株式会社指宿白水館取材日 2020年1月19日

働き方改革の一環で仕入れ業務をペーパーレス化。
料飲・用度・経理の3部門で負荷が減りました。

利用サービス 受発注(発注)規格書(買い手) | エリア 九州 | 
事業内容 旅館「指宿白水館」の運営
株式会社指宿白水館

砂むし風呂で知られる鹿児島・指宿温泉で屈指の老舗旅館、指宿白水館様。国内外から多くの宿泊客が訪れ、著名人からも愛されています。業界共通の悩みとなる人手不足に際して、働き方改革の一環で発注業務をシステム化。調理現場から用度課、経理部門までデータ連携が実現し、業務効率が大幅にアップしたそうです。取締役社長室長の金丸芳久様に、その効果を伺いました。

ココがPOINT!

「旅館とはこういうもの」を覆す、新時代の旅館経営を目指して

― 指宿白水館の特徴を教えてください。

取締役 社長室長 金丸芳久様:指宿は薩摩半島南部に位置し、鹿児島を代表する温泉観光地です。白水館は鹿児島市内で1947(昭和22)年に創業し、指宿に移っての営業も60年を超えました。風光明媚な錦江湾を望み、東京ドーム約4個分の広大な敷地に、本館と4棟205室の客室、プールや庭園、美術館などを備えています。

一年を通じて日本全国、また海外からも多くのお客様がお越しになります。江戸時代の銭湯の歴史を再現した1000坪の大浴場や、名物の砂むし温泉などさまざまな浴場と、地元の旬の食材をふんだんに用いた料理の数々でお楽しみいただいています。近年では、将棋の竜王戦で対局の舞台ともなりました。

指宿を代表する旅館のひとつとして、郷土色豊かなおもてなしを心がけ、地域全体を盛り上げていきたいと考えています。

取締役 社長室長取締役 社長室長
金丸 芳久 様

― 心づくしのおもてなしのためには、多くの従業員の力が必要ですね。

我々に限らず、宿泊業は24時間365日の営業が基本です。もちろん交替制ですが、不規則な長時間労働、世間がお休みの時はかき入れ時で逆に休めない、といったイメージもあります。人手不足と高い離職率は、業界全体の深刻な課題です。「旅館とはこういうもの」という既成概念を覆していかないと、どんな老舗も遠からず廃業に追い込まれかねないとすら感じています。従業員、特にこれからを担う若い人たちに、楽しく長く働いてもらうために、業務改善は必須です。問題意識と危機感を持った取り組みは経営陣の使命であると考えています。

たとえば、今年2020年から実験的に休館日を設ける予定です。閑散期を選び休館することで、従業員にリフレッシュしてもらうだけでなく、騒音の出る大がかりな設備改修などが行えます。お客様の安全を守り、快適にお過ごしいただくためにも耐震工事やリニューアルは不可欠で、休業して売上が落ちても、それ以上の効果があるでしょう。

― 「働き方改革」も追い風になっていますか?

休館に関しては、お客様や旅行会社からも理解を得られやすいのではと感じます。結局、従業員が楽しく幸せに働けないと、お客様に心からのサービスも提供できません。他にも、2019年から内閣府所管の企業主導型保育事業として「いずみ保育園」を社内で運営し、従業員の家族だけでなく地域のお子様も受け入れています。また、料理場や経理の作業効率をアップさせるために、食材などの仕入れは『BtoBプラットフォーム 受発注』を使ってシステム化しています。

ペーパーレス化で、一気通貫の働き方改革が実現

― 受発注システムを導入した経緯を教えてください。

私はもともと用度課を担当しており、以前から発注業務で「これは非効率では」と気になる面があったのです。伝票はすべて手書きされたもので検品、経理チェックを行い、毎日商品管理システムに入力します。中には字がかすれて読めなかったり、略称で書かれていたりと、慣れた人でもかなりストレスのかかる作業です。月末には社員3人がかりで1カ月分の伝票を精査し、請求書と照らし合わせます。月末から月初の5日くらいまではその作業だけに集中する状況で、雰囲気もピリピリしますし、その間、検品作業など他の業務は滞りがちでした。それなのに、「今までこのやり方だったから」という考えが強く、改善しようという動きもなかったのです。

