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スキャナ保存制度とは?電子帳簿保存法での要件や注意点を解説

書類のペーパーレス化や経理業務のデジタル化が進む昨今、紙の書類をやりとりする機会は着実に減少しています。しかし、小売店で受け取ったレシートや、デジタル化に対応していない顧客からの請求書などもあり、紙の書類を完全になくすことはいまだ困難です。 そこで役立つのが、スキャナ保存制度です。紙をデータ化して保存できるスキャナ保存制度を活用すれば、取引関係書類をすべてデータで保存できます。 今回は、スキャナ保存制度の要件やメリット・デメリット、導入に際しての注意点などについて解説します。

スキャナ保存制度とは?電子帳簿保存法での要件や注意点を解説

最終更新日:2024 年7月8日

目次

スキャナ保存制度は、紙の取引関係書類をデータ化して保存できる制度

スキャナ保存制度は、電子帳簿保存法に定められた書類の保存区分のひとつで、紙でやりとりした取引関係書類をスキャンして、データとして保存することを認める制度です。ただし、取引関係書類をデータで保存するためには、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」に定められた要件を満たさなければいけません。
 
なお、保存要件を満たしていない場合、罰則が科せられることもあるため注意が必要です。税務調査の際に故意を前提とする不正(改ざんや隠ぺいなど)が発覚した場合、通常では追徴課税額の35%の重加算税が課されます。しかし、スキャナ保存したデータに重大な不正があった場合には、さらに追加で10%加重されるので注意しましょう。

国税関係帳簿や書類をデータで保存することを定めた電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿や書類をデータで保存することを定める法律です。保存する書類の種類別に、保存要件が定められています。
電子帳簿保存法の保存区分には、スキャナ保存のほかに、電子取引、電子帳簿等保存という区分があります。
 
<電子帳簿保存法の保存区分>
・スキャナ保存:紙で受け取った取引関係書類や、自社が紙で作成した取引関係書類をスキャンしてデータ化し、保存する区分
・電子取引:データで受け取ったり送信したりした取引関係書類をデータのまま保存する区分
・電子帳簿等保存:最初から最後まで一貫してパソコンなどで電子的に作成した国税関係帳簿と決算関係書類をデータのまま保存する区分
 
電子帳簿保存法は1988年の成立以降、時代に応じて改正されています。2022年には、スキャナ保存について下記の見直しが行われました。
 
<2022年の電子帳簿保存法改正による変更点>
・スキャナ保存を導入する際の事前承認制度の廃止
・「定期的な検査および再発防止策の社内規程を整備する」といった適正事務処理の廃止
・タイムスタンプ要件と検索要件の緩和
・スキャナ保存されたデータに不正があった場合、重加算税が10%加重される罰則追加
 
要件が緩和されたことで、書類のスキャナ保存を導入しやすくなったといえるでしょう。最新の要件について、詳しくは後述します。

 

スキャナ保存制度は任意?

紙で受け取った取引関係書類や、自社が紙で作成した取引関係書類をスキャナ保存するかは任意で、対応しなくても法的な問題はありません。ただし、スキャナ保存制度を導入しない場合は、紙の書類を法律で定められた期間保管しておく必要があります。

紙の取引関係書類の保存方法は、下記のとおりです。
 
<紙の取引関係書類の保存方法>
・スキャナ保存制度に対応する形でデータ化して保存し、紙の書類は破棄
・スキャナ保存制度に対応する形でデータ化して保存し、紙の書類も保存
・紙の書類のみ、法律で定められた期間保存する
・紙の書類を法律で定められた期間保存し、なおかつスキャナ保存制度の要件を満たさない形でデータ化した書類も保存する



なお、スキャナ保存制度を利用する場合は、要件を満たした形でデータ保存するのが望ましいでしょう。要件を満たさない形でスキャンしたデータを保存し、紙の書類を破棄してしまった場合は、電子帳簿保存法に違反します。きちんとスキャナ保存制度の要件を確認の上、対応してください。
 
また、電子帳簿保存法が定める3つの区分のうち、電子取引は原則すべての事業者に対し対応が義務化されています。
 
※電子取引の詳細については「電子請求書の電子保存義務化はいつから?電子化のメリットを解説」をご覧ください。

 

