最終更新日:2022年10月27日
適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始まで1年あまり。何を準備し、どう進めるべきか、インボイス制度に詳しい金井恵美子税理士による、制度の概要と対応方法の解説をお届けする。『BtoBプラットフォーム 請求書』で請求書の発行も受取もデジタル化!
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目次
- 基本編 インボイス制度が始まると何が変わる?
- インボイスで最も重要な記載事項は登録番号
- 仕入明細書には売り手の登録番号を記載
- 課題①インボイスへの対応
- 事業者登録の申請自体は簡単な手続
- 買い手側は免税事業者との取引状況の確認を
- 課題②免税事業者からの課税仕入への対応
- インボイス制度は「納税なき控除」を認めない
- 一方的な通告は法に抵触するおそれも
- インボイス制度導入に当たっての事前準備
- インボイス制度の対応は経理業務デジタル化を前提に
- 早期に実現したいデジタル化の効果
基本編 インボイス制度が始まると何が変わる?
インボイス制度とは、「一言でいえば事業者登録が基礎となる制度です」と金井税理士。制度開始後、買い手が仕入税額控除を受けるには、国税庁に登録した事業者が発行する適格請求書(インボイス)を受け取って保存することが要件となる。
また、事業者登録ができるのは課税事業者に限られるため、課税売上高1000万円以下の免税事業者からの仕入れには仕入税額控除が適用されない(経過措置あり)。買い手は仕入先の事業者を、インボイスの発行あり・なしに分けて経理処理をする必要がでてくる。
「インボイスのやりとりが事業者にとって大きな事務負担となる点が懸念される上、売り手の免税事業者は難しい立場に追い込まれる可能性もあります。これらの課題にどう対応すべきか、ポイントをしっかり確認しておきましょう」
インボイスで最も重要な記載事項は登録番号
繰り返しになるが、インボイス制度では仕入税額控除の要件として、必要な項目が記載された適格請求書(インボイス)の保存が求められる。
図に示した①〜⑧がインボイスの記載項目だ。現行の区分記載請求書等保存方式の記載項目に、⑥〜⑧の項目が新たに追加・変更となる。
「最も大事な項目が、インボイス発行事業者として登録済みの課税事業者であることを示す⑥の『登録番号』です。⑦は、現時点では税込の金額だけが記載項目となっているところが“税込または税抜〞と変更になります。⑧の税率ごとに区分した消費税額は、現行の消費税法は記載を求めていません。ただ現時点でも実務上、多くの請求書で記載しているのではないでしょうか」
「返還インボイスは、現行の消費税法上には相当するものがありません。インボイス制度の導入に伴う新しい考え方です。金額が変わった場合、最終的に取引をした金額に合わせたインボンスを保存するために返還インボイスが必要になります」
仕入明細書には売り手の登録番号を記載
基本的には記載事項を満たした売り手発行の請求書等がインボイスだが、買い手発行の支払通知書や仕入明細書も記載事項を満たして売り手の確認がとれていればインボイスとして認められる。消化仕入などの商習慣で請求書を発行しない取引や、事務所の家賃といった、売り手が領収書や請求書を発行しないケースでもインボイス制度に対応できる仕組みとなっている。納品書と月次請求書など複数の書類群でも記載事項が満たされていれば、インボイスとして認められ仕入税額控除が可能となる。
課題①インボイスへの対応
事業者登録の申請自体は簡単な手続
インボイス制度への対応は、売り手、買い手どちらも必要だ。まず、課税事業者の売り手はインボイス発行事業者の登録申請手続を行う。登録は任意であり申請しなければ登録されない。
「手続自体は非常に簡単で、郵送もしくはe -Taxで申請書を送るだけです。顧問税理士に依頼すればすぐ申請してくれるでしょう。
e -Taxで申請すると2週間ほど、郵送の場合は1カ月ほどで登録が完了し、登録番号が通知されます。また、国税庁のインボイス発行事業者公表サイトでの検索が可能となります」
免税事業者が登録申請を行う場合は課税事業者になった上で申請する必要がある。2023年10月1日〜2029年9月30日の属する課税期間中に登録を受ける場合は、「課税事業者選択届書」の提出は不要で、申請書の提出により登録と同時に課税事業者となる。
