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支払通知書とは?インボイス対応や法的効力の有無、電子化の方法を解説

支払通知書とは?インボイス対応や法的効力の有無、電子化の方法を解説

最終更新日:2025年11月6日

支払通知書は、企業間の取引過程で交わされるビジネス文書のひとつです。発行義務はありませんが、スムーズな支払いとトラブル回避のために役立つことから、請求書受け取り前の事前確認として活用されています。

そこで今回は、支払通知書の発行タイミングや記載項目、法的効力の有無、さらには電子化による効率化の方法を、わかりやすく解説します。

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目次

支払通知書とは、支払う側が支払内容や金額を取引先に通知する書類のこと

支払通知書とは、企業が支払いを行う際に、取引先へ支払予定の金額や内容を事前に通知するための書類です。請求書と異なり、支払う側が発行する点が大きな特徴で、支払いに関する情報の確認・共有を目的としています。

支払通知書を発行することで、支払い内容に齟齬がないかを取引先と確認でき、誤請求や二重請求といったトラブルを未然に防ぐことができます。特に取引件数が多い企業間では、業務の効率化と正確性の確保に大きく貢献するでしょう。

支払通知書の発行義務はない

法律上、支払通知書の発行義務はありません。
しかし、企業によっては取引先との契約内容や社内ルールによって、定期的に支払通知書を発行するよう定めている場合もあります。発行の有無やルールについては、あらかじめ取引先と合意しておくと安心です。

なお、支払通知書はあくまで補助的な役割を持つ文書ですが、税務上は国税関係書類として分類されるため、一定期間の保存義務が発生するので注意しましょう。

支払通知書の発行タイミングは「支払金額が確定した後」

支払通知書は、取引が完了し、支払金額が確定した後に発行するのが一般的です。
実務上は、取引先が発行した請求書と支払通知書の内容を照合することで、金額や条件の相違を事前に確認するケースが多くみられます。

これにより、請求書の金額と支払い予定額に差異がある場合、早期に解消できるため、支払処理をスムーズかつ正確に進められます。

支払通知書は証憑書類として価値を持つ

支払通知書は、証憑書類の一種として税務調査や会計監査で証拠資料として扱われます。 ただし、請求書のように支払いを求める法的効力を持つものではありません。主に「支払内容を明示した確認記録」としての位置づけであり、トラブルが発生した際には証拠資料として活用できる点にその価値があります。

支払通知書と支払明細書の違い

支払通知書と混同されやすいのが「支払明細書」です。それぞれの書類の概要は下記のとおりです。

<各書類の概要>

  • ・支払通知書:支払予定の金額や内容、支払期日などを取引先に通知するために、支払元が発行する書類
  • ・支払明細書:支払いの明細を項目ごとに記載する書類で、支払通知書よりも用途が幅広い

支払明細書は支払通知書と同様の役割を果たす書類ですが、企業間取引以外の場合にも使われます。クレジットカードの明細書や給与明細書、交通費の精算の際に提出する明細書といった明細書類は、すべて支払明細書に該当します。

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電子帳簿保存法とインボイス制度で支払通知書の扱いはどう変わる?

2022年1月の電子帳簿保存法改正と、2023年10月のインボイス制度スタートによって、支払通知書の扱いがこれまでと変わりました。これらの法改正に対応するためには、支払通知書の保存方法や記載内容を見直す必要があります。

ここでは、電子帳簿保存法とインボイス制度による支払通知書の扱いの変化について、それぞれ詳しく解説します。

電子帳簿保存法による変化:電子で受け取った支払通知書の紙保存が認められなくなる

電子帳簿保存法の改正により、電子データとして受け取った支払通知書は紙での保存が認められず、データのまま保存しなければなりません。
この改正に伴い、PDFやシステム上で受け取った支払通知書を紙で印刷して保存する運用は認められなくなりました。特に2024年1月以降は、宥恕措置も終了し、電子保存が原則として義務化されています。

支払通知書を電子保存する際には、下記の要件を満たす必要があります。

電子取引の保存要件

電子帳簿保存法の保存要件を満たすシステムを導入することで、支払通知書を含むすべての帳簿書類を法的に適切な形で保存できます。対応が遅れている事業者は早急な見直しが求められるでしょう。

※電子帳簿保存法の詳細は下記の記事もご覧ください。

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インボイス制度による変化:適格請求書発行事業者の登録番号の記載が必要になる

インボイス制度下では、支払通知書を適格請求書(インボイス)として代替利用することが認められています。その場合は、適格請求書発行事業者の登録番号など、所定の事項を記載しなければなりません。詳しい記載項目については後述します。

ただし、適格請求書として発行しない支払通知書には登録番号の記載は不要です。取引先が適格請求書発行事業者でない場合も同様に、インボイス対応は不要となります。

※インボイス制度の詳細は下記の記事もご覧ください。

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支払通知書の書き方と必要記載項目

支払通知書に決まったフォーマットはありません。そもそも発行義務のある書類でもないため、それぞれの企業のフォーマットで発行可能です。
ここでは、支払通知書に含めるべき基本項目と、インボイス対応時に必要な追加項目について解説します。

