基礎からわかる電子帳簿保存法(後編)
「よくある疑問」をQ&Aで解説

2018年3月23日

基礎からわかる電子帳簿保存法(後編)「よくある疑問」をQ&Aで解説

前回は「書類の電子化は、シーン別で考える」と題し、理解しづらい“取引関係書類の電子保存”について、 対象書類や保存要件などの概要を整理した。今回は、導入に当たってわかりづらい点や 不安に思う内容を中心に、一問一答形式で解説する。

  1. ■基礎編
  2. Q1どれくらいの企業が電帳法を適用していますか?
  3. Q2帳簿と書類は同時に電子化しないといけませんか?
  4. Q3書類の保存方法について、紙とデータが混在しても問題ありませんか?
  5. Q4電子保存が認められない国税関係帳簿書類はありますか?
  6. Q5取引関係書類を電子保存する場合、すべて電子化する必要はありますか?
  7. Q6課税期間の途中から電子保存を行うことは可能ですか?
  8. Q7途中でやめることもできますか?
  9. Q8過去にさかのぼって適用することはできますか?
  10. Q9税務署への申請は事業所ごとに行うのでしょうか?
  11. Q10データを保存するサーバーは納税地にないといけませんか?
  12. Q11e‐文書法と電帳法の差はなんですか?
  13. Q12例えば、電子取引で請求書のやり取りをする場合、印鑑はどうしたらよいですか?
  14. ■応用編
  15. Q13保存対象となるデータ量が膨大で複数の保存媒体に保存しています。一課税期間を通じて検索できませんが、問題はありますか?
  16. Q14売上伝票などの伝票類も電帳法の対象ですか?
  17. Q15電子取引の取引情報のデータを保存するに当たって必要な保存措置にある、 「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」とは具体的に何をすればいいのでしょうか?

基本編

Q1どれくらいの企業が電帳法を適用していますか?

A1電子帳簿は約19万社、スキャナ保存は約1,000社です。

国税庁の発表によると、2016年度の電子帳簿の申請に係る承認件数は188, 355件となっており、年間1万件ずつ増加しています。近年、要件が緩和されたスキャナ保存については、2016年度に承認件数が1, 050件で、前年比3倍となり、多くの企業で検討が進み利用され始めているのがわかります。

電子帳簿とスキャナ保存の承認件数

なお、「電子取引データの保存」については、そもそも申請が不要なため正確な数字は不明です。ただし、インターネットを通じた電子取引は急速に普及しています。弊社・インフォマートが提供する企業間の電子取引サービス『BtoBプラットフォーム』における利用企業数は、2007年が17,033社だったのに対し、2017年は175,399社と10倍以上に急増しています。

Q2帳簿と書類は同時に電子化しないといけませんか?

A2同時に電子化する必要はありません。

導入しやすい部分から電子化することができます。

Q3書類の保存方法について、紙とデータが混在しても問題ありませんか?

A3問題ありません。

事業者や支店、相手先ごとに、明確に単一的な保存方法が決まっているのであれば、紙と電子取引の両方を並列で使ってもいいということになっています。例えば取引先のなかで、ある商店さんから「個人でやっているので、電子データなんて発行できない」と言われれば、その商店さんとは紙でやり取りする、とあらかじめ取り決めをしておけばよいでしょう。

Q4電子保存が認められない国税関係帳簿書類はありますか?

A4手書きで作成した帳簿は認められません。

電磁的記録による保存が認められるのは、最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成するものです。手書きで作成された帳簿は電子保存が認められません。一方、書類の場合は、手書き書類であってもスキャン文書による保存が認められます。

Q5取引関係書類を電子保存する場合、すべて電子化する必要はありますか?

A5すべて電子で保存する必要はありません。

例えば証憑を対象として税務署に申請した場合、請求書は電子で保存し、領収書は紙で保存する、というように分けることは法律上問題ありません。

Q6課税期間の途中から電子保存を行うことは可能ですか?

A6帳簿は原則不可、書類は可能です。

「国税関係書類」については、課税期間の中途からでも電子保存を行うことができます。「国税関係帳簿」は、その性質上、期首から順次入力されていくものです。したがって、原則的には、課税期間の途中から電子保存をすることはできません。

Q7途中でやめることもできますか?