ですが、他の業界を見れば、たとえば宅配業者さんなどは、荷物の運搬情報をデータ管理して効率化しています。我々の場合は、受発注システムというものがあると知り、これで状況を打破できるのではと感じました。

いくつかシステムを検討したところ、サポート体制が充実しているのが『BtoBプラットフォーム 受発注』でした。実際に導入している企業数社からも、「すごく業務効率がはかれますよ」との声を聞いています。従来の手作業を続けた場合の人件費や経費を試算すると、システムを導入してもコストはペイでき、さらに人手を減らせる分、他の業務へ注力できます。伝票のペーパーレス化でかなりの効果が期待できると、調理場や経理など、関係部署を説得してまわり導入に至りました。

― 実際の効果はいかがでしたか?

現在、主な仕入れの取引はほぼ受発注システムを使っています。データで管理できるので「和食は今月こんな提案をしている、これだけ仕入れている」といった業者との取引内容や金額も一目でわかります。これまでは計算しないと分からなかったので、調理場はいちいち用度課へ、今どれくらい使っているか聞きに来ていたのです。今は、自分たちで確認できますし、FAXや電話での発注と違って、「あの商品発注したか?」「いつ届くのか」も一目瞭然です。また伝票の手入力には紛失リスクや入力ミスがありましたが、今は取引履歴が残るので、経理でもチェック作業の負担が減り、非常に喜んでいます。ゆくゆくは会計ソフトとも連携させて、さらなる効率化をはかりたいと思っています。

― 食の安心・安全にはどのような対策で取り組まれていますか?

料理は旅館の顔でもありますので、衛生管理は義務化されるHACCPの考え方を取り入れて厳しく実施しています。またアレルギーについては、予約の時点でお客様に伺い、実際に料理を提供する際も念には念をいれて、何重ものチェックを実施しています。特にアレルギーはお客様の命にも関わり、万が一のことがあると「すみません」では済まされません。お客様は我々を信頼して口に入れてくださっているのだから、その信頼を裏切ってはいけないと、従業員一人ひとりに伝えています。お客様へのアレルギー対応は、予約のカルテに書き込み、調理場、宴会場、フロントも情報を共有することを徹底しています。

お客様に安心して召し上がっていただくためにも、料理に何が使われているのか、確実に把握する必要があります。以前は商品ラベルを頼りにするしかなかったのですが、今は『BtoBプラットフォーム 規格書』で調理場に情報提供しています。情報の更新は各メーカーが行い、私がチェックして承認するフローです。

従業員満足度を向上させ、旅館業の魅力を伝えていきたい

― 今後の展望をお聞かせください。

旅館業は、従業員満足度をいかに向上させるかが最も大事だと思っています。従業員が楽しく働いていれば顔や態度にも出ますので、お客様も、自然と感じとられるでしょう。ITなどのハードを活用し、オペレーションの効率化をはかってより付加価値の高いサービスを提供していきたいです。効率が上がれば業務負担の軽減だけでなく福利厚生の拡充もはかれます。旅館業はしんどいというイメージを払拭させたいですね。実際、お金をいただきながらお客様から感謝の言葉もいただく、やりがいのある仕事です。「ありがとう、また来ます」と言葉をかけられたときのなんともいえない達成感、アドレナリンが出るといいますか。もっとお客様のために何ができるかという気持ちが沸き上がる、この気持ちをもっともっとスタッフに味わってもらえたら、魅力を伝えていけたらと思っています。

関連リンク

株式会社指宿白水館

設立1947年6月18日
事業内容旅館「指宿白水館」の運営
代表者代表取締役社長 下竹原啓高
本社所在地鹿児島県指宿市東方12126-12
企業サイトhttp://www.hakusuikan.co.jp/
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