最終更新日:2025年1月30日
請求書を発行する際に、源泉徴収税額を記載すべきか迷った経験がある方もいるのではないでしょうか。源泉徴収制度とは、給与や報酬等を支払う側が、あらかじめ所得税を天引きして国に納める制度です。 特に、フリーランスや個人事業主の方は深く関わる制度のため、源泉徴収の計算方法や記載方法を正しく理解する必要があります。そこで今回は、請求書に源泉徴収税額を記載しなければならないのかどうかや、記載するメリット、源泉徴収税額の計算方法などを解説します。そもそも、所得税を源泉徴収されるのはどのような人なのかについても紹介しますので、請求書を作成する際の参考にしてください。
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目次
- 請求書への源泉徴収税額の記載は任意
- そもそも源泉徴収制度とは?
- 源泉徴収の対象となる報酬
- インボイス制度導入後も源泉徴収の対応は変わらない
- 請求書に源泉徴収税額を記載するメリット
- 請求業務が円滑になる
- 確定申告が円滑になる
- 源泉徴収税額の計算方法
- 請求額が100万円以下の場合
- 請求額が100万円を超える場合
- 請求書への源泉徴収税額の記載例
- 請求書に源泉徴収税額を記載する際の注意点
- 源泉徴収対象の金額とそれ以外を分けて計算する
- 端数を切り捨てて計算する
- 消費税を分けて明記する
- 請求書には源泉徴収税額を記載しておこう
- よくあるご質問
請求書への源泉徴収税額の記載は任意
請求書に、源泉徴収税額を記載するかどうかは任意です。請求書を発行する側が、記載の有無を決められます。
ただし、請求書に源泉徴収税額を記載していなかったとしても、源泉徴収が必要な支払いをする場合は、支払者は請求額から源泉徴収税額を差し引きして支払いをします。請求書に記載しなかったからといって、源泉徴収が行われないわけではありません。具体的にどのような場合に、源泉徴収が行われるのかは後述します。
また、請求書を受け取る顧客から、請求書への源泉徴収税額の記載を求められることもあります。それは、請求書に源泉徴収税額を記載することで、支払額の認識に齟齬がないかを確認するとともに、振込額の誤りを防ぐためです。先方が記載を希望している場合は、状況に応じて対応しましょう。
そもそも源泉徴収制度とは?
源泉徴収制度とは、給与や報酬等の支払い時に、支払う側があらかじめ支払額から所得税を天引きして国に納める制度です。これにより、報酬を受け取る側は所得税を一度に支払う負担が軽減され、国は徴収漏れを防ぎやすくなります。
源泉徴収の対象となる所得税は、下記のとおりです。
<源泉徴収の対象となる所得税>
・給与や賞与
・一定の報酬(個人事業主やフリーランスへの支払いなど)
個人事業主やフリーランスの場合、一定の報酬は請求額から所得税が源泉徴収されるため、振り込まれる金額は減少します。しかし、確定申告時に所得税を一括で納付する必要がなくなるため、負担を軽減できるでしょう。
源泉徴収制度では、まえもって概算した所得税額を納めておく形をとっていますが、最終的に国に納める所得税額は変わりません。確定申告の際に源泉徴収された金額と実際の納税額を比較し、納めすぎていた場合は還付され、不足していれば追加で納付する必要があります。
なお、2013年1月1日~2037年12月31日は、復興特別所得税が導入されています。この特別税も源泉徴収の対象となるため、計算時には注意が必要です。
出典:国税庁「源泉徴収のしかた(令和6年版)」
源泉徴収の対象となる報酬
給与や報酬等が源泉徴収の対象となるかどうかは、報酬の内容、金額、報酬を受け取る側と支払う側の立場によって異なります。
まず、報酬を受け取る側が法人であれば、源泉徴収の対象にはなりません。報酬を支払う側が、源泉徴収義務者に該当しない場合も源泉徴収は不要です。なお、源泉徴収義務者には、給与や報酬等を支払う会社や協同組合、官公庁、個人などが含まれます。
源泉徴収の対象となる報酬は、細かく規定されています。対象となる報酬の具体例は、下記のとおりです。
<源泉徴収の対象となる報酬等の例>
・原稿料や講演料など
・弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
・プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
・映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
・ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
・プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