スキャナ保存の対象となる書類

スキャナ保存の対象となる書類は、紙で受け取った取引関係書類と、紙で自社が作成した取引関係書類の控えです。
 
取引関係書類とは、商取引において取り交わされる請求書や見積書、領収書などの書類です。スキャナ保存制度では取引関係書類のうち、資金や物の流れに直接関わるものを「重要書類」、それ以外を「一般書類」に分類しています。対象書類の分類は、下記のとおりです。
 
スキャナ保存制度の対象書類の分類
重要書類 請求書、領収書、納品書、契約書など
一般書類 見積書、注文書、注文請書、検収書など
 
重要書類と一般書類はどちらもスキャナ保存の対象ですが、満たすべき要件が異なります。
スキャナ保存制度を導入する際は、下記の要件を満たすデータを作成し、保存しなければいけません。なお、一般書類は一部の要件が緩和されます。
 
スキャナ保存制度の保存要件
入力期間 下記のいずれか
・書類の作成または受領から概ね7営業日以内
・スキャナ保存に関する事務の処理規程を定めている場合は、業務処理サイクル(最長2ヵ月)経過後、概ね7営業日以内
読み取りの解像度 200dpi相当以上
カラー階調 赤・緑・青それぞれ256階調以上(24ビットカラー)
※一般書類は白黒階調(グレースケール)可
タイムスタンプ 入力期間内にタイムスタンプを付与する(入力期間中にスキャナ保存したこと確認できる場合省略可)
ヴァージョン管理 スキャナデータを訂正・削除したことや内容が確認できるシステムを利用する
帳簿との相互関連性 双方に同じ番号を振るなど、スキャナデータと該当の書類に関する帳簿の関連性がわかるようにしておく
※一般書類は不要
閲覧用の機器類設置 14インチ(映像面の最大径35cm)以上のカラーディスプレイ、カラープリンター、操作説明書を備え付ける
※白黒階調またはグレースケールで読み取った一般書類はカラー対応不要
出力時の条件 下記を満たすように、すみやかに出力できるようにしておく
・整然とした形式
・紙の書類と同程度明瞭
・4ポイントの文字が認識できる
・拡大または縮小しての出力が可能
システム概要書等 スキャナ保存に利用するシステムのシステム概要書、仕様書、操作説明書、スキャナ保存の手順や担当部署を明記した書類を備え付ける
検索機能 下記の条件でスキャンデータを検索できるようにする
(1)取引年月日その他日付、取引金額、取引先
(2)日付または金額の範囲指定検索
(3)複数の検索条件を組み合わせて検索
※税務職員からデータのダウンロードを求められた際に対応できるようにしてある場合、(2)と(3)は不要
 
 

スキャナ保存のメリット



スキャナ保存制度を導入することで、さまざまなメリットを得られます。対応は任意ですが、下記のメリットに魅力を感じる事業者は、利用を検討してみてください。

経理業務の効率化

書類をデータで保存することで、経理業務の効率化が図れます。これまで、過去の取引書類を確認したいときは、いちいち保管用のファイルを開いて該当の書類を一つひとつ探さなければいけませんでした。しかし、スキャナ保存ではデータに検索機能を持たせることが義務付けられているため、デスクに座ったまま簡単に必要な書類を見つけられます。

また、監査の際も、伝票や元帳と重要書類の紐付けが行われているため、簡単に情報を確認できます。
 
加えて、2024年からは電子取引のデータ保存が義務化されました。データで受け取った取引関係書類をデータで保存し、紙で受け取った書類は紙で保存するというのは手間がかかりますし、確認もしづらいでしょう。そのため、保存形式をデータにそろえることで、業務を効率化できます。

オフィスの有効活用

領収書や請求書、契約書などをスキャンして電子保存できるようになれば、紙書類を保管しておくキャビネットは必要ありません。その分のスペースを、別の用途に活用できるでしょう。
 
また、スキャナ保存で書類のデータ化を進めることは、テレワークの推進にもつながります。出社人数が減れば、フリーアドレスの導入や小さいオフィスへの引越しなども可能です。より柔軟に、自社に合ったオフィスの活用法を模索できます。

コスト削減

紙の書類をなくすことは、書類の管理コストや印刷コストの削減にもつながります。ファイルなども不要になり、保管期限の過ぎた書類を廃棄する際の費用もかかりません。
 
データは全社共通で管理できるため、紙の書類を本社宛に郵送する際のコストなども省けます。

セキュリティの向上

紙の書類をデータ化して保存することで、セキュリティの強化も期待できます。万が一、書類を保管しているオフィスが火災や水害に遭った場合、紙の書類だと破損したり、紛失してしまったりするおそれがあります。また、経年劣化によって文字が読めなくなることもあるでしょう。
 
