最終更新日:2025年8月19日
「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が発表したレポートで提唱された言葉です。多くの企業がDX推進に取り組む一方、デジタル化に取り残された企業では、既存の基幹システムの老朽、サポート終了に伴うセキュリティリスクの増大といった問題で2025年以降、企業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があるとされています。インフォマートでは、「2025年の崖」とDXに関する実態調査を実施。企業の認知状況や事業に与える影響、実際の対策の進捗状況に加え、レガシーシステムの現状やその刷新における課題、取引先のDX状況が自社に与える影響などについて検証を行いました。■ 調査概要
調査対象:企業または自治体に勤務するIT部門、DX推進、経営企画の担当者、経営者・役員
調査方法:インターネットリサーチ
調査内容:2025年の崖とDXに関する実態調査
調査期間:2025年5月23日(金)~5月28日(水)
回答者 :360名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計した数字が100%にならない場合があります。

目次
- 6割近くが「2025年の崖」の理解が進まず
- 約8割が「2025年の崖」の影響を懸念
- 「2025年の崖」はシステム障害・セキュリティインシデント・運用保守の持続可能性
- 「2025年の崖」対策は、DX推進・クラウド移行・人材育成
- 6割以上が「レガシーシステム」があり製造業は約8割
- レガシーシステムの壁は、業務により要員が割けず・既存システムのこだわり・ブラックボックス化
- 「取引先」DX対応遅れやレガシーシステムにより業務にも影響
- 「Fit To Standard」を4割が認知、積極的に導入しているのは1割程度
- 「Fit To Standard」を積極的に取り入れている企業ほど、DXが進む
- DX推進の壁は人材・予算・部門間連携
- 3割以上が3年間は、投資を増加させる。目的は、DX推進による業務効率化・生産性向上
- DX推進で求められる、経営者の理解や既存システムの脱却
- 「2025年の崖」のカギは「Fit To Standard」慣れたレガシーから脱却し業務プロセスの見直しが重要
6割近くが「2025年の崖」の理解が進まず
「2025年の崖」は、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』※の中で示された問題です。2025年は、これまで広く利用されてきたシステムの保守期限切れが重なるタイミングであり、老朽化した基幹システムを使い続けることによる業務の複雑化、ブラックボックス化、サポート終了に伴うセキュリティリスクの増大、また、IT人材不足による運用保守の限界などが危惧されています。
企業の成長・競争力強化のために、「レガシーシステム」の脱却がもとめられており、DXを推進できなければ、2025年以降の経済損失が年間で最大12兆円にまで増加する可能性が指摘されているのです。
※経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』
インフォマートが行ったアンケート調査では、「2025年の崖」という言葉の認知状況について、「内容をよく理解しており、自社への影響も把握している」と回答したのは27.2%と最多。「言葉は知っており、概要も理解している」の14.2%と合計すると、41.4%が概要を理解していることがわかりました。一方、「全く知らない」と回答した人の割合は42.2%で、「言葉は聞いたことがあるが、内容はよく知らない」の16.4%を合計すると58.6%で理解が進んでいないことが判明しました。
約8割が「2025年の崖」の影響を懸念
「2025年の崖」が勤務先の事業にどの程度の影響を与えるとの問いに、「ほとんど影響はないと思う」と回答したのはわずか14.2%でとどまりました。最多となったのは「ある程度、負の影響がある(競争力低下やコスト増など)」の36.9%です。次いで、「非常に大きな負の影響がある(事業継続に関わるレベル)」の20.1%、「多少は負の影響があるかもしれない」の23.4%と続きます。合計すると80.4%と約8割が負の影響を懸念しており、大半の担当者が危機感を抱いている様子がうかがい知れます。