・広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
出典:国税庁「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」
一方で、個人事業主やフリーランスが受け取る可能性の高い報酬等の中で、源泉徴収の対象にならないものには、プログラミング、コーディング、事務代行、一般的な管理業務などが挙げられます。
ただし、ウェブデザインやコンサルティングは、源泉徴収の対象となります。源泉徴収義務者は契約時や請求書作成時に、現在の取引が源泉徴収の対象か否かを必ず確認しましょう。
出典:国税庁「源泉徴収義務者とは」
インボイス制度導入後も源泉徴収の対応は変わらない
2023年10月からインボイス制度がスタートし、請求書の記載項目などに変更がありました。しかし、インボイス制度は消費税に関する制度で、源泉徴収制度は所得税に関する制度です。そのため、源泉徴収税額の記載方法や記載ルールに変更はありません。
※インボイス制度の詳細については下記記事をご覧ください。
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請求書に源泉徴収税額を記載するメリット
請求書に源泉徴収税額を記載することで、事業者にとっていくつかのメリットがあります。ここからは、請求書に源泉徴収税額を記載するメリットについて詳しく解説します。
請求業務が円滑になる
請求書に源泉徴収税額を記載することで、支払う側も受け取る側も入出金額の照合がスムーズになり、請求業務を効率化できます。
あらかじめ請求書に源泉徴収税額と取引金額を明記しておけば、入出金額と請求額の照合が円滑にできます。また、顧客とのあいだで認識の違いがないかを事前に確認できるため、入出金額のミスやトラブルも防ぎやすいでしょう。
確定申告が円滑になる
確定申告が円滑になることも、請求書に源泉徴収税額を記載するメリットのひとつです。個人事業主やフリーランスの場合、年間の所得金額を確定申告しなければなりません。確定申告では、報酬から源泉徴収された所得税を確定申告書に記載し、年間の所得にかかる所得税額から源泉徴収税額を引いて納税額を求めます。このとき、確定申告書には源泉徴収税額の合計を記載します。
請求書に源泉徴収税額を明記していない場合、確定申告のタイミングで源泉徴収された税額をあらためて算出しなければなりません。これには手間がかかります。
顧客から源泉徴収税額が記載された支払調書が発行されることもありますが、支払調書の金額と実際に差し引かれた金額にずれがあった場合に、問題が生じるでしょう。
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源泉徴収税額の計算方法
個人事業主の源泉徴収税額の計算方法は、報酬の内容と請求金額によって異なります。デザイン料や原稿料、音楽家への報酬、弁護士報酬などから差し引く源泉徴収税額の計算方法は下記のとおりです。
請求額が100万円以下の場合
請求額が100万円以下の場合、請求額に10.21%を掛けた金額が源泉徴収税額(復興特別所得税を含む)となります。
<100万円以下の請求額に対する源泉徴収税額の計算式>
源泉徴収税額=支払金額×10.21%
例えば、50万円(税別)のデザイン料を支払う場合、源泉徴収税額は下記のように計算します。
<50万円のデザイン料に対する源泉徴収税額>
50万円×10.21%=5万1,050円
この場合、報酬額に消費税10%を足した55万円から源泉徴収税額の5万1,050円を差し引いた49万8,950円をデザイン料として支払います。
請求額が100万円を超える場合
請求額が100万円を超える場合は、100万円までの部分と100万円を超える部分、それぞれで計算が必要です。100万円までの部分の税率は10.21%、100万円を超える部分の税率は20.42%(復興特別所得税を含む)となるので、それぞれを計算して足しましょう。
<100万円を超える請求額に対する源泉徴収税額の計算式>
源泉徴収税額=(支払金額−100万円)×20.42%+102,100円
例えば、120万円のアーティストの出演料を支払う場合の源泉徴収税額は、次のように計算します。
<120万円の出演料に対する源泉徴収税額>
(120万円-100万円)×20.42%+102,100円=14万2,940円
よって、アーティスト側に支払う金額は、出演料に消費税10%を足した132万円から14万2,940円を引いた、117万7,060円です。
なお、源泉徴収税額はあくまでも、概算の所得税額です。過不足は確定申告の際に精算します。
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請求書への源泉徴収税額の記載例