しかし、データ化して保存しておけば、そのような心配の必要はなく、長期的に保存できる点もメリットです。

 

スキャナ保存のデメリット

スキャナ保存には、業務効率化などのメリットがある反面、デメリットもあります。スキャナ保存の導入を検討する際は、自社にとってメリットとデメリットのどちらが大きいかを考えてみましょう。

業務フローの変更と周知が必要

スキャナ保存導入後は、紙の取引書類をやりとりした際の業務フローが従来と変わります。スキャナ保存を前提とした業務フローを新たに策定し、従業員に周知しなければいけません。
 
なお、策定したスキャナ保存の手順や、策定の担当者が誰かを、誰もがわかるよう書類に明記して備え付ける必要があります。スキャナ保存の要件に含まれるため、必ず対応してください。

導入時に一定の労力やコストがかかる

スキャナ保存を行うためには、スキャンやスキャナ保存に対応したシステムの用意が必要です。スキャナ機器はスマートフォンで代用することもできますが、システムの導入費用やランニングコストは必要になるでしょう。
 
また、新しいフローに慣れるまでは、かえって負担が大きくなるおそれもあります。そのため、導入時や導入後のサポート体制が整ったシステムを利用するのがおすすめです。

 

スキャナ保存制度に対応する際の注意点

スキャナ保存制度に対応する際には、下記の点に注意しましょう。スキャナ保存制度へのスムーズな移行を実現するために、何に気をつけるべきか知っておくことが大切です。

定められた入力期間内に保存する必要がある

スキャナ保存では、紙の書類を受け取り、または作成してから一定期間以内にスキャンと会計システムなどへの登録をしなければいけません。
 
期間は、概ね7営業日以内です。ただし、業務処理サイクルを定めている企業の場合は、該当の業務処理サイクルが終わってから、概ね7営業日以内の入力が認められます。業務サイクルの日数は各企業が独自に定められますが、最長は2ヵ月となるため注意が必要です。
 
なお、入力した書類は即時に破棄することが認められていますが、入力期間を過ぎた後で読み取った場合は、紙の書類も保存しなければいけません。

スキャン後にタイムスタンプの付与が必要

紙の書類をスキャンした後は、入力期間内にタイムスタンプを付与しなければいけません。ただし、入力期間中に書類のスキャンと登録を行ったことを確認できるクラウドシステムなどを利用している場合は、タイムスタンプが不要です。
 
タイムスタンプの付与ができるシステム、またはスキャンと登録を行った日を記録できるシステムの利用が必要だといえるでしょう。

要件を満たすスキャナ機器の導入が必要

スキャナ保存を行う場合は、スキャナやスキャン機能を有する複合機、スマートフォン、デジタルカメラといった機器類の導入が必要です。スキャナ保存に対応できるスマートフォンを従業員全員に貸与するといった大掛かりな対応をとる場合、多大なコストがかかるでしょう。
 
とはいえ、元々社内にあった複合機などが活用できる可能性もあります。まずは、すでに社内にある機器が要件に合致するかどうかを確認してみてください。
 
なお、電子帳簿保存法では、従業員の私用のスマートフォンを用いたスキャンも禁止されていません。社内規程上問題がないのであれば、私用のスマートフォンを利用することも可能です。

スマートフォンで撮影・保存する場合は機器選定や撮影方法に注意

スマートフォンで撮影した画像でスキャナ保存を行う際は、解像度などが要件を満たすように注意しなければいけません。公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が発表する「スマホでの国税関係書類を記録する場合の留意事項」によると、スマートフォンの解像度は800万画素以上を推奨、事前にスキャン画質の確認を行って機器を選定するとあります。

画質等の問題がない機器を企業が指定して使用するか、画質等に問題があった際にエラーを出せるスキャナ保存対応アプリなどを使うと問題が起こりづらいでしょう。
 
また、「撮影対象とレンズの距離を30cm以内にする」「過度な画像補正機能はオフにする」「正面から撮影する」「手ブレの有無を確認する」といった撮影時の注意点もあります。

スマートフォンをスキャンに利用する場合は、社内規程を設けて従業員に周知することが大切です。

 