支払通知書の基本記載項目

支払通知書を発行する際には、次の項目を含めることが一般的です。

商品購入に関する支払通知書のサンプル画像

<支払通知書に記載すべき項目>

  • ・発行日
  • ・発行者名
  • ・宛先
  • ・取引年月日
  • ・取引内容
  • ・税率ごとに区分して合計した税込の取引金額
  • ・税ごとに区分した消費税額

多くの企業では、WordやExcelなどで支払通知書を作成し、PDF化してメール添付やクラウドで送信するのが一般的です。また、支払業務を効率化するために、支払通知書発行機能を備えたシステムの導入も進んでいます。

過去の取引データを自動で集計して支払通知書を発行できるシステムなどを活用すれば、支払通知書作成と送付の手間がなくなり、手入力や手計算によるミスも防げます。支払業務の効率化を目指すなら、システム化を検討してみるのもおすすめです。

インボイス制度対応のための追加記載項目

インボイス制度に対応して支払通知書を適格請求書として扱う場合は、次の項目を追加で記載する必要があります。

下記の項目を正しく記載することで、支払通知書が「適格請求書」としての要件を満たし、仕入税額控除の対象となります。

<インボイス制度対応のための記載項目>

  • ・売手(取引先)の適格請求書発行事業者登録番号
  • ・税率ごとに区分して合計した支払額(税抜)
  • ・税率ごとに区分した消費税額など

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支払通知書の保存期間と保存方法

支払通知書の保存期間と保存方法

支払通知書は法的な発行義務こそありませんが、発行・受領した場合には、税務上の根拠資料として一定期間保存する必要があります。保存期間や保存方法を誤ると、税務調査などで問題になる可能性もあるため、正しい知識を身につけておきましょう。

ここでは、支払通知書の保存期間と保存方法について解説します。

支払通知書の保存期間は7年

支払通知書の保存期間は、法人・個人・事業内容によって異なります。それぞれの保存期間は下記のとおりです。

■事業内容ごとの支払通知書の保存期間
事業形態 保存期間
法人 7年
法人(欠損金が生じた事業年度) 10年
個人事業主 5年
インボイス登録者・消費税課税事業者 7年

なお、保存期間の起算日は支払通知書の発行日ではなく、「確定申告書の提出期限の翌日」から数えます。また、欠損金の繰越や災害損失がある場合などは、保存期間が10年に延長されるケースもあるため、注意が必要です。

副業で雑所得を得ている場合も、所得金額や申告方法に応じて保存義務が発生することがあります。


支払通知書は原本の保管が必要

支払通知書は、原則として写しではなく原本を保存します。紙で受け取った支払通知書は、紙のままファイリングして保存しましょう。ただし、要件を満たせばスキャンして電子的に保存することが可能です。

一方、電子データで受け取った支払通知書に関しては、前述の電子保存の要件を満たす形で保存しましょう。

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支払通知書を発行するメリット

支払通知書は、発行義務のない文書であるにもかかわらず、多くの企業で活用されています。その理由は、支払通知書を発行することで、次のようなメリットが得られるからです。

<支払通知書を発行するメリット>

  • ・支払内容の認識相違によるトラブルを未然に防げる
  • ・請求書の誤発行や二重請求を防止できる
  • ・取引先との確認作業が効率化される
  • ・支払業務の進行がスムーズになる
  • ・経理部門の作業負担を軽減できる

例えば、ある月の取引で、A社(支払元)は10件の支払いを想定していたのに対し、B社(取引先)は11件分の請求を準備していたとします。このままB社が請求書を発行すると、支払対象外の1件が含まれてしまい、支払いミスや処理遅延につながる可能性があります。

しかし、A社があらかじめ支払通知書を発行していれば、「当月は10件が支払対象」と明示されるため、B社側も請求内容を事前に確認・調整することが可能です。これにより、請求内容の不一致や問い合わせの手間が発生せず、スムーズな支払処理が可能となります。

このように、支払通知書は双方の業務を円滑に進めるための「確認の橋渡し役」として、大きな効果を発揮するのです。

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支払通知書は電子化できる?

支払通知書は電子化できる?

