容易なことではない。しかし、環境、業務、人・組織の3方向から整備を行うことで、その実現に近づいてくるという。

“見える化”を実現する3つの取り組み
  • 1環境の整備(管理が容易になるようにインフラを整備する)

    情報の可視化(シングルインスタンス)、勘定科目統一など

  • 2業務の整備(標準ルール、手順を整備する)

    決算テンプレート、チェックリストの整備、業務の統合・集中管理化など

  • 3人・組織の整備

    経理人材の育成、キャリアパス、コンピテンシーモデルの策定など

①環境−インフラの整備まずは情報管理をしやすくするためのインフラ整備だ。会計データや経営に必要な情報は、事業所や子会社、支社、海外拠点に至るまで全拠点のデータを一元管理し、いつでも参照できるシステムの構築が必須となる。

「グループ全体で統一したシステムを導入する手もありますが、必ずしも大規模な投資は必要ありません。各事業所のシステムはそのままに、明細データを自動連携してグループで統一の勘定科目に変換することも可能です。この場合は科目名を統一するだけでなく、各拠点で使い方を合わせることが重要です。たとえば、曖昧になりやすい交際費と会議費の使い分けを明確に定めるなど、中身まで統一することで情報を比較・検討し、グループ全体をコントロールできるようになります」(嘉鳥氏)

シングルインスタンスと言われるように、グループ会社の経理データを明細レベルで見えるような環境にすることがポイントだ。

②業務−ルールや手順の整備現場スタッフの業務を標準化したうえで、遵守させる仕組みを構築したい。具体的には会計処理の方針や決算時の作業内容と手順の取り決め、決算のテンプレート化、チェックリストの整備などが挙げられる。これにより不正防止はもちろん、ミスや異常値の早期発見も可能になり、効率化にもつながる。

「実際に取り組んでいる企業は多いと思いますが、財務会計データを集計するだけでなく、事前に異常値や間違いを検証する仕組みを入れることも非常に重要です。請求書であれば月末ごとに回収して終わりではなく、発注や業務状況から月末を待たずに請求額を見積もる。その上で、情報を複数の人が見える化できる状態にし、作成者以外の人が請求額について、異常値がないか、確定した請求額への更新が漏れていないかなどをチェックすることが効果的です」(三浦氏)

また、経理業務の集約も有効だ。

「グループ各社の経理業務をシェアードサービスで統合してもよいでしょう。ある企業では参謀的な機能までをシェアード会社が担い、財務データを通して抽出した経営課題と対策を経営者に進言している例もあります」(三浦氏)

③人・組織−人材育成、評価基準の整備最終的に業務を果たすのは人である。精度を高めながら効率も上げるには、中長期的な視点での人材育成計画が不可欠だ。

「経理は間接業務という考え方も根強いですが、グループ全体の資金の流れまでを把握している経理担当者は、各社の抱える隠れた問題を発見して改善を促すだけでなく、成長戦略を提案できる経営参謀にもなり得ます。キャリアパスや明確な人事評価の基準を定めることでモチベーションとスキルを引き上げれば、ガバナンスとパフォーマンスを合わせて向上させることも可能になるでしょう」(嘉鳥氏)

制度を作り上げたら変え続けることが重要

環境、業務、人・組織の整備をしても、制度は見直し続けなくては形骸化する。時流によって企業の内外が変わっていく中で、その点をカバーした評価方法に変えてこそ内部統制は効果を維持できるのだ。

「“不備なし”という評価が毎年出ていた業務プロセスでも、別の担当者がチェックしてみたらおかしな点に気付いたとします。しかし、これまでの良い結果を覆したくないという気持ちに流されて、不正につながる環境を見過ごしてしまうことがあります。常に今だったらどうなのかと見直していくこと、おかしいと思ったことはしっかり指摘することが必要です。そのためには、何のための内部統制なのか、常に目的を考えていくべきでしょう」(嘉鳥氏)

「制度は、一度作り上げたとしてもそれで完成ではありません。目的が達成できるように状況の変化に応じて仕組みを変えていくことが重要で、それは意識を変えるということでもあるのです」(三浦氏)

【Column】内部統制の最重要人物
経理・財務責任者(CFO)の役割

内部統制の最重要人物 経理・財務責任者(CFO)の役割

どんなに強力な内部統制の制度を整えても、それを監督してチェックする管理者がいなければ、仕組みはやがて形骸化する。真に機能するガバナンスを主導し、管理していく役割を担うのは、財務担当役員であるCFO(最高財務責任者)だ。CFOを設置してない小規模企業であっても、経理部長などの実質的な経理・財務部門の責任者は、CFOの役割を担うことが求められる。

あずさ監査法人が定義するCFOの役割は、図に示す4つの領域に分けられる。経営に直結する左側の「業績」と「効率性」はもともと重視されており、CFOに対する評価もこの2点が中心になりがちだ。しかし、本来は右側の「ガバナンス」と「統制」こそが、CFOの業務の中核をなす重要な職責となる。

経理に限らず、企業全体をカバーするコーポレート・ガバナンスやグループ企業の管理の出来不出来は、経理・財務領域をどれだけコントロールできているかに左右される。CFOが本社に加えグループ企業の経理・財務にまで目を光らせ、内部統制を十分に機能させることは、企業全体のガバナンス強化にも良い影響を及ぼすことになる。

とはいえ、内部統制には限界があり、いくら従業員の不正を防ぐ仕組みを整えたとしても、経営トップ自らが不正を主導するようなケースでは意味をなさない。普段からCFOが不正を許さない断固とした姿勢を見せ、強固なガバナンスを機能させていくことで、従業員だけでなくトップに対しても牽制を効かせていくことが重要になる。

本コラムの監修

有限責任 あずさ監査法人

有限責任 あずさ監査法人

4大国際会計事務所のひとつであるKPMGインターナショナルのメンバーファーム。全国の主要都市に約6,000名の人員を擁し、金融、情報・通信・メディア、製造、官公庁など、業界特有のニーズに対応した専門性の高いサービスを提供する。

(右)アカウンティングアドバイザリーサービス/ディレクター
嘉鳥昇氏 (左)アカウンティングアドバイザリーサービス/シニアマネジャー
公認会計士 三浦一成氏 https://home.kpmg.com/jp/ja/home.html

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