A7できます。

ただし、申請した保存をやめる際は「取りやめの届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。また、電子保存期間中の証憑を一部でも破棄している場合は、その期間のデータを今後も保存する必要があります。

Q8過去にさかのぼって適用することはできますか?

A8できません。

電子保存を開始するには、事前に税務署へ申請する必要がありますので、過去にさかのぼって適用することはできません。

Q9税務署への申請は事業所ごとに行うのでしょうか?

A9本社所在地の税務署に申請してください。

法人税についての国税関係帳簿書類を本社のほか各事業所ごとに作成・保存している場合、法人自体が各事業所の分も含めて本社所在地の所轄税務署長に対して承認申請を行う必要があります。

Q10データを保存するサーバーは納税地にないといけませんか?

A10納税地になくても問題ありません。

最近はサーバーが海外というケースもあるので、サーバー自体は納税地になくてもよいとされています。その代わり、電子保存されたデータをパソコンのディスプレイの画面および書面にすぐに出力できることが条件となります。

Q11e‐文書法と電帳法の差はなんですか

A11対象範囲が違います。

電帳法は、税法で規定されている「国税関係帳簿書類」を対象に電子保存を認める法律です。一方、e-文書法は、税法だけでなく、様々な法令で紙での保存が義務付けられている書類について、一括で電子保存を容認する法律です。

e‐文書法

Q12例えば、電子取引で請求書のやり取りをする場合、印鑑はどうしたらよいですか?

A12押印は必須ではありません。

そもそも「請求」行為は必ず書面で行う必要はなく、双方の合意があれば口頭で行うことも可能です。また、書面を交わす場合においても、押印がなくても請求書は成り立ちます。ただし、商習慣として、請求書に押印することは、書類の信頼性を向上させ、トラブルを避けるという意味合いがあることも事実です。

応用編

Q13保存対象となるデータ量が膨大で複数の保存媒体に保存しています。一課税期間を通じて検索できませんが、問題はありますか?

A13特別な事情がない限り、認められません。

保存されているデータは、原則として一課税期間を通じて検索できなければなりません。しかし、半期ごとに帳簿を作成している場合など、合理的な理由がある場合はその期間ごとに検索できれば問題ありません。

Q14売上伝票などの伝票類も電帳法の対象ですか?

A14作成の用途によって異なります。

紙で作成された売上伝票などの伝票類が、企業内での決裁・整理などを目的として作成されている場合は、国税関係書類に該当しないため、電帳法の適用はありません。一方、伝票が国税関係帳簿の記載内容を補充する目的で作成・保存され、その伝票が帳簿の一部(補助簿)を構成する場合は「国税関係帳簿」となり、電帳法の対象となります。

Q15電子取引の取引情報のデータを保存するに当たって必要な保存措置にある、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」とは具体的に何をすればいいのでしょうか?

A15データの真実性を確保することを目的に、訂正削除を原則行わない旨を規定する必要があります。

真実性を確保する手段としては、保存義務者自らの規程のみによる方法のほか、取引先との契約による方法も考えられます。具体的には、下記の内容を含む規程を設ける必要があります。

自社の規程のみによって防止する場合

  • 1データの訂正削除を原則禁止
  • 2都合により、データを訂正又は削除する場合(例えば、取引相手方からの依頼により、入力漏れとなった取引年月日を追記する等)の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録及び保存)
  • 3データ管理責任者及び処理責任者の明確化

取引相手との契約によって防止する場合

  • 1取引相手とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行うこと
  • 2事前に上記契約を行うこと
  • 3電子取引の種類を問わないこと

  1. 基礎からわかる 電子帳簿保存法
  2. 前編書類の電子化は、シーン別で考える
  3. 後編「よくある疑問」をQ&Aで解説

本コラムの著者プロフィール

辻・本郷 税理士法人 市川琢也

市川 琢也

辻・本郷 税理士法人にて税理士業務、経理アウトソーシング、業務改善コンサルなどを担当し、延べ1,000社以上に関与。現在はHongo Connect & Consulting株式会社の社長として、様々な事業を“つなげる”ビジネスに取り組む。

Hongo Connect & Consulting 株式会社
辻・本郷税理士法人グループが誇る、顧問先企業数10,000社を超える豊富な経験とネットワークを活かし、様々な角度から経理・総務業務の改善・コンサルティングを行う。
http://h-cc.co.jp/

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