役員報酬(後編)
〜損金算入・不算入の具体例

2017年3月10日 田中 依子

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前編では、役員の範囲と、定期同額給与のうち損金算入(経費処理)として認められる要件について解説しました。今回は、具体例を交えながら説明します。

役員給与の損金算入の制限

法人が役員に対して支給する給与(退職給与を除く)は、原則として経費処理ができない損金不算入となります。ただし、前編で紹介したように、@定期同額給与、A事前確定届出給与、B利益連動給与、のいずれかに該当する場合は、損金算入が認められています。

@ 定期同額給与

定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間毎に支払われる給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもののこと。事業年度内で、毎月同じ金額が支払われる場合に該当します。

事業年度開始後3か月以内の定時改定等では、条件により定期同額給与に該当するものとされています。具体的なケースを見ていきましょう。

(A)定時改定

定時改定で増額された図

上記のケースでは、事業年度開始である4月から3か月以内の6月分より改定しています。この場合は、定時改定として全額が損金算入(経費処理)に認められます。

(B)増額改定

増額改定後の増額部分の図

上記のケースでは、事業年度開始から3か月以上経過した9月より改定しています。この場合、改定前の定期同額給与は損金算入として認められますが、改定後の増額部分は認められず、経費処理ができません。

(C)減額改定

改定後の金額を超える減額部分の図

上記のケースでは、事業年度開始から3か月以上経過した10月より改定しています。原則として改定前の定期同額給与のうち、改定後の金額を超える部分(減額部分)が経費処理できない損金不算入になります。

(D)特定月のみ増額している場合

特定月のみ増額された部分の図

上記のケースでは、支給額が一定ではなく、特定月のみ増額されています。支給額が突出している月以外は定額であるため損金算入が認められますが、突出する部分の金額は認められず経費処理ができません。

A事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、事前に役員へ支払う時期と支給額を定め、届出期限までに税務署長に届け出ているもののことです。

例えば役員に対し、夏季または冬季に賞与として支給する金額をあらかじめ決めている場合、届出を行うことで賞与支給額を損金に算入できます。

B利益連動給与

利益連動給与とは、利益に関する指標を基礎として算定される、役員賞与などのことです。

適用できるのは有価証券報告書を提出している法人(証券取引所や店頭登録している株式会社)に限られるため、実務上適用している法人は非常に少数です。

過大役員給与

上記のような損金算入が認められる役員給与に該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません。これには、「実質基準」と「形式基準」の2つの判断基準があります。

実質基準は、役員の職務内容や、その法人と事業規模が類似する同業他社の役員給与の支給状況等に照らし、役員給与として相当であると認められる金額以内、と定められています。同規模の同業他社と比べて、明らかに金額が大きいと判断された場合は、経費として認められません。抽象的で判断に迷う場合は、国税庁が毎年発表している「税務統計からみた民間給与の実態」が参考になるでしょう。

また形式基準では、定款の規定か株主総会の決議がなければ支給することができないため、株主総会の議事録等を作成しておく必要があります。

過大使用人給与

役員の親族等、役員と特殊関係のある使用人(社員)に対する給与のうち、不相当に高額な部分の金額も損金不算入となります。同程度の役職で、同程度の仕事をしている社員と比べ、明らかに金額が大きい場合は、経費として認められません。役員の親族に対する給与についても、十分な検討が必要となるため注意が必要です。

これまで見てきたように、役員報酬の損金算入・不算入については、判断が難しい場合もあります。役員報酬を改定する前に、税理士へのご相談をおすすめします。

著者プロフィール

日新税理士事務所

2006年6月設立。
大阪・京都・神戸・奈良を中心に活動し、会社設立、融資・補助金・助成金申請など独立開業、税金対策や経営改善計画をサポートする。

日新税理士事務所ホームページ
http://www.ns-1.biz/

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