支払通知書は、システムを利用して発行することも可能です。支払通知書を電子化することで、支払業務の効率化とスピーディーな対応ができるようになります。
ここでは、支払通知書を電子化するメリットと電子化の方法について、それぞれ解説します。

支払通知書を電子化するメリット

支払通知書を電子化することで、次のようなメリットがあります。

<支払通知書を電子化するメリット>

  • ・紙の保管スペースや印刷・郵送コストの削減
  • ・手作業による記載ミスや送付漏れの防止
  • ・支払い処理の迅速化
  • ・電子署名やタイムスタンプで改ざん防止が可能
  • ・電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しやすい

支払通知書を電子化すれば、これまで発生していた印刷・封入・郵送の手間とコストの削減が可能です。支払通知書対応のシステムを利用すれば、ワンクリックで多数の取引先に一括送信が可能となり、業務効率が飛躍的に向上します。

また、手作業による記載ミスや送付漏れを防げるため、支払金額の誤りや取引先とのトラブルを未然に回避できます。さらに、電子署名やタイムスタンプを活用することで書類の改ざんを防止でき、セキュリティ面でも安心です。

支払通知書を電子化する方法

支払通知書を電子化するには、下記のような方法があります。

<支払通知書を電子化する主な方法>

  • ・WordやExcelで作成し、PDFに変換してメール送信
  • ・クラウドストレージにアップロードして共有
  • ・支払通知書発行機能のある請求システムを導入

なかでも最も効率的なのが、システムによる自動発行です。
株式会社インフォマートが提供する「BtoBプラットフォーム 請求書」には、請求業務のフローのひとつとして「支払通知書機能」が搭載されています。支払金額のデータを一括アップロードするだけで、簡単に各支払い先宛の支払通知書の発行が可能です。

支払通知書を電子化した際の保存方法

電子化した支払通知書は、電子帳簿保存法に準拠して保存する必要があります。具体的な保存要件については、前述で解説したとおりです。

重要なのは、「電子で受け取ったものは電子のまま」「紙に印刷して保存することはできない」という点です。
タイムスタンプの付与や訂正削除の履歴管理、検索機能の整備など、法令で定められた保存要件を満たしたシステム・運用体制を整えた上で、確実に保存しましょう。

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支払通知書を電子化して請求業務を効率化しよう

支払通知書の電子化は、請求業務の効率化と正確性の向上に役立ちます。電子帳簿保存法やインボイスといった法改正にも対応できる「BtoBプラットフォーム 請求書」のようなクラウド型のシステムであれば、今後の法改正にもシステム側で自動対応してくれるため、自社で対応方法を悩む必要がありません。

請求書の間違いや発行の遅れなど、請求業務に関する課題を抱えている事業者は、スムーズに取引先とやりとりができる請求システムの導入について検討してみてはいかがでしょうか。

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よくあるご質問

Q. 支払通知書はインボイスの代わりになりますか?

はい、条件を満たせば支払通知書をインボイス(適格請求書)の代わりとして利用できます。
インボイス制度下では、支払通知書を適格請求書として代替利用することが認められています。ただし、その場合はインボイスとして利用する際の記載事項として、次の要件を満たす必要があります。

  • ・売手(取引先)の適格請求書発行事業者登録番号
  • ・税率ごとに区分して合計した支払額(税抜)
  • ・税率ごとに区分した消費税額

これらの項目を正しく記載することで、支払通知書が適格請求書としての要件を満たし、仕入税額控除の対象となります。
詳細は「インボイス制度による変化:適格請求書発行事業者の登録番号の記載が必要になるをご覧ください。

Q. 支払通知書は法的根拠があるのですか?

支払通知書の発行自体に法的義務はありませんが、税務上は一定の法的効力を持ちます。
法律上、支払通知書の発行義務はありません。そのため、発行するかどうかは企業の任意判断となります。ただし、支払通知書は税務上「国税関係書類」として分類されるため、発行・受領した場合には一定期間の保存義務が発生します。また、証憑書類の一種として税務調査や会計監査で証拠資料として扱われるため、「支払内容を明示した確認記録」としての法的価値があります。
詳細は「支払通知書は証憑書類として価値を持つ」をご覧ください。

Q. 支払通知書はいつ発行されますか?

支払通知書は、取引が完了し支払金額が確定した後に発行するのが一般的です。
具体的な発行タイミングは企業によって異なりますが、取引先が発行した請求書と支払通知書の内容を照合できるように、請求書受領の前後に発行されることが多くなっています。
支払通知書を請求書受領前に発行することで、請求書の金額と支払い予定額に差異がある場合に早期に解消でき、支払処理をスムーズかつ正確に進められます。これにより、誤請求や二重請求といったトラブルを未然に防ぐことに役立ちます。
電子化されたシステムを利用している場合は、支払金額のデータをアップロードするだけで自動的に発行されるため、より迅速な通知が実現できます。
詳細は「支払通知書の発行タイミングは『支払金額が確定した後』」をご覧ください。

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監修者プロフィール

監修者:宮川 真一

監修者:宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上たちました。現在は、宮川真一税理士事務所の代表として、M&Aや事業承継のコンサルティング、税務対応を行っています。あわせて、CFP®(ファイナンシャルプランナー)の資格を生かした個人様向けのコンサルティングも行っています。また、事業会社の財務経理を担当し、会計・税務を軸にいくつかの会社の取締役・監査役にも従事しております。

【保有資格】CFP®、税理士

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