また、2年前の課税売上高が5000万円以下の事業者は、年間の課税売上高から納付する消費税額を計算する「簡易課税制度」を選択できる。業種ごとに定められた「みなし仕入率」で消費税を計算するため、買い手としてのインボイス制度への対応は必要ない。
インボイス発行事業者の登録申請と共に対応が求められるのが、請求書等がインボイスの要件をみたすよう、記載事項の追加や消費税の計算方法を変更する作業だ。
「今、お使いの請求書作成システムがクラウドサービスなど、ベンダーが随時バージョンアップして提供するものである場合は、時期がくればベンダー側で対応してくれますから、何も心配はありません。しかし、独自に構築した自社システムを使っている場合は、自分たちで改修が必要ですので、早めの確認が必要です。
パッケージ版で利用しているソフトなども、別途費用をかけてアップデートする必要があるかもしれません。法制度の改正はこれからもありますし、業務に集中するためにもシステム面の対応はできればベンダーが提供するサービスを利用して専門家に任せるのが望ましいでしょう」
買い手側は免税事業者との取引状況の確認を
請求書受取側の買い手としては、経費精算や財務会計などのシステム面の対応はシステムベンダーに任せておけば基本的には問題ない。機能強化の内容は、早めに確認したい。
買い手側で確認が必要なポイントは、免税事業者との取引状況の把握だ。仕入税額控除の対象とならない免税事業者との取引について対応方針を検討しなければならない。
次項で詳しく述べるが、インボイス制度の開始から6年間は、一定額を控除することができる経過措置がある。しかし、その経理処理は複雑だ。
「まずは現状把握です。今後も取引を継続する仕入先が、インボイス発行事業者として登録するのか、それとも免税事業者なのか、確認する必要があります。事業者登録をインボイス制度がスタートする2023年10月に間に合わせるには、同年3月末までに申請書の提出をしなければなりません。課税事業者の取引先でも、インボイス制度をよく知らず対応していないケースがあります。
自社が事業者登録を完了させたタイミングで、〈弊社は登録を済ませましたが、御社はいかがですか?〉と照会してみるのもひとつの手段です。実際に、登録申請がはじまって以降、企業間で登録状況を通知・確認する文書をみかけるようになっています」
また、インボイスの保存方法も検討しておきたい。電子取引のデータ保存は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要がある。システムの導入を検討している場合は、インボイス制度だけでなく電帳法への対応状況も確認が必要だ。
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課題②免税事業者からの課税仕入への対応
インボイス制度は「納税なき控除」を認めない
仕入先が免税事業者であっても現時点では、たとえば10万円の仕入は、税込11万円払い、1万円の仕入税額控除を受けられる。インボイス制度では、この控除ができるのはインボイス発行事業者からの仕入に限られるため、免税事業者との取引は1万円のコスト増に。ただし、急激な環境変化が起きないように、請求書の保存等で条件を満たせば、計6年間、80%もしくは50%の仕入税額控除が認められる経過措置がとられる。
「経過措置があるとはいえ、買い手としては控除できない20%部分の負担増の上、インボイス発行事業者からの仕入れとは別の経理処理が発生し、業務が複雑化します。それを避けたい買い手が今後はインボイス発行事業者との取引を選び、免税事業者は仕事を失うのでは…インボイス制度で危惧されているのが、この免税事業者の問題です」
インボイス制度の導入による免税事業者からの課税仕入には、どのような影響が考えられるだろうか。
一方的な通告は法に抵触するおそれも
仕入先が免税事業者だった場合、請求のパターンで業務が変わってくる。方針を確認しておく必要があるだろう。
パターン① 従来どおり(本体価格+消費税)…経過措置を利用しても全額仕入税額控除にはならず買い手は負担増。
パターン② 従来の税込金額を新たな本体価格に…経過措置を利用しても全額仕入税額控除にはならず買い手は負担増。
パターン③ 本体価格のみの請求(消費税分減額)…売り手の負担増。
パターン④ 価格を調整する…売り手と買い手で価格を調整。
「一般消費者向けの事業の売り手なら免税事業者のままでもいいかもしれません。しかし、企業向けの売り上げでは、今後は免税事業者のままで取引を続けていくのは厳しい状況になると考えられます。取引先が複数ある場合や、新規取引先が増えていく可能性があるなら、課税事業者の選択を検討するべきです。