また、業種別にみると、特に「2025年の崖」による負の影響への強い懸念は、「建設業」 「製造業」 「自治体」 「金融業、保険業」において顕著であるとわかりました。
「2025年の崖」はシステム障害・セキュリティインシデント・運用保守の持続可能性
「2025年の崖」が勤務先に与えうるリスクについて、自由回答してもらったところ、「システム障害やシステム更新の影響で業務に支障が出る」「利用システムのサポート期限終了によるセキュリティリスクが増大する」「人材不足により運用保守業務の継続ができない」等があげられました。その他、主な回答を以下にしめします。
- ・システム障害からの復旧に時間と手間がかかる(金融業、保険業)
- ・システム障害により、業務の停止や遅延、停滞が発生する恐れがある(製造業)
- ・システム障害によって個人情報が漏洩したり、外部からの攻撃を受けたりするリスクがある(自治体)
- ・運用保守コストや、システム更新時の改修負担が増大する(業種該当なし)
- ・人材不足により、運用・保守業務の継続が困難になる(情報通信業)
- ・既存システムを大きく変更するタイミングで、何らかのリスクが発生する恐れがある(情報通信業)
- ・利用中のシステムが、突然サポート終了やサービス提供停止となる可能性がある(卸売業、小売業)
- ・システムのサポート期限終了により、セキュリティリスクが高まる(情報通信業)
- ・古いシステムのメンテナンスが困難になる可能性がある(教育、学習支援業)
- ・熟練者の退職や世代交代によって暗黙知に基づくスキルが失われ、システムの維持管理が困難になり、障害発生時に自力で対応できなくなる(業種該当なし)
- ・システム更新が進まず、業務の進捗が阻害され、結果的に売上低下や経営悪化につながる可能性がある(業種該当なし)
- ・シフト勤務において、運用保守要員を確保できなくなる懸念がある(情報通信業)
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「2025年の崖」対策は、DX推進・クラウド移行・人材育成
「2025年の崖」の対策として最も多かった回答は、「DX推進による業務プロセスの抜本的な見直しを進めている」で、全体の39.7%にのぼりました。次いで、「クラウドサービスへの移行を進めている」の35.2%、「IT人材の育成・確保に努めている」の31.8%が続きます。一方、「具体的な対策はまだ行っていない/検討もしていない」は27.7%と3割近くに上る結果となりました。
6割以上が「レガシーシステム」があり製造業は約8割
勤務先において、老朽化・複雑化・ブラックシステム化した基幹システムや業務システムの通称「レガシーシステム」の有無について、37.6%が「一部のシステムが該当する」と回答し、最多の結果となりました。「主要なシステムが該当する」の 25.5%と合計すると、63.1%と6割以上の企業にレガシーシステムが存在することが明らかとなりました。
業種別にみると特に高い割合を示したのが、「製造業」の81.7%です。また、「運輸業・郵便業」では75.0%、「金融業・保険業」では69.3%の企業が、勤め先にレガシーシステムが存在すると回答しています。
レガシーシステムの壁は、業務により要員が割けず・既存システムのこだわり・ブラックボックス化
では、なぜ多くの企業でレガシーシステムを刷新できないのでしょうか。ネックとなっている理由で最も多かったのが、「業務に手いっぱいで十分な要員を割くことができない」で、46.1%を占めました。また、「既存システムへの操作性や機能へのこだわりを解消できない」「ブラックボックス化が進み、影響度が想定できない」との回答がいずれも42.7%という結果に。IT部門などの担当者が既存業務に追われ、システムの刷新業務に時間を割けない、業務フローに適合するようカスタマイズされ、使い慣れた既存システムから切り替えられないといった状況が推察されます。
「取引先」DX対応遅れやレガシーシステムにより業務にも影響
自社内だけでなく、取引先にも目を向けてみましょう。取引先のDXやレガシーシステムの刷新が進まない場合、どのような影響が考えられるでしょうか。最多となった回答は「自社の手間・負担が増える(解消できない)」で40.4%を占めます。次いで、「自社のDXが進まない」が33.0%でした。「部品調達・サービス提供の遅延・停止につながる」と回答した割合も25.6%にのぼります。