請求書への源泉徴収税額の記載方法に、明確な決まりはありません。顧客や自社のフォーマットに合わせて記載しましょう。
下記は、源泉徴収税額を請求書に記載する場合の一例です。
■請求書の源泉徴収税額の記入例
しかし、上記の請求書のように、報酬等と消費税額が分かれて記載されている場合は、消費税を除く報酬等にのみ、源泉徴収税がかかります。
なお、請求書によっては、源泉徴収の対象にならない交通費等の金額が記載されている場合もあります。その場合は、どの取引が源泉徴収の対象になるかがわかるように、「※」などで明記するといいでしょう。
※請求書の書き方の詳細については下記記事をご覧ください。
請求書に源泉徴収税額を記載する際の注意点
請求書に源泉徴収税額を記載する際には、下記のようにいくつかの注意点があります。源泉徴収税額を誤って記載してしまうと、顧客から請求書の作り直しを求められたり、入金額と請求額に齟齬が出てしまったりする可能性がありますので、十分注意しましょう。
源泉徴収対象の金額とそれ以外を分けて計算する
報酬の中には、源泉徴収の対象となるものとならないものがあります。源泉徴収の対象になる報酬とならない報酬の両方を請求する場合は、それぞれを分けて計算しなければなりません。
例えば、プログラミング報酬とウェブデザイン報酬の両方を請求する場合、ウェブデザイン報酬のみ源泉徴収が必要です。源泉徴収の対象になる金額とならない金額を区別し、わかりやすく明記しておきましょう。報酬の内容が源泉徴収の対象かわからない場合は、請求書を発行する前に顧客に確認すると安心です。
端数を切り捨てて計算する
源泉徴収税の計算では、1円未満の端数を切り捨てます。例えば、請求額が12万3,456円の場合の源泉徴収税額は、下記のとおりです。<12万3,456円の請求額に対する源泉徴収税額>
12万3,456円×10.21%=1万2,604円(小数点以下切り捨て)
消費税を分けて明記する
請求書を発行する際は、消費税と報酬等の金額を分けて記載しましょう。原則として、源泉徴収は報酬等にかかる消費税も含めた金額が対象です。そのため、請求書で報酬等の金額を税込で記載すると、消費税を含めた全額が源泉徴収の対象となります。しかし、請求書に報酬等の金額と消費税額を分けて明記してあれば、源泉徴収の対象は報酬等の金額のみに限定されます。
なお、適格請求書発行事業者は、必ず消費税を分けて記載しなければなりません。インボイス制度に対応するためにも、消費税と報酬等の金額は、分けて記載する必要があります。
※請求書への消費税の記載方法の詳細については下記記事をご覧ください。
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請求書には源泉徴収税額を記載しておこう
請求書への源泉徴収税額の記載は、義務ではありません。しかし、記載することで請求業務や確定申告をスムーズに進めやすくなります。顧客との齟齬をなくすためにも、源泉徴収税額の正しい計算方法を知り、請求書に記載することをおすすめします。
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よくあるご質問
Q. 請求書に源泉徴収を記載する必要はある?
請求書への源泉徴収税額の記載義務はありません。記載はあくまで任意で、請求書を発行する側が記載の有無を決められます。ただし、支払者から記載を求められることもあります。Q. 請求書に源泉徴収を記載するメリットは?
請求書に源泉徴収税額を記載すると、「入金額と請求額の照合が円滑になる」「確定申告が円滑になる」といったメリットがあります。これらは、支払い側の法人と、支払いを受け取る側の個人事業主やフリーランスなど双方にとってメリットとなります。Q. 請求書に源泉徴収を記載する際の注意点は?
請求書に源泉徴収税額を記載する際は、「源泉徴収対象の金額とそれ以外を分けて計算する」「消費税を分けて明記する」「端数の切り捨て」などに注意しましょう。例えばプログラミング報酬とウェブデザイン報酬の両方を請求する場合、ウェブデザイン報酬のみ源泉徴収が必要です。また、請求額が100万円以下か100万円超かでも計算方法が異なるため注意が必要です。詳細は「請求書に源泉徴収税額を記載する際の注意点」をご覧ください。
監修者プロフィール

宮川 真一
岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは20年以上たちました。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。
【保有資格】CFP®、税理士
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