ただし、公正取引委員会は、買い手側に対して、取引上有利な立場を利用して免税事業者に無理を強いることがないよう、注意喚起を行っています。取引価格の引き下げや取引の打ち切りを一方的に通告する、消費税額の一部もしくは全額を一方的に支払わない行為は下請法や独占禁止法に違反する可能性があるため、注意が必要です。
一番大事なのは話し合うことです。免税事業者に対して、課税事業者となって登録することをお願いする。それ自体は問題ありません。価格の調整をするにしても、お互いの事情を出しあって、納得できるところに着地しましょう」
特にフリーランスなどに業務委託するビジネスモデルの場合、少なからず影響を受けることが予想される。直前の確認や調整は双方にとって負担が増える。時間的な余裕のあるうちに、今後の方針を検討しておくのが望ましいだろう。
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インボイス制度導入に当たっての事前準備
インボイス制度への対応はどのように進めていけばよいか、売り手と買い手、双方の主な事前準備を以下の表に示した。具体的なスケジュールと共に整理しておこう。

インボイス制度の対応は経理業務デジタル化を前提に
インボイス制度導入後も登録番号などの記載項目だけ追加・変更して紙の請求書を出し続ける、という選択があるかもしれない。ただ、DXという言葉が浸透しつつあるように、社会全体はデジタル化による業務効率化に向かって進んでいる。
「紙での業務を前提にしたシステムから、デジタルデータを利用した業務効率化へシフトしていくべき」と、金井税理士は強調する。
ただ、電子請求書も仕組みはデジタルデータでのやりとりだけではない。メールにPDFを添付したり、クラウド上からPDFをダウンロードしたりと様々だ。これから新たにシステムを導入する場合、自社の条件に適したサービスを選ぶ必要があるだろう。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)による、JIIMA認証を受けた製品なら、電子帳簿保存法の法的要件を満たしているので、検討する上での目安のひとつになる。
「デジタル化で、経理担当者の業務負担を軽減するだけでなく、処理時間も短縮します。郵送だと、発送から到着まで数日かかり、もし差し戻しなどが発生すればさらにやりとりが必要で支払日までに処理が間に合わないというのも、あり得る話です。結局、紙が介在する以上、人の目によるチェックなどはなくなりません。発想を切り替え抜本的な業務の効率化を目指すには、やはりデジタル化が欠かせません」
システムの運用検討やシステム選定は数カ月かかるケースが多い。導入後も本格的な稼働までにテスト運用が必要になることを考えると、2022年内には運用方針だけでも固めておきたい。
早期に実現したいデジタル化の効果
また、インボイス発行事業者の登録申請も早めにすませておこう。通常、e -Taxでの申請は約2週間、書面なら1カ月程度で登録処理は完了するが、申請が集中すると処理完了までに長期間を要する可能性がある。インボイス制度開始日の2023年10月1日に事業者登録を間に合わせるには、同年3月末までに申請書を提出しておくよう、国税庁も呼びかけている。提出期限前の2月、3月は駆け込みで申請が集中すると予想されている。
この時期は例年、個人の確定申告時期でもあり、e -Taxはアクセス集中も危惧される。顧問税理士とも相談の上、可能な限り、すみやかに登録申請を行うべきだ。
金井税理士は、インボイス制度対応について次のような見解を述べる。
「2024年1月には、電帳法で宥恕措置がとられていた電子取引情報のデータ保存義務化が本格的にスタートします。業務は未来永劫、紙のままということはありえません。いつかは紙からデジタルへ変わります。変われば効率化するのは間違いない。それなら早くデジタル化したほうが良いですよね。
経理業務のデジタル化は、経理担当者が楽になり、目に見えてコストが削減される会社の利益向上のための業務改革です。従業員の幸せは会社の利益につながります。ぜひこれを期に、積極的に取り組んでください」

監修者プロフィール

金井恵美子税理士事務所 所長
税理士 金井 恵美子
1993 年税理士登録、大阪市において金井恵美子税理士事務所開設。現在、同事務所所長、近畿大学大学院法学研究科非常勤講師。全国の税理士会、研修機関等の講師を務める。インボイス制度に関する講演、執筆等で幅広く活躍中。
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