見方を変えれば、自社でDXが遅れレガシーシステムを使い続けた場合、取引先の業務効率の低下や負担増加を招いてしまい、取引プロセス全体に支障をきたす可能性があるといえます。
「Fit To Standard」を4割が認知、積極的に導入しているのは1割程度
昨今、企業のシステム導入・刷新において「FitToStandard(フィットトゥスタンダード)」という考え方が注目されています。組織がシステムなどを導入する際に、組織の既存業務プロセスにシステムを無理に合わせるための独自追加開発(カスタマイズ)を極力行わず、業務内容をそのシステムの標準機能に合わせていくアプローチを指します。
その認知状況については、「内容をよく理解しており、自社でも検討/導入している」との回答は、23.3%にとどまりました。「言葉は知っており、概要も理解している」の18.1%と合わせても41.4%で半数に満たない結果です。また、43.9%と4割以上は「全く知らなかった」と回答しています。
「Fit To Standard」のアプローチを基幹・業務システムの導入・刷新に「積極的に取り入れている」と回答した割合はわずか13.6%。「部分的に取り入れている」の16.4%と合計しても、30.0%という結果でした。現時点では、「Fit To Standard」のアプローチが十分に浸透していない状況がうかがい知れます。
「Fit To Standard」を積極的に取り入れている企業ほど、DXが進む
DXの推進度合いについて、「全社的な戦略に基づき、多くの部門で具体的な取り組みが成果を上げている」と回答した企業は14.8%と決して多くありません。「一部の部門やプロジェクトで具体的な取り組みが成果を上げ始めている」は25.5%で、合計すると40.3%で、半数に満たない状況です。
ただ、「Fit To Standard」の採用度合いとのクロス集計結果によると、 「Fit To Standard」 を「積極的に取り入れている」という企業群では、「全社的な戦略に基づき、多くの部門で具体的な取り組みが成果を上げている」と回答した割合は57.1%にも上りました。
この結果から、クラウドなどの標準化されたシステムを導入し、そのシステムに業務プロセスを変革していく「Fit To Standard」のアプローチは、DX推進に有効であると推察されます。
DX推進の壁は人材・予算・部門間連携
では、DX推進を阻むのは、どういった課題でしょうか。トップ回答は「DXを推進できる人材の不足(スキル・知識・経験)」で28.6%でした。次いで、「DX推進のための予算不足」の20.0%、「部門間の連携不足」の19.4%が続きます。
DX推進のために重厚長大なシステムを導入しようとすれば、コストもかかり、専門人材など多くのリソースを要するのは避けられません。一方で、「Fit To Standard」のアプローチを取り入れ、既存のクラウドサービスなどを有効活用できれば、リソースの課題を解消できる可能性があります。
3割以上が3年間は、投資を増加させる。目的は、DX推進による業務効率化・生産性向上
勤務先における、今後3年間(2025年度~2027年度頃)のIT関連投資の計画についての問いに対しては、「大幅に増加させる予定」が8.3%、「ある程度増加させる予定」が23.3%、合計すると31.6%が増加させる予定であるとわかりました。
また、その目的として最も高い割合となったのは「DX推進による業務効率化・生産性向上」で44.7%を占めます。次いで「セキュリティ対策の強化」の40.4%、「DX推進による新規事業・新サービス開発」の38.6%が続く結果です。
一方で、IT関連投資を「ある程度減少させる予定」または「大幅に減少させる予定」との回答もありました。その理由として最も多かったのが「IT投資の費用対効果が見込めないため」の35.0%です。また、「業績悪化によるコスト削減」と「クラウド化などによりITコストが最適化されたため」がいずれも25.0%を占めています。DXの一定の進展により、投資額を抑える企業も存在すると考えられます。
DX推進で求められる、経営者の理解や既存システムの脱却
「2025年の崖」対策や「Fit To Standard」、DX推進について自由回答を求めたところ、得られた主な意見は以下のとおりです。