スキャナ保存制度に対応したシステムの選び方



スキャナ保存制度に対応したシステムを選ぶために参考になるのが、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会の「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証制度」です。この認証を受けている製品は、スキャナ保存に対応していると認められているため、安心して利用できます。認証製品は、「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証製品一覧」から確認できます。
 
なお、スキャナ保存に対応したシステムとは、ヴァージョン管理や検索要件、タイムスタンプ付与といったスキャナ保存の要件を満たすシステムのことです。特に、ヴァージョン管理は要件を満たしているかどうかがわかりづらいため、注意してください。

 

スキャナ保存制度をうまく使い、経理業務を効率化しよう

請求書や領収書、契約書といった紙の証憑書類をスキャンして保存するスキャナ保存制度。活用すれば、経理業務のデジタル化・効率化はもちろん、「オフィスの柔軟な活用」「紙書類の印刷・郵送・保管コスト削減」など、さまざまなメリットを享受できるでしょう。
 
ただし、スキャナ保存制度の適用にはいくつかの要件を満たす必要があるため、内容をしっかりと把握しなければなりません。また、スキャナ保存制度の適用と同時に請求業務の効率化も行うと、経理業務の効率化がさらに進むでしょう。
 
BtoBプラットフォーム 請求書」は、請求書の電子化を実現し、経理部門の業務効率化やテレワーク導入に大きく貢献します。オプション機能のAI-OCRでは、取引先から送られてくる紙やPDF形式の請求書を処理可能な電子データに変換したり仕訳作業を自動化できたりするため、入力作業を大幅に削減できるのです。
 
電子請求書システムの導入が今すぐ難しい場合、スキャナ保存を手軽に始められる「BP Storage」がおすすめです。「BP Storage」は、電子帳簿保存法の電子取引とスキャナ保存の要件に対応できるツールで、あらゆる国税関係書類を電子帳簿保存法に対応した形式で保存することができます。
 
それぞれの企業の課題や、効率化したい業務に応じて、利用するシステムを選定することが大切です。どのサービスが適しているか悩んだときは、お気軽に無料オンライン相談をご利用ください。
 
スキャナ保存制度を適用した上で、さらなる経理業務効率化の実現を目指す際は、ぜひ「BtoBプラットフォーム 請求書」の導入を検討してみてはいかがでしょう。

 

よくある質問

Q. スキャナより大きいサイズの書類は、分割してスキャンしても良いでしょうか?
 
次の条件を満たせば、左面と右面に分けるなど複数回に分けてスキャンしても問題ありません。
 
<スキャンする際に満たすべき条件>
・1ページの書類が途中で途切れて2ページにまたがるなどに分割されることなく、整然とした形式で出力できる(左面と右面に分ける等の分割は可)
・かつ、紙原本と同程度に明瞭な状態で速やかに出力することができる
 
Q. スキャン文書は圧縮して保存しても問題ないでしょうか?
 
次の条件を満たせばスキャン文書を圧縮して保存しても問題ありません。
 
<スキャン文書を圧縮保存するための条件>
・200dpi以上の解像度及び赤・緑・青それぞれ256階調(※)以上でJIS X6933またはISO 12653-3のテストチャートの画像を読み取ることができる
・ディスプレイ及びプリンタで出力した書面で4ポイントの文字が認識できるような状態である
※一般書類の場合はグレースケールでの保存も可能。
※JIS X6933またはISO 12653-3のテストチャートが手元にないなどの理由で4ポイントの大きさの文字が認識できる解像度等の設定が困難である場合には、読取解像度が200dpi以上かつ赤・緑・青それぞれ256階調以上(一般書類の場合はグレースケールでも可)および非圧縮(または可逆圧縮)で入力していれば、4ポイントの大きさの文字が認識できるものとして取り扱われます。 
 
Q. スキャナ保存制度の検索要件である取引金額は、税抜・税込どちらで記載するのでしょうか?
 
税抜・税込どちらでも問題ありません。帳簿の処理方法(税抜経理/税込経理)に合わせて記載することが推奨されています。
検索機能の確保の要件は、税務調査の際に必要なデータを効率的に確認するために設けられているものです。税務調査では帳簿の確認を基本とし、帳簿に関連する書類や取引情報の確認を行っていくことが想定されることから、基本的には帳簿の処理方法(税抜経理/税込経理)に合わせてスキャナ保存し、帳簿と同じ金額で検索できるようにしておくと良いでしょう。

 

監修者プロフィール

宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。

【保有資格】CFP®、税理士

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