天狗缶詰株式会社取材日 2017年10月12日

食品事故から社内体制を一新。
信頼回復につながった要因は、コンプライアンスと情報管理の徹底です。

利用サービス 規格書(メーカー) | エリア 東海 | 業種 食品製造
天狗缶詰株式会社

全国の学校給食向けに、うずら卵や野菜、果物など様々な缶詰やレトルト食品を扱う天狗缶詰様。創業から90年以上の歴史の中で、自動販売機で買える「こてんぐ おでん缶」が話題になったこともあれば、倒産の危機に瀕したほどの食品事故を起こしてしまった事もあるといいます。失敗から学んだ体制や情報管理の改革について、代表取締役社長伊藤 圭太郎様と品質管理担当者にお伺いしました。

ココがPOINT!

農家との共存共栄からはじまった缶詰製造

― 沿革と事業内容を教えてください

代表取締役社長 伊藤氏(以下、伊藤社長):弊社の創業は1923(大正12)年。青果問屋だった創業者がはじめたタケノコの缶詰製造に遡ります。農家の方たちが豊作不作に左右されず、少しでも経済的に安定するように考えたときいています。以来、業務用を主力とし、缶詰・びん詰に加え、レトルト食品の製造・輸入・販売も手がけています。

半世紀ほど前に、当時子どもの数が多く安定した売上が見込める学校給食に販路を拡大しました。現在は全国の都道府県の学校給食と取引があり、弊社の売上の40%を占めています。

一番の売れ筋はうずら卵の製品で、シェアは国内トップの35%です。うずら卵の生産が全国一の愛知県三河地区に工場を設けて、缶詰、袋詰、チルド品の加工を行っています。外食や産業給食用にベトナムと中国からの輸入うずら卵も扱いますが、学校給食用はすべて国産を提供しています。

― 学校給食ならではの食の安心・安全への取り組みはありますか?

伊藤社長:子どもが口にするものですから、食の安心・安全には一番力を入れています。O157(腸管出血性大腸菌感染症)をはじめ、様々な食の事件が起こるたびに工場の衛生面を強化し、商品規格書などの情報もすぐ提供できる体制を整えています。

この体制を組み上げた転機は、2008年2月に起こしてしまった異臭事故です。北海道から九州・沖縄まで全国の学校給食用に缶詰や袋詰の加工をした水煮マッシュルームを提供していたところ、異臭が発生して多くの児童が体調を崩されました。新聞やニュースに取り上げられましたが、しっかりした説明責任を果たさなかったために信頼を失ってしまい、当時の天狗缶詰はつぶれるかというところまで陥ったのです。

代表取締役社長
伊藤 圭太郎氏

失敗から学んだ改革とは

― 事故後、どのような取り組みで立て直しをはかったのでしょうか。

伊藤社長:2009年に私が社長になり、最初に手がけたのは内部改革です。コンプライアンスの徹底と工場の衛生管理強化に全力を尽くす。どんなことにも「真摯に向き合う」という理念を掲げて体制を見直していきました。

事故の反省は2点。ひとつは本社、営業のクレームに対する意識です。当時、回収命令があっても徹底しなかった営業がいました。回収に行った先で、お客様がそこまでしなくていいとおっしゃった、その言葉に甘えてしまったのです。初動で自主回収を100%行い、お客様にきちんと説明をしていれば、異臭騒ぎが全国に広がることはありませんでした。以来、どんな些細な異変であっても、一度自主回収と決めたら徹底してすべてを回収しています。

もうひとつの反省点は工場の管理体制です。これまでは製品の異常を発見したとしても、どのように対処すべきか明確になっていなかったのです。現在は、何かあった時は誰に伝えるのか、伝達のフローを明確にしています。異常は必ず品質管理室へ届き、製造続行するのかやめるのか、判断がなされる体制へと見直しをはかりました。

『BtoBプラットフォーム 規格書』の導入も、管理体制の見直しの一環です。製品の品質管理だけでなく情報管理も見直しが必要だったのです。

1製品につき規格書が13枚。増え続ける仕様情報をなんとかしたい

― 製品の情報管理には、どのような課題があったのでしょうか?

品質管理担当者:1,000種ほどある製品の商品規格書をエクセルで作っていましたが、当時は改訂の管理ができておらず、古い情報をお客様にお出ししてしまうことが絶えませんでした。

また、弊社の事故と前後して社会的にも食の安心・安全、衛生管理が厳しくなっています。取引先から提出を求められる書類も複雑化しましたし、管理する情報も増えます。規格書に項目を増やすときはエクセルのレイアウトが崩れないよう、1項目につき新規の紙を1枚という形で追加していきました。配合、製造工程、由来原料、遺伝子組み換え、アレルギーと、項目が増えるたび枚数も増えて、結果13枚に。重複も多くて見づらく、ファックスで送ったら「大量に送ってくるな」とお叱りを受けたこともありました。営業イメージもマイナスですし、更新作業にも手間がかかります。もっと簡単なものがほしいという声がありました。

― 規格書の管理をシステム化したことで、課題は解消できましたか?

品質管理担当者:膨大だった規格書の書式を見直すことができて、13枚から3枚にまで減りました。製品情報を『BtoBプラットフォーム規格書』に登録して、『エクセル帳票出力機能』で弊社書式のエクセルに出力し、取引先に提出しています。

また、アレルギー情報や産地なども簡単に検索して、すぐにお答えすることができるようになりました。以前はお問い合わせがあるたびエクセルを一つひとつ開いて本当に大変でしたが、今は何品目もあるような場合でも30分ほどで書類の作成から提出までできています。

システムを使うことで規格書の提出やお客様へのお答えが容易になっただけでなく、自分たちの管理もしやすくなりました。たとえば、弊社の場合、同一の砂糖を使っている製品でも100以上あり、その砂糖の内容が変わると規格書を全部修正する必要があります。しかし、『BtoBプラットフォーム 規格書』では、『原材料マスタ機能』を使って原材料マスタデータを変えるだけで、複数の製品に変更を一括反映させることができます。

また、大変助かる機能のひとつに、日本食品標準成分表2015年版(七訂)データの自動入力があります。規格書の作成時に簡単なクリック操作で標準成分値が一括入力できるので、本に載っている熱量や食塩相当量などの数値をひとつずつ転記する作業がなくなりました。弊社はうずら卵やたけのこなど素材を主に扱っているので、頻繁に使用しています。

ちょうど今、食品表示法の改正に合わせて、弊社の規格書も更新作業を行っていますが、時間にするとこの作業だけでも導入前と比べて、年間約200時間の削減に相当するんです。情報管理の効率化でできた時間は、品質管理の業務にあてることができます。

品質管理ご担当者様

全社をあげた意識改革で取り戻した信頼

― 今後の展望をお聞かせください。

伊藤社長:失った信頼を取り戻すためには長い時間がかかりますので、少しずつ実績を重ねています。手前味噌かもしれませんが、事故の発端となった学校給食会様は、事故当時の売上より2倍近くまでお取引いただくようになりました。生まれ変わった弊社の取り組みをご理解くださっているからこそと思っています。取り戻すことができたお客様の信頼にはこれからも真摯に応え、二度と事故を起こさない体制を守り続けていきたいです。

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天狗缶詰株式会社

創業1949年4月14日(創業:1923年4月18日)
事業内容業務用・給食用缶詰、レトルト食品の製造、輸入、販売
代表者代表取締役社長 伊藤 圭太郎
本社所在地名古屋市中区金山1-12-14金山総合ビル6F
企業サイトhttp://tgc-tengu.co.jp
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