- ・問題の重要性については社内で一定の理解が得られているものの、予算確保や決裁の段階になると、明確な理由もなく「不安だから」と却下されることがある。(業種該当なし)
- ・予算が少なく、経営層の賛同を得ることが難しい状況にある。(製造業)
- ・DX推進などにはコストがかかるうえ、人材不足や手続きの複雑化といった課題も大きい。(自治体)
- ・既存の操作性を重視する利用者に対し、新システムの必要性をどう説明・納得させるかが課題となっている。(金融業・保険業)
- ・経営側は高い理想を掲げる一方で、資金面では慎重な姿勢を崩さず、調査や準備に無駄な時間を費やすことが多い。(卸売業、小売業)
- ・上層部がDX関連の予算を承認するかどうかがハードルになっている。(不動産業、物品賃貸業)
- ・多くの企業が同様の壁に直面しており、画期的な解決策やプロセスが求められている。(情報通信業)
- ・費用対効果の見通しが立てにくいことが、最大の障壁といえる。(卸売業、小売業)
- ・DX推進はスピード感のある対応が求められるが、従業員などの理解が追いついていない実態もある。(卸売業、小売業)
- ・現場ではアナログデータの取り扱いが多く、デジタル化すら進めにくい。業界全体で産業構造を変えていかなければ抜本的な対策は進まないと考えているため、まずは情報収集から始めたい。(業種該当なし)
- ・レガシーシステムについては、開発言語の観点からも、今の20代~30代の技術者では解析が難しいケースが多い。40代後半~50代の開発者が現役で働いているうちに、システムの仕様や概要をまとめる必要がある。若手エンジニアの多くは、流行の言語を習得していても、レガシーシステムの言語や仕組みを理解するには困難を伴うと思う。(業種該当なし)
「2025年の崖」のカギは「Fit To Standard」慣れたレガシーから脱却し業務プロセスの見直しが重要
今回の調査では、「2025年の崖」の概要について、6割近くが理解が進んでいない状況が浮かび上がりました。また、約8割が「2025年の崖」が事業に与える負の影響を懸念しており、危機感を抱いている様子をうかがい知る結果となっています。
実際に、6割以上の企業が「レガシーシステム」を抱えており、刷新を阻む主な課題として「業務に手いっぱいで要員を割けない」「既存システムへのこだわり」「ブラックボックス化」などを挙げています。また、取引先のDXの遅れやレガシーシステムの存在が、自社のDX推進や業務効率にも影響を与える状況も判明。自社だけでなく、取引先を含めた業務全体の見直しが求められているといえるでしょう。
「Fit To Standard」という考えについては、全体の約4割が認知しているものの、「積極的に取り入れている」と回答したのは1割強にとどまりました。とはいえ、「Fit To Standard」を積極的に取り入れている企業では、DXが着実に進んでいる傾向も見られ、クラウドなどの標準化されたシステムを導入し、そのシステムに業務プロセスを変革するアプローチの重要性が示唆されています。
レガシーシステムの存在は、システム障害などのリスクを高めるとともに、保守運用コストの増加にもつながります。このような状況を踏まえると、「2025年の崖」を乗り越える一つのカギは「Fit To Standard」にあるといえます。今後は、「使い勝手の良い独自システム」に固執するのではなく、クラウドなどの標準化されたシステムを導入し、それに合わせて業務プロセスを変革していくという視点が、より一層重要となるでしょう。
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DX推進の一環として、レガシーシステムからの脱却をめざす企業にとって、有効な選択肢となるでしょう。

監修者プロフィール

『BtoBプラットフォーム 請求書』チーム 編集部
この記事は、株式会社インフォマートが提供する電子請求書サービス『BtoBプラットフォーム 請求書』チームの編集部が監修しており、経理や会計、請求業務に役立つわかりやすい記事の提供を目指しています。電子請求書TIMESでは、経理・経営に役立つ会計知識、DXによる業務改善、インボイス制度・改正電子帳簿保存法といったトレンド情報をご紹介します。『BtoBプラットフォーム 請求書』は請求書の発行・受取、どちらにも対応し、業務効率化を